近所の病院の娘と許嫁だけど何か質問でもある?   作:次郎鉄拳

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ビート・ライダーズ

裕也のバイクテクは恐ろしい。

少なくともそう実感できるほどには恐怖感を味わった。

サイドカーなのに、サイドカーなのに。

いったい俺は幾度こうしてサイドカーで恐怖を味わえばいいのだろうか。教えてくれ真姫。

いや、さっきみたいにあまり裕也に頼るなとか言われるんだろうな。でもこいつに任せると大事な時でも早く動いてくれるから俺は好きだよ裕也。

でもサイドカーですら傾きそうになるあのドリフトは勘弁してください。

警察来なくてよかったね裕也。

 

 

「おい、真士。生きてる? めっちゃ目がヤバイことになってるけど大丈夫か?」

「おお裕也……俺はもうだめだ、俺が死ぬ前にお前の命を俺によこせ」

「お前を殺して俺が生きる! ってただの外道じゃないか。というよりもこのやり取り何度目だ。というかもうみんな集まってるぞリーダー」

「まじか、早いなみんな。やっぱ好きなのかなダンス。俺は好きだ」

 

 

軽口をたたきあいながら俺はサイドカーから降りて裕也にヘルメットを渡す。

裕也の視線の先にこちらも目を向けると、数十人の男女が集まって柔軟などを行っている姿が見える。

見慣れた顔もちらほら見えるし間違いはないだろう。あれはビート・ライダーズのみんなだ。

 

 

 

俺や裕也が所属する、この大学所属生徒が中心となって作られた非公認サークル扱いのダンスチーム≪ビート・ライダーズ≫。

十年前くらいにはすでにあった、地域一帯を〆ていた、傭兵がいたなどといわれるほどいろいろと謎な集団だけど、俺が知っているここ数年はダンスが好きな周辺の高校生から大学生が集まって気軽に、部活みたいなノリでダンスを楽しむ集まりになっている。

現在俺が先代のリーダーである蔓葉(かずらば)先輩から引き継いでこのビート・ライダーズのリーダーを務めていて、慣れないものの時折先輩や裕也などに助けてもらって何とかやっていけてる気がする。

 

 

 

「俺も好きだぞダンス。そういやビート・ライダーズってマジでダンス界目指すのも入ってくるもんなぁ。偶然ではあるがほかのメンバーともいい感じに切磋琢磨できてるし、空気は悪くならないでやっていけてるからか集まりはそりゃあいいだろうな」

「おお、そこまでわかるとはさすが裕也。てか……さ、なんでミッチまでいるの? 高校生だよな? 学校あるんじゃなかったっけ」

「本人に聞いてみたらいいんじゃないか?」

「それもそうかなぁ」

 

 

挨拶をしてくれるメンバーたちに挨拶を返しながら、一目散にメンバーと和気藹々話しているミッチこと、暮島(くれしま)満実(みつざね)の下へ向かう。

今日は真姫も学校が平常授業だから平日のはずだ。そしてすでに時間は八時過ぎ。ミッチの学校までの距離にかかる時間を考えてもここに入れるはずがないと思う。

 

 

「おっすミッチ、おはよう」

「あ、リーダー、裕也さんもおはようございます」

「やぁミッチ。単刀直入に聞くが学校はどうしたんだ」

 

 

デリカシーもへったくれもかなぐり捨てた直球の質問が裕也から投げつけられる!

当のミッチは困ったような顔をしつつも、はっと何かを思い出し持参のバッグから手帳のようなものを取り出して俺に渡した。

だいぶシンプルだが所々にアニメのキャラクターらしきシールが貼られているのがミッチらしいと思える。

 

 

「知ってると思っていたので言ってなかったのですけれど、実は今日、僕の学校は休校なんですよ。」

「おろ、ほんとだ。創立記念日なんだ」

「こんな時期に創立記念日とか言われても正直困っちゃうんですけどね。家にいると兄さんがうるさいですし。」

「あー、孝虎(たかとら)さんは兄バカだものなぁ……同情するよミッチ。」

 

 

