とある武偵の未元物質   作:victory

6 / 9
第六弾 新たな武偵 後編 I

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  

    【強襲学部-強襲科特別編入試験】  

 

          《概要》  

 

1-例外的に編入試験を設ける。  

                 

2-強襲科特別編入試験の内容は以下の項目とする。

 

3-第一試験-狙撃科(スナイプ)の射撃場において射撃の適性試験。10分間の中距離射撃を行った上で獲得スコアから強襲科に必要な射撃の適性を判断する。

 

4-第二試験-実践形式の試験。郊外にある2階建の廃墟に犯罪グループが潜伏中と仮定。犯罪者は10名。武装した上で廃墟に突入し10名を無力化及び捕縛せよ。なお、本試験における犯罪者役は本校の強襲学部の強襲科及び狙撃科に属する新入生8名、2年生2名が務める。あらゆる事態を想定した上で挑む事。戦闘力及び状況判断力等武偵、ひいては強襲科に必要な素質が試される。

 

※武装品は以下の通り。

 

【拳銃:2丁】【バタフライナイフ:1本】【防弾制服】【弾薬:24発】【スタングレネード:1個】

 

   

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

以上が綴があの話の後、俺に手渡してきた試験内容の詳細だ。

要は試されるのは強襲科に必要な要素があるかどうかって事だけだ。

分かりやすくて結構なこった。

 

 

 

 

あれから20分近くが経ち、俺は今第一試験の会場である狙撃科射撃場とやらに足を向けている。

 

学園都市では裏側の住人である俺は暗部での活動の際も頻繁って程じゃねぇが、何度か銃火器を使った事はある。

大した労力じゃねぇが、学園都市の超能力者や大能力者問わず能力者ってのはその能力の使用の際には脳内での演算が必要となる。能力を使用しなくても殺せる、あるいは無力化出来る奴はそうするにこした事はねぇ・・・ってな理由だ。能力者の演算を妨害するキャパシティダウンって存在がある事も一つの要因だ。

あまり影響は受けはしねぇがな・・・

 

だが、武偵ってのは銃火器を取り扱う頻度は高い。

恐らく暗部時代の俺よりも高いだろう。

 

強襲科・・・そして射撃・狙撃(その道)のプロを育成する狙撃科の連中の存在。

 

射撃適性試験は例年入試で取り扱われると綴は言っていた。

この世界には一般の中学校の他に武偵中学校があるとも聞く。

余談だが、一般中学は【パンチュー】って略すらしい。なんか卑猥な感じがするな・・・

 

  

一般中(パンチュー)が卑猥なのはともかく、だ。この俺がド素人のガキ、あるいは素人に毛が生えた程度のガキに劣るとは思っちゃいねぇ、いねぇが・・・

綴曰く武偵高の2年に狙撃科所属のSランクの奴がいるらしい。

 

そいつは、入試は勿論Sランクで合格。

狙撃科の入試も俺が受ける射撃適性試験とは内容は違うが、試験は全てパーフェクトだったそうだ。

 

Sランク武偵は数える程しかいないそうだが、前述した狙撃科の奴同様にぶっ飛んだ奴らしいな・・・

 

武偵を舐めてた訳じゃねぇが・・・そんな奴がいるって事だけは覚えておく必要がありそうだ。

 

なんて事を考えながら歩いていると、狙撃科の射撃場とやらが見えてきた。

 

 

