Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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これはな、ちゃうねん。

ほら、9月って学生だと新学期の始まりでしょ?

気分を入れ替えて勉学や仕事に励んだり、新しい出会いや別れがある時期でもあるじゃない?

それに最近MGS:TPPが発売されたでしょ?

つまり何が言いたいかって言うと・・・



す み ま せ ん で し た





まあ9月後半にはうたわれるものが控えてるけどね。


守護者 後

 「くっ・・・!?」

 

 頭上に出現した剣の殆どが歴史に名を残す名剣・聖剣・魔剣、その複製品である。

 

 だがそれらは全て本物に勝るとも劣らない逸品だ。

 

 それら全ての相手をするという試練を前に、エルザは顔を歪ませる。

 

 「どうしたエルザ。様子を伺っているのか?」

 

 不敵な笑みを浮かべてエルザに切っ先を向けるのは、紅い外套を羽織った男、エミヤである。

 

 「伺わざるを得ないんだ。相手の魔法を観察して対策を講じるのは魔導師の鉄則だ。」

 

 「ああ、そうだな。だが棒立ちで観察させるわけがあるまい。」

 

 剣が一斉にエルザの方へ向く。

 

 「ハッタリか・・・?担い手の居ない武器に何が出来る?」

 

 「愚問だな。真っ直ぐ飛ぶだけなら担い手が居なくとも可能だ。」

 

 エミヤが合図代わりに腕を振り下ろす。空中に漂っていた剣達が真っ直ぐにエルザに降り注ぐ。

 

 空気を切り裂き、敷かれたレールの上を走る汽車のように突き進む。おおよそ人が捌けるとは思えない程の剣をエルザはなんとか回避または剣で弾いて凌いでいる。

 

 「くっ・・・!!」

 

 だが一本弾く度に剣にヒビが入る。最低でも一級品以上の大業物達を質が良いとはいえ市販の物で受け続ければこうもなる。

 

 エルザは剣が砕かれる度に換装魔法で新品の剣を取り出して取り繕う。

 

 だがエミヤの投影のように新しく創り出せるわけではなく、いずれ剣の在庫が尽きてしまう。

 

 「このままでは・・・ッ!!」

 

 なんとかせねば武器が尽き、その先の敗北に足が届いてしまう。

 

 打開策はある。あるがそこまで魔力と武器が持つかどうか。

 

 やれない可能性の方が圧倒的に高い。だがやらねばまた負ける。

 

 ここからは頭をフル回転させ、魔力も体力も削られた体に鞭を打って無理矢理動かし、限りなく低い可能性を手繰り寄せる、限界に挑戦する戦いだ。

 

 水晶体が徐々に澄んでいき、周りの時間の流れが遅く感じる程に意識を目の前の剣に集中させる。

 

 エルザがエミヤに向かって駆け出す。どの道接近しなければまともな決定打を与えられない。

 

 たが近づくということはそれだけ敵に警戒心を与え、対策されるという物だ。事実、エミヤから撃ち出されるの投影宝具は数を更に増す。

 

 「はっ!!」

 

 剣で剣を叩き落とす。こんなやり取りを何度繰り返したか。始めの一本目がやたらと遠い過去のように感じる。

 

 剣の性能も本人の力量のどちらもエルザは負けている。ならば作戦と無理で勝つしかない。

 

 打ち勝てないなら逸らせばいい。剣を持つ腕が二本で足りないなら足を使えばいい。

 

 無骨でも確実に、エルザは剣の雨をいなしていく。

 

 突き進むこと数分。エルザの剣がついにエミヤの前に辿り着く。

 

 「捉えた!!」

 

 エルザの剣がエミヤの干将と莫邪と交じり合い、火花を散らせる。

 

 「ようやく、届いた・・・!!」

 

 「ああ、見事だ。あれを躱し切るとはな。」

 

 鉄と鉄とが互いの優劣を競い合い、擦り合ってギチギチと不気味な音色を奏でる。呪歌よりはマシであろうが。

 

