そんでもってこれでストック切れです!出来るだけ早めに投稿できるようにはします!
─目の前にいたPLの喉を切り裂く。するとそのPLの頭上に【DEAD】の文字が浮かび上がった。BOBは普段と違い、HPが0になってもアバターは残る仕様になっている。それを横目に、アレンは試合開始前にキリハの言っていたことを思い出す。
─キリハは自身の知っていることを全て話した。ゼクシードと薄塩たらこが現実で死亡したこと、《
「…なんで彼らが死んだことを?」
「僕に調査を頼んできた人からの情報です。彼は一般人ではないので、表に出回らない情報も持っています」
勿論、信じるか信じないかはこちらの自由だそうだ。アレンとしては、信じるに値しない、と判断する。当然だ、いくら信用出来るコウの恋人とはいえ、昨日知り合ったばかりの人物の言葉を鵜呑みに出来るはずもない。
それがわかったのかどうか、キリハは「まぁそう簡単に信じられるはずがないんですけど」と苦笑した。次いで、《
「先ほども言いましたが、信じなくても構いません。コウが信用しているから話しただけですから」
肩をすくめる姿を見る限り、元より信じてもらおうとも思っていないのだろう。ただ、本当の目的を伝えようと思っただけで。
「まぁ、そういうことですので、先ほど名前を挙げたプレーヤーには一応気を付けてください─」
─そう締めくくられたので一応気を付けるつもりではあるが、正直自分とシノンに害が無ければどうでもいいと考えている。
(…考えるだけ無駄か)
どちらにしろ、自分の前に出てきたのならば斬るだけだ。アレンはそう考えた。
ビルの残骸が残る街の中、ある程度の高さがある建物の上で、コウはある人物を見ていた。
(まさか、バジリスクが参加しているとはね…)
見た目は相変わらずだ。彼の武器が見えないのはレザーマントで全身を覆っており、大型の武器を持っていないからだ。毒使いで知られている彼が、今大会で毒を使わないわけがないだろう。解毒アイテムが無いのが痛いが、当たらなければいいだけの話だ。
(和葉の聞いた通りの格好をこの大会中もしているなら、彼は違うことになるけど…)
とはいえ、同じ格好をしているとは限らないので監視を外すという選択肢はない。実は近くに《銃士X》がいるのだが、同時に監視することは出来ないので一番近い彼にした。
キリハ達の心配はしない。しなくても問題ないだろうから。なにより─
(─彼女、本調子だろうしね。勝てる人がどのくらいいるのかな)
シノンもまた、衛星からの情報からダインとペイルライダーに標的を定めていた。情報では近くに《獅子王リッチー》もいたが、彼は高い場所から《
ダインの進路方向から彼の行き先を予測、彼は森での戦闘を避け、見通しのいい橋で戦闘を行うと考える。故にシノンは先回りをし、ダイン達のいる森の対岸沿いで待ち伏せをすることにした。へカートを抱え、目的地まで走る。彼らに比べ、自分の方が橋までの距離は近い。十分に間に合うだろう。
そういえばと、知り合い達は今どこにいるのだろうと思った。まさかもう殺られた、ということはないだろう。アレンとコウの実力は組んでいたからよく知っている。キリハは昨日知り合ったばかりだが、戦いをみるにそこらのGGOPLよりも実力はかなり上だろう。そう簡単に殺られているとは思えない。
そこまで考えた所で、もう橋の近くに来ていることに気づき、ダインが森から抜けてきた。急いでへかーとを地面に置き、スコープを覗き込む。それと同時にダインは振り向き、伏射姿勢の体勢になる。なるほど、その体勢なら橋を渡ろうとする相手を一方的に撃つことが可能だ。が、この状況でそれは悪手だろう。
「どんな時も
─こんな風にね─
呟きながらシノンは、腰から
「─待ってください」
その声と同時に銃身が捕まれ、シノンは顔を上げる。そこにいたのは一人の男─のようなアバターを持つキリハだった。武器を手に持たず、ただ自身に向けられた銃口を逸らすよう手を添えているだけだ。
