東方想拾記   作:puc119

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(・∀・)ぐぉーぐわぁー




第11話~殺したいほど~

 

 

 何処かの森の中、目が覚めた。

 生い茂った木々のせいで日光は私まであまり届かない。

 

 ……此処は何処だろう。そして、どうして私は生きているの?

 

 目が覚めたばかり。わからないことだらけ。

 

 寝ていた体を起こす。その身体は何故か私が知っているそれよりも、ずっと軽かった。どうしてこんなに軽いのだろう。

 私の身体は他の奴らと比べるとちょっと大きいはず。自分でも、どうしてそんなに大きくなっちゃったのかわからないけれど、大きかった。

 

 起き上がった自分の体を確認。

 

 あんまり大きくない。しかも、形が大きく変わっていた。

 全身を覆っていたはずの黒い毛はなく、代わりに布が私の体を包んでいた。手や足も私の知っているものより小さい。その代わりに頭部の毛は伸びていたし、胸も膨らんでいる。

 

 これじゃあまるで――アイツみたいだ。

 

 何があったんだろう。私は死んだはずなのに、アイツに殺されたはずなのに。

 

 

「…………あお」

 

 

 なんと声が出た。今までは『ぐぉー』とか『ぐわぁー』とかしか出なかった私の口から声が出てくれた。

 ちょっと嬉しい。

 

 

「……あお」

 

 

 声が出る。

 これならアイツへ私の言葉を届けることができる。

 

 

「……すき」

 

 

 素直な私のこの気持ちをアイツへ届けることができるんだ。

 今まではそれができなかった。どんなに言葉へしようとしても、私の口からは『ぐぉー』とか『ぐわぁー』とかしか出なかったから。

 でも今は違う。

 

 

「好き」

 

 

 今度はきっと伝わる。それが嬉しい。

 集中してアイツの匂いを探す。いるのかはわからない。でも私はアイツへこの気持ちを伝えたい。

 

 そして見つけたあの匂い。

 

 

 うん、きっと私はこの気持ちを伝えるために生き返ったんだ。ちょっと姿は変わってしまったけれど、この想いだけは変わらないから。

 

 

「私は青のことが……」

 

 

 

 ――殺したいほど好き。

 

 

 

 待ってて、直ぐに行くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 サクサクと美味しそうにクッキーを頬張るルーミア。見ていて和む。俺の分はないらしいが。

 食べかけで良いからくれないだろうか。

 

「美味しい?」

「うん、おいしい」

 

 そりゃあ良かったよ。

 

 ルーミアに言われてから急いで紅魔館へ戻り、咲夜に頼んでクッキーを焼いてもらった。咲夜に頼むと滅茶苦茶嫌な顔をされ、特に悪いことをした覚えもないのに罵倒された。

 そんなことに理不尽さを感じないでもなかったが、それもきっと咲夜なりの愛情表現なのだろうと理解した。

 

 序でだったから咲夜に異変の方はどうなったか聞いてみたが、一応霊夢が解決したらしい。まぁ、俺を追いかけて出てきたフランドールのことが気になって、レミリアも異変のことなんて構っていられなかったらしいが。

 そして今晩、博麗神社で宴会が開かれるらしい。

 

 宴会、か。ん~……どうすっかなぁ。行っても良いが、どうにも気は進まない。宴会へ行けば可愛い女の子たちと会うことができる。それはわかっているんだけどなぁ。

 

「ルーミアは今日の宴会行く?」

「行くとおいしいもの食べられる?」

 

 どうだろうか? 博麗神社の宴会に参加したことがないからそれはわからないが……

 まぁ、きっと咲夜が料理を作ってくれるだろうし、美味しいものはあるだろう。

 

「たぶんあると思うよ」

「そーなのかー。じゃあ行こうかな」

 

 何処か楽しそうにルーミアが応えた。アレだけ悪かった機嫌も、クッキーを食べたことで戻ってくれたらしい。良いことだ。

 

 そっか、ルーミアは宴会へ行くのか。まぁ、此処に居てもすることないもんな。そりゃあそうなるか。

 さてさて、俺はどうしようか。

 

「あんたは行かないの?」

「それを今考えているんだよ。ルーミアは俺に来て欲しい?」

 

 霊夢とは多少の会話をしたが、魔理沙とはほとんど話をしていない。自機組とはできるだけ仲良くなっておきたいところであるが……

 

「ううん、全く。もし来ても私には近寄らないで」

 

 酷い言われようだった。

 どうして此処まで嫌われているのか全く理解できない。もしかして、まだ機嫌は治っていないのだろうか。

 俺が消えた時はデレてくれたんだが……

 

 確か――

 

 

「あんたが消えるのは……いやだよぉ……」

 

 

 なんて言ってくれた。

 そしてその言葉を俺がぽそり呟くと、ルーミアが眉間に皺を寄せながら此方を向いた。ちょっと不機嫌なルーミアも可愛い。

 

「何を言って…………っつ!」

 

 どうやら何かを思い出したらしいルーミア。顔が超赤い。

 ふふっ、可愛い奴め。なんて思ったところでぶん殴られた。

 

「あ、アレは、違う! あんたがっ! 悪いっ!」

 

 顔を赤くしながら拳を振り下ろし続けるルーミア。超痛い。すみません、もう少し優しくしてください。

 いや、悪かったって。

 

 しこたまぶん殴られはしたけれど、ちゃんと覚えてくれていたことが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 ルーミアが再び機嫌を損ねてしまい家を出て行ってしまった。そのまま宴会へ行くそうだ。そんなルーミアから、絶対に宴会には来るなと言われたが……そう言われると余計に行きたくなる。

