東方白夜王   作:ザイソン

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予告した通り、新章です。問題児シリーズ色が強くなりますがご了承ください。


ラスト・エンブリオの章 人類最終試練と世界遊覧
二者択一


再び旅に出た白夜叉と白雪姫は、西暦663年、10月4日に、日本海の対馬海峡のど真ん中にいた。

 

白夜叉は大蛇状態の白雪姫に乗っている。

 

『白夜叉様、何故いきなり朝鮮半島に行くと?』

「・・・白雪よ。おんしは神と神同士の戦争は見たことがあると思うが、人間対人間の戦争を見たことはあるかの?」

『・・・いいえ』

「ならば良い機会だ。今からそれを見に行く」

 

白夜叉は白雪姫に戦争を見せるつもりのようだ。人間対人間の戦争。近々それがある。日本史の教科書にも乗っている戦争である。

 

「白雪よ。おんしは私と神奈子、諏訪子をどう思う?」

『へ?は、はい、人間からの信望も厚く、私としても凄く尊敬しております』

「例えば・・・私と守矢勢力(諏訪子と神奈子)が敵対したとする。そしておんしは何方かに着かねばならない。ほの状況になった時・・・どんな選択をする?私か、神奈子達か」

 

白雪姫は黙り込んでしまった。白雪姫にとって白夜叉や神奈子、諏訪子は大切な上司(?)であり仲間であるからだ。このような二者択一の選択を迫られた時、人、神、妖怪であっても苦悩するに違いない。

 

「今から見せる戦争は、その二者択一を迫られた倭国がどうしたかの戦争だ・・・っと、見えてきたの。朝鮮半島が」

 

 

西暦663年、10月4日。倭国は百済とともに新羅、唐の軍勢相手に戦っていた。

その頃の倭国は唐とは伝統的な友好国(朝貢国)であり、同じように百済とも友好国であった。

その唐と百済同士が戦争を始めた。さて、日本は何方に着くかの二者択一の選択を迫られた。

結果は、

 

「倭国は百済につき唐と新羅と戦争をした」

 

白夜叉と白雪姫は朝鮮半島の白村江が一望できる小山に登っていた。

 

「っ!・・・血の匂い・・・!」

 

白雪姫がこれまで経験した戦争は諏訪大戦のみ。この戦争は相手が神霊であったためにあまりグロテスクは戦いにならずに実質神奈子と諏訪子の決闘のような戦争だった。

 

しかし人間の戦争は違う。

おびただしい程の血、各地から起こる断末魔。赤く染まる川、体内の小便やら糞やら体液やらの匂い。

 

「これが・・・戦争・・・」

 

神霊や星霊、妖怪は強靭で簡単には死なない者がおおい。しかし、人間は違う。余りにも脆く、弱い。しかし賢い。その賢さの為に戦争を起こす。

 

「人間は何故戦争を起こすのですか?」

「これは人間だからどうこうと言う問題ではないが、戦争とは意思の押し付け合いの結果生まれる」

 

例えばA国がB国を領土が欲しいと言う。A国は自国のためだからそれは正義。B国は嫌だから守る。これはB国にとって正義。

A国の正義とB国の正義と言う意思がぶつかって戦争になる。

諏訪大戦も、仏神争乱もそうだ。

 

しかし、その戦争は必ず終わる。何方かの目的が達成された時に終わる。つまりは、

 

「戦争は唯の手段にすぎん。話し合いや多数決と同じ一つの手段なのだ。そして愚かにも今の人間は・・・ただ一つの王を決める手段を戦争以外に知らない」

 

もちろん戦争以外で一国の王を決めた事例は存在する。しかし、王候補と王候補が対立した時必ずと言っていいほど戦争は起こる。日本の壬申の乱、応仁の乱、関ヶ原の戦い、スペイン継承戦争、オーストリア継承戦争などいろいろだ。

 

「・・・戦争は、また起こりますか?」

「そうだの。必ず起こる。少なくとも・・・あと約1,300年の間に世界中を巻き込んだ大戦が二回は起こるだろうの。白雪よ、そんな人間をどう思う?挫折し、間違え、戦争を繰り返しながら道を模索し続ける人間を」

 

白雪姫は暫く黙り、答えた。

 

「嫌いではありません。例えそうだとしても人間は正しい道を模索し続けています。道を違えても賢くあろうとしています」

 

それを聞いて白夜叉はニッコリと笑った。

 

「そう言って貰えて嬉しいの。しかし・・・人間はこのままでは必ず滅亡する」

「何故ですか?やはり戦争ですか?」

「違う。あと約1,300年の内に世界中を巻き込んだ大戦は二回起こるがそれ以降は大国同士での正面衝突はなくなるだろう。詳しいことは教えられんが、人類が存続するためには霊長としての進化を遂げる必要がある。悪意に勝つ霊長としての進化は口で言うほど簡単なものではない。そしてその進化のために乗り越えねばならない試練が人類最終試練(ラスト・エンブリオ)。その一つこそ、この私。天動説の化身たる白夜王、白夜叉なのだ」

「・・・それは・・・白夜叉様はその天動説の試練が乗り越えられると・・・どうなるのですか?」

「さあ?そればっかりは分からんの」

 

白雪姫は完全に黙りこくってしまった。白雪姫は少し複雑な気分になった。もしかしたら、死ぬかもしれないのだから。

 

「まぁそれはさておいて、私が大陸に来たのには少し目的があっての、他の人類最終試練を預かる者に会うためだ。私が知る限りでは、絶対悪(アジ=ダカーハ)閉鎖世界(ディストピア)第三永久機関(コッペリア)の三人だ。ここからだと完全に所在が判明している絶対悪からだの。場所は中東のダマーヴァンド山だ。おそらくそこに居る。どうした?行くぞ」

 

白雪姫は白夜叉の背中を見ていた。願わくば、人類も、白夜叉も、何方も生き残ること思いながら。


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