【主人公】戦場起動【喋らない】   作:アルファるふぁ/保利滝良

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何故だか更新がすごく久しぶりな気がする
設定資料集も終わったので、本編が再開しますよー



第弐章 広き大地を踏み締めろ
【新流】


 

砂漠の荒野、水の一滴もない乾いた大地 そこに、金属製の巨像が向き合っていた

その巨像の名前はHMMAS 強大な戦闘能力を持った、人型機動兵器である

その場にいたHMMASは三機 二機のコンビと、単機だ

二機のHMMASが同じ方向を向く 彼らの機体は同一の物だったが細部が違った

スターライトと呼ばれるそのHMMAS 肩はそれぞれ07と08の数字が描かれていた

07のスターライトは頭部に格張ったバンダナのような機械を装着していた その真ん中には、カメラのレンズが嵌め込まれてある

その機体には、銃身の長いスナイパーライフルが握られていた 腰には銃身の短いハンドガンがあった

08のスターライトには、脚部がやや膨らんでいた その外側にノズルがある 機動力を補助する追加スラスターだ

その機体には、右手に太い銃身を持つをした武器、ショットガンがあった 左手の下腕から手の甲にかけて大きな板が、先端に杭の付いたシールドがあった

彼ら二人が向く先に、スターライトとは違う別の形状のHMMASがいた

所々スターライトと似通った部分が確認できる

だが、背部に付けられた四つのブースターユニットや脚部のミサイルポッドは、スターライトには無いものだ

武器は両手に同タイプのライフル だが弾倉の形状が左右で違う これはスターライトも装備できる武器でもある

その機体の名前はバージニア 新型の試作HMMASである

この機体はスターライトを基にして開発された

だがこの二機は、それぞれ相対していた

お互いへ銃口を向け合っていたのだ

砂漠の荒野に戦闘前の緊張が生まれる

バージニアが腰を落とした 07がスコープを向けた 08がシールドを前に突き出した

それが合図となった

サイトに入ったバージニアに向かって伸ばした銃口から、一発の弾丸が飛んでいく だがスナイパーライフルの弾は四つ羽根に当たらず

真上へ回避した機体に向かって、ショットガンが吠える 強烈な散弾を、バージニアは上体を逸らして避けた

弾のいくつかが空気ごと装甲の表面を切り裂くが、戦闘に支障が出るダメージではない

バージニアの背中のブースターが、全て同じ方向を向いた 推進力が一方向に纏められ、青い炎が一際大きくなった

加速

風を引き裂いて飛ぶ機体 そこから撃たれる四つの影 噴煙を吐きながら迫り来る、ミサイル

二機のスターライトはブースターを起動し、左右に別れる

ある程度二機を追ったミサイルは、やがて力尽きるように墜落した 地面に突き刺さり、爆発する

顔を上に向け、08はショットガンを一発、二発と続けざまに放った

揺れるように左右へ動きながら、バージニアはことごとく避ける

そしてまたも急加速 07へ飛び込んでいく

スナイパーライフルの照準内に敵はいた 引き金を引かれると共に飛んでいく鉄鋼の流れ星

バージニアは左へかわす 肩部装甲にかするが、ダメージには至らない

今度は両手のライフルを乱射する

07はスナイプに集中していた 避けられなかった

しかし、相対する両機の間に、08のスターライトが滑り込んだ 07を庇うと同時に、左腕を掲げる

そこには、シールド

弾丸が刺さると同時に表面が爆ぜる

被弾した弾は爆発する性質を持っていた 大きく窪んだ装甲が、真っ黒に焦げている

それを08自身が確認する間もなく、弾丸がスターライトの左肩を貫いた 貫通力に優れた別の弾種だ バージニアのライフルは両手で別々の弾丸を使用しているのだ

いずれにせよ被弾すれば同じだ

肩を砕かれた衝撃で後ろに倒れ込む08の機体 無様に転がるその後ろから、07が照準を終わらせる

トリガーがまた引かれた 高速で飛んでいく弾は、今度こそバージニアに命中した

ただし、肩からはみ出したブースターへ

ギリギリ避けたか、狙いが甘かったか、とにかく機体への直撃は避けられてしまった

再びスナイパーライフルを撃とうとするが、ミサイルが飛んでくる

起き上がった08と構えを解いた07は、すぐにその場から散開した 焔の華が先程まで二機がいた場所に咲き乱れる

爆発の光に照らされつつ、08がショットガンを撃った 散弾がバージニアの腹を叩く

しかし、有効打ではない ショットガンは遠距離では対したダメージにはならない

命中してよろめいたところへスナイパーライフルの弾が飛んでいくが、ブースターを左右に振り回した強引な機動で回避された

その進路は、08のスターライトの真横にとられていた

すれ違い様、バージニアが腕を伸ばしてライフルを向けた 08がシールドを構えた 音速を越えて迫り来る一発の弾丸

落ちていくシールドの破片の中に、パイルバンカーの杭が混じっていた

