【主人公】戦場起動【喋らない】   作:アルファるふぁ/保利滝良

1 / 19

注意!
この作品は、 【主人公】戦場駆動【喋らない】の続編にあたる作品です
強制はしませんが、お先にそちらから閲覧することをお勧めします
そして本作は、比較的戦場駆動より地味かと思われます そこにも注意
それでは、どうぞ




第壱章 血の川を渡る者達へ
【初陣】


 

その中に、一人の男がいた

薄暗く、兵器然とした無骨なコクピット モニタとスイッチだらけの小さな一室

その中に、一人の男がいた

彼は今から戦争のために進む 殺し合いのために、その引き金を絞るために

「ドラグ6、緊張しているのか?」

通信機から燐とした女性の声が響く 今このコクピットに収まっている彼は、この女性の部下だ

その女性の名前は、サクラ・ラークロスタ

ユーロユニオン軍の一部隊、『ドラグ分隊』の隊長であり、同部隊の指揮官でもある

通信機越しではわかり得ないが、その容姿はとても軍人とは思えないほど洗練されている

「あまり肩肘張ると、思考まで凝り固まってしまう 深呼吸して落ち着いておけ」

そう言って、さっさとラークロスタは通信を切った

ドラグ6と呼ばれた新人隊員は、機体の状態を確認する

エンジン、駆動系、システム、装甲、武器 全て異常はない

彼の乗機スターライトは、灰色の人型機動兵器である ユーロユニオンが共有する生産ラインから生まれた汎用量産機体である 一昔前にオーストラリア争乱で用いられていた『傭兵と呼ばれた者』の機体達とは性能的に月とすっぽんだが、それでも戦車を秒殺する性能を秘めているのだ 無論MBTがロートル扱いされ始めているのは言うまでもない

ドラグ6のスターライトは、片手には太いライフルを持ち、左手にもライフルを握る

カメラアイに光が点り、機体の稼働率が一気にはね上がる 火が入ったのだ

再びラークロスタの声が通信機越しにドラグ6に届く

「ドラグ1から各機へ 作戦の再確認を行う」

同じ輸送機に詰まった、合計六機のスターライトが、戦いの準備を進めていた

後衛機のドラグ2とドラグ5は、武器のチェックを 前衛機のドラグ3とドラグ4は、機体の動作性の確認を 中衛機のドラグ1とドラグ6は、その双方を

「進行中の敵地上輸送部隊を襲撃、これを殲滅する 敵戦力は戦車十二両と輸送車がいくつかのようだ」

ドラグ1、ラークロスタが続ける 隊全体で情報を再確認し、作戦の概要を簡潔に述べる

「取り巻きの輸送車両は後回しだ 敵戦車は十二両、一人あたり最低二両仕留めろ なに、我々は人型機動兵器乗りだ 油断と緊張をしなければ、負ける道理は絶対にない!」

空輸は終わった

輸送機の速度が一気に落ちる ハッチが開き、外の空気が雪崩れ込んできた

「ミッションスタート!」

ラークロスタが声を張り上げる

六機の人型機動兵器が、輸送機から飛び下り大地へと降りていった 高速で迫り来る母なる地を、その目に焼き付ける

空へ兵士を降ろした輸送機は、あっという間に戦場から離脱した

土埃と砂煙を着地の瞬間巻き上げて、ドラグ分隊は敵の目前に降り立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず動いたのは前衛機二機だった

