Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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Fate/GOの近況報告

度重なるギル様戦法によるガチャぶん回しによってピックアップ対象であるスカサハとジャック・ザ・リッパーの両者を入手。

総課金額は90000円内使用額は60000円程度。

始めて貰った利益還元金全額とほぼ同額である。ナニヤッテンダオレ・・・

まあ普通に使えるから決してマイナスではないはずです。

むしろリッパーがバランスブレイカーの予感がします。


支配する者、される者

 戦争も終結に向けて工程を踏んでいた。

 

 圧倒的な兵力に加えて質をより良い幽兵に変えて押し込んだ幽鬼の支配者が妖精の尻尾を壊滅させかけていた。

 

 大半の魔道士が倒れ、ギルドの建物に接敵した幽兵は丸太を攻城兵器のように使って破壊を試みている最中だ。妖精達の心を折るために。

 

 幽鬼のギルドの内部も決して妖精の尻尾が優勢とは言えない。

 

 エレメント4を全て倒してもまだ『鉄竜のガジル』が居る。それに加えてギルドマスターのジョゼも未だ健在である。

 

 エレメント4を倒したとはいえ決して余裕で勝利したわけではない。全員手痛いダメージを負った状況で更なる強敵が現れればひとたまりもない。

 

 ジョゼにとってのそれは弱った獲物を狩り取るだけの楽な仕事であろう。

 

 「な・・・何だこの感じは!?」

 

 エレメント4をそれぞれ一人づつ下したグレイとエルフマン、そこに巻き込まれたミラジェーンは寒気を感じる程の禍々しい魔力と対面していた。

 

 聖十大魔道の一人として名を馳せる彼は紛れも無く別格。抵抗としたグレイとエルフマンの二人をたった一度の魔法で戦闘不能にまで追い込んだ。

 

 エルザも更にダメージを重ねた体では長くは保たないだろう。

 

 「仲間が私の心を強くする。愛する者達の為ならこの体などいらぬわ」

 

 「強くて気丈で美しい・・・なんて殺しがいのある娘でしょう・・・」

 

 実力者同士の戦いは熾烈を極めゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方でそこから離れた一室では捕まったルーシィが磔られ、的代わりとして鉄の苦無の脅威に晒されていた。

 

 暇を持て余したガジル・レッドフォックスが遊んでいる中、周りの幽鬼の支配者のメンバーがオロオロしながら眺めていた。

 

 彼にとって依頼の詳細などどうでもよく、依頼の過程でルーシィが死んでしまって構わないらしい。

 

 「クス・・・」

 

 「何か言ったか?女ァ」

 

 「アンタたちってホントバカね。可哀想で涙が出てくるって言ったのよ」

 

 「へぇ・・・この状況で虚勢をはれるとは大したタマだ」

 

 虚勢ではない。怖いと言えば嘘になる。しかしルーシィは怯える必要は無いと根拠が無くても確信していた。

 

 「世界で一番恐ろしいギルドの影に毎日脅える事になるわ。一生ね」

 

 その顔はいつものような頼りなく怯えた顔ではなかった。ルーシィが今の状況で見せられる最高の強がりであろう。

 

 「そいつは面白そうだな。ちと試してみるか?」

 

 今まではガジルも故意に外していたが、今度はそんな気は一切ない。手から放たれた苦無は一直線にルーシィの額に迫り刺さる事はなかった。

 

 金属同士がぶつかり合う甲高い音。ガジルが放った苦無は突如として飛来した黒塗りの短刀によって撃ち落とされる。

 

 「テメェは・・・」

 

 「エミヤ・・・さん?」

 

 ガジルにとって忘れられる訳がない男。攻め込む前まで自分達の足止めをすると言い放って圧倒的な物量を前にして、殿として見事に立ち回って見せたあの男を。あの時と同じように紅い外套と黒いボディアーマーがよく目に残る。強いて言えば手に持っている獲物が違う。

 

