Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】 作:たい焼き
ぐだおも一応現在までのストーリーは終わりました。
フレンドのバサクレスマジで優秀
「貴様のその有り得ない程濃い魂・・・人間ではないな。」
「何を言うかと思えば・・・貴様のような人外が言えた物ではあるまい。」
いつの間にか黒と白の短剣を構えたエミヤが呪歌と対峙していた。
「貴様・・・まさか英霊、いや現界しているということはサーヴァントか?」
「む・・・骨董品とは云えども油断は出来んな。遠い過去の知識も会得しているというのは長い時を生き、知識を集めた証拠だ。」
マカロフを除いて周囲の者は話にすらついて行けない。知らない語句を並べられればこうもなろう。
「それと、私と彼らを同等視するな。彼らの格が下がる。」
「そうか分かったぞ。貴様、
「知った所で貴様の敗北は変わらんぞ。」
「フン、全員分まとめて魂を喰らえば結果は変わるまい。」
『いかん!!呪歌じゃ!!』
ゼレフの悪魔と聞いた途端に怖気づいた総長達は怖れて撤退を始めるが、それと正反対の方向、呪歌の怪物目掛けて突撃を始める影が四つあった。
エミヤが黒と白の夫婦剣である
エルザは鎧を換装、
ナツは動きを止めた足から呪歌の顔面へとよじ登り、炎を纏った足蹴りを加える。
「小癪な!!」
呪歌は呪歌のような溜め動作が不要な魔力弾を口から連射するが、ナツは身を翻しこれを回避、流れ弾はグレイや他のギルドマスター達の元へ吸い込まれる。
「アイスメイク・・・『
総長達が間に合うまいと思っていた防御壁はグレイの一瞬の造形魔法によって防がれる。
「アイスメイク『
「ゴォア!!」
返す刀の代わりにグレイが氷の矢を斉射、呪歌の脇腹を抉る。
「今だ!!」
一撃の破壊力を増加させる『
同時に両手の拳に炎を纏わせたナツもハンマーナックルを顔面目掛けて振り下ろす。
「
轟音と斬撃が響き、呪歌から魔力と肉体を削ぎ落とす。
「バ、バカな・・・だが、このままでは終わらんぞ。」
呪歌が最後の力を振り絞って呪歌を唱えようと残った魔力を口に集める。
だが三人は大技を放った反動で動けない。
怪物から死の魔法が放たれようとされていたが、その口が二度と言葉を発することはなかった。
「過去の亡霊ごときが
その手に担っているのはまるで山を切り裂けるのではないか?と思える程に長い刀身を持つ剣。それはメソポタミア神話に登場する、戦いの女神ザババが持つ『翠の刃』であり、『斬山剣』という異名も持つ剣。
れっきとした神造兵器ではあるが、エミヤはこれを使えるのには理由がある。
かの英雄王の貯蔵庫の中から射出されたそれを通常よりも長い時間を掛けてなんとか解析、それを投影出来るレベルにまで型落ちさせた物としてなら投影出来るようなったのだ。
そのため本物程の神秘も破壊力も持たないが、丘程度の巨人を斬るには十分過ぎる程の切れ味と刀身を持った剣となったのだ。
「ふむ。名付けるなら『斬怪剣』とでも言うべきか。」
呪歌は虚・千山斬り拓く翠の地平を唐竹割りで振り落とされた結果、真っ二つになってその場に崩れ落ち、やがて残った残骸も霧散し、元の笛の形に戻った。
「ゼレフの悪魔がこうもあっさり・・・」
「こ・・・こりゃたまげたわい。」
「かーかっかっかっかっ!!」
「す・・・すごい・・・」
マカロフはギルドの仲間の活躍を誇り。定例会に参加していた総長達は各々驚嘆の言葉を言い、カゲは自分たちが喧嘩を売った相手に恐怖していた。
こ、これが、妖精の尻尾最強チーム!!
