麦わらの副船長   作:深山 雅

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第6話 神、再臨

 えー、こんばんは。うっかり悪魔の実を食べてしまったユアンです。

 で、だ。

 

 「何でテメェがここにいるんだ~~~~~!!」

 

 「痛っ! ちょ、やめ……!!」

 

 

 

 

 **暫くお待ち下さい**

 

 

 

 

 「全く……3年振りの神ちゃんを足蹴にするとは……」

 

 「もう1度蹴ってやろうか」

 

 「ゴメンナサイ」

 

 そう、俺の前にはあの神ジジイがいます。つーか未だにちゃん付けしてんのかよ。

 

 「で? 俺は健やかな眠りに就いたはずなんだけど?」

 

 何でまたこの白い世界にいるんだ俺は。まさかまた転生しろとか言わねェだろうな?

 

 「その通り、お主は寝ておる。ここはお主の夢の中じゃ。精神体じゃから、ホラ、滑らかに喋れておるじゃろ?」

 

 確かに。じゃあ、何で今更……?

 俺の疑問が顔に出てたのか、神ジジイは居住まいを正した。

 

 「実はのう、お主が食べた悪魔の実について説明しておこうかと思っての。周りに教えてくれそうな者もおらんし。アフターケアというヤツじゃ」

 

 うん、確かに……まぁ祖父ちゃんなら解かるかもだけど、あの人にはそもそも悪魔の実を食べたってことを報告したくない。煩そうだし。

 

 「で、俺が食べたのって、何?」

 

 どうせなら自然系がいいんだけど、それは贅沢かな。それに、飛行型の動物系も面白そうだよね。

 

 「え~~~~~~~っと……」

 

 神ジジイはパラパラとメモ帳を捲った。……覚えてこいよ、それくらい。

 

 「おぉ、あったあった。お主が食べたのは『超人系 ミニミニの実』じゃ」

 

 ……ハイ?

 超人系はまぁいいとして……ミニミニ? 何ソレ?

 

 「早い話、縮小人間じゃな。能力は……手で触れたものを小さくすることができる、最小で1/100サイズ、と。この『手に触れたものを小さくする』というのがミソじゃぞ? 逆に言えば、『手で触れられないものは小さく出来ない』んじゃ。例えば、空気やダメージなどな。あくまでも物質にしか作用せん。原理としては、ノロノロビームでノロノロ粒子を出しているのと似たようなものじゃな。言うなれば、ミニミニ粒子か。ただ、ビーム状ではなく触れることで付着させる、という点で異なるがの」

 

 え……微妙…………。

 

 「そんな顔をするでない。使い方によっては応用の幅が広そうじゃし。ゴムゴムの実とて、本来そうすごい能力でもあるまい」

 

 うん、それはわかってるんだけどね……どんな能力だって使い方次第だってことは。

 でも……折角転生したならさ、もっとこう……チートみたいな能力を、ね……?

 

 「じゃから、転生前に強請ればよかったんじゃろうが」

 

 そのいかにも自業自得と言わんばかりの神ジジイの溜息に腹が立つ。

 

 「俺はちゃんと願っただろうが! 平凡な一般家庭に生まれ落ちたいって!! 全ムシしやがったくせに何言ってんだ!!」

 

 今までもこれからも、平凡の真逆を全力疾走しなきゃいけないような環境だぞ、アレは!

 

 どうすんだよ……エースはもう大恩人じゃないか……いっそ育ての親じゃないか……頂上戦争が起こるって知ってるのにさぁ……俺に何が出来るんだって話だよ。

 

 「まぁガンバレ、なるようになる!!」

 

 キラッと眩しい笑みを浮かべやがってこのジジイ(←最早神を付ける気も失せた)。

 

 「あ、ついでに何か聞きたいことあるかの? こんなチャンスはもう無いと思いなさい」

 

 聞きたいこと………………山ほどある!!

 

 「え~っと、まず……母さんは何でロジャー海賊団にいたんだ?」

 

 うん、よりにもよってなんでそこかな?

