転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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はい先月は投稿できず申し訳あrっ!?
和葉「とりあえず斬っておいたので、これでも足りない人は作者に石でも投げつけておいて下さい」


決着

 守護騎士を突破したコウは、何故か開かない扉に小太刀を振りかざしていた。

 

「…開かないか。ユイちゃん、これどうなってる?」

 

 コウの呼びかけにポケットから出てきたユイは扉に手を当て、何が原因か調べる。そしてすぐに声をあげた。

 

「…この扉はクエストフラグによって閉じられているわけではありません!システム管理者権限によるものです!」

 

 つまり、プレーヤーには絶対に開けられないという事か。ふざけるなと言いたいところではあるが、あの男ならやりかねない。やはりキリト達が予想した通り、世界樹内部で何か良からぬ事をやっているのだろう。

 

(さて、どうしよう)

 

 悩んでいる間にも周囲から守護騎士が接近してきている。何か打開策を…そこまで考えたコウは、ある物を持っている事を思い出した。

 

「ユイちゃん、これ使えないかな?」

 

 コウが取り出した物を見て、ユイがハッとなる。それは黒いカード、システム管理者のアクセス・コードだ。

 ユイはすぐさまカードを手に取り、扉に触れる。

 

「転送されます!コウさん捕まってください!」

 

 ユイの指示通りにコウはその小さな手を掴み、次には転送された。

 

 

 目を開けると、先程までいた場所ではなかった。まぁ、転送されたのだから当たり前なのだが。

 ここは、どうやら通路のようだ。壁は白く、前も後ろも曲線状に曲がっている。まるで研究施設だ。

 

「コウさん、大丈夫ですか?」

 

「うん、大丈…夫、だよ?」

 

 コウの言葉が詰まったのはユイの姿を見たからだ。今のユイはピクシーの姿ではなく、本来の少女の姿。コウは初めて目にするので、一瞬理解出来なかったのだ。とはいっても、すぐにその姿が彼女本来の姿だと理解出来たが。

 

「ユイちゃん、和葉の…ねぇねの場所はわかるかな?」

 

 

「はい。ここのマップ情報はありませんが、ねぇねの場所はわかります…。かなり近いです…。こっちです!」

 

 ワンピースから伸びる素足で、ユイは音もなく走り出し、コウはそれに続いた。

 ユイに続いて廊下を走り続けているが内側にいくつかの扉があるだけで、走っても走っても景色が変わらない。自分がアバター姿でなければ、ここがALOだと忘れてしまいそうだ。と、そんなことを考えているとユイが突然何もないところで立ち止まった。

 

「どうしたんだい?」

 

「この向こうに空間があります」

 

 ユイがそう言って壁を撫でると、青い線が扉の形に浮かび上がり、その内側が消滅。そこから見えたのは、赤い夕焼けだった。一歩踏み出せば足元は太い枝で出来ており、大人二人程度なら並べそうだ。上を見れば太い枝が四方に散らばり、葉を繁らせている。

 あぁ、確かにここは世界樹だ。しかし―

 

(―空中都市は無し…か)

 

 振り返っても、太い幹が上に伸びているのみ。都市と呼べるモノは何一つ無い。端から期待なんてしていなかったが、これではALOのプレーヤーを舐めているとしか思えない。

 いや、今はそんなことを考えている暇はない。早くキリハ(和葉)の元へ向かわなければ。ユイが先導し、世界樹の枝を走っていく。道を走っていると、ふいに夕焼けを反射して金色に光るモノが目に映った。二人はそこに向かって走り出す。やがて、金色に光るモノの正体がはっきりと見えてきた。金属を縦横に組み合わせた格子─いや、鳥籠だ。それも、かなり巨大なもの。あれでは一般的な鳥はおろか、鷲ですら入れておくことは出来ないだろう。けれどコウはそれが、動物ではなく人を閉じ込めてることを知っている。2人は同時に走る速度を上げた。

近づくにつれ、中にいる人物がハッキリと見えてきた。その人物は反対側に顔を向けていたが、気配を感じたのだろうか。不意に顔をこちらに向ける。こちらを確認すると目を見開き、表情を驚愕に染めた。

 

「─和葉」

 

「ねぇね…ねぇね!!」

 