ゼレフが創り出した最悪の悪魔の内の一体を容易く葬り去ったその実力は、どれほどの物かは再び調べるまでもない。
世界中探しても、これ程の力を持った魔導師はそう多くはないだろう。
「いやあ経緯はよくわからんが妖精の尻尾には借りができちまったなぁ。」
「なんのなんのー!!ふひゃひゃひゃひゃ!!」
マカロフの高笑いがクローバーの町に響き渡るが仕方の無いことだろう。ギルドのメンバーを自分の子のように大切に想っているマカロフとって最高の賞賛であろう。
だがそれも長くは続かない。
途中でぎこちない動作でその場から立ち去ろうとし始める。
遅れて妖精の尻尾最強チームのメンバー、定例会参加者がマカロフの視線があった方向へ目を向ける。そこには呪歌が倒れていた元定例会会場。
あった建物は呪歌が倒れた衝撃で粉々になってはいなかったが、最後に呪歌に止めを差した時、エミヤの宝具の斬撃によって真っ二つに切り裂かれており、見るも無残な残骸に変わり果てていた。
「ははっ!!見事に真っ二つになっちまったなぁ!!」
ナツだけが面白おかしく笑っているが、既に妖精の尻尾の者達は退散を始めている。
「エミヤ!!エミヤは何処だ!!」
マカロフはこんな惨状を引き起こしたエミヤを呼び立てるが、返事は返ってこない。
代わりにマカロフの前に一通の手紙が落ちて来る。エミヤからの物だ。
『急用を思い出したため先に帰らせてもらう。定例会場は見ての通りだが大した事はないだろう。子が起こした問題の責任は親が取る物だからな?』
「エミヤッ!!」
視線が自分から離れた隙に霊体化してその場を離れたのだ。ご丁寧にカゲが乗ってきた魔道四輪車に乗って帰ったため、帰りの手段は徒歩に頼らざるを得ない。
「捕まえろーっ!!」
「総長・・・顔を潰してしまって申し訳ありません。」
「いーのいーの。どうせもう呼ばれないだろうし。」
マカロフの当面の問題はエルザ達が出した損害の弁償であることは間違いない。マカロフのストレスは貯まる一方であることが非常に悔やまれるが、一行にとって然程大きな問題ではないであろう。
鉄の森によるギルドマスターの定例会を狙ったテロ事件は一躍大ニュースとなり、国中に知れ渡った。
カゲを含め、鉄の森のメンバーの大半は逮捕され、牢獄入りが確定している。
少しは改心してから出て来ることを祈っておこう。
なお、エリゴールだけは捕まっていないらしい。行方不明とのことだ。
まあ不治の傷を付けられた奴がこれ以上何か出来るとは思えないが、復讐心が更に増強されないか懸念されるが。
まあ、終わってしまった過去はただの現実だ。過去を振り返ってばかりでは前には進めない。
それに今日はあの約束の日だ。
エルザを含め、妖精の尻尾のメンバーはより一層強くなった。オレも鍛錬を怠ればすぐに腕が錆びついて抜かれてしまうだろう。
だがまだ負けるつもりはない。少なくともオレが現界している内は負ける訳にはいかないからな。
何故ならオレは『妖精の尻尾のサーヴァント』であり、妖精の尻尾最強の盾であり向かい来る敵意を打ち倒す剣で在り続けなければならないからな。
「さてエルザ。準備は出来たか?」
「無論だ。私が持てる最強の鎧達を持って来た。」
ギルドの前は野次馬で溢れかえっていた。大半がギルドのメンバーであり、半ばお祭り騒ぎとなっており、賭け事も行われているようだ。元締めはカナがやっている。
「ところでカナ。賭けで儲けた金は全て没収する。君がクエスト中に出した酒代の返済に充てさせてもらうからな。」
その言葉の後には血の気が引いたカナの姿があった。もっとも、賭けの儲けだけで返済しきれる額ではないが。
「エミヤ。あの時の雪辱を晴らさせてもらうぞ。」
「ふむ、良かろう。ならば恐れずしてかかってこい。」
エミヤが始めに構えたのは彼を象徴する剣であり、彼がもっとも愛用している二振りの陰陽剣『干将・莫邪』
一方エルザも一番体に馴染む基本の鎧を纏う。
両者共にまずは小手調べを行うつもりであり、もっとも相手に知られた武具での相対は、手の内の探り合いを表す。
「あんなに強いエルザの雪辱って一体・・・」
ここでエルザが受けた雪辱について全く知らないルーシィが恐る恐る尋ねる。鉄の森のギルドメンバーの大半を相手に、あれ程圧倒的な強さを見せつけたエルザが恥を受けるとは思えないのだ。
「・・・これは聞いた話なんだが・・・。エルザがS級昇格試験を受けた時の話だ。あの試験でエルザの相手を務めたのがエミヤだったらしいんだが、その時あいつはあの手に持ってる白黒の双剣だけで当時のエルザの全てを切り払ったらしい。」
「俺はエルザに一度も攻撃させなかったって聞いたぞ。」
人によって持っている情報に誤差があるが、エルザがエミヤに惨敗したというのだけは間違いない。
その噂が真か偽かは当人達しか知らないが、賭けでは若干エミヤの方に人気が傾いている。
「あのエルザが負けたなんて・・・」
エルザの強さは間近で見れば見る程よく分かる。少なくともルーシィはエルザ以上の魔導師を見たことは無いと断言出来る。
だがエミヤの強さも十分過ぎる程理解出来る。死神の異名で怖れられたエリゴールをほぼ無傷で倒した上に、ゼレフの悪魔を真っ二つにしたあの剣の真髄は追求するまでもない。
「やはりその剣を選んで来たか。」
「そう言う君もそうではないか。その鎧は普段からの愛用品だろう?」
「エミヤこそ、その剣が一番の愛用なのだろう?」
「一番と言うわけではないが・・・一番自分に馴染むというのなら間違いないよ。」
「でなければあの時の戦いは私への侮辱になるからな。」
「魔法を使わなかったとはいえ、容赦はしなかったさ。」
「ああ、そうだな。」
両者の準備は既に終わっている。後はマカロフから開始の合図を受けるだけ。
「・・・始めぃ!!」
先手を打ったのはエルザだ。鋭い横薙ぎがエミヤの首元を襲うが、エミヤは干将をエルザの斬撃の通り道に置いて防御する。
返しの刃で振るわれた左斜め下からの切り上げは右手の莫耶で弾く。
剣戟は更に続き、鉄と鉄が打ち合い火花が散る。
試合はエルザが圧倒しているように見えるが、どうも様子がおかしい。
先手を打ち続けているにも関わらず、エルザは攻め切れていないのだ。
(やはりおかしい。まさかこれは、打たされている!?)