ドラグ3がショットガンを向ける 散弾は数発地面に当たり、土を巻き上げた

戦車に当たった方は、その上部装甲を抜いていた

蜂の巣になった戦車 戦闘不能なのは言うまでもない

完全に不意打ちを食らって慌てる敵部隊 しかしこれは戦争なのである

「ドラグ3、一両やった!」

容赦をする必要など、ない

「ドラグ4、攻撃開始・・・ッ!」

ドラグ4のスターライトが、両手のサブマシンガンを撃ちまくる 排莢と弾の出る音が、壮絶なハーモニーを奏でていた

反撃の体勢をとっていた一台が、瞬く間に鉄屑となる

ドラグ4の機体が、片手をずらした その銃口は別のに向けられていた

連続マズルフラッシュ 弾丸が連射された

被弾の衝撃で吹っ飛ばされながら、戦車の一台はその動きを止めた

続いて後衛のドラグ2が長い棒を抱えた

スコープから伸びるコードを頭に接続、鈍い金属音を鳴らしてスナイパーライフルとスターライトが一つとなる

「ドラグ2、目標確認」

引き金と共に、高速の弾が飛び出す 空気を切り裂き、敵を切り裂き、貫通した先の大地も切り裂く

戦車がまたもや、その動きを止めた

「へっ!ドラグ5、ターゲットロック完了!」

ドラグ5のスターライトが、足を開いてその場に止まる そのカメラアイが、装甲の車を見据えた

肩のコンテナから、勢い良くミサイルが飛び出した

二つのそれは、反撃できずにただあたふたとしている戦車乗りを焼き焦がした 無論、その車体も含めて

平原に火柱二つ ドラグ5が二台やった

ドラグ1、ラークロスタが機体の操縦捍を動かす 鉄の巨人の筋肉が収縮し、主の命令を忠実にこなす

それすなわち敵の撃破

アサルトライフルの三点バースト 三発の弾丸は見事敵戦車を貫き、その装甲に穴を開けた

体ごと銃口の向きを変えれば、構えそのまま引き金を引く 木の棒で軽やかにドラムを叩いたかのような発射音と共に、再び三つの弾丸は敵を倒した

その頭上を、ドラグ6のスターライトが飛んでいった

ブースターの炎は、機体を一時的に飛行させた

空へ舞い上がった機体は、ブースターを消し、そして二丁の銃を一台ずつに向けていた

正確な狙いを付けたその弾

右手の側からは爆発が 左の側には綺麗な穴が

それはそれぞれ特性の違う銃だった 今の敵側にはそれは全くもって関係無いが

着地の瞬間輸送車両を踏み潰し、向けた銃のトリガーを絞る

二つの人差し指が少しうねった時、一発ずつの弾がとてつもない勢いで装甲車に突き刺さった

貫通した穴へ、爆発する弾が滑り込む

膨らみ過ぎたスチールの風船は、いとも容易く弾けとんだ

それが最後の一台だった

護衛されていた輸送車は動きを止め、運転士や中の歩兵は皆両手を天に上げて外へ身を晒した

「作戦終了」

サクラ・ラークロスタの一言

ドラグーン分隊全員の動きが止まる

ドラグ1機が銃を下へ提げた時、車のエンジンが近付いてきた

味方の部隊だった

「・・・後は彼らがやってくれる」

ドラグ1のスターライトがドラグ6の方を向いた

「ご苦労だった」

まるで先まで何もなかったかのように、ドラグ6の機体はひたすら静かに佇んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日より二年前、ユーロユニオンの一部の国は世界各国のいくつかの国へ宣戦布告をした 喧嘩を売られた国は反撃のために高機動多目的装甲システムと名を変えた人型機動兵器という強力な戦争の道具を沢山用意した

そして戦争を始めようとした国々は近くの国々へ救援を求めた しかし日本を始めとして輪の外にいた国々はそれを拒否した

かくして、鉄人戦争が幕を開いた

ロシアが

イタリアが

アメリカが

イギリスが

ドイツが

イタリアが

カナダが

ギリシアが

これから血液を垂れ流すことになるだろう

これは、一匹の邪竜の物語

大戦争の中で産声を上げた、一匹の火吹き竜の物語である

 






前作主人公と本作主人公は別人です
いかがでしょうか、今回は前作とは別なテイストにしてみました
しかし協力者がいないと次の話がかけない始末詳しくは私の活動報告にて
では、また次回へ・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。