 コウとユイは同時にキリハの名前を呼んだ。彼らとキリハの間には格子で作られた扉があり、その横にロック版と思わしきものも見える。しかし二人は速度を緩めるはなかった。残り数mまで来ると、ユイが右手を体の左側に引き上げ、その手を青い光が包み込む。そして扉にぶつかる直前に、手を右側に払うと扉が消滅した。

 

「ねぇね!!」

 

 そのまま勢いを殺すことなく、ユイはキリハの胸へと飛び込む。立ち上がっていたキリハは危なげなく受け止めた。しかし、未だに状況を把握しきれていないような顔をしている。

 

「和葉」

 

 彼女の呆けた表情を見るのは久しぶりだな、と思いながらコウは声をかけた。ユイに頬を摺り寄せられていたキリハは、コウへ顔を向ける。ジッとこちらを凝視するキリハを見て、現実(リアル)と容姿が違うから分からないか、と思い─

 

「─浩一郎?」

 

 そう呼ばれて固まった。しかしコウはすぐに柔らかな表情を浮かべ、彼女に近づいていく。そしてユイも一緒に彼女を抱きしめた。その行動から彼女も漸く確信を持てたのだろう。背中に手を回され、力強く抱きしめ返される。

 

「まさか、君が来るとは思いませんでした」

 

「君を助ける役は、誰にも渡したくなかったからね」

 

「…まったく、君って人は」

 

 ふふっとキリハが笑い、三人はしばらく抱擁を続ける。お互いの体温を確かめ合うように…。

 

 

 

 抱擁を解いても、キリハを真ん中にして三人は手を繋いでいた。

 

「ユイちゃん、和葉をここからログアウトさせることは出来る?」

 

 コウの問いにユイは眉を顰め、すぐに首を横に振った。

 

「今の私では専用のコンソールがないと不可能です」

 

「あ、それっぽいのなら見つけましたよ」

 

 そのキリハの言葉にコウとユイは一瞬唖然とするも、すぐに溜息を吐いた。

 

「うんまぁ、和葉がここでじっと待っているだけなわけないよね」

 

「ねぇねですから」

 

 二人の反応にキャラじゃないと分かっていても、解せぬとキリハは言いたくなった。

 気を取り直して、今のうちにコンソールの所へ行こうと誰かが言おうとして─

 

「「「!?っ」」」

 

─突如として三人を真っ暗な闇が覆った。次いで、強力な重力が三人を襲う。

 

「きゃあっ!?」

 

 そして、ユイの口から悲鳴が聞こえた。まるで何かに攻撃されたかのように。

 

「「ユイ(ちゃん)!!」」

 

「気をつけて…くださいっ…何か…よくないものが…」

 

 言い終わらないうちにユイの体に紫の稲妻が走り、フラッシュ─その時にはユイの姿がどこにも見えなくなっていた。残された二人は同時にユイの名を呼んだが、返事はない。嫌な予感がしたコウは、すぐさまキリハに手を伸ばした。キリハも手を伸ばし、二人の手が重なる瞬間─更に強力な重力が二人を襲う。その強さに堪らずコウは膝をつき、キリハは真っ暗な床に倒れ伏した。

 そしてその瞬間を待っていたように、甲高い笑い声が聞こえてくる。

 

「どうだい?次のアップデートで導入予定の重力魔法の威力は。ちょっと強すぎるかな?」

 

 そう言いながら一人の男が暗闇から姿を表した。姿形も声も違うが、その人物が誰なのかは分かる。

 

「須郷っ…!!」

 

 立ち上がろうとしながら、唸り声で名を呼ぶ。

 

「君は、浩一郎君かな?どうやってここまで来んだい?さっきまで妙なプログラムもいたようだし」

 

 その言動から、ユイはこの男の手にかかっていないことに二人は表情に出さずに安堵した。それを知らない須郷は口を開く。

 

「まぁ、どうでもいいことだね。さて、君達の記憶を改ざんする前にパーティーと行こうじゃないか!ここの空間は全部記録中だ!せいぜい楽しませてくれたよ」

 

 そう言って須郷はキリハに近づく。そして指を鳴らすと、暗闇から鎖が下りてキリハの腕に絡みついた。ついで足がつくギリギリまで引き上げる。重力はまだ働いており、キリハは眉をひそめていた。

 

「はいっ!」

 