 逆にルーシィから見ればいつもと違う彼に戸惑いを隠せなかった。皮肉を含んだ言葉も無ければ、何処か安心させる優しさも感じないからだ。

 

 「・・・」

 

 雰囲気に若干差はあれど、あれは間違いなく現時点で一番の脅威。逆に言えば始末してしまえば幽鬼の支配者の勝ちは確定する。

 

 「あの時も今も匂いが全く無い・・・テメェ一体何者だ?」

 

 「・・・ルーシィ、大丈夫か?今解放しよう」

 

 現れて早々彼はガジル達敵の前を素通りし、ルーシィの前に向かった。

 

 「テメェ、無視してんじゃねぇ!!」

 

 怒りに任せてガジルが突撃する。腕を鉄の剣に変えて斬り掛かるが、彼の持っていた剣で往なされ、返しの刃で体勢を崩され蹴り飛ばされ元の位置まで戻される。エミヤはそれをガジルに視線を向けずに行った。まるで慣れ過ぎた作業のように。

 

 「エミヤさん・・・」

 

 エミヤはその声に言葉を返さなかった。最小限の動作で目的を果たそうとするその姿勢は機械その物だ。

 

 手が自由になってようやく楽に出来るようになったルーシィは、エミヤが一息抜く仕草をしたのを確認した。

 

 「・・・これでよし・・・さて、そこの鉄の君」

 

 「あ?何だよ?」

 

 「一つ聞きたい。彼女にはそれ相応の防御魔術を仕組んでいたはずなのだが・・・どう破った?」

 

 「オレは鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だぜ?滅竜魔導士はそれぞれの属性に合う物を食える。後は分かるな?」

 

 「宝具の刀剣を食ったか・・・」

 

 ガジルは鉄を食える。幾ら宝具とはいえ、大半の剣は鉄を打って作られている。偽物が本物に勝てない道理が無いように、巨大な神秘を内包しているとはいえ、それで食えないという道理もないのだ。

 

 「あの剣は極上だったぜ。あそこで全部食っちまうのは勿体無いと思えるくらいにな。おかげ様で今はすこぶる調子がいいぜ」

 

 「・・・ところで剣を食った時の得た魔力はまだ体に残ってるな?」

 

 「だったら何だよ?」

 

 質問は一つじゃなかったのかという疑問は置いておくとして、ガジルはそれに『はい』と変わりない答えを出した。

 

 「ちょうどいい。そこに転がっている短刀が見えるな?」

 

 「あ?」

 

 全員の視線がそこに向かう。エミヤがルーシィを助けるために放った短刀『ダーク』だ。

 

 「ならばよく見ておけ」

 

 全員がその剣に意識を集中する。するとその剣が突如として爆発を起こし、跡形も無く消える。

 

 「これがどういう意味か分からない程バカではないだろう?」

 

 「テメェ・・・」

 

 ガジルとルーシィはすぐに意味を理解した。

 

 エミヤが投影を行う際、対象の構成物質を全て魔力で補う。純粋な魔力で出来たそれを燃料に発動する魔術として『壊れた幻想』がある。

 

 食べて取り込んだとはいえ、それはエミヤの魔力である事は変わりない。食べた剣の破片でも残っていれば火種としては十分。

 

 つまり今のガジルはエミヤの指示で爆発する爆弾と化しているのだ。

 

 「ならその前にテメェを倒せば問題ねぇ!!」

 

 「全くだ。だが貴様を倒すのは私の役目ではない」

 

 その言葉の後すぐに床が突き破られ、一頭の竜が、ナツが姿を現した。

 

 燃え盛る炎を纏った竜は、下手をすれば融点1538℃と言われる鉄も溶かせるだろう。

 

 「エミヤ、譲れ。こいつはオレがブン殴らなきゃ気がすまねぇ」

 

 ナツも我慢の限界だったのだろう。

 

 「元よりそのつもりだ。私が行くべき場所が他にある。任せるぞ」

 

 エミヤはそう言い残し、霊体化してその場を後にした。

 

