(・∀・)ぐぉーぐわぁー
何処かの森の中、目が覚めた。
生い茂った木々のせいで日光は私まであまり届かない。
……此処は何処だろう。そして、どうして私は生きているの?
目が覚めたばかり。わからないことだらけ。
寝ていた体を起こす。その身体は何故か私が知っているそれよりも、ずっと軽かった。どうしてこんなに軽いのだろう。
私の身体は他の奴らと比べるとちょっと大きいはず。自分でも、どうしてそんなに大きくなっちゃったのかわからないけれど、大きかった。
起き上がった自分の体を確認。
あんまり大きくない。しかも、形が大きく変わっていた。
全身を覆っていたはずの黒い毛はなく、代わりに布が私の体を包んでいた。手や足も私の知っているものより小さい。その代わりに頭部の毛は伸びていたし、胸も膨らんでいる。
これじゃあまるで――アイツみたいだ。
何があったんだろう。私は死んだはずなのに、アイツに殺されたはずなのに。
「…………あお」
なんと声が出た。今までは『ぐぉー』とか『ぐわぁー』とかしか出なかった私の口から声が出てくれた。
ちょっと嬉しい。
「……あお」
声が出る。
これならアイツへ私の言葉を届けることができる。
「……すき」
素直な私のこの気持ちをアイツへ届けることができるんだ。
今まではそれができなかった。どんなに言葉へしようとしても、私の口からは『ぐぉー』とか『ぐわぁー』とかしか出なかったから。
でも今は違う。
「好き」
今度はきっと伝わる。それが嬉しい。
集中してアイツの匂いを探す。いるのかはわからない。でも私はアイツへこの気持ちを伝えたい。
そして見つけたあの匂い。
うん、きっと私はこの気持ちを伝えるために生き返ったんだ。ちょっと姿は変わってしまったけれど、この想いだけは変わらないから。
「私は青のことが……」
――殺したいほど好き。
待ってて、直ぐに行くから。
――――――――
サクサクと美味しそうにクッキーを頬張るルーミア。見ていて和む。俺の分はないらしいが。
食べかけで良いからくれないだろうか。
「美味しい?」
「うん、おいしい」
そりゃあ良かったよ。
ルーミアに言われてから急いで紅魔館へ戻り、咲夜に頼んでクッキーを焼いてもらった。咲夜に頼むと滅茶苦茶嫌な顔をされ、特に悪いことをした覚えもないのに罵倒された。
そんなことに理不尽さを感じないでもなかったが、それもきっと咲夜なりの愛情表現なのだろうと理解した。
序でだったから咲夜に異変の方はどうなったか聞いてみたが、一応霊夢が解決したらしい。まぁ、俺を追いかけて出てきたフランドールのことが気になって、レミリアも異変のことなんて構っていられなかったらしいが。
そして今晩、博麗神社で宴会が開かれるらしい。
宴会、か。ん~……どうすっかなぁ。行っても良いが、どうにも気は進まない。宴会へ行けば可愛い女の子たちと会うことができる。それはわかっているんだけどなぁ。
「ルーミアは今日の宴会行く?」
「行くとおいしいもの食べられる?」
どうだろうか? 博麗神社の宴会に参加したことがないからそれはわからないが……
まぁ、きっと咲夜が料理を作ってくれるだろうし、美味しいものはあるだろう。
「たぶんあると思うよ」
「そーなのかー。じゃあ行こうかな」
何処か楽しそうにルーミアが応えた。アレだけ悪かった機嫌も、クッキーを食べたことで戻ってくれたらしい。良いことだ。
そっか、ルーミアは宴会へ行くのか。まぁ、此処に居てもすることないもんな。そりゃあそうなるか。
さてさて、俺はどうしようか。
「あんたは行かないの?」
「それを今考えているんだよ。ルーミアは俺に来て欲しい?」
霊夢とは多少の会話をしたが、魔理沙とはほとんど話をしていない。自機組とはできるだけ仲良くなっておきたいところであるが……
「ううん、全く。もし来ても私には近寄らないで」
酷い言われようだった。
どうして此処まで嫌われているのか全く理解できない。もしかして、まだ機嫌は治っていないのだろうか。
俺が消えた時はデレてくれたんだが……
確か――
「あんたが消えるのは……いやだよぉ……」
なんて言ってくれた。
そしてその言葉を俺がぽそり呟くと、ルーミアが眉間に皺を寄せながら此方を向いた。ちょっと不機嫌なルーミアも可愛い。
「何を言って…………っつ!」
どうやら何かを思い出したらしいルーミア。顔が超赤い。
ふふっ、可愛い奴め。なんて思ったところでぶん殴られた。
「あ、アレは、違う! あんたがっ! 悪いっ!」
顔を赤くしながら拳を振り下ろし続けるルーミア。超痛い。すみません、もう少し優しくしてください。
いや、悪かったって。
しこたまぶん殴られはしたけれど、ちゃんと覚えてくれていたことが嬉しかった。
ルーミアが再び機嫌を損ねてしまい家を出て行ってしまった。そのまま宴会へ行くそうだ。そんなルーミアから、絶対に宴会には来るなと言われたが……そう言われると余計に行きたくなる。