 

~~~~~~~~~~射撃場~~~~~~~~~

 

「お前が垣根帝督っちゅー奴やな」

 

射撃場に入るや否や20代前半かそこらのポニーテールの大女が声を掛けてくる。

顔立ちから察するに中国系の奴だろうか?

 

「いかにも、俺が垣根帝督っちゅー奴だが?」

 

 

「おまっ・・・ムカつく奴やな・・・まぁええ。ウチは蘭豹(らんぴょう)、試験を見るよう言われとる」

 

 

「そうか」

 

 

「綴センセから聞いたけど、『死ぬ予定はないし、誰も俺を殺せねぇ』って大事宣ったらしいな?」

 

 

「言ったような気がするが・・・」

 

 

別段意識して言った覚えはないので、そんな返答になってしまう。

 

「そんな大事宣うっちゅー事は、それなりの自信があるんかあるいは口先だけのアホか・・・あんたがどっちか見極めたる!」

 

 

それなりの自信か口先だけのアホ、ねぇ・・・

『健闘を祈る』なんてヌカした綴にしても目の前のこいつにしても・・・俺が誰だと思ってやがるんだ?

 

いや、仕方ねぇか・・・

綴や蘭豹の認識にある垣根帝督って人間は、学園都市で第二位に君臨した垣根帝督じゃねぇんだ・・・仕方ねぇと言えば仕方ねぇ。

 

だが、そう思われるのは癪だ。

 

 

 

 

だから・・・てめぇ等に見せてやるよ、垣根帝督って人間をよ!

 

 

「出来ねぇ法螺は吹かねぇぞ、俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、蘭豹は射撃レーンまで俺を連れていき銃を手渡してきた。

 

 

「試験始めるけど、一つ確認。銃火器の扱いは?」

 

 

 

「・・・嗜む程度にはあるな」

 

 

「あるんやったらええ。ほな始めるで!」

 

こうして、第一の適性試験が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

試験はつつがなく進んでいく。

垣根は正確な射撃でポイントを積み重ねていく。    

 

  

 

 

   

 

  

 

 

 

 

 

蘭豹は思う。

垣根帝督という少年は妙な奴だ、と。

 

構え方も使い慣れた人間のソレだ。

個人的には残念ではあるが、今年の新入生の中には9mm弾の反動で手ブレを起こす奴もいる。

だが、垣根は手ブレを起こす様子もない。

 

的に対して外す事なく撃ち抜いている。狙い所が難しい高得点ばかりとは流石にいかないが・・・

 

確かに上出来だ。

現時点でのスコアだけ見れば今年の新入生とは比べものにならない程だ。だが、あくまでそれだけだ。

 

この程度で『誰も俺を殺せねぇ』等豪語出来るだろうか?否、出来ない。していい筈がない。

武偵は・・・ひいては強襲科は常に死と隣合わせだ。

強襲科は明日無き科という二つ名の通り毎年死者が数名は出る武偵の中でも死亡率は高い。

 

 

この程度で、そんな危険な世界を歩もうとしているのに、誰も自分を殺せないなんて大それた事は普通は言えない。言わない。言わせない。

だが、垣根はそれを平然と宣ったという。          

 

こいつは口先だけのバカなのか?

 

いや、だがそれにしては・・・

 

『出来ねぇ法螺は吹かねぇぞ』

 

そう言った時の奴の目には絶対的な自信が見えた。

 

つまりは、奴には絶対的な自信を持たせる何かがある、という事だ。

 

綴センセの話では、昨日目が覚め武偵の存在を知ったのも昨日らしい。

その少年が、翌日である今日に武偵になるための試験を受けに来ている。

 

中々興味深い。

面白い奴だ・・・タメ口を使って来る辺りはムカつくが・・・

 

見定めてみよう、垣根帝督という男を・・・

 

蘭豹はそう思った。 

 

 

 

10分が経ち、射撃適性試験は終わった。 

 

  

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   射撃適性試験の結果   

 

   受験生 垣根帝督    

 

   スコア 620/700

 

   ランク   A

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ランクA。

まぁ、こんなもんだろ・・・

撃つ機会が増えればもう少しスコアは伸びるんだろうが・・・伸びても俺の見立てじゃ650が限度って所だろ。

パーフェクトスコアを出した狙撃科のSランクの奴は色々とぶっ飛んでんな、オイ

 

 

