紫をボコボコにしてスキマから引きずり出し、地面に正座をさせた。
「えー、これより被告人、八雲紫の裁判を始める」
「なにこの展開」
「裁判長は私。弁護人・・・無し。検察、白雪姫」
そもそもこの時代にこんな弁護人とか検察とか裁判長とかの形の裁判がないから紫と白雪姫はキョトンとしている。
「えー、八雲紫よ。おんしに悪気はあったか?」
「ありません」
「よし、ならば・・・」
白夜叉は沸騰した水が入った釜を用意した。
「神明裁判・・・盟神探湯を始める!」
神明裁判
何らかの手段を用いて神意を得ることにより、物事の真偽、正邪を判断する裁判方法である。古代、中世(一部の地域では近世まで)において世界の各地で類似の行為が行われているが、その正確な性質は各々の神、宗教によって異なる。
神様に対しても行われた事例がある(火中出産)。
盟神探湯(くがたち)
対象となる者に、神に潔白などを誓わせた後、釜で沸かした熱湯の中に手を入れさせ、正しい者は火傷せず、罪のある者は大火傷を負うとされる。毒蛇を入れた壷に手を入れさせ、正しい者は無事である、という様式もある。あらかじめ結果を神に示した上で行為を行い、その結果によって判断する。
火中出産
木花咲耶姫は
木花咲耶姫は「この子が国津神の子なら、産む時に無事ではないでしょう。天津神の子なら、無事でしょう」と誓約をして、戸のない御殿を建ててその中に入り、産む時に御殿に火をつけた。天津神の子であったので、無事に三柱の子を産んだ。
よくよく考えると火山の神霊の子供が燃えるはずがない。というか子供も火の神。
話を戻そう。
「いやいやいや!無理無理!それ絶対火傷するじゃない!」
「まぁ冗談はここまでにして、」
冗談とは思えないほどノリノリだったが、白夜叉は釜を破壊した。どことなく残念そうだ。
「なぜ、私を式にしようとした?」
「・・・貴女は、妖怪、人間の共存はできると思う?」
白夜叉は顎に手を当てて考える。
「・・・かなり難しいだろうの・・・だが、不可能ではない。猿と犬でも仲良くなる話を聞いたことがある。人間と妖怪にできないはずがない」
「全てを受け入れ、人妖神問わず悉くに門戸を開くそんな世界を作る。それが私の目的。その世界を作る協力者が欲しかったのよ」
「・・・いいの。そんな世界」
「協力者を募るにはかなり強引だな」
「それは悪かったわね」
もしや友達の作り方がわからないのか?
「しかし、問題があるの」
え?と紫は白夜叉を見た。
「悪人も善人も、大妖怪も神も全てを受け入れる。それでは新参者は後ろ盾も無く血で血を争う闘争が起き、いずれ力関係が崩れて崩壊するだろうの」
ぐぬぬと紫は唸った。少し考えすぎな気もするが。
「その闘争を抑止する者が必要なのではないか?紫は少し力不足かの」
紫は黙ってしまった。
「そう落ち込むでない!おんしの話は素晴らしかった!だから!この私が直々に!その抑止力になろう!」
紫はハッと白夜叉の顔を見た。
「私は白き夜の魔王!白夜王なりッ!太陽神で帝釈天にすら打ち勝つ最強の軍神!」
ドヤァ!とドヤ顔を決める。
紫は白夜叉が神だと知らなかった。
と、いうか協力してくれることにとても驚いた。
何か裏があるのではないかと疑っていたが、
ドヤァ
このドヤ顔を見て裏がない事を理解し、そのうち紫は考えるのをやめた。
「何故、協力してくれるの?」
紫はそう聞いた。
白夜叉はニヤリと笑って、
「
それが白夜叉の原動力。どちらが良いではなく、どちらが面白いかで選ぶ。
「さて、その理想郷を創るに当たって必要なモノは大まかに四つ」
白夜叉は指を四本立てる。
「まず土地。どこに創るか。これが重要ポイントだの」
「その点については問題無いわ。候補がいくつかある」
「次に人間。人妖問わず受け入れるにはその土地に先住者がいると良い」
「候補地の全てに人里があるから大丈夫ね。別にこれだけでいい気がするわ」
「意外と準備を進めているのだの・・・だが、一つ足りない要素がある。人間に危害をあまり加えない妖怪。いくら妖怪が自然発生するといっても妖怪が団結したりして人里に攻めてこられたらヤバイからの」
そこは考えてなかったようた。
白夜叉にはその妖怪に心当たりがあった。頼めば協力してくれそうな妖怪が。
「妖怪に関しては心当たりがある。頼めば協力してくれるだろう。おんしは別の準備を進めるといい。さて、面白い事が始まるぞ!」