東方白夜王   作:ザイソン

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空亡ルーミアの章 鬼の子、龍の子、蛇の子、太陽の子
行方不明


日本に不穏な噂が広まり始める。

常闇に呑まれる。妖怪を押し潰す闇の妖怪が現れたと。その名は空亡。謎に包まれた妖怪である。

 

既に犠牲者は多く出ていた。多くの妖怪、人間、弱い神。犠牲者である夜刀神と吉備津彦命はそこまで強い神霊という訳ではない。しかし妖怪程度なら簡単に蹴散らせる。

 

八岐大蛇もその犠牲者の一人であり、力を失っていた事もあり死んでしまった。ただし、この八岐大蛇は二代目八岐大蛇である。

 

初代八岐大蛇は須佐之男が倒したのだが、某龍玉のピ○コロ大魔王の様に己の生まれ変わりとして死に際に生み出したのが二代目八岐大蛇。

八岐大蛇は見た目は蛇だが龍の純血であり、単一生殖が可能だった。いわゆるクローンである。

 

そんな二代目八岐大蛇は初代八岐大蛇と比べて温厚できちんと神様してた。誰から神格貰ったか知らないけど。

 

それなりに強かった二代目八岐大蛇が殺られた事実は衝撃を生み、噂は悪鬼羅刹がひしめき人の出入りが少ない幻想郷にまで届いた。

 

とは言っても、幻想郷には恐ろしく強い駄神(白夜叉)がいるので人里では大して騒ぎにはならなかった。

 

騒ぎになったのは妖怪の山の方だ。いや、空亡は関係無いかもしれない。

 

空亡の噂が幻想郷に届いた翌日から支配者である伊吹弥彦が消えた。

 

誰も行き場所を知らず、四天王だけでなく妹である萃香ですら行き場所を知らない。

 

もう居なくなって一ヶ月になる。

 

そろそろ帰ってきて貰わないと困る。

 

「ぶっちゃけさ、宴の幹事がいないんだよ幹事が」

 

「おいおい」

 

博麗神社で萃香が白夜叉に相談していた。

 

「兄貴は死んでも死なないし、野垂死にとかまず考えられないからね」

 

確かに白夜叉のせいで霞んでいるが今の幻想郷では白夜叉に次いで強い。紫より強い。

萃香は信頼しているからこそ心配していなかった。

 

「・・・弥彦がいなくなったのは一ヶ月前、つまり空亡の噂がやってきた翌日だったの?」

 

「そうさ」

 

「だとすると・・・いや、まさか・・・」

 

空亡に喧嘩をふっかけに行った・・・?

いくら弥彦と言っても無茶だ。

 

「可能性はなくはないか・・・よし、私が迎えに行ってこよう」

 

白夜叉は、『ちょっと空亡ぶっ飛ばしてくる。暫くココを離れるからヨロシク』と書き置きして神社を飛び出した。

 

 

 

弥彦を見つけるなら空亡を見つけた方が早い。先に空亡をぶっ飛ばしておけば心配事はなくなる。探す過程で弥彦も見つかるかもしれない。

 

(だがいくら喧嘩好きと言っても無茶は分かっているはずだ・・・)

 

嫌な予感がしていた。何か原因があるのかと白夜叉は"伊吹弥彦"ではなく伝承上の"酒呑童子"についての記憶を頭の辞書(前世の記憶)から引っ張り出す。

 

源頼光達の鬼退治?それは現実(この世界)では酒呑童子の名を騙る偽物の話だった。

茨木童子(茨木華扇)と恋仲だった?弥彦が色恋沙汰に疎いのは鬼の中でも有名な話だ。そして奥手だ。

 

「いや待てよ、あいつ・・・」

 

白夜叉は酒呑童子の伝説を探る内にある決定的な事を思い出した。

 

「そうか・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

白夜叉は速度を上げて空亡と弥彦の足跡を探した。

 

村に入り込んで噂をさぐり、

妖怪を見つけては尋m、優しく聞き出し、

須佐之男達神々とも連絡を取った。

 

早くしなければ取り返しのつかないこととなる。

 

白夜叉は伊吹弥彦の正体に行き着いたのだ。

 

萃香とは実は血が繋がってない。

 

そしてそもそも、

 

本当の意味での鬼種の純血ではなかった。

鬼は嘘を嫌う。故に嘘をつかない。ジョークは言っても嘘はつかない。だが、弥彦は騙し続けていたのだ。誰にも打ち明けず、誰にも悟られず。家族である萃香にすら打ち明けてない。

 

「あいつ・・・死ぬ気か!!!!」

 

空亡は、正体不明の謎の多い妖怪だが須佐之男たち、神界とのやり取りで得た情報からある程度の予測がついていた。それが正しいならば、弥彦には勝てないのだ。

 

 

 

一方、とある暗闇の中。

一寸先も見えない暗闇の中、弥彦は感覚を増幅させ音と空気の感覚だけで先を進んでいた。あと第六感()。あと何かしらの術で超音波とか、熱探知とか。

 

弥彦は基本的に武器を使う事を好まない。徒手空拳での戦闘を重んじる。白夜叉も弥彦と戦う時はそうしている。

 

しかし今回は違う。金棒を用意していた。鬼に金棒の金棒である。トゲトゲしているあの。

 

闇の中を歩いて行くうちに、妖怪の死骸が並んでいるのが確認された。

 

「・・・見つけた」

 

弥彦はターゲットを見つけた。

 

ターゲットも弥彦に気づいた様で妖怪の返り血でベットリの顔を向ける。

ターゲット、空亡は金髪の女性の様な姿をしており服は黒く、ロングスカートをはいている。

 

「貴方、私を知覚できるのね。私はルーミア」

 

「ご丁寧にどうも。俺は伊吹弥彦」

 

「貴方は命知らずね。いえ、馬鹿かしら?此処に来ると言うことは自殺に乏しいのよ?」

 

「なんじゃそりゃ。ただの殺戮兵器か」

 

「うん」

 

否定しなかった。彼女、ルーミアは殺戮を楽しむ妖怪であった。

 

そしてルーミアは黒い大剣を出し弥彦を殺そうと構える。

 

「そうかよ・・・ならぶっ飛ばす!!!!」

 

弥彦は金棒を構えてルーミアに向かっていった。


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