 そして須郷のその合図で、更に強力な重力がキリハを襲った。たまらず悲鳴を上げ、表情は苦しみに満ちる。コウは怒りの声を上げ、須郷の嗤い声が空間に響き渡った―

 

 

 

 

 

 

「―なにか面白いことでもあったか?」

 

 不意にそんな声が聞こえた。その瞬間、須郷は()()()()()。キリハを見れば、鎖に繋がれてはいるものの吊られてはいない。

 そう、先程のは須郷の妄想、というよりは、()()()()()()起きたはずの出来事。だが、現実にはそんな出来事など()()()()()()()

 

「もしかして何か妄想でもしてたか?たとえば、姉さんを酷い目にあわせる、とか」

 

 何故、と考えていた須郷はようやくその声が聞こえる方を向く。そこには、ここに来れるはずのない二人─

 

「何故…何故お前達がここにいる!?」

 

─キリトとアスカがいた。須郷の疑問に、アスカが答える。

 

「世界樹から上の空間、正確に言えばこの空間をハッキングしたんだよ」

 

 まぁ俺がやったわけじゃないけど、とアスカは呟く。勿論、無条件に出来る訳では無い。いや、出来ないことは無いが時間がかかりすぎる。だからコウに先導してもらったのだ。彼がキリハのいる空間まで行ってくれれば、その空間のみで済むのだ。

 しかしそんなことなど須郷にわかるはずがなく、怒りの声を出している。

 

「ハッキング…だとっ…!この僕の世界に…!」

 

「─あなたの世界じゃないでしょう?」

 

 須郷の声に返したのは、女性の声だった。声の聞こえた方にはキリトしかいない―いや、よく見れば彼女の肩に何かが乗っている。

 

「元々は晶彦くんの世界よ。それをあなたが奪っただけでしょう?」

 

 そういう人物は背中に小さな羽を生やし、薄緑のワンピースのようなものを着ている。見た目はナビゲーション・ピクシーのようであるが、NPCではない。実際、キリハはその声に聞き覚えがあった。

 

「母さん?」

 

「合ってるわよ、和葉」

 

 キリハに母さんと呼ばれたピクシー─桐ヶ谷 翠は笑って応える。ただ、その笑顔は少しぎこちなかった。

 それもそのはず。翠はフルダイブではなく、PCでアバターを操作しているのだ。コマンドで表情を表現するので多少ぎこちないのは仕方ない。

 

「さて須郷さん?あなたには私の娘を監禁したこと、そして私の後輩の技術を悪用したことをたっぷりと後悔してもらうわ」

 

「…後悔?どうやって?」

 

 先程までの焦りが嘘のように静かに、笑みを浮かべて問う。事実、彼は余裕を取り戻していた。空間をハッキングしようと、GMアカウントのハッキングは不可能だからだ。

 

「僕はこの世界の神だ!君たちを縛り付けるなんて造作もないことだよ」

 

 それならば、まだやりようがある。故に両手を広げ、高らかにそう言った。

 

「なら、やってみればいいだろ?」

 

 しかし、キリトはニヤリと笑みを浮かべ、そう言った。まるで、そんなことは無駄だと言うように。

 須郷は、その笑みの意味が理解できていない。その笑みを歪ませることしか考えていない。ウインドウを出そうと左手を振ったが、何も起きなかった。驚愕の表情になり、何度も振るが出ない。システムコールを叫ぶが、それでもシステムは何も応えない。

 

「確かに、お前のアカウントに勝てるのはこの世界に無いよ」

 

「だが、そもそもこの世界自体があの世界(SAO)から出来てんだ。なら、お前より上位のアカウントがあってもおかしくないだろ?」

 

 アスカとキリトの言葉で須郷は、そのアカウントが誰のものか理解したようだった。誰もいない虚空へ叫ぼうとして─鎖が体に巻き付く。

 

「!?」

 

「さて、どうしてやろうかしら。痛みを無くして恐怖を与えるか。痛みを与えるか」

 

 顎に手を当てていた翠は小さく「決めた」と呟くと、ウィンドウを表示し何かの操作をした。そして、鎖で強く締め付ける。途端、須郷の口から悲鳴が上がった。まるで、本当に痛みを感じたかのように。

 

「…お義母さん、何したんですか?」

 

「ペイン・アブソーバのレベルを0にしただけよ」

 

