幻想郷の基盤がほぼ完成し、弥彦たち妖怪も近くの山に移住してもらった。
白夜叉の神社は深夜に命名会議が人間たちと白夜叉で始められ、妙に厨二感あふれた候補が挙がり・・・一晩経ってみんなで恥ずかしい思いをした。深夜テンションは恐ろしいものだ。
結局、神社の名前は『全てを受け入れる=博愛』の『博』の字と白夜叉(大人ver)と白雪姫という美人が祀られることから『麗』の字をとって"博麗神社"と名付けられた。
最後に白夜叉は人里での法整備を進めた。"自分の遊びに強引に付き合わせる程度の能力"の応用だ。"妖怪は人里内で人間を襲ってはならない"というのが特に重要なルールだ。逆に言うと、人里の外は危険だという事だ。
他にも白夜叉のする事は多かった。ここは妖怪の巣窟になりやすいので妖怪対策の指示、災害対策の工事の指示、田畑の管理etc・・・
白夜叉はいつも遊んでるように見えて実は働き者だったのだ。
仕事がひと段落つき、落ち着きを見せ始めたこの日は、桜が咲く春真っ盛りだった。
桜の花びらで神社の境内は桃色に染まった。それを掃除をしようかと白夜叉が外に出て竹箒で掃く。
自分の神社で掃き掃除をする神様。なんとも不思議な光景である。
近々人でも雇おうかと白夜叉は考える。
だんだん掃くのが面倒くさくなってきた白夜叉は扇子を取り出した。おそらくここら辺を吹き飛ばすつもりである。
「ほいっとな」
白夜叉が扇子を振るうと大風が吹き荒れ、桜の花びらと落ち葉、そして
「ええぇぇぇぇ⁉︎」
予想外の出来事で白夜叉は慌てるがとりあえず赤ん坊を飛んで抱き留めた。
「・・・えっと・・・どうしようかの?」
周囲を確認しても親らしき人は見当たらない。おそらく捨て子だろう。
とりあえず神社に入れた白夜叉は自分と白雪姫ではどうしたらいいか判断つかないので友人達を呼んで話し合う事にした。
呼んだ時に赤ん坊(女の子)を抱えた白夜叉を見て、『え?出産⁉︎』と言われたので友人、弥彦と紫をぶん殴った。
「・・・捨て子が神社にいたというわけね」
「言っておくが俺は人の子の赤子の面倒なんて見れねえぞ?」
「分かっておる。話し合いという名目で呼び出したが私としてはもう結論が出ておる。報告みたいなもんだ」
「人里の人間にでも預けるか?」
弥彦の言葉に白夜叉は首を横に振った。
「いや・・・先ほど白雪に人里を見てもらってきたのだが、どうやら男女の双子が生まれたらしい」
男女の双子。昔の日本では心中者の生まれ変わりとして、忌子として、忌み嫌われてきた。殺されることもある。
逆に、心中者は来世で夫婦になる事を誓い合ったから結婚させちゃおうねと言う考えもあった。
白夜叉が発見した赤ん坊は女の子。この場合は前者で、おそらく男の子の方は既に亡き者と思われる。
おそらく親はせめて女の子だけでも助けたいと思って神社に置いていったのだろう。幸い今は春。夏のように熱中症で、冬のように凍死する恐れも無い。
「つまり・・・育てるってことね」
「幼女が赤ん坊育てる図・・・」
弥彦が失礼なことを言ったので一発殴った。
「その気になれば赤ん坊からババアまで成れるわ!この姿だって力抑え易いからなってるだけで本当はビッグサ、いや大人のほうがいいに決まっとる!」
ハイハイとニヤニヤ笑う弥彦をもう一発殴る。
知識だけなら紫よりあるのでなんとかなるかもしれない。経験は・・・全くのゼロだがなッ!
白夜叉は女の子の名前を博麗零華と名付けた。
さて、零華を育てるに当たって問題点がいくつか浮上してきた。
赤ん坊の食事といえば当然母乳である。しかし博麗神社にはそれがない。
「さて、どうしたものか・・・」
零華に髪を引っ張られながら考えると白夜叉。
そして、
ふと白雪姫の方を見た。白雪姫の何処とは言わないが。零華も同様に白雪姫をジッと見る。
「・・・でませんよ?」
「えー」
「えーじゃ有りません!」
この問題は白夜叉が粉ミルクを生み出すことで解決した。
しかし、本当は免疫力の関係で人間の母乳を与えたほうが良いのだ。
病気などに感染しないように衛生面をしっかりしなければならない。
この時代、衛生面をしっかりとなんてことは難しい。保護者がきちんとするしかない。
夜、赤ん坊は夜泣きをする場合がある。
原因は、日中の刺激や興奮で夜中に夢を見るのではないかとか、睡眠のリズムがつかめず体内時計がくるってしまうのではないかなどの説があり、はっきりわからないことが多いが、発達の一段階であると考えられている。数か月続いた夜泣きが、歩けるようになったとたんに直ることもある。
白夜叉は太陽運行を司り、昼と夜両方の世界を支配できる。故に連続徹夜などお手の物である。ぶっちゃけ寝なくてもいい。一晩中一緒にいてあげてもいいのだが、白夜叉は心を鬼にして、夜泣きを治そうと試みた。
まず、寝る前に、できるだけ暗くした部屋で一緒にごろごろする。
そして30分ほどごろごろしたら、「おやすみ」と声掛けし、布団にねかせ、部屋を出る。
するとどうなるか・・・
めちゃめちゃ泣きます。 この世の終わりかというぐらい泣きます。
白夜叉が術(ザッハーク監修)で防音にしているので響かないが、覗いてるので心が痛む。
できることなら今すぐ飛び出したい。しかしここはぐっと我慢の子。
赤ん坊に自分の力で寝る事を学ばせる事で夜泣きを治すのだ。
こうして、白夜叉と白雪姫が試行錯誤を繰り返し壁を乗り越えていき、零華はスクスクと成長をした。
〜13年後〜
「おはようございます白夜叉様。起きてください、朝ですよー」
「・・・あと・・・二分」
「それなら寝なくても一緒です」
博麗神社の巫女として成長した博麗零華がそこにいた。
夜泣きの対処法として白夜叉が行った放置ですがこれは対処法の一つにすぎません。他にも多くの対処法がありますので御注意ください。