ただまぁ、これ以上は流石に不味いので素直に従うこととした。
とは言っても、ルーミアが出て行ってしまったせいで俺は暇になってしまった。もう少し構ってくれても良かったのに。
紅魔館へ行く気にもなれず、仕方無いからフラフラと散歩をすることに。
そして可愛い女の子でも現れてくれないものかと、当ても無く歩いている時だった。
「うわっ、なんで此処にお前がいるんだよ」
背中に小さめの籠を背負った魔理沙と遭遇。なるほど、この当たりは魔理沙のテリトリーだったのか。ふむ、良いことを覚えた。
「暇になったからフラフラと散歩をしていたんだよ」
「そんな気軽に歩いて良いような場所じゃないんだけどなぁ……」
たぶん此処は魔法の森なのだろう。瘴気に溢れ、人も妖怪も近寄らないような場所。いつの間にかそんな場所へ来ていたらしい。
それなりに丈夫なこの体。瘴気くらいはなんともない。……たぶん。
「そう言えば、お前って結構強いんだな。今度私と弾幕ごっこしないか?」
「いや、やめておくよ。俺じゃあ魔理沙に攻撃を当てることなんてできないし」
可愛い女の子に霊弾なんて当てられるわけがない。此方は逃げることしかできないのだ。
「なんだよー。この前は戦っていたじゃな……うむぅ」
突然だった。
ピリリと嫌な気配がしたから、慌てて右手で魔理沙の口を塞ぎ、左手で魔理沙の胸を触った。うむ、控えめだが良いおっぱいだ。
「な、何すんだ! それにどこを……」
「ちょっと静かに、何か来る」
ジリジリと近づいて来る嫌な気配。それは確実に俺たちの方へ向かって来ている。
なんだ? 何が来る?
左手に神経を集中しつつ、近づいて来る何かを見極めるために霊力を強化。
そして現れたのは――
「……見つけた。ずっと会いたかった」
黒色の着物を来た可愛い女の子だった。
えと……だれ?
「魔理沙の知り合いか?」
「いや、私は知らない。あとその手をどけろ! 本当に怒るぞ!」
もう少し続けていたかったが、仕方無しに左手を退かす。
そうか、魔理沙の知り合いでもないのか。ん~……東方にこんなキャラはいなかったと思うが。
でもこの少女、かなり強そうなんだよな。何者だ?
「えと、君は?」
「……青は私のこと覚えてないの?」
悲しそうな顔をされた。
えっ、もしかして俺の知り合いさんでしたか? いやでも待て。俺は本当に君のことは知らないぞ。それに君のような可愛い女の子を俺が忘れるはずがない。
「……でも大丈夫。……きっとすぐ思い出すから」
瞬間――少女の姿がブレた。
反射的にしゃがむと、頭の上を恐ろしい速さで何かが通過した。
しゃ、洒落にならん。当たったら普通に死ねそうだぞ。
そんな攻撃をしてきた少女は、攻撃が当たらなかったせいかバランスを崩している様子。
「おいおい、なんだよこれ。どういう状況なんだ?」
焦ったような魔理沙の声。
んなもん、俺が聞きたいわ。
俺が覚えていない? それはおかしい、だって俺の記憶は全て――戻ったのだから。幻想郷の少女たちが俺のことを覚えていなくとも、俺は覚えているのだから。
じゃあ、なんだ? この少女は何を言っている。
そんなことを必死で考えていると、腹へ良いのが入った。吹き飛びました。
振り切った右手の勢いを利用してからの空中回し蹴り。つまりそれはローリング・ソバット。
一瞬で視界は真っ暗に。
……勘弁して欲しい。次元が違う。
そして、ローリング・ソバットねぇ。
ああ……ああ、わかったよ。お前が誰なのか漸くわかったよ。自分の鈍感さに乾いた笑いしか出てこない。
今まで、お前を忘れたことなんてない。俺がお前を忘れられるわけがないだろう。
「おい! お前、大丈夫なのか?」
一度、咳をして口の中へ溜まった血反吐を吐き出す。
大丈夫、こう言うのは慣れてるから。きっとこの世界で誰よりも俺が慣れている。
「魔理沙」
「な、なんだよ」
「ちょっと俺はそこの女の子とデートしてくるわ」
「は?」
魔理沙がどの程度強いのかはわからない。けれども、流石にコイツは無理だろう。それこそ、レベルが違う。あの時と比べて随分可愛くなったが、それでも弱っているようには見えない。
「おい、ド畜生。……ちょいと其処までお散歩しませんか?」
「……うん」
そんなアイツの言葉を聞いてから、霊力を振り縛り全力で飛んだ。
切ったと思った縁の糸。けれども、そんな簡単に切れてはくれなかったらしい。コイツとの戦績は一勝数万敗。まさに絶望的。
それでもこれは俺がやらなきゃいけない問題だ。
ホント、どうすっかな……
彼女がきっとメインヒロインです
と、言うことで第11話でした
オリキャラ一人じゃ寂しいので、また出てきてもらいました
姿は変わりましたが安定の使い回しです
次話は彼女とのいちゃいちゃデート回ですね
では、次話お会いしましょう