ミッチは俗に言う御曹司に当たる人物で、兄である孝虎さんとともに英才教育を施されてきたらしい。

しかし長男が孝虎さんで有る故に、ミッチのお父さんはミッチにそれほど英才教育の根づめをしなかったのだとか。

それでもここいらの有名私立高校に特待生で通えるのだから暮島家恐るべしというところか。

話がずれたが、孝虎さんが英才教育によってすさんでしまいそうになったとき、そばで気を使っていろいろ助けようとしてくれていたのがミッチだったらしく、それが原因で彼は超ブラコンとか言われてしまい、ミッチもそんな彼に昔とは正反対の反抗的態度を取るようになってしまっている……らしい。

 

 

そのことは全て前に孝虎さんが話してくれて、その際にお酒飲みながらワンワンむせび泣いて「昔満実はなぁ! あのとき満実はなぁ!」 とか語ってくれた。

ミッチからしたら幼いころの恥ずかしい記憶までも暴露されるわけで、そりゃあ当然嫌にもなるかもしれない。

少なくとも俺はそんなお兄さん嫌である。

なお孝虎さんはこの日から一か月くらいミッチに口をきいてもらえなかったらしい。

 

 

「あんな兄さんよそにくれてやりたいです。寧ろ僕はリーダーがお兄さんに欲しかったとか思います。綺麗でけなげな義姉もできたんですし。」

「まてミッチ、嫌なのはわかるがそんな軽い口調で孝虎さん要らないとか言ったらだめだ。ほら、早速孝虎さんからメール来たし!」

 

 

慌ててメール画面を見た裕也が冷や汗をかく。

そんなに焦るものか?と思い、「ちょっと見せてみろ」と画面をのぞき込むと……

 

 

『キサマラミツザネニナニヲフキコンダ』

 

 

「ぎゃぁぁぁぁ!? こわっ!? なにこれこわい! 孝虎さんなんで会話知ってるのぉ!?」

「あー、また兄さんが迷惑かけたんですね。僕から父さんに、もっと厳しく教育したほうがいいよ。とか言っておきますので……」

「いや、ミッチ……そういう問題じゃないよ」

 

 

 

なお気付けばさらに時間が過ぎていたので大急ぎで午前の練習にとりくんだが、俺はあのメールの内容がちらつき続けてうまく集中できず、途中から裕也に指揮を取ってもらい、夕方練習もお願いすることになった。

やっぱり裕也はリーダー最有力候補といわれていただけあって有能だった。

 

 

ちなみにこれは余談だが、ミッチは夕方の練習には来ず、代わりに孝虎さんがやってきて、俺と裕也のことを引きずって路地裏まで連れていこうとしたのは同じ日の話である。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー……」

「お帰りなさい、遅かったわね。ご飯、できてるわよ。」

「あー、すまん真姫。今日は……おなかも……空いてなくて」

「大丈夫? 顔色が悪いわよ、どうかしたの?」

「ちょっと……兄という存在の恐ろしさを知ったというか……」

「……はぁ? なに、それ? あなたに兄なんていないじゃない」

「いや、あのな、兄に憧れたことはあるんだけど、もう兄とかほしくないわ」

「それ、この前も同じこといってたわよ。そんなに疲れてるならご飯はいいから、お風呂に行きましょう?背中、流してあげるから」

「……やっぱ俺、真姫さえいればこの世界他に誰もいらないって思えてくる」

「なっ、何言ってるのよっ。意味わかんない!」

「いたっ! ごめんよ!頼むからレバーブローは勘弁してくれ!」

 

 









・教えてくれ真姫
みんな大好きゼロ。こっちは聞いても答えをくれます。

・警察来なくて
危険走行(主観)ですからね。実際はちょっと法定速度限界ギリギリラインの運転です。

・傭兵
どこのパティシエなアルフォンゾなのだろうか

・蔓葉紘汰、暮島満実、暮島孝虎
元ネタキャラ:仮面ライダー鎧武より
前回での裕也と同じ理由。

・アニメのシール
役者の高杉さんアニメ好きだと聞いたので

・創立記念日
この作品時系列割とガバガバ。今度しっかり考えます。

・孝虎のメール
なんで会話がわかったのでしょうね

・裕也
本家の設定がリーダー向きなのでこういう形で発揮させたかった

・レバーブロー
空腹時でもダメ絶対



次回あたりμ'sとかかわらせたいところです

読了ありがとうございました

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