 二人の滅竜魔導士、もとい二頭の竜が激突するその場はまさに激戦区と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく時間が経った。途中に妖精の尻尾のギルドが倒壊する等もあったが、あの後ナツは苦戦はすれども見事ガジル・レッドフォックスを下し、勝利を収めた。

 

 その影響で幽鬼の支配者のギルドが倒壊寸前だとなっていた。

 

 エルザとジョゼの戦いはジョゼが圧倒的に優勢だった。エルザは体力と魔力がほぼ枯渇した状態で頂点に近い魔道士と戦っているからだ。

 

 ジョゼ率いる幽鬼の支配者が引き起こした今回の戦争はのそもそものきっかけは幽鬼の支配者への依頼だが、ここまで広がってしまったのはジョゼが妖精の尻尾に抱いた嫉妬による物だった。

 

 幽鬼の支配者が一番で無ければ気が済まない。そんな子供が抱く妄想の延長のような理由によって多くの魔道士が傷ついた。

 

 やがてジョゼの魔法によってエルザが拘束される。ジョゼがそれに魔力を込める度に締め付ける力が増し、エルザが負った傷から血が流れ出す。

 

 これを続ければ確実にエルザが死ぬだろう。だがそれに反してエルザは魔法を解くために力を込めて無理矢理破ろうとするが、その度に魔法が強まっていく。

 

 だが突然魔法が切り裂かれ、エルザが解放される。エルザでもジョゼでもない第三者の手によって。

 

 ではその第三者とは誰か?

 

 「彼女は解放させてもらうぞ・・・貴様如きが弄んでいいような女ではない」

 

 「貴様は・・・!!」

 

 「エミヤ・・・」

 

 ジョゼにとっては魔導収束砲で消し去ったと確信していた男であり、エルザ達妖精の尻尾にとっては総長に次ぐ信頼を集めている守護者。

 

 この男が動いただけで事態は一気に終息へと加速する。

 

 「貴様等亡霊の業によって多くの者達が傷付き、涙を流した。私に貴様等を裁く資格はないが、報復くらいはさせて頂こう」

 

 私達二人がな、と言葉を続けた。一瞬遅れてジョゼと同等の魔力の奔流が皆にその存在を認識させる。

 

 「そうじゃな。後始末は大人の仕事じゃ」

 

 その魔力を放っているのは既に全盛期を過ぎたのではないかと思わせる老人。彼こそ国一番を誇る妖精の尻尾の総長であるマカロフ・ドレアー。

 

 「全員この場を離れろ」

 

 エミヤは負傷した者達に撤退を促す。確実に邪魔になるからだ。

 

 「でもよぉ、お前はどうすんだ?」

 

 「そうだ。幾らエミヤでも二人の戦いの中じゃ邪魔になるんじゃねぇのか・・・?」

 

 「心配はするな。エミヤなら己と相手の実力の差くらい計れるさ」

 

 「フッ・・・真っ先に脱落しなければいいですがねぇ」

 

 等々、それぞれの心中が伺えるが、それらは全て意味の無い物だ。

 

 「何を言う。私は妖精の尻尾の仲間(かぞく)だろう?それが最強でない筈がない」

 

 エミヤが少し見せた顔には笑みが浮かんでいた。見誤っていることもなければ虚勢を張ってるわけでもない。

 

 「早く行きたまえ。あまり総長に心配をかけるな」

 

 「・・・すまない。後は任せた」

 

 エルザ達がその場を後にしたのを確認し、前に向き直る。

 

 半壊したギルドの中心には常識から逸脱した魔道士が三人。これから始まる決戦は常識で計れる物ではなかろう。

 

 「お主には色々と迷惑をかけたのう。お主も休んでいてはどうかな?」

 

 「いやいや、そちらも病み上がりの上に本調子ではないでしょう。そちらこそ隅で見物していてはどうかね?」

 