投げ捨てるようにシールドの残りの部分をパージすると、08はブースターでバージニアを追い始めた 背部と脚部から、機体を浮かすための推進力が吹かされる

スナイパーライフルがもう一度撃たれる

正面からの攻撃を左にずれて避け、バージニアは振り向いた 08が背後から追ってきている

だがスターライトよりもバージニアの方がスピードが高い 08は当然追いきれずにどんどん離されていくわけだが、真後ろをとったのは大きかった

正面には07、背後には08 バージニアは二機に挟まれた形になったのだ

07のスターライトがスコープを向けた 08のスターライトがショットガンのマガジンを取り替える

二機がほぼ同時に武器を構えた

バージニアは横へ移動すればこの状況を一瞬に打開できる だが、07による攻撃の命中で、ブースターが異常を来していた

ショットガンとスナイパーライフルが、同時に火を吹いた

だがバージニアは背中のブースターをあっさりとパージした

流れるように真後ろへ飛んでいくブースターユニットに、ショットガンが阻まれる 粉々になったブースターが直撃し、08が墜落した

そして軽くなったバージニアは、本体の方に付いていたスラスターを起動した 真横へ滑るように移動し、弾丸を回避する

武器の向きを動かしながら07はもう一度引き金を絞る だが、弾は出ない

弾切れだ

ブースターユニットを払い除けながら立ち上がる08 リロードを行おうと立ち止まる07

両機の間に滑り込むバージニア

片手をそれぞれのスターライトに向けていた

そしてそこに握られているのは、ライフル

二機のHMMASはコクピットを撃ち抜かれ、あっさりと沈黙した

 

 

 

 

 

 

「あーっ!負けちゃったぁ・・・」

HMMASのコクピットを模した機械から這いずり出ながら、一人の女が呟いた 可憐な声に似合うはつらつとした顔立ちに、悔しそうな表情が浮かぶ

「パイロットの腕も機体の性能も、負けてたもんなぁ」

同じくその隣の機械から出てきた茶髪の男が、その言葉に返事をした 彼からは悔恨よりも、やはりかといった心情が伺えた

「ご苦労だった、シェリー曹長、エリック曹長 とても白熱したいいシュミレーションだった とてもいいデータがとれたよ」

「ありがとうございます、ラークロスタ大尉」

「これからも精進します」

二人の目の前に、長髪の麗しい女性がいた さらりと黒髪をなびかせながら、彼女は二人を労った

「シュミレーターとはいえ、あそこまでの動きはなかなかできない これなら実戦でもなんとかなるだろう」

義手に持ったファイルにペンを走らせて、サクラ・ラークロスタはシェリーとエリックを見た

「と、言いたいところだが・・・二人とも凡ミスがあるな それを速やかに克服すれば、ヤツだとて敵わないさ」

口元を緩く綻ばせて、サクラは二人のシュミレーター機器のさらに横へ視線を走らせた

そこにはもう一機のシュミレーターがあった ゆっくりと出入り口が開くと、中から一人のパイロットが外へ出てきた

ヘルメット、アーマー付きの全身スーツ、ポーチ付きのジャケットとコンバットブーツ シュミレーターでもフル装備なパイロットスーツを着込んだ、この部隊の最年長隊員だ

ヘルメットの左右に刻まれた竜のエンブレムが、照明灯を鈍く照らす

「少尉、ご苦労だった 後で実物を触っておけ」

その姿にそう呼び掛けつつ、サクラはシュミレーター室のドアへ歩いていった

「三人とも疲れたろうが、後で話がある 二時間後に第三会議室へ集合してくれ」

振り向いてそう言い、サクラはそのまま出ていった

パイロット三人とシュミレーターがその場に残された いや、正確にはシュミレーターの結果を記録する端末も一緒のあったのだが

「やっぱり、実戦はこれよりキツいのかぁ」

シュミレーターの外側の出っ張りに寄り掛かりながら、シェリーはボソリと言った その目には僅かな緊張と、僅かな自信の喪失が伺えた

目標の高さに、恐れをなしていた

「経験者が言葉と戦法でガッチリ伝えてきたろ?でも、先輩達を見習えば・・・」

エリックがそうシェリーを励ますと、彼女の赤毛が激しく揺れた

「あのねぇ!先輩達を見習うとかそんな悠長なこと言ってられないの!今すぐにでも一人前にならないと、戦場じゃあっという間に死んじゃうんだから!」

天井を見ていたシェリーは、首を回してエリックに向き、まくし立てた 驚いた拍子に、エリックがのけぞる

「ご、ごめん」

「ほんとにー?まったく・・・」

それを尻目に、パイロットスーツがのそのそとシュミレーター室から去ろうとしていた

彼はシュミレーターの初期設定を既に終わらせていた

「あ、私達も行かなくちゃ」

「集合場所は第三会議室だったよな・・・」

シュミレーターのデータをデフォルトにしてから、新人二人組もその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