 「やはり堅いか・・・だが手数はこちらが一歩上!!」

 

 足の指で剣を掴んで持っているエルザは、簡単に言えば腕が四つになっているような物。必然的に二本しか腕を持たないエミヤより手数は上になる。

 

 両足の腕を突き出しガードしているエミヤは防ぐ腕がない。ガラ空きの腹部に剣が突き刺さる。

 

 「たわけ。安心するのは勝負が着いてからだ。」

 

 エルザはこの時勝利を確信してしまっていた。自分も剣の雨に巻き込まれるのを怖れて投影を行わないと。それ故にエミヤが見せたあの技を忘れていた。

 

 「何・・・!?」

 

 「・・・壊れろ。」

 

 直後、エルザが弾いて落としていた宝剣が爆発、爆風と瓦礫の破片がエルザに飛来し、宙に身を任せていたエルザのバランスを奪う。

 

 「っまた!?」

 

 その隙にエミヤはエルザの剣を弾き飛ばし、エルザは宙に浮かせ無防備になる。エルザがバランスを崩している間、エルザは隙だらけとなる。

 

 「――――投影、開始。」

 

 投影するのは今まで投影した中で最も劣るただ長いだけの日本刀。性能だけで言えばエミヤが持つ宝具の贋作の中でも最低クラスに入るだろう。

 

 だがそれの本来の持ち主は別だ。雅を愛し、ただひたすら剣術を鍛え、剣術だけで魔法の域に至った天才の物だ。

 

 エミヤが無防備のエルザに向けて刀を構える。一歩引いて背を向け、振りかぶった刀を振り抜けば振りかぶった分だけ速度も出しやすい。

 

 「チェックメイトだ・・・!!」

 

 偽・燕返し(つばめがえし)

 

 剣技だけで魔法や宝具の域に至ったこれの持ち主は、実在するとされていた『佐々木小次郎』という英霊を創造する上で最も条件の当て嵌まる無名の剣士の亡霊。

 

 本来の燕返しの正体は、並列世界から呼び込まれる3つの異なる剣筋、つまり全く同時の時間に急所に襲い掛かる斬撃達。

 

 生前彼がツバメを斬ろうとした際、空気の流れを読まれてことごとく避けられたため、打ち落とそうとして編み出された秘剣。

 

 文字通りの天才の技だが、エミヤが彼の刀を持ち、彼の記録を憑依し共感しても、彼の燕返しには遠く及ばず、言ってしまえばほぼ同時の三連撃程度にしかならない。

 

 だがそれでも、一つ一つの太刀筋は佐々木小次郎のそれとなんら変わりない。

 

 見事な太刀筋と急所を確実に狙う正確さは間違いなく彼の物である。

 

 故に必殺。

 

 「がっ!?」

 

 全て峰打ちだったが、エルザの残りの体力を削るには十分だった。

 

 「この技。よく覚えておくといい。」

 

 燕返しを受け、意識の大半を奪われたエルザが地に落ちる。

 

 「敵わんな・・・貴方には・・・」

 

 霞む視界の中でハッキリとエルザに映ったのは、その背中に己の生き様を背負った紅い男の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なぁエミヤ~。守護者って何だよ?」

 

 自分だけ戦えなかったからか、ナツがやけに不機嫌になり、さっきからオレに粘着してくる。

 

 正直言って仕事に集中出来ないため、かなり邪魔なわけだが・・・適当に流しておくか。

 

 「あーなんだナツ。忙しいから後にして欲しいんだが。」

 

 「いいじゃねぇか少しくらいよぉ。」

 

 こうなってしまったナツは絶対に諦めない。質の悪いセールスマンのように粘着し続ける。

 

 「・・・守護者というのは集合無意識によって作られた、世界の安全装置のことだ。」

 

 「なんだよ・・・結局話すんじゃねぇか。」

 

 周りで様子を伺っていた者達も便乗して寄って来る。具体的に言えば、エルザ・グレイ・ルーシィと、あの場での直に聞いていた者達だ。

 

 「話すまで離れんだろう・・・そして守護者は大きくわけて二種類存在する。」

 