エミヤは防御を主にして立ち回っているが詰めが甘く、度々隙が出来る。
だがその隙をどれだけ付いても、必ずそこには剣が待っている。そこからのカウンターで前回は負けたのだ。
ここまで打ち合えば誰でも分かるだろう。
エミヤの戦術の基本は防御であり、堅実な立ち回りで敵を消耗させ、勝負を急がせた相手に作られた隙を打たせ、必殺の一撃を必殺の一撃で相手に返す。
この戦い方は英霊エミヤを英霊とたらしめるエミヤ唯一の物だ。
この戦い方でエミヤは、生前の聖杯戦争や各地で起こった紛争を生き抜き、死後守護者になってからは自分よりも格上の英霊に対して五分に近い戦いを挑むことが出来た。
かのクランの猛犬の獣の如き猛攻を防ぎ切り、狂気に狂ったギリシャ神話最強の大英霊に互角に張り合い、12の命の内の6つを殺した。
それは自分が足手まといにならないために、かの騎士王の隣に並ぶために編み出された剣術なのだ。誰かを守るための戦術が弱いわけがない。
一旦距離を取るためにエルザが後ろに跳ぶ。だがエミヤはそれを追いかけない。
エルザが跳躍中に態勢を整え、迎撃のために剣を構えているのが見えたからだ。
両者が距離を取ってしばらく睨み合う。
「エミヤ、やはりわざと打たせているな?」
「ああ、元来超常的な直感や才能の持ち主相手に私は才能で負けているのでね。ならば自分で自分が有利な状況を作ることでしか勝ちが拾えないという結論に至ったからな。」
「謙遜だな。だが手品も種が分かってしまえば対処はし易い。」
エルザが武器をより長いロングソードに変え、再びエミヤに接近する。
ショートソードよりも長く質量が増えたことで間合いが伸び、一撃の威力は増す。
それだけ一撃毎の隙も増えるが、エルザの一閃は速度が落ちたかどうか分からない程度にしか変わらない。
その上一撃の重さが増えたことによってエミヤは反撃に転じることが難しくなり、受け流しても剣を弾かれてしまい、エルザの次の攻撃の前の隙を付くことが出来ない。
「はああぁッ!!」
エルザの剣閃は更に速く鋭くなり、やがてそれは一時的とは言え英霊のそれを凌駕する。
今のエルザを突き動かしているのは、エミヤに勝ちたいと思う執念だ。
妖精の尻尾に入った頃から面倒を見てくれた男であり、憧れだった男でもある。
剣術の基礎を教えてくれたのも彼だ。
(だからこそ、私はエミヤを超えたいッ!!)
