転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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 んーむ、一か月に二話投稿できそうにない…参ったなぁ…。


奇襲

 アレンは洞窟から出ると、少し離れたところで立ち止まり、そうして空を見上げる。夜空が広がる現在、人口光が存在しないので星がよく見えるはずなのだが、ほとんど星が()()()()

 この世界(GGO)では大昔に宇宙規模の大戦争が起きて文明が大きく衰退、人類は過去の技術遺産に頼って生活している。恐らくは、その影響で数多の星が破壊されてしまったのだろう。とはいえ、どれだけ大規模だったのだろうかと思わなくもない。

 その暗闇の中で走る一筋の光。流れ星─ではない。人工衛星だ。前文明に打ち上げられ、運用する者がいなくなっても、愚直に情報を地上に送り続けている。

 現在の時刻は午後九時四十五分、七回目の《スキャン》が行われる時間だ。アレンは夜空を眺めるのをやめ、端末を手に取る。それと同時に、マップ中央に一つの光点が浮かび上がった。マップは常に自身が中央で表示されるので、これはアレンだ。

 因みに洞窟から離れている理由だが、自分の近くにシノン達が隠れていることを悟らせないためだ。もし今のうちに、洞窟にグレネードを放り込まれても、コウが反応してくれるだろう。正直、キリハの方はまだよく分かっていない。

 表示されている範囲は、半径五キロほど。ざっと見たところ、グレーになった光点がいくつか存在している。休憩中に何故襲われなかったのかと考えていたが、その理由が分かった。銃声が聞こえなかったことから、《死銃(デス・ガン)》がやったのだろうことは想像に難くない。

 奴は《光学迷彩》をしていてマップに映らないので、現状映ってるのはアレンのみ─いや待て、よく見れば近くに存在している。場所は、ここから百数m程離れている、シノン達が隠れている岩場だ。

 

(…コウさん達かな)

 

 そう思いつつ、光点をタッチしてみる。表示された名前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《nymphaea》と《basilisk》だった。

 その名前を確認した瞬間、視界の端で何かが光った。同時にそれが飛来してくるのを確認。

 それは、弾丸だった─

 

 

--------------

 

 

 刻は数分前に遡る。

 アレンが洞窟から出ていくと、残りの三人はこれからどうするべきかを決めるために話し始める。

 

「で、これからどうするの?このまま洞窟に立てこもってるわけにはいかないでしょ」

 

 シノンの言葉に二人して肯定した後、キリハが「あっ」と言葉を零す。それにシノンとコウが反応して振り向くと、キリハは少し躊躇いがちに口を開いた。

 

「…考えていたことをアレンさんに説明するの忘れていました。スキャン終わったら、一回戻ってきますよね?」

 

「そこは安心して。流石のアレンでも戻ってくるわ」

 

 シノンのその言葉に、キリハは安心したように息を吐く。

 

「で?キリハが考えていたことって?」

 

「かなりシンプルですよ?ただスキャンに僕だけが映り、《死銃(デス・ガン)》とその仲間を釣ろうとしようとしただけです」

 

「…」

 

 反応がないことにキリハが不思議そうにコウに視線を向けると、彼はキリハの肩を両手で力強く掴んだ。気のせいか、ミシミシ聞こえる気がするし、コウの顔は笑顔だし、キリハの顔は引きつっている。

 この雰囲気は説教だな、と当たりを付けて顔を逸らす。と同時に洞窟の入り口から丸くて細長い筒が─

 

「─逃げて!!」

 

 シノンの言葉に二人は即座に反応、全員で入り口に走り出す。洞窟から出たと同時に洞窟内が紫の煙で充満した。

 それを目にしながらシノンはヘカートを背負い、グロック18を手に取る。視界の端でコウとキリハが光剣を起動させるのが見えた。

 

「ハッ、うまく逃げたか。マァこれでfinishしちまったら面白くねぇからなぁ」

 

 そう言ったのは、入口の側に立つ男。フードを深く被っており、顔は見えない。ただ、唯一見える口には笑みを浮かべていた。

 そしてもう一人、紫の短髪で顔に大きな傷がある男。そいつは洞窟の上に腰掛けている。

 