 一つは『英霊を英霊たらしめている信仰心が薄い英霊』つまり知名度の低い英霊。もう一つはオレのような『生前に世界と契約を交わし、死後の自身を売り渡した元人間』だ。

 

 契約したした者は人の限界を超えた奇跡を実現出来る程の力を世界から与えられ、死後は世界の歯車の一部として使役される。

 

 「そして世界と契約を交わすには、生きている内に自分の無力さを嘆き自分以上の力を求めること、そして人類の継続に役に立つ者であることが必要だ。」

 

 「ふむ・・・それでエミヤは何を望んだんだ?」

 

 そこが一番気になるであろうことは分かっている。オレの願い、理想の追い求め続け走り続けたオレが、どうしても超えられない限界の壁の先に居る百人を救いたいという他人のための願い。

 

 例えそれが間違いではなかったとしても、他人が聞けば絶対に理解出来ない願いだろう。

 

 「さて、どうだったかな。守護者として働き過ぎて記憶が摩耗してしまったみたいだ。」

 

 「そうですか・・・でもエミヤさんが望んだ願いならきっと、正しい願いだと思います。」

 

 「そうだったらいいんだがね・・・」

 

 ああ、それは正しい物だったさ。例え誰からも一度も理解されなくても、それが正しい物だったというのは間違いない。

 

 「すげぇ!!つまり世界と契約すれば最強ってことだろ!?」

 

 「最強ではないな。いくら力を与えられても本当の天才やそれこそ歴史に名高い英霊達には劣る。それに契約には必ずしっぺ返しも存在するんだ。」

 

 守護者としての感想は一言でいうなら『体のいい掃除屋』だ。担う役目は『人類の自滅』が起きるときに現界し、『その場にいる全ての人間を殺戮し尽くす』ことで人類すべての破滅という結果を回避させる安全装置(ストッパー)

 

 おまけに自由意志を持たず、単純な『力』として世界に使役される存在。

 

 意識が戻るのは全てを終えてから座に帰るまでの一時のみ。その一時に自分が始末した存在の死体や残骸を見せられ続けるのだ。

 

 ただの人間が耐え切ることが出来るわけがなく、オレもとうの昔に心が壊れてしまった。

 

 「例えそんな事態になってしまっても、私は絶対に薦めはしない。というより、私のような存在はこれ以上生まれない方がいい。」

 

 その言葉には、無意識の内に戒めの意が組み込まれていた。

 

 まるで自分の罪を反芻し、忘れさせないように自分に言い聞かせているみたいに。

 

 「難しい言葉は分からねぇが、要するに自分の力で強くなれってことだろ?そのつもりだぜ。」

 

 「・・・まあその認識で差し支えはない。」

 

 ナツが純粋で助かった。例え悪魔の誘惑があっても落ちないであろうという予感はあったが。

 

 「ところで皆、眠気は感じないか?」

 

 話の最中に気がついた気配。それが放つ魔力はエルザのようなS級魔道士と互角以上であろう。

 

 「ッ・・・!?これは!!」

 

 唐突に襲ってくる睡魔。妖精の尻尾のメンバーはこれを何度も経験したことがある。

 

 この睡魔の正体は魔法。広範囲・大人数の人間を術にはめるそれを使ったのは、彼らと同じく妖精の尻尾のメンバー、その中のS級魔道士である。

 

 皆が睡魔に倒れ意識を手放した後、彼はギルドの門から姿を表した。

 

 はっきり言ってしまえば、彼はかなり異質な存在だった。

 

 全身を暗い色の布で覆っているため、彼の表情や容姿といった情報は分からない。

 

 何を考えているか分からないと言ってしまえばそれまでだが、少なくとも害意を持って妖精の尻尾に居るわけではない。

 

 「ミストガンか。」

 

 ミストガンは今この場で起きているオレと総長に一瞥し、その足でクエストボードまで歩いて行く。そしてそこに貼られた物の中から適当に依頼書を一枚破る。

 

 「行ってくる。」

 