「…何のつもり?」
武器を持たずにいるなんて、なんの狙いがあるのか。シノンが睨みつけながら低い声でそう言うと、キリハは落ち着いた声で口を開く。
「あそこで起きる戦闘が見たいんです。ペイルライダーというプレーヤーが《
そう言ったキリハの目には、真剣な色が見える。それもそうだろう、彼女がこの世界に来たのは《
「後できちんと戦ってくれるんでしょうね?」
「えぇ勿論。僕も貴方とは戦ってみたいと思っていたので」
その言葉を聞けたので良しとしよう。キリハは約束を破るような人物ではないだろうから。
シノンも腹ばいになり、狙撃銃のスコープを覗き込む。ダインは未だに伏射姿勢を保ったままだった。この長い時間その姿勢を保ってられるその集中力は流石だ。これではペイルライダーも簡単に出てくることはないだろう。
「このままじゃ戦闘起きないかもよ。ダインだっていつまでもあの姿勢を保っていないだろうし、あいつがあの場から動こうとしたら撃ち抜くから」
「それなら構いませんよ。ん、出てきました」
キリハがそう言うと同時に、森から一人のPLが出てきた。彼がペイルライダーだろう。長身で青白い迷彩柄のスーツで全身を包み、フルフェイスのヘルメットを被っているため顔は見えない。見たところ、武器は右手にぶら下げた
ダインが両肩を緊張させているのに対し、ペイルライダーからは緊張が感じられない。ダインが待ち構えていることを知っておきながら、それを恐れずに橋に近づいていく。
「あいつ、強いわ…」
シノンがそう呟くと、キリハも同意するように頷いた。
普通、敵がこちらに向かって銃を構えていることがわかっている場合、障害物に隠れながらジグザグに走っていくものだ。しかしペイルライダーは何かに隠れることはせず、堂々と橋に身を現した。それを狙っていたはずのダインの背中が、動揺したように震える。しかしそれは一瞬のこと、すぐさまダインはトリガーを引いた。最低十発は発射された五・六ミリ弾を、ペイルライダーは意表を突く形で回避する。橋を支える幾本ものワイヤーロープに飛びつくと、左手だけで登り始めたのだ。ダインは慌てて銃口で追うとしたが、伏射姿勢は上方に狙いをつけにくい。その間にペイルライダーはワイヤーの反動を利用して、ダインよりの位置に着地する。
「彼、STR型なのに出来るだけ重量を抑えて三次元機動をブーストしているんだわ…」
ダインは同じ手を食らわないと言わんばかりに立ち上がり、トリガーを引いた。が、ペイルライダーはそれを読んでおり、飛び込みに近い形で回避する。そのまま転倒することなく、片手で前転をしてダインからわずか二十mまで近づいた。
何か声を上げながら(恐らく毒づいたのであろうが)空になったマガジンを交換していく─その瞬間、ペイルライダーのショットガンが火を噴いた。あの距離なら全弾外すことはあり得ない。ダインの体にいくつもの着弾エフェクトが閃き、体を後ろに大きく仰け反る。流石というべきか、その状態になりながらもマガジン交換を終え頬を付け─ようとしたところで再びショットガンの轟音が響き、ダインは仰け反った。
ショットガンはこれが恐ろしい。一定数ショットガンの弾が直撃してしまうと強制
悠々とショットガンに弾を詰め込みながらダインに近づいていく。慌ててダインは顔を上げたが、既にその鼻先にショットガンを突き付けられていた。そのまま慈悲もなく轟音が響き、ダインのHPを吹き飛ばす。後ろに大の字で倒れ、ダインの上に【DEAD】の文字が浮かび上がった。これで彼は脱落、リアルでの情報共有を防ぐため、意識はアバターに残したまま今頃は中継画面を見ているだろう。
「撃つわよ」
返事を待たずにシノンはトリガーに指をかける。ダインを仕留め、橋から離れようとしているペイルライダーに銃口を合わせた。そしてトリガーを引く直前、彼の右肩に小さな着弾エフェクトが閃き、体が弾かれたように倒れる。
かなりぶつ切りにしていしまいましたが、これ以上伸ばすと文字数が大変なことになったので…。