Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】 作:たい焼き
モチベが上がらないからとはいえ、まだ完結していない作品もあるのに新しい作品を投稿・・・だと・・・?
作者の脳がパンクしてまう
プロローグ
―――酷い話だ。
古い鏡を見せられている。だがオレは古ぼけたそれを、美しいと感じていた。
そこでオレは思い出した。後悔と絶望に押し潰され、心を塗り替えられながらも心の片隅から消えはしなかったオレを理想を。
ああ、そうだったな。こういう男が居たんだったな・・・。
いつからだったのだろうか。『正義の味方になる。』という夢物語を追いかけたのは。
子供の頃、誰もが憧れる夢の一つだ。だがそれを実現することは出来はしない。
正義の味方とは秩序を示す者であり、全体の救いと個人の救いは決して両立しない物だから。
その事実に気付いてしまったのは皮肉にも、最後まで理想を追い求め続けたオレ自身だった。
摩耗した記憶の果て。己の死後を売り渡して世界の駒に、正義の味方からただの殺し屋に成り下がったオレが得てしまった望まぬ答え。
自己矛盾に食いつぶされたオレは、やがて自己の救いを一つの可能性に賭けるようになる。
『自分殺し』
それを遂行しろと言わんばかりに運命がオレの味方をした。第五次聖杯戦争。そここそがオレの望みを叶えられる唯一の機会。
復讐に囚われたオレはかつての相棒に剣を向け、己のマスターであり遠い昔に片想いし憧れていた女性を裏切りながらも願望を叶えようとした。
そして迎えた運命の分かれ道。願望を唯一叶えられる機会でオレは、かつての自分と剣を交えた。
無限の剣が墓標のように佇む荒野に空に浮かんだ歯車が機械的に回り続ける世界。オレに残った心象風景であり、オレが辿り着いた理想の果て。
ここで過去と未来のオレの剣戟が繰り広げられている。
勝てるどころか勝負にすらならないと思っていた。何も知らない雛鳥が、成長しきった成鳥に敵うかどうか問われれば考えるまでもないだろう。
オレは終始圧倒していた。負けずに食らいつく雛を常に後手に回し、致命傷を与え続けた。
だが腹を貫かれようが、血を大量に流そうが奴の心は折れなかった。
幾ら彼女の鞘による加護があったとしても、精神は別だ。
心を折り続ければいずれ、抱いた理想の過ちに気付くだろうと思っていた。
だが奴は倒れはしない。これが最後を何度も見せつけられた。
オレが抱き始めた苛立ちは怒りに変わり、思考を単調にする。
決着を急いだオレに対し、奴の剣が遂にオレを捉えた。
一刻と近づく決着。そこでオレは気付かされた。
―――オレの理想は正しかった。偽りだったのは理想を貫き通せなかったオレの心その物。
始めは養父が見せた顔が、衛宮切嗣が抱いた理想が綺麗だったから憧れただけだったし、それが紛い物だったと最初から気付いていた。
だがそれでもエミヤシロウという男は理想を追いかけ続けた。
その理想が偽物でも、誰かのために成りたいという願いは間違いではなかったのだ。理想を追い求めるその過程は、歩んだ道は紛れもない本物だったのだ。
オレは負けた。幾ら力が勝ろうが魔術に分があろうが、心で負けていれば勝てるわけがない。
オレに残ったのはもう何もない。魔力も願望も全て霧散してしまった。
「ならば現界できる残り全ての時間。サポートにまわるとしよう。」
聖杯戦争は終わった。聖杯が破壊されたことでそこからのバックアップは消滅。サーヴァントである私は消えるしか道がなくなった。
死に体となった私が最後に立っているのは柳洞寺裏にある草原。奇しくもそこは、生前の聖杯戦争を共にした相棒との別れとなった場所。
「皮肉だな。」
最強の聖剣の輝きと夜明けに差し込む光によって出来た黄金の丘でオレは自嘲する。
―――シロウ、貴方を、愛している。
外道に堕ちた今でも鮮明に思い返すことが出来るほどに焼きついた記憶。今となっては本当に懐かしい。
「アーチャー!!」
後ろからこれまた懐かしい声が聞こえる。振り返らなくとも声の主は分かる。彼女もまた、オレにとって大切な人だったのだから。
遠坂凛は今にも泣き崩れそうな顔であった。そんな顔は彼女には似合わない。
「参ったな・・・。この世に未練なんてなかったんだが・・・」
この先、彼女が二度とこんな顔をすることがないように一つ、課題を与えることにする。
「凛、私を頼む。知っての通り頼りないヤツだからな。 ―――君が、支えてやってくれ。」
「うん、わかってる。わたし、頑張るから。アンタみたいに捻くれたヤツにならないよう頑張るから。」
彼女の顔は私には勿体無い程の眩しい笑顔に変わる。やはり遠坂凛はこうでなくては遠坂凛ではない。
「――――答えは得た。」
安心した。これでもう、衛宮士郎としての未練はない。私はオレとして未来を歩める。
「大丈夫だよ遠坂。俺もこれから・・・頑張っていくから――――」
聖杯では決して叶えられない報酬を貰った。心に刻まれたあの顔は摩耗して消えることはない。いや、消し去ってはならない。
こうして私、いやオレの、エミヤシロウの物語は終幕を迎えた。
オレの意識が覚醒する。辺りを見渡しても自分の体以外は真っ暗の闇に染められている。
「ここは・・・聖杯の中か?」
不思議と理解出来た。聖杯戦争に参加したサーヴァントが座に戻る時に聖杯を通して座に戻るということは聞いていた。
喪失感の無さに違和感を抱いているということも無い。通常ならば座に戻るまでの意識は奪われるはずなのにそれも無い。はっきり言えば異例だった。
この感覚は召喚される直前に似ていた。
「だが何だこの違和感は。私の記録では呼び出されるのは第五次聖杯戦争と並行世界の月での聖杯戦争モドキだけのはずだが。」
それら二つでの感覚は覚えている。だが今回のこれはどちらにも当てはまらない。
「エラーか?全く。粗悪品にも程があ・・・ッ!?」
前触れもなくそれは起こる。人の脳では焼き切れそうな程の膨大な記憶・記録といった類の物がオレの中に流れ込んで来ているのだ。
「ア、グッ・・・これは・・・聖杯の記録か・・・?」
オレの中で再生されるのは過去の聖杯戦争の記録や英霊として祀られている先人達の体験や宝具、抱いた感情の全て。その中には養父である衛宮切嗣が参加した第四時聖杯戦争の物も含まれている。
「初めて見たが・・・グゥ・・・中々に惨たらしい物だな。」
それは聖杯を手に入れるためにどんな手段も使う魔術師達の残酷な血の流し合い。自分が参加した聖杯戦争がどれだけ異常だったのかということが良く分かる。
そこに先程感じた違和感が再び襲い掛かる。これは紛れも無く召喚の前兆だ。
「ハァ・・・まさか、座の私の記録の代わりに聖杯の中の記録が流し込まれたというのか?」
霊体としての体が再構築され、魔力も与えられる。
「答えを得た直後にこれか。いいだろう。少々遅いが、これから頑張っていくとしよう。」
黒一色の世界が光で溢れ、オレの体が聖杯の中から転送される。
現界が終わり、オレのマスターであろう人がオレを迎える。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に従い参上した。ふむ、今の気分は重畳と言ったところか。君も私も運がいい。」
少々歪な世界だが、オレが過ごすにはこれ以上はないだろうな。
一番書きたかったアーチャーさんの二次小説です。
設定などはまた後日投稿しますので、今後ともよろしくお願いします。
感想等お待ちしております。