とある武偵の未元物質   作:victory

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第四弾 新たな武偵 上編

 

「あんたが今打てる唯一の手、最善の手は・・・武偵になる事」

 

 

「は?」

 

 

このアマ・・・何言ってやがる・・・? 

 

 

「は?って聞いてなかったのか?」

 

 

「いや、聞いちゃいたが・・・」

 

 

「今の垣根に出来る事は限られている。元いた場所、つまりは学園都市とやらに戻る為の手掛かりや元凶を掴もうにも出来る事に限りがあるからね・・・。けど、武偵になれば・・・権限や活動範囲は劇的に増える。希薄な可能性を少しでも高める事が出来る」

 

 

 

 

綴の言っている事は最もだ。

見知らぬ土地や見知らぬ人間・・・見知らぬ世界にいると言っても過言ではない、今の俺が出来る事なんざ限られている。元凶や手掛かりを掴もうにもその可能性はかなり希薄だ。

だが、武偵になれば手段や可能性は増える。

この世界では、武偵になる事で活動範囲も出来る事も劇的に増えるらしいからな・・・

 

 

 

「まぁ、このまま特に策もなく一人で可能性が少ない道を選ぶか・・・武偵となって少しでも可能性の高い道を選ぶかは・・・あんた次第だよ、垣根」

 

 

 

 

学園都市では暗部組織【スクール】のリーダーとして、【統括理事会】や他の上層部の連中からの指令を受け、学園都市の【不要な人間(屑やゴミ)】を始末する悪党だった俺が、それしか手段がねぇとは言え正義の味方ともいえる武偵になるなんてのは奇っ怪な話だ。

 

 

 

だが・・・

 

 

「確認したい事がある」

 

 

「なに?」

 

 

「武偵ってのはすぐになれるもんなのか?」

 

 

「資格を取得すればなれるさ」

 

 

「そうか」

 

 

 

 

学園都市での俺を知る人間が、今の俺を見たら笑うだろうな・・・くそったれの悪党、外道の俺が・・・正義の味方、それが最善とはいえ、武偵への道を提示されてんだ・・・自分でも可笑しい位くらいだ。

 

 

 

 

だが・・・

 

 

「武偵高には入る必要はあるけどね」

 

 

 

正義の味方、武偵なんてのは柄にあっちゃいねぇ・・・悪党の俺には不相応だ・・・

 

 

だが・・・

 

 

「専攻する科によって危険も高くなるけど・・・あんたがここに来てしまった手掛かりを見つけられる可能性はその分高くなる」

 

 

 

学園都市からこの学園島に飛ばされる形で今の俺がいる。

なら、少なくとも元凶はこの世界にいる筈、あるいはある筈だ。

 

 

なら・・・

 

 

 

「資格?取ってやろうじゃねぇか!武偵高?入ってやろうじゃねぇか!危険?上等じゃねぇか!」

 

 

 

柄じゃねぇ、可笑しいだろ?なんて感情は捨て置く。

 

今の俺を見て笑う奴は笑わせておけばいい・・・愉快な死体(オブジェ)に変えてやるがな。

 

 

危険?くだらねぇな・・・

この俺を誰だと思ってやがる?

 

 

 

垣根帝督だぞ!

 

 

 

 

 

 

 

「なってやろうじゃねぇか!武偵とやらに!手掛かりを掴むまではな」

 

 

「なってやろう、とは随分上から来たのは気になるけど・・・まぁ、いいさ。覚悟は決まったみたいだね」

 

 

綴は呆れたような少し表情になってはいたが、小さな笑みを浮かべると、綴は紙きれと何やら資料を手渡してきた。

 

【東京武偵高】とやらの資料であり、紙きれには綴の連絡先が書かれている。

 

 

「近いうちに、ここに来なよ。例外的、特例で編入試験を設けるから受けに来い。特例だからチャンスは一度きりだけどね。落ちたら落ちたで、あんたはそれまでだったって事だ。」

 

 

 

「そうか・・・近いうちに、な。あと、落ちるとは思ってねぇから心配するな」                                                            

 

 

言うと綴は苦笑いした後何故か怪訝そうな目で俺を見てくるが気にしない事にした。

 

 

「っつーか・・・自分で言うのはなんだが、俺は怪しい奴だぞ? そいつにここまでする、無用心にも連絡先まで教える理由はなんだ?」

 

 

武偵高の資料や綴の連絡先が書かれた紙に目を通しながら綴に聞いてみた。

 

 

正直、理解出来ねぇ・・・

 