 方や魔力をゼロにされて今の今まで寝込んでいたご老体。もう片方は先程まで孤軍奮闘の状態で無限に近いジョゼの幽兵を抑え続けていてボロボロ。

 

 どちらが戦っても大差はない。

 

 「ならばここはやっぱりアレかのう・・・」

 

 「ええ、アレが悔恨も残らないでしょう」

 

 今度はマカロフとエミヤが向き合ってお互いに拳を相手に突き出す。そこにとある呪文を唱えれば優劣が決まる。

 

 『最初はグー、じゃんけんポン!!』

 

 これだけは太古の昔から恨み一つ残さず平和に優劣を決められる遊戯のひとつであろう。

 

 「フッ、私の勝ちのようだ」

 

 「ぬぅ・・・お主確か幸運ステータスDだったはずじゃが・・・」

 

 「さて、もうよろしいですかな?」

 

 待ちに待たされ、いい加減苛立ちが頂点に達しかけていたジョゼ。

 

 「ああ、まあどちらにしても結果は変わらないだろうがね」

 

 「大した自信だな。雑兵風情が」

 

 ジョゼからの殺気と共に漏れだす魔力も上がる。

 

 「勘違いするな。雑兵が大将の首を取れないという道理など無いだろう?」

 

 言葉を言い終えた刹那、地は揺れ海は荒れ、空が裂ける。天変地異という物が発生した。

 

 自然に発生する物を除いた場合に起きる原因として『常識を逸脱する程の魔力がぶつかり合う』という物が存在する。

 

 それの発生はつまり、エミヤが発した魔力がジョゼと同等以上であるということを現す。

 

 「ッ!?」

 

 ジョゼが気付いた時には既にエミヤの剣がジョゼの喉を捉えていた。なんとか躱すがそれこそ後コンマ単位で遅かったら命を手放していた程だ。

 

 不意打ち紛いの一撃では終わらない。二の太刀に続けて攻め立てる。

 

 二人の速度は既に常人の肉眼では捉えられない程の物になっていた。

 

 「貴様・・・ッ!!その魔力と戦闘技術・・・聖十大魔道のそれを超えて・・・ッ!!」

 

 「人間のそんな称号など当てはまらんからな」

 

 ジョゼも切り返すために魔法を放つが、全て躱されるか叩き斬られる。

 

 「今の攻防で仕留めるつもりだったが、存外しぶといな」

 

 「もう許さん!!最大火力の魔法で貴様を消滅させてやる!!」

 

 更に高まるジョゼの魔力。だがエミヤは表情を崩さない。

 

 「そちらが切り札を見せるのならば、此方も出さねばならないな」

 

 エミヤも距離を取って構えを取り、詠唱を開始する。

 

  ――――― 体は剣で出来ている。( I am the bone of my sword.)

 

 他ならぬエミヤシロウという男の生涯を表す呪文だが、これには更に続きがある。全て読んだ時、エミヤシロウという正義の体現者が歩んだ生涯を自他共に理解させられるのだ。

 

 血潮は鉄で 心は硝子。(Steel is my body, and fire is my blood.)

 

 「一つだけ言い忘れていたジョゼ・ポーラ。貴様がしでかした今回の事件。私も酒場程度までならば手出しせずに見逃すつもりだったが、仲間に手を出されたそういう訳にもいかない。私、いやオレも久方ぶりに怒っているのだよ。それこそオレの手で貴様等を裁かねば気が済まないくらいにな。」

 

 その体は、きっと剣で出来ていた。(So as I pray, unlimited blade works.)

 

 「さらばだジョゼ・ボーラ。貴様は支配する側ではない。その逆だったのだよ。自分の抑えきれない嫉妬や傲慢さにな。故にそのツケは貯まりに貯まり、たった今返済期限を迎えたのだ」

 

 エミヤの切り札は炉に火を灯し、周りを巻き込みエミヤの内から外へと展開された。

 

 「その溢れ出る傲慢さを償え」

 

 一面に広がる荒野。そこは剣の墓場であった。


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