仏教側、三勝。神道側、一勝。追い詰められ後が無くなった神道側。
白夜叉は眉間にしわを寄せ腕を組み、痛烈に舌打ちした。
(せめて月夜見には勝って欲しかったの・・・疑似創世図『火生三昧』・・・これが不味かった。次は迦楼羅天と須佐之男か。さて、勝てるかの・・・)
五回戦、須佐之男 対 迦楼羅天
「俺が負けると後がないからな。悪いが手加減は出来そうにない」
「俺が勝てばこの戦争は終いだ。手加減など不要」
須佐之男は天羽々斬を抜き、乱回転する水流を纏わせる。
赤い翼を生やした迦楼羅天は手に金翅の炎を纏わせる。
「先手必勝!」
須佐之男は背後の海の水を大量に巻き上げたと思ったら、
「『水槍時雨』!」
槍の様に硬化させ雨の様に降り注がせた。
一つ一つの威力は岩盤を容易く貫くほどだが、
「ハアッ!」
金翅の炎を放出させて槍を全て消し飛ばした。
迦楼羅天はインド神話でガルーダと呼ばれる『帝釈天に比肩する王』という願いを込められて生まれた神鳥である。
迦楼羅天の能力は『金翅の炎を操る程度の能力』であり、この金翅の炎には対神対龍の力が込められているが故に『炎を司る程度の能力』をもつ不動明王でも操れない。
迦楼羅天は大火力による超範囲攻撃を得意とする。金翅の炎で須佐之男を焼こうとあたり一帯を焼け野原にしながら襲う。
須佐之男は津波を起こして金翅の炎を相殺しながら必死に防ぐ。
実は迦楼羅天は接近戦が苦手で今までも大火力で全てを焼き払ってきた。須佐之男は寧ろ得意な方だ。迦楼羅天は直感でそれが分かったのだろう。近づこうとする須佐之男を必死に離れようとする。
しかし須佐之男は遠距離も得意としている。故に、
「オラァ!」
迦楼羅天は火力を上げる事にした。
今まで拮抗していた戦いの天秤が一気に迦楼羅天に傾いた。
須佐之男が津波を起こすならそれ以上の火力で押し返し、
海流の竜を作り出すなら鳥を象った金翅の炎で焼却する。
この大火力こそ『帝釈天に比肩する王』に相応しい。
(くっ、この金翅の炎は水膜で守るのが精いっぱい。もし直撃すれば・・・流石に死ぬ・・・!天叢雲剣を抜くか?いや、接近できないのなら・・・ん?)
須佐之男は一種の賭けを思いついた。果たしてそれに迦楼羅天はのるか・・・
「ハッ!」
須佐之男は海流を纏い、迦楼羅天に突撃した。
迦楼羅天は当然金翅の炎で燃やし尽くそうとするが、
(・・・燃えない?)
効果が少し薄くなっていた。実は須佐之男の神徳には水難の他にあまり知られてないが火難もある。これを使い多少は金翅の炎を軽減させたのだ。
海流の膜が丁度蒸発した時、須佐之男は接近する事に成功した。が、
「爆破!」
迦楼羅天中心に爆発を起こし須佐之男を吹き飛ばした。
須佐之男はもう一度同じ手を使い迦楼羅天に接近しようと試みる。
「接近しようとするなら・・・それ以上の火力で消し去ってくれる!『日輪金翅鳥』!」
迦楼羅天は金翅の大火炎を纏い海流を纏った須佐之男と突進する。
これが須佐之男の狙いだった。
須佐之男と迦楼羅天がぶつかり合い、爆破が起こる。かと思われたが須佐之男の海流と迦楼羅天の炎が消えてしまった。そして迦楼羅天は鎖骨から脇腹にかけて切り裂かれていた。神鳥なのでこの適度どうとでもなるが、
「グッ・・・な、なんだその剣は・・・⁉︎」
須佐之男の手には天叢雲剣が握られていた。須佐之男はぶつかる瞬間ひ天叢雲剣を抜いて迦楼羅天の炎をそれで不能にして消し、斬りつけて全ての霊格を不能にしたのだ。
「これは天叢雲剣。この世の異能を全て不能にする万物調律の剣。今のおまえは人間の大差ない。安心しろ。急所は外してある」
勝者、神道側。二勝目
「いや、良く勝ってくれた!正直終わったと思ったぞ」
「見縊んなよ白夜王。ま、確かに危なかったし。次は姉上だ。よろしく頼むぜ」
「もちろんです」
白夜叉は天照を呼び止め耳元に作戦を呟いた。
「・・・はい、わかりました。やってみましょう」
「いや、やってもらわねば困るからの」
六戦目、天照 対 梵天
天照は珍しく桃色の長い髪を纏めて戦闘に支障が無いようにしている。今回は白夜叉の作戦を確実に遂行する必要があるからだ。
対するは太眉どんぐり眼の濃い顔にがっしりとした体格の梵天。
「私は神道の主神の名を預かっている天照大神という者です」
「御丁寧にすいませんね。私は護法十二天の御意見番の梵天。またの名をブラフマーです。
天照は神力弾とミニ太陽弾を浮かべる。
梵天の方は、
「創造・・・絶対零度の弓矢」
梵天の能力は『悉くを創造する程度の能力』である。梵天。またの名をブラフマーという創造神である。逸話には自らを生み出したと言われる。因みに金の卵から生まれた。(モ◯スト・・・)
彼にとって絶対零度の弓矢など簡単に作れるのだろう。
梵天は矢を連射し天照を撃ち落そうとするが天照はミニ太陽弾をぶつける事で矢を相殺する。さらにそこから絶対零度の矢とミニ太陽弾の撃ち合いになる。
え?陸上でミニ太陽弾撃って大丈夫かって?天照の周囲が溶けたり昇華したりしてるけど、大丈夫だ。問題無い。
「このッ」
天照はミニ太陽弾の体積を大きくし、矢を押し切る形に変化させた。
「創造・・・太陽砲」
梵天は太陽の弾を撃ち出す大砲を生み出しこれを相殺する。
天照が超威力の攻撃をするならば梵天はそれと同格の力を持つ武具を創造しこれを相殺する。このやりとりがしばらく続いた。
「やはり使わねばなりませんか・・・私の疑似創世図を・・・!」
梵天は柏手をうつ。すると槍が出てきた。
「『
槍は雷を携え、光の速度で天照に向かう。
(疑似創世図・・・!白夜王の作戦通りです!)
天照は手を瞬時に神力で保護、腕から多量の熱エネルギーを推進力として噴出し、腕が曲がって刺さる事を防ぐ。
この槍に宿った力は『穿った者を必ず倒す』という。ならそもそも刺さらなければいい。というのが白夜叉の作戦だった。
因みに、この槍が天照の掌とぶつかった時の衝撃はおよそ3万トンである。(槍を50㎏として計算)
この衝撃に少しでも耐えれれば、天照の勝ちである。
天照はなんとか耐えながら衝撃で島から吹っ飛び光の速度で遥か彼方へ飛び、
「グッ・・・ハッ・・・」
梵天の背中を梵釈槍が貫いた。
そう、槍は地球を一周して梵天に突き刺さったのだ。天照は途中で身体を器用に逸らしてこれを受け流していた。
つまり、
「私の勝ちというわけなのです・・・ところでここ何処?」
答え、太平洋のど真ん中。境界門で帰ってきてね。
勝者、天照。神道側、三勝目
次回・・・最強の軍神(笑)登場!