近所の病院の娘と許嫁だけど何か質問でもある?   作:次郎鉄拳

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練習

夏休みとは言えどμ'sの練習はある。それは大学が休みでもビート・ライダーズの練習があることとあまり変わりがない。

幸い午後から予定がある者が多いため夏のビート・ライダーズ練習は午前に行われ、午後に俺はそのままμ'sの練習を見学し、指導することになっている。

午前午後共に予定が入るため例年より真姫と過ごす時間が少なくなったとは思うが、真姫が楽しいと思っていることの手伝いができるなら俺はそれでいいと思っているし、最近の真姫は俺と過ごしたい時に自分からわがままを言うようになってくれたので問題はないかなと感じる。

真姫との関係はいまだ周りに聞かれてはいないが、絶対に感づかれているはずだからいつ言うべきかをいい加減はっきり決めないとなと思うが……

 

 

話は逸れてしまったが、話題は午前中のビート・ライダーズのことについてだ。

いつだったか真姫も練習に加わっていた時期があると話したはずだ。

それはだいたいいつも夏休みか冬休み、そして春休みに参加していた。

しかし昨年の真姫は夏冬および春は受験でそれどころではなく、俺はそんな真姫に気を使い練習に連れていったりすることはなく、イライラしそうになった時を見計らって二人きりでダンスをしてみたりと、真姫は少々長らくビート・ライダーズに関わっていなかった。

つまり何がいいたいかというと……

 

 

「わぁ! 満実さん結構背が伸びました!?」

「いえ、これでも一年で二センチほどですよ。真姫さんは美しくなられましたね」

「もう、お世辞がうまいんですから!」

「いやぁ、マジで真姫ちゃん可愛くなったなぁって思うよ。久しぶりに会ったけどやっぱ真士の奴が羨ましいなぁ」

「ザックさんはまずそのヘタレっぽさとモテアピールやめればもっと人気出ると思いますよ」

「おいリーダー! 真姫ちゃんに何吹き込んでるんだお前ぇ!?」

「真姫さんナイスです。ザックさんはこうして弄れば絶対面白くなるので」

「そ、そうなんですね……参考になります」

「ミッチまでやめろぉ!?」

 

 

久々に真姫がビート・ライダーズの練習に顔を出すことになったのだ。

久々に会う真姫に喜ぶメンバーたちは彼女を取り囲み口々に話しかける。

今回初めて真姫を見た、昨年と今年加入したメンバーたちは真姫を知ってる前からのメンバーたちに話を聴き、いったいどういう内容を教えられたのかはわからないが俺のほうを見て愕然としている。

そして真姫に目を向けると何やらナンパみたいに話しかける愚かな男がいる。

ちょっとアイツらは仮面着けて練習量三倍にでもしてくか、赤い厚手の服に当然着替えさせてやる。

暑くて蒸して懇願に走る姿を見てやりたくなってくるぜ。

と、ここまで真姫を見つつ考えていたら突如肩を叩かれた。

振り向くと、ビート・ライダーズOBである蔓葉先輩がいつもと変わらない人懐っこい笑顔で笑っているのであった。

 

 

 

 

 

 

「蔓葉先輩いつ帰ってきていたんですか。だいたいかれこれ一年ぶりだと思うんですけど」

「おう、つい少し前に帰ってきててな。戒斗の家に泊めてもらってたんだけど、今日真姫が練習に来てるってミッチに教えられてな。思わず会いに来ちまったよ」

「あらかじめ連絡を下さいよ先輩。一応現在のリーダーは俺ですよ?」

「あっれぇおっかしいなぁ。ミッチに真士への連絡を頼んでたはずなんだけど」

「……マジすか」

 

 

ミッチのほうを蔓葉先輩の言葉に合わせ向いてみると、こちらを見ながら少し薄く笑顔を浮かべている。

あ、これきっと確信犯だなとわかったので蔓葉先輩に断りを入れ、ミッチの下に向かって走る。

ミッチは俺が蔓葉先輩に断りを入れた段階で感づいたのか全力疾走で逃げはじめる。

真姫がヴェ!? と俺が横を駆け抜けた瞬間に声を上げてたが、はて? そんな驚き方をする子だったか?

そんなことを考えながらもミッチをひっ捕まえるべく、速度を上げていく。

 

 

大学生な俺と現在高校生のミッチでは正直体力に分が見えるので難なく捕まえる。

「許してください面白そうだと思ったんです」

というが、それは愉快犯の発想だ。許さんぞミッチ。

無言でヘッドロックを極めると痛みに悶絶しながらタップをしてくるミッチだがちょっと反省せよ。と、体をきつめにねじってみると大人しくなる。

彼を引きずって蔓葉先輩の下へ行くと、真姫と話していたようで、手を振ってきた。

 

 

「おわ、結構力入ってんなぁ……おーいミッチ、大丈夫か?」

「大丈夫って……聞くくらいなら……たすけて……くださいぃ」

「わり、さすがに自業自得だから遠慮する」

「ごめんなさい……さすがにこればかりは私も助けられないです」

「ううっ……」

「後でザックか裕也でも犠牲に差し出してやる」

「ほんとザックと裕也に厳しいよな真士」

「ザックさんも裕也さんもいじるといい反応が返ってきますから」

「真姫もだんだんミッチと真士に染まってきてるよな」

 