 「これっ!!眠りの魔法を解かんかっ!!」

 

 ミストガンは総長に背を向け、入り口へと向かう。

 

 「ミストガン。これを持っていけ。」

 

 オレが差し出したのはナツに食われないように隠しておいた弁当だ。町から遠く離れた地でのクエストが多いミストガンは、どうしてもこういった料理の味を口にする機会が少なくなるからな。

 

 「いつもすまない。」

 

 「構わんよ。」

 

 言葉を交わしたのはそれだけだ。ミストガンは魔法を解きながらギルドを発った。

 

 皆が目を覚ますころには既に彼の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、総長の孫であるラクサス・ドレアーが火種となり一悶着あったが、被害はナツの怪我だけで済んだ。

 

 喧嘩に繋がらなかったのはナツがS級魔道士ではないからであろう。

 

 妖精の尻尾ではS級魔道士にならなければS級の依頼が貼られた二階に上がることが出来ない。ラクサスが終始二階に居たおかげで喧嘩に繋がらなかったのだ。

 

 また無駄に酒場を修理することは無くなったのはありがたいが、一つ気になったことが起きた。

 

 二階のクエストボードからS級クエストの依頼書が一枚消えていた。その場に居合わせていたであろうラクサスに聞いたが、『羽の生えたどろぼう猫がちぎっていったのを見た。』らしい。

 

 その一枚は既にここにはないが、内容は覚えている。

 

 悪魔の島とも呪われた島とも言われるガルナ島。そこの呪いの解呪。

 

 これはギルド内でも大きな騒ぎを起こしていた。一方その一部始終を見ていたラクサスは・・・

 

 「これは重大なルール違反だ。じじい!!奴等は帰り次第『破門』・・・だよな?」

 

 あの程度の実力でS級に挑んだら帰ってこれないだろうな、と付け加える。

 

 「知ってて何で止めなかったの!?ラクサスも、エミヤも!!」

 

 「オレにはどろぼう猫が紙キレ咥えて逃げてった風にしか見えなかったんだよ。まさかあれがハッピーでナツがS級に行っちまったなんて思いにもよらなかったなァ。」

 

 瞬間、ミラの体から彼女のお淑やかなイメージに合わぬ膨大な魔力が溢れ、普段ならば絶対に見せない顔でラクサスを威圧する。もっとも、ラクサスはそれを見て面白がっているようにしか見えないが。

 

 「ミラ・・・念の為に言っておくが、私はその場に居合わせてなかったからな。今回の案件も今始めて知ったさ。」

 

 「ええ、でも貴方なら今から追いかければあっという間に追いつけるでしょ?」

 

 確かに強化の魔術で脚部を限界まで強化して走れば並の交通手段ならば凌駕できるであろうが、今から追いかける気にはなれない。

 

 「それを差し引いたとしても、私は追わんぞ。それにナツ達ならあのクエストをクリア出来る予感はある。」

 

 依頼の内容はあくまで解呪。そこに戦闘が含まれているとは限らないからだ。

 

 「何か根拠があるのかしら?」

 

 「フッ。当てに出来ない直感の類さ。」

 

 だが直感と云えども蔑ろに出来ない一面もある。オレ自身の直感に対する期待値は宝くじの上位狙い程度だが、失敗することはないという確信を持っている。だからこそ今回の騒動に関与する気は一切ない。

 

 「まあ安心したまえ。ドンと構えて結果を待っていればいい。」

 

 「案外薄情だな。もっとお人好しな奴だと思ってたが。」

 

 「なに、余計な手助け程無駄なことはなかろう?私も久し振りに依頼を受けたのでね。今日はこの辺りで失礼させてもらうよ。」

 

 オレはそう言い残しギルドの酒場を離れる。後から聞いた話だと、まずはグレイ、次にエルザがナツ達を追ったらしいが、関係無い。なぜならそれはナツ達の物語(王道)であって私の物語(閑話)ではないから。




作者はキャンペーンの星4鯖はヘラクレスを選びました。まあ妥当ですね。

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