 ただまぁ、これ以上は流石に不味いので素直に従うこととした。

 

 とは言っても、ルーミアが出て行ってしまったせいで俺は暇になってしまった。もう少し構ってくれても良かったのに。

 紅魔館へ行く気にもなれず、仕方無いからフラフラと散歩をすることに。

 

 そして可愛い女の子でも現れてくれないものかと、当ても無く歩いている時だった。

 

 

「うわっ、なんで此処にお前がいるんだよ」

 

 

 背中に小さめの籠を背負った魔理沙と遭遇。なるほど、この当たりは魔理沙のテリトリーだったのか。ふむ、良いことを覚えた。

 

「暇になったからフラフラと散歩をしていたんだよ」

「そんな気軽に歩いて良いような場所じゃないんだけどなぁ……」

 

 たぶん此処は魔法の森なのだろう。瘴気に溢れ、人も妖怪も近寄らないような場所。いつの間にかそんな場所へ来ていたらしい。

 それなりに丈夫なこの体。瘴気くらいはなんともない。……たぶん。

 

「そう言えば、お前って結構強いんだな。今度私と弾幕ごっこしないか?」

「いや、やめておくよ。俺じゃあ魔理沙に攻撃を当てることなんてできないし」

 

 可愛い女の子に霊弾なんて当てられるわけがない。此方は逃げることしかできないのだ。

 

「なんだよー。この前は戦っていたじゃな……うむぅ」

 

 突然だった。

 ピリリと嫌な気配がしたから、慌てて右手で魔理沙の口を塞ぎ、左手で魔理沙の胸を触った。うむ、控えめだが良いおっぱいだ。

 

「な、何すんだ! それにどこを……」

「ちょっと静かに、何か来る」

 

 ジリジリと近づいて来る嫌な気配。それは確実に俺たちの方へ向かって来ている。

 なんだ? 何が来る?

 

 左手に神経を集中しつつ、近づいて来る何かを見極めるために霊力を強化。

 

 

 そして現れたのは――

 

 

 

「……見つけた。ずっと会いたかった」

 

 

 

 黒色の着物を来た可愛い女の子だった。

 

 えと……だれ?

 

 

「魔理沙の知り合いか?」

「いや、私は知らない。あとその手をどけろ! 本当に怒るぞ!」

 

 もう少し続けていたかったが、仕方無しに左手を退かす。

 そうか、魔理沙の知り合いでもないのか。ん~……東方にこんなキャラはいなかったと思うが。

 でもこの少女、かなり強そうなんだよな。何者だ?

 

 

「えと、君は?」

「……青は私のこと覚えてないの?」

 

 

 悲しそうな顔をされた。

 えっ、もしかして俺の知り合いさんでしたか? いやでも待て。俺は本当に君のことは知らないぞ。それに君のような可愛い女の子を俺が忘れるはずがない。

 

 

「……でも大丈夫。……きっとすぐ思い出すから」

 

 

 瞬間――少女の姿がブレた。

 

 反射的にしゃがむと、頭の上を恐ろしい速さで何かが通過した。

 しゃ、洒落にならん。当たったら普通に死ねそうだぞ。

 そんな攻撃をしてきた少女は、攻撃が当たらなかったせいかバランスを崩している様子。

 

「おいおい、なんだよこれ。どういう状況なんだ?」

 

 焦ったような魔理沙の声。

 んなもん、俺が聞きたいわ。

 

 俺が覚えていない? それはおかしい、だって俺の記憶は全て――戻ったのだから。幻想郷の少女たちが俺のことを覚えていなくとも、俺は覚えているのだから。

 じゃあ、なんだ? この少女は何を言っている。

 

 そんなことを必死で考えていると、腹へ良いのが入った。吹き飛びました。

 

 振り切った右手の勢いを利用してからの空中回し蹴り。つまりそれはローリング・ソバット。

 一瞬で視界は真っ暗に。

 

 

 ……勘弁して欲しい。次元が違う。

 

 

 そして、ローリング・ソバットねぇ。

 ああ……ああ、わかったよ。お前が誰なのか漸くわかったよ。自分の鈍感さに乾いた笑いしか出てこない。

 今まで、お前を忘れたことなんてない。俺がお前を忘れられるわけがないだろう。

 

 

「おい! お前、大丈夫なのか?」

 

 一度、咳をして口の中へ溜まった血反吐を吐き出す。

 大丈夫、こう言うのは慣れてるから。きっとこの世界で誰よりも俺が慣れている。

 

「魔理沙」

「な、なんだよ」

「ちょっと俺はそこの女の子とデートしてくるわ」

「は?」

 

 魔理沙がどの程度強いのかはわからない。けれども、流石にコイツは無理だろう。それこそ、レベルが違う。あの時と比べて随分可愛くなったが、それでも弱っているようには見えない。

 

 

「おい、ド畜生。……ちょいと其処までお散歩しませんか?」

「……うん」

 

 そんなアイツの言葉を聞いてから、霊力を振り縛り全力で飛んだ。

 

 

 切ったと思った縁の糸。けれども、そんな簡単に切れてはくれなかったらしい。コイツとの戦績は一勝数万敗。まさに絶望的。

 それでもこれは俺がやらなきゃいけない問題だ。

 

 ホント、どうすっかな……

 

 






彼女がきっとメインヒロインです

と、言うことで第11話でした
オリキャラ一人じゃ寂しいので、また出てきてもらいました
姿は変わりましたが安定の使い回しです

次話は彼女とのいちゃいちゃデート回ですね
では、次話お会いしましょう

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