「まぁ、射撃適性はまずまず言うところやな。ほな、次は強襲科入試の醍醐味・・・実践形式の試験や!」

 

蘭豹の奴はそう言うと、ついて来いと言わんばかりに俺の腕を掴み外へと促す。

 

試験会場とやらに向かうのは良い。ただし、腕は掴むな・・・あと力入れすぎな、痛ぇよ。マジで痛ぇ・・・

 

 

 

 

射撃場で10分間も撃ちつづけていたせいか、やや硝煙臭くなった身体で試験会場である廃墟に向かっている最中、蘭豹から聞いた話。

 

昨年の強襲科志望者を対象とした入試をSランクで合格した奴が出たらしい。なんでもそいつは今探偵科に転科したらしく、Eランクらしい。【遠山】って奴だそうだが・・・遠山ってどこかで聞いた事あんな・・・どこで聞いた?色々あって忘れてんのか?

 

流石にSランクになった時の試験内容までは蘭豹も言いはしなかったが、おかしな話だ。SからEなんざ、都落ちもいいところだ。まぐれでSランクになれるとも思えねぇ・・・まぁ、この件は少し気になるが・・・武偵高に入った後、遠山って奴に直接聞きゃ済む話だしな。

 

そんな事を考えつつ蘭豹から情報収集しつつ歩いていると、試験会場であるという廃墟にたどり着いた。                         

 

「ほな、垣根。もうすぐ第二の試験始めるで!」

 

 

「うぃ」

 

 

「第二の試験は試験概要記載の通りや。既に犯罪者役の生徒は待機済み。垣根が突入した時点で試験はスタートや」

 

 

余談だが、綴は今年の入試と変わらないみたいな事言っていたが来る最中蘭豹に確認してみるとそうでもなかった。この廃墟を使用した点は同じだが、内容は少し違った。今年の入試では強襲科志望者10名が互いに捕縛しあうってものだったらしい。

綴・・・あいつアテになんのか?

 

蘭豹は強襲科の実技試験から良い感じのものをチョイスしたとか言ったが・・・まぁ、気にしても仕方ねぇが・・・本当大丈夫か?武偵高

 

 

蘭豹はそう言うと、記載されていた武装品を手渡してくる。

一応、素直に受け取り装着してみる。

 

 

「試験や思って舐めるなよ?犯罪者役の生徒は新入生がほとんどといえど、Aランク7名。Bランク3名や。特例やから難易度上げといたで!あと、お前にムカついたからな」

 

「ムカつくも何も初対面だろ・・・」

 

っつーか、試験概要の紙貰った時は対面すらしてねぇぞ?会ってもねぇ奴にムカつくのか?

 

 

「『死ぬ予定はねぇし、誰も俺を殺せねぇよ』の件があってイラッてきてな・・・出来心でやったんやけど、反省はせぇへん」

 

キリッとした顔で俺が言ったという台詞を吐く蘭豹。

だが、蘭豹・・・俺はそんなお前にイラッてきてる訳だが?

 

 

 

 

「反省はしろよ・・・せめて『反省してまーす』とでもいいから言えよ」

 

どうでもいいが、この防弾制服・・・似合わねぇな、俺に。

なんつーか、キャラにあってねぇっていうかアレだな

 

 

「ほな、もうすぐ始めるけど・・準備はええか?」

 

準備は十分出来ている。

出来ているが・・・

 

 

「一つ確認したい事がある」

 

 

 

「なんや?」

 

 

俺が確認したい事、それは・・・

 

 

「この試験では、"何をしてもいい"んだな?」

 

 

 

 

「"何を"がどこまでを指しているんかは分からんけど、不殺を守ればええ。己の出せる力全てが試される試験やからな」

 

 

 

「オーケー、それが聞ければ十分だ」

 

 

 

「ん?」

 

 

蘭豹はそう呟いた俺を見て何やらキョトンと首を傾げているが・・・正直似合わねぇから止めとけ。切実にだ。

 

『己の出せる力全てが試される』

それが聞ければ十分だ。

 

 

 

 

 

 

間もなくして、俺は試験会場・・・廃墟に突入。

 

こうして、運命の第二試験が幕を開ける。

 

 

綴、蘭豹・・・お前等に見せてやるよ、俺を・・・本当の垣根帝督をな!

 

続く




前回の後書きで六弾で1章終了って言っておきながら・・・次話に持ち越しました・・・

戦闘描写やらなんやらの兼ね合いで六弾に入れてしまうのは・・・長過ぎると判断し、次話に持ち越しました・・・

次回で1章は終わらせ、次々話で2章に突入します!

というか、未だにヒロイン成分が皆無なのは少し問題があるかもしれませんね・・・


キンジやアリアが出るまでもうしばらくお付き合い下さい

では、次話で!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。