 

 

 

 

 

「そういえば蔓葉先輩、任司(たかつかさ)さんとはあれからどうなんです? 駆門先輩からは喧嘩したって聞いたんですけど」

「戒斗あいつなに言ってるんだよぉ! しかも言う相手が真士じゃん!」

「え、あんなに舞さん楽しそうに、紘汰が帰ってくる! って喜んでたのに……もう喧嘩したんですか?」

「まってまってなんで真姫も知ってるんだよもう! 俺の私生活筒抜けなの⁉ プライバシーは!」

「愛する人を泣かせるとかほんと蔓葉先輩サイテー」

「蔓葉さんサイテーです」

「ワリィって思ってる! 心底悪いとは思ってる!」

「ならどうするべきかわかりますよね?」

「まさか先輩、わからないとは……言いませんよね?」

「ああ! 今から舞に会いに行ってくる! 待ってろよぉ!」

 

 

そういうと蔓葉先輩は背負っていたカバンを背負いなおし、校門へ向かって走っていった。

しかし何を悪いと思っているのかたぶんわかって無いんじゃないかなと見えるのできっと更に怒らせてから一晩じゅう謝るんだろうなぁと考える。

ミッチもそこらへんは同意なのか俺のほうを向いてしきりにうなずく。

真姫は携帯を取り出してどこぞに連絡をする。きっと任司さんに対して蔓葉先輩の釈明を受け入れるように嘆願しているのだろうか。

ボソボソと

「これだから蔓葉さんは、少しくらい真士を見習ってほしいわ。遠出したら帰りはまっすぐで帰ってきたらすぐキスしてくれるのに」

って述べるのは少し気恥ずかしい、勘弁してほしいようなもっと自慢してほしいような気になってくる。

見ればいつの間にか近づいてたザックと裕也がニヤニヤしている。

なんか腹が立つのでアイアンクローをかけようとすると二人とも全力疾走をするので放置し、ほかのメンバーを全員を呼んで練習を開始する。

俺たちがはなれている間に俺と真姫の関係は全員に伝わったのか、何やら懇願するような顔をする先ほどのナンパどももいるが許さない。

先ほど心に決めた刑罰を伝えることにする。

 

 

「そこのお前ら、そう、さっき真姫に軟派を仕掛けたお前ら。今から持ってくる仮面と厚手の赤い服を着用して加入時に測ったタイムのペースより三倍で1500mを走れ。いいな」

「それどこの彗星だよ、いくらナンパが若い過ちだとしてもそれは鬼だわ!」

「裕也さん、上手いこといったような気になってドヤ顔しないでください。気持ち悪いです」

「満実さん、まずは二人がいつの間に戻ってきたかを突っ込んだほうがいいと思います」

 

 

青い顔をした受刑者に微笑みを向けると叫び声が響き渡る。

なお、当然ながらタイムは下がるどころか落ちたので追加で1500mを走らせようとすると真姫に止められたのでしぶしぶ許した。

そいつらはこの日から真姫のことを「姐さん」と呼ぶようになったのは別の話。

 








・真姫
受験勉強は余裕だったらしいが万が一を考え極限までに真士成分を我慢していた結果イライラが増したりしたらしい。
正直この作品での真姫の実力で音ノ木坂を落とすのはよっぽどどころか天地がひっくり返らない限りあり得ないと思われる。


・ナンパ
真士の嫁且つ、ビート・ライダーズのアイドルマスコットみたいな真姫に手を出すのは言語道断として新人以外はしない。


・仮面装着赤い厚手の服
若さゆえの過ちというのは恐ろしい結果を生むのであろうか…


・蔓葉紘汰
職業スタントマン。持ち前の運動神経で大活躍の彼はよく出張を行うことが多い。


・ヴェ
結局使ってしまったセリフ。真士はなぜかこれを初めて聞いた……なことはなく、ずっと「えっ」と脳内変換していたようである。


・任司舞
紘汰の彼女。紘汰と戒斗で取り合い激闘の果てに蔓葉が選ばれた。
しかしスタントマンの仕事の都合上出張が多いくせにあまり会いに来てくれない紘汰にやきもきしているらしい。


・プライバシー
恋人関係の問題はとりあえず真士と真姫に投げつければ何とかなると丸投げする面子が後を絶たない。


・何が悪い
今回何が悪かったかというと、帰ってきたのに真っ先に会いに行くのが戒斗で、舞に連絡を入れたのが帰ってきた翌日だったということ。
戒斗から連絡が来て発覚したこれは、戒斗の「わかってるだろうけど一方入れてやるか」という気遣いが空回りした結果でもある。


・刑罰
割とノリノリで煽るメンバーたち。
ナンパした奴らはその後脱退はしなかったもののトラウマを拗らせて短距離はともかく1001mを超える長距離走を走れなくなったとか。



次回更新も来週再来週の予定です。

読了ありがとうございました。

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