開戦前夜
仏教において、殺しは罪である。当たり前だ。とはいっても、シヴァを仏門に帰依させるために一度殺して蘇らせるという方法を取っている。
神道では殺しについては特に決まり事とかは無いが死を嫌うためあまりよろしく無いことである。しかし神々が争うときに殺しは発生している。
つまり、殺しはいけない事だが時と場合によるという事が神道と仏門の見解である。自分の命を守る時、仲間を守る時に止むを得ず殺した場合は罰が軽くなる。
それは、キリスト教でもそうだ。
キリスト教では、『殺しはいけない。神の怒りに任せよ』とある。が、宗教戦争というものは確実に起きている。その時に神の怒りが降ってきてないところ神は認めているのかもしれない。
時は1549年。織田信長が天下布武を掲げて天下統一を目指している、戦国時代。
白夜叉を含む神道の神々は全員出雲大社に集合していた。
その数、およそ八百万柱。八百万の神とは決して比喩ではなかった。
天照が呼び出したのだがいつに無く深刻な様子で『武装して来なさい』と言ったのだ。
とゆうわけで白夜叉もロリバージョンから大人バージョンに戻って出雲大社に集合した。神社は今代の博麗継承者と白雪姫に任せてある。
いつも通り神奈子と建御雷神の喧嘩を経津主神と白夜叉は仲裁していると、三貴神が鎧と刀剣で武装して現れた。
天照が神々の前に出て、神妙な面持ちで口を開いた。
「時間が無いので短く言います。戦が始まります」
シーンと静まり返る神々。
「相手は・・・耶蘇教。つい先日、宣戦布告し、我々と同盟を組んでいるアイヌ神群が統治している地を占領しました」
耶蘇教とは、キリスト教が日本に伝来した時の呼称である。
※この章ではキリスト教、イスラム教、ユダヤ教は同じ神を信仰しているので色々混ざります。
「アイヌ神群は負けを承知で殿を務めて務めてくださいました・・・この恩は返さねばなりません」
アイヌ神群に戦に強い者は少ない。多くが生活補助や自然の神霊である。戦が強い者を挙げるならば、サマイクルカムイ(英雄神)、パヨカカムイ(疫病神)、ペケレチュプ(太陽神)、クンネチュプ(月神)、カンナカムイ(雷神)の五柱だろう。
そして神霊(アイヌではカムイ)の数も多いとは言えない。
ちなみに、アイヌ神群の方々は死んでいない。あぁよかった。
「アイヌ神群の方々のおかげで戦準備も短いながら出来ました」
「今からお前らを五つの連隊に編成する。つまり隊長を決めてきたからよろしく」
須佐之男と月夜見が紙を壁に貼る。
・本陣
総大将 天照大神
軍師 思兼神
・第一連隊
隊長兼参謀 白夜神魔王
副隊長 大山祇神
・第二連隊
隊長 経津主神
副隊長 建御雷神
・第三連隊
隊長 建御名方(神奈子)
副隊長 諏訪子
・第四連隊
隊長 須佐之男命
副隊長 月夜見尊
(さすがに建御雷神と神奈子は分けて編成されておるか・・・ん?何故私が参謀に?軍師と参謀ダブルでいるのは・・・)
白夜叉は疑問符をうかべた。まぁ白夜叉の知識をアテにしているのだが。
「まぁ・・・どうせ白夜王なら敵の情報の一つや二つ知っているだろうと思って私が推薦させて貰った」
白夜叉の後ろから声がかけられる。
黄緑色の髪を持ちまるでパソコンを擬人化したような神霊、思兼神である。
彼女は知識の神霊である。これまでにも様々な案で天照を助けてきた影の功労者である。
「思兼神よ、知らぬと言えば嘘になる・・・」
白夜叉は情報を神々に提供した。
先ず、相手のキリスト教には定義上、天使と呼ばれる
「相手の神はただ一人・・・全知全能の神にして唯一神、名前は・・・ヤハウェ(あるいはアッラー)」
「「「「ぜ、全知全能・・・!」」」」
全知全能の神。流石にインパクトが強すぎる。もし相手がそのままの意味で全知全能ならば・・・もうおしまいだ。
だが同じく全知全能の神とされるゼウスでさえ本当の意味での全知全能では無い。故にもしかしたら違うのかもしれない。
「・・・勝算は・・・?」
隣にいた諏訪子がビクビクしながら白夜叉に尋ねる。
「もし・・・本当の意味での全知全能であるならば・・・勝てるかは不明だが、試したい事がある。もしコレが成功すれば・・・勝てる」
問題児シリーズにある法則の一つを利用した作戦である。もし本当意味での全知全能であるならばこれで縛れる可能性がある。
「よろしい・・・相手は明後日頃に北陸に達する見込みです。戦闘可能な神霊は須佐之男について行き編成を確認し、準備を始めてください。非戦闘神霊は月夜見について行き後方支援について確認です。あと、白夜王、天目一箇神、経津主神はこの場に残ってください。以上!行動は迅速に!」
天照の号令で一斉に動き出し、そこには天照、経津主神、白夜叉、そして鍛冶神である片目に眼帯をつけた天目一箇神だけが残ったら。
「さて白夜王。貴女・・・もしかして防具を一つも持ってないのでは?」
「うむ!」
ビシッと親指を挙げる。
「貴女には隊長をしてもらうのでそれでは示しがつきません。よって、経津主神、天目一箇神。白夜王に刀と甲冑を一式制作しなさい」
「御意」
経津主神はすぐに了承したが、天目一箇神はすこし困惑している。
「・・・素材が切れてるんですが」
「・・・白夜王」
「え⁉︎私か⁉︎いやいや、私は何も・・・」
持ってないといいかけてやめた。あるじゃ無いか最高級の物が。
「これでいいかの?」
白夜叉はギフトカードから龍から抜いた牙を出した。
大きすぎて天井が壊れたがあえて無視。
「こ、こりゃぁ・・・龍の牙!しかも純血種ときたか!」
「偶然手に入れたものだが・・・」
「中々良いものだ。少し貰っていくが・・・」
白夜叉は頷く。経津主神は刀で牙の一部を切り取って天目一箇神に渡す。
「特殊能力の定着を手伝って貰うがいいか?」
天目一箇神に言われて快諾する。龍の牙ならば・・・極上の武具が出来るはずである。
白夜叉は刀と甲冑を手に入れた!
白極夜刀
神霊、龍、星霊といった最強種に効果抜群の刀。使いこなせれば常人でも山を両断する。
魔天之王
白夜叉が全力で殴っても壊れないほどの強度を持ち、種類を問わず非実体攻撃を無効化する甲冑。幻想的なパワーの攻撃を無効化する。
名前が中二臭いのは気のせいだと信じたい白夜叉であった。