綴の提案は確かに俺が取れる選択肢の中で最善の手で、それで俺も綴の提案に乗る事は決めた。

その事自体はありがてぇが、例外的措置を設けようとしたり連絡先まで教える必要はないと思う。

ましてや他人から見たら俺はこの世界じゃ存在しない土地から来たとかなんとか宣っている痛々しい奴だろう。別に俺は痛々しい訳じゃねぇがな・・・

そんな痛々しい奴に最善の案を提示するなんて普通しねぇだろ・・・

 

俺が綴の立場なら武偵殺しとやらに関与してない時点で用済みだ。

そいつがどういう状況におかれていようが関係ねぇ。

聞きたい情報だけ聞き出したらそこで終わりだ。

そいつその後、どうなろうが関係ねぇし、興味もねぇからな・・・

 

だが、綴は俺を見捨てる事をせずに特例の措置まで行うときた。

そこまでする理由が俺には分からねぇ・・・

 

 

「武偵憲章第6条」

 

 

俺の問いに対してそう綴は答えた。

 

 

「は?」

 

聞き覚えのない言葉が耳に入り思わず

間抜けな声を出してしまった。

憲章っつーからには、武偵の取り決めか何かか。                         

 

「武偵憲章第6条・・・『自ら考え自ら行動せよ』

それに則っただけだよ。私は私がそうした方が良いと思ったからそうした。垣根みたいな怪しい奴は近くに置いておいた方が野放しにするよりも良いと思ったからね。ある種の監視の意味合いが強いな。それと私も武偵である前に一人の人間だ。垣根の状況を知り手を貸したい、と思っただけさ。あとは・・・単純に垣根に興味が沸いたってのもあるね」

 

 

 

なるほどな、怪しい奴、危ない奴は放置するよりもある程度の監視下あるいは管理下ね置く方が良い・・野放しにするよりもリスクはその方が低いからな。何かあればすぐに対応出来る点大きいしな。

 

綴、ヌボっとした顔の割にゃ中々考えてるじゃねぇか・・・だが、単純な善意だけでない分好感が持てる。

 

 

 

最も、大人しく管理されてやるつもりはねぇがな・・・ 

 

「さっきも言ったけど資格が取れなけばそれまでだけどね・・・さて、そろそろ私は帰るぞ」

 

 

綴はそう言うと椅子から立ち上がり扉に向かって歩き始める。

 

 

扉に差しかかった辺りで綴はこちらに振り返ると、

 

 

 

「武偵高で待ってるぞ。そして、健闘を祈る」

 

 

そう言い残し、綴は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綴が去り、5日ぶりに目が覚めたとやらで検査だのなんだの夕食だのを済ませた俺は今、武偵高の資料に再び目を通している。

 

どうやら武偵高の生徒は、一定の訓練期間の後いきなり依頼を受ける事が出来るそうだ。それら依頼と試験の結果に基づいて生徒にA~Eの『ランク』付けが行われるらしい。また、Aランクの更に上、Sランクもあるらしいが・・・ランクがどうこうってのは学園都市のシステムとあまり変わりはしねぇな。

 

ちなみに学園都市でも学生は6段階でランク付けされる。

lv0(無能力者)から始まり、lv1(低能力者)lv2(異能力者)lv3(強能力者)lv4(大能力者)そして、頂点であり230万の学生で7人しかいないlv5(超能力者)。俺もlv5の第二位だ。

 

ランクは高ければ高い程活動範囲も広くなり依頼内容も変化するようだ。

 

学科も色々あるみてぇだな。 

 

強襲学部(アサルト)ー強襲科】:近接戦による強襲逮捕を習得する学科。日常的に激しい戦闘訓練があるらしい。

 

 

 

探偵学部(インケスタ)ー探偵科】:探偵術と推理学による調査・分析を習得する学科。外部からの依頼もあるみてぇだ。

 

 

 

研究部(リサーチ)

超能力操作研究科】(SSR)】:超能力・超心理学による犯罪操作研究を行う学科。サイコメトリーやダウジング等の超能力者操作がメインの学科。

 

 

 

 

 

とりあえず目を引いたのはその3学科だけだな。

他にも学部や学科は【強襲学部ー狙撃科(スナイプ)】やら【諜報学部(レザド)尋問科(ダキュラ)】やら他にもあったがさして興味はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が目指すべきランクは決まった。専攻する学科も決まった。

特例の試験がどんな内容なのかは分からねぇが、俺は武偵にならなきゃならねぇ・・・

 

そう思いつつ、俺は眠りについた。

 

 

続く


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