司令官室 角張った事務的なフォントでそう書かれたプレートを見ると、サクラはそこへ近付いた

木製、を意識した模様のプラスチックのドアにノックを二回すると、とても基地の司令官とは思えぬような可愛らしい声が聞こえた

「入っていいわ」

その声を聞いてから、サクラはドアノブに手を伸ばした

金具が擦れる音を聞きながら、部屋に入る

「失礼します」

「来たわね では、ドラグ分隊改めドラグ小隊のルーキーの様子を聞かせて貰おうかしら」

巨大な机に両肘を突きながら、その女性はサクラに笑いかけた 金色の髪に覆われた幼い顔だちと軍服に包まれた幼い体つきは、女性というより少女といえるかもしれない だが、この女性が、サクラ達ドラグ小隊の所属する基地の司令官なのだ

名を、エリス・スカーレット・バレンタイン ユーロユニオン所属の、准将の階級を持つれっきとした軍人だ

「了解しましたバレンタイン司令 シュミレーターでの結果を・・・」

とてもその容姿からは想像できないが、彼女の年齢はきちんと軍に服務できるくらいなのだという

そんなことを確認しなくても、バレンタインから滲み出す威圧感と蒼い眼から放たれる冷徹な視線は、相対する者の心臓を竦み上がらせるくらいなのだが

 

 

 

 

 

 

ユーロユニオンと米露連合の戦争は苛烈を極めた 新兵器HMMASの強化合戦が、世界中で行われた より強い兵器をより多く生産しなければ、相手に敗北するからだ

条約と環境問題で核兵器が禁止された鉄人戦争では、人型機動兵器HMMASが戦争の命運を分けると言っても良い 戦車の四倍の戦略価値を持つこの兵器が、地上戦を制するのだ

そしてその強力な兵器HMMASに乗る部隊の一つに、ドラグ分隊があった

彼らはフランスに派遣された大規模部隊の一部だった だが親部隊ともども基地襲撃において壊滅した

再編されたときには戦闘可能な隊員は一人だけであった ドラグ分隊は新米二人を加入し、ドラグ小隊として独立、復活することになる

そしてドラグ小隊は、新型HMMASの開発合戦に巻き込まれる 彼らは新型の実戦テストをしつつ、世界中の味方を助けるために東奔西走する体のいい捨てゴマにされたのだ

だがドラグ分隊がドラグ小隊として再編されたのは、ひとえにバレンタイン司令の尽力によるところが大きい 彼女が手を回したお陰で、ドラグは復活をしたのだ そしてドラグ小隊の指揮権はバレンタインにある 彼女の態度一つが、サクラの明日を左右する

新型機と新兵を回されたのは、とても頼もしいことだろう だが、裏では、ドラグ小隊は今にも倒れかけているのだ

 

 

 

 

 

 

「・・・以上です」

ノートにまとめた新人隊員の情報を伝え終える

「そう、悪くはないわね」

「私が選び出しましたから」

「あなたにはこれからも期待させてもらうわ」

「微力を尽くします」

軽いやり取りの後、サクラはそそくさと司令官室を出ようとした

「それでは、失礼します」

サクラは敬礼をして、ドアに向かった

バレンタインの傍から一刻も早く逃げたいという気持ちが少なからずあった

「大尉、少し待ちなさい 用事はまだ終わっていないわ」

だが、当のバレンタインはそれを引き止めた

「ドラグ小隊最初の戦場が決まったわ」

まさか、このタイミングでそれを言うとは まだ新人の様子を見ている段階だというのに

だが逆らえない 部隊を存続させるためには、この女の言葉に耳を傾けねばならない

そうと知っておきながら、エリス・バレンタインはゆっくりと言葉を紡いだ

部下を送り込む死地を

「貴方達には、ロシアに向かってもらうわ」

 





前作と違って人が来ないな・・・
やはり戦場駆動の続編だと大々的に宣伝してないからですかね?
それともマジでつまんないのか
弱ったな~

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