「ちぇ、シラケるなぁおい。少しは食らっとけよ」

 

 まるで子供のように、そう不満を口に出した。恐らくは、毒ガスを放ったのはこっちだろう。

 

毒ガス(あんなもん)を喰らうような奴じゃねぇのはテメェだって分かってただろうが」

 

「えー、だってアイツはともかく、他の奴は喰らうと思ったんスもん」

 

 まるでこちらに関心がないように会話をしているが、シノンは目を離せなかった。目を離した瞬間、自分は─死ぬ。

 何故そう思ったのか、冷や汗を感じて理解したことは一つ。コイツらは、今までシノンの出会ったPLの中でもかなり強い。

 銃口を向けて引き金を引けばいい、そう思うも、当たる予感がしない。そして、シノンがアクションを起こせば即座に襲ってくるだろう。だが、何かしら行動を起こさなければとも思う。

 そしてトリガーを引くことを決意した、その時、シノンよりも先に弾丸を二発放った者がいた。それは回避され、シノンは弾丸を放った者に視線を向ける。

 

「キリハ…?」

 

 それを行ったのはキリハだった。左手にリボルバーを持ち、件の二人に向けている。その体勢のままキリハは、口を開く。

 

死銃(ザザ)に仲間がいると聞いてから、万が一のことは考えていましたが…まさか、お前までいるとは思いませんでしたよ─」

 

─PoH、とフードを被ったPLに銃口を向けながら、その名前を言った。

 それを聞いた瞬間にシノンは、フードの男に視線を戻した。その名は確か…ラフィン・コフィンというレッドギルドの…。

 フードの男─《nymphaea(PoH)》はニィっと口角を上げて、キリハに向かって喋り出す。

 

「会えて嬉しいぜぇ?キリハ」

 

「僕は嬉しくありませんね」

 

 険しい表情のまま、キリハはそう吐き捨てた。そして一瞬ぐっと膝を曲げたかと思うと、PoHに向かって疾走して斬りかかる。それを阻止しようとバジリスク、否《ジョニー・ブラック》がARを向けたが、コウが先に弾丸を放ち、回避を余儀なくされる。

 

「アッハハハハ!!いきなりかよキリハァ!!」

 

 愉しそうに笑いながらPoHは半身ずらして回避、光剣を振るう。振るわれた光剣を、同じ光剣でキリハは打ち払い、距離を取らずに左手のリボルバーを放った。それを半歩下がるだけで避け、彼もまたその距離を取ることなく応戦する。

 

(なんてレベルの戦いなの…)

 

 シノンは二人の戦闘を見て戦慄した。これまでGGOでの近接戦闘と言えば、近くてもせいぜい5Mほどでの撃ち合い。その常識を覆すほどのゼロ距離戦闘…正直に言わせてもらえばGGO(この世界の)PLとはレベルが違いすぎる。

 とはいえ、ただ唖然としているわけにはいかない。あの戦闘に参加できないのならば…

 

(もう一人を…殺るっ!)

 

 そう思考したと同時にシノンはグロックでコウと戦っているジョニーを狙った。

 

「うおっ!?」

 

 仰け反って躱されたが、その間にコウの横に並ぶ。

 

「援護します」

 

「それはありがたいけど…」

 

 コウは横目でちらっとシノンを見ると、すぐさま目線をジョニーに戻す。

 

「彼らの狙いは君だからね。僕としては隠れてくれる方が安心するね」

 

 その言葉にムッとして言い返そうとしたが、ふとある考えが浮かんだ。故に首を縦に振り、コウの考えに同意する。すると彼は驚いたのか、目を見開いた。ニヤっと笑みを浮かべて、その場を走り去る。

 

「逃がさ─」

 

「君の相手は僕だよ」

 

「ああああ邪魔すんじゃねぇぇぇえ!!」

 

 驚愕していたわりには、すぐに動けるあたり流石だ。さて、邪魔されない場所に行かなければ。

 

(怒られる覚悟しとかないと─ね)

 

 なにせ、彼の楽しみを奪うことになるのだから。


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