 ジジイはまたメモ帳をパラパラと捲った。

 

 「どうやら……海兵にさせるべく拷問のごとき扱きを与えてくる父親に愛想が尽き、思想が1回転半捻りして海賊に憧れるようになり、父親の軍艦にこっそりと忍び込んだ挙句遭遇したロジャー海賊団との交戦中にまたしてもこっそり小船でオーロ・ジャクソン号に潜り込み、そのまま海賊の道を歩むことになったらしいの」

 

 母さん……薄々想像してたけど……お転婆っぷりがマジでパネェ!! どんだけアクティブなんだ!?

 

 それにしても……『何で父親の宿敵の元に居たんだ』って思ってたけど……『父親の宿敵の元だからこそ居た』のか。交戦中にって……まさかの入り方だよ。海賊団の皆さんも驚いたに違いないよなぁ。

 そして祖父ちゃん。やっぱり娘にもそんなことしてたのか! 元はといえばアンタのせいじゃん!! つーか、娘で失敗したなら孫に同じ仕打ちしようとするなよ!! 本当に子育て下手だな! 息子は革命家だしな!!

 ……アレ?

 

 「父親に愛想が尽きてって……じゃあ俺、何でフーシャ村で生まれたんだ?」

 

 しかも祖父ちゃん、普通に同じ家に居たよね?

 え? ただの家出ならまだしも、海賊になってまで飛び出したのに出産時には戻ったの?

 

 「あぁ、それは手配書のせいらしいの」

 

 ジジイはあっさりのたまった。

 

 「お主の母親は一端の海賊として懸賞金も掛けられておったし、伝説のクルーとして知名度も高かった。まぁ、本人の能力にも原因の一端はあったようじゃがな。故に普通の町や村に紛れ込むことは出来なんだし、身重の身体では己の身を守るのにも限界がある。だからこそ、涙を呑んで父親を頼ったらしい。父親としても思うところはあったじゃろうが、産まれてくる孫のために娘の頼みを聞いたという所かの」

 

 ……つまりは、俺のためってことか。

 そうだよなぁ。母さんは本当に俺を愛してくれてたみたいだし、祖父ちゃんは獄中のロジャーの願いを聞いてエースを保護(なんだよな、アレ。多分。一応。)するような人だし。

 でも『涙を呑んで』って、祖父ちゃんはどれだけ娘に嫌われてたんだ? なんかもう、色んな意味で哀れになってきた。

 うん……俺はちょっとは祖父ちゃん孝行しようかな……海軍に入るのは絶対嫌だけど。

 俺がちょっとしんみりしていると、ジジイが小首を傾げた。(←全くもって可愛くねェ!)

 

 「何じゃい。続けて自分の父親のことも聞くかと思」

 

 「聞きたくない!!」

 

 「いや、でもやはり気にな」

 

 「気にならない!!」

 

 「・・・・お主のその顔立」

 

 「聞かん!!」

 

 ヤメロ、いらん情報入れようとするな!! 俺は関係ない、何も関係ない!! もう一杯一杯なんだよ!!

 俺は……俺はただのガープの孫だ!

 ……既に『ただの』なんてレベルの話じゃないと気付き挫けそうになったが、これ以上は聞かん。

 現実逃避と言いたきゃ言え! とにかく俺は知らん、何も知らん!!

 

 「………………」 

 

 「………………」

 

 しばらく無言の睨み合いが続いたが、折れたのはジジイの方だった。

 

 「……で、他に聞きたいことはあるかの?」

 

 よし、勝った!!

 

 「あるさ、そりゃあ。でもいいや。なんか疲れるだけな気がするし。追々自分で調べる」

 

 「そうか……では、ワシは帰るぞ」

 

 「おぉ、帰れ。そして2度と来るな」

 

 「冷たすぎんか!?」

 

 「気のせいだ」

 

 気のせいじゃないけどね。このジジイ、存在自体が疲れるんだよ。

 何はともあれ、俺とジジイの邂逅は終了したのだった。

 ……つーか、マジでもう出て来んな。




まさかの神再登場。しかしその出番もこれで最後。

 ユアンの能力はこのようにしました。決して強力ではない(だって直接的な攻撃力は皆無ですし)けれど、中々便利な能力になります。

 ルミナについてもちょっろっと書きました。本人は既に故人ですが、結構重要というか、カギを握る人なんです。

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