エルザの剣閃がついにエミヤを捉える。ようやく届いた一撃は、惜しくも両手の干将と莫邪で防がれるが、双剣は共に宙を舞う。
「貰った!!」
徒手の状態のエミヤにエルザの剣を防御する手段は残されていない。エルザの剣の速度なら換装で武器を取り出す前に決着を付けられる。
これまで一度も勝てなかった相手にエルザが勝利を確信した。エルザの剣がエミヤの首元へ向かって敷かれた勝利へのレールを辿る。
皆、エルザの勝利が確定したと思い込んだ。エルザに賭けた者もただ純粋に応援していた者も見たこともない戦いを見れた者もただ喜びに溢れる。
だがそう簡単にはエミヤも負けられない。
格が劣るとはいえ、エミヤは英霊の一端なのだ。決して実現し得ない理想を追い求め続け、生きてる間ただの一度もそれを諦めなかった男が英雄となった存在。
英霊とは生前の英雄が一番力に満ちていた時を具現化した存在。故に素手になったからとはいえ慢心していい相手ではないのだ。
「・・・フッ!!」
エルザが突き出した剣を横に半歩引いて空振りさせ、剣を持つ手を掴んで一本背負いを決める。
「なっ!?」
それだけで終わるエルザではない。咄嗟であっても受け身はしっかりと取り、余計なダメージを避ける。
そして顔を上げた先に待っていたのは、絶好の隙を付いて放たれたエミヤの蹴りだ。
それも剣の腹で防御する辺り、エルザもかなり実戦慣れしているということだ。
エルザが後ろに吹き飛び、両者の間にまたも距離が生まれる。
宙に打ち上げられた干将と莫邪も落下し地面に刺さるが、そこはエルザがいる地点であり、エミヤからは程遠い場所である。
「・・・まさか徒手もいけるのか?」
「徒手だけではない。剣に槍、弓・・・他にも出来る物は何でも修めた。秀でた才能が無いからこそ、常人よりも多くの技能を己の限界まで伸ばそうとしたのさ。」
一つの才能が究極の域に至らないのなら、出来る物全てを磨いて対抗出来るだけの力にしようとした結果だ。
「ところでエルザ。敗北が怖いなら今すぐにその場から離れるのだな。」
エミヤはそれから口を開き、ゆっくりと誰にも聞こえない程の声で何かを呟く。
「何を言って・・・ッ!?」
エルザの近くに突き刺さった干将莫邪が突如爆発を起こし、言葉を遮るようにエルザを爆煙で包み込む。
爆発は規模こそ大きかったが、エルザはなんとかこれを回避していた。
「莫迦な!?自分の武器を自爆させるだと!?」
武器に内包された魔力を使っての爆発だということは分かったが、それが信じられなかった。
大抵の場合、戦士が自分の武器を捨て駒扱いで自爆させることはしない。武器は戦士にとって相棒に近い存在であり、攻撃にも防御にも必須である。
つまり仮にその手段を持っていたとしても、愛用している武器を自爆させることは、プライドや誇りといった物を傷付けるため、精神的な苦痛を味わうことになる。
換装を使う魔導師ならその場凌ぎで替えの武器を用意出来るが、壊した武器が帰って来るわけではない。
そのため武器を爆弾代わりに使う者は存在しないといってもいい。
「それはお前の愛用の武器ではなかったのか!?」
故にエミヤが取った行動の真意が分からなかった。何故そこまで容易く武器を破棄出来るのか、と。
「愛用とは違うな。私はアレに特別な感情を抱いているわけではない。」
「ッ、だ、だが隙だらけだ!!」
本能的に危険を察知したエルザが剣を振りかぶって速度と共に重さを乗せた唐竹割りで勝負を急ぐ。だがそれはエミヤの手のひらの上に足を突っ込むことに等しい。
「・・・甘いな。」
響く剣戟の乾いた音。エルザが放った唐竹割りはエミヤが持つ黒と白の双剣に防がれる。
「なっ!?それはさっき爆破した剣!?」
それは先程エミヤ自身が爆破したはずの双剣だった。これにはエルザだけでなく周りのギャラリー達も驚いた。
「二振り持ってたのか?いやだがひと目見ただけでこの世に二つとない名剣と分かるぞ。さっきのは爆弾を仕込んだ偽物でこっちが本物なのか?」
「いや、先程の物もこれも偽物だ。」
「何?・・・まさかエミヤ、お前の魔法は!?」
「気付いたかね?」
一度破壊された剣と寸分違わぬ剣。そしてエミヤが放った偽物という言葉。
「エミヤ、お前の魔法は『武器を複製する魔法』なのか?」
「大体だが正解だ。君達でいう私の魔法は、『武器の類ならば、一度見ただけで複製し貯蔵する』という物だ。名を
「武器を複製・・・つまり今まで見せた剣は全て偽物ということか?」
「だが安心するなよエルザ。例え偽物だとしても、それらが本物に敵わないという道理は無いぞ。」
エミヤの頭上に剣が出現する。おそらく投影品であろうが、だからとはいえ油断は出来ない。偽物だとしても切れ味や能力は本物と同じなのだから。
「これより君が挑むのは無限の剣。さあ、臆せずかかってこい!!」
なお、評議員の使者のカエルは存在毎消されました。
仕方ないね。