 アスカの質問に対した翠の答えに軽く引いた。下げることはするにしても、まさか0にするとは思わなかった。

 ペイン・アブソーバとは、簡単に言えば痛みの感じやすさだ。0~10まであり、これが高ければ痛みは感じない。当たり前である。いくらゲーム内とはいえ、痛みを感じたいと思う者はごく少数だ。

 分かっているとは思うが、このレベルを0にするということは、痛みは軽減されず、そのままの痛みを感じるということになる。

 

「まだ終わりじゃないわよ?」

 

 翠はそういうと、次々と須郷に痛みを与えていく。指先を切り落としたり、締め付けたり、体の関節を曲げたりと。最早拷問であった。因みに、キリハは既に救出済みである。

 翠の拷問具合を見て全員がここにユイがいなくて正解だなと考えていたら、悲鳴がやんだことに気づく。見たくもないがそちらに目を向ければ、須郷が白目を向いてボロボロになっていた。そのすぐそばで翠のアバターはスッキリした表情をしている。

 

「どうする浩一郎君?あなたが止めをさしたいなら譲るけれど」

 

 この中で一番怒りを秘めているのは彼だと思っての発言だった。しかし、コウは首を横に振る。

 確かに八つ裂きにしてやりたいと思っていたが、翠の拷問を見てしまうとその気が失せてしまったのだ。それが分かったのかどうか知らないが「そう」と翠は呟き、戸惑いなく須郷の首をはねた。

 

「さて、和葉をログアウトさせましょうか」

 

 須郷のアバターが消失したことを確認した翠がキリハの方を向いて言った。それに頷き、キリハはコウに顔を向ける。

 

「では、向こうで待っています」

 

「うん、待ってて」

 

 コウの言葉に笑顔で返し、それを見届けた翠がキリハをログアウトさせた。

 

「じゃあ、迎えに行ってきます」

 

 それに三人それぞれで返し、コウは消えていった。それと入れ替わりでユイが現れる。

 

「ママ、パパ!」

 

「「ユイ(ちゃん)!」」

 

 三人は抱擁し合い、ユイは二人がいないことに気づく。それを問い、二人は現実に帰ったと聞くと嬉しそうに笑った。

 それを見ていた翠は、突然虚空に向かって口を開く。

 

「あなたはいつまで黙っているつもり?

 

 

─晶彦君」

 

 

 

 

 現実で目を覚ました浩一郎はアミュスフィアを外し、上着を着ると外に飛び出る。やけに寒いと思っていたら雪が降っていた。だが、そんなことは構わず、バイクにまたがり病院へと向かう。軽くとはいえ、雪が道路を覆っているのであまりスピードは出せないが、交通量も減少しているのでありがたい。

 一刻も早く、彼女の顔が見たい。だがそれと同時に、あの病室に行くことに恐怖もある。この2年間のほとんど毎日、彼女の元に行ったが、二度と目覚めないのではないかという思いが常にあった。それが、ここ二ヶ月間は特に酷かった。他の者が目覚めている中、彼女だけが目覚めないのだ。絶望感が生じても仕方ないだろう。これで彼女がまだ目覚めていなかったら?彼女の魂がALOになく、現実にも帰ってきていなかったら?

 いや、それはありえない。現実世界がそこまで冷酷なわけがない。後ろ向きな考えを殴り捨て、アクセルを回す。数分進めば病院の影が見えてきた。

 駐車場にバイクを止めて、正面玄関まで走る。この時間だと本来は急患以外は受け付けていないが、今回は特別だった。玄関に人影が見える。その人物はこちらを視認すると手をあげてきた。

 

「医院長さん」

 

「やぁ、浩一郎君。桐ケ谷君から話は聞いてるよ」

 

 彼はここの病院の医院長であり、彼の言う『桐ケ谷』は峰高のことだ。医院長とは和葉達の祖父が学友だったらしい。そのため、浩一郎達を優遇してくれる。

 医院長はカードパスをくれ、それに礼を言い、走っていった。エレベーターを使い、最上階まで登る。エレベーターを降り、突き当りの病室まで走る。扉の前まで着き、扉を開けようと手をかけたが、触れる直前に手が止まった。

 

─ここまで来て、彼女が目覚めていなかったら…─

 

 その迷いを払うように勢いよく扉を開ける。そして浩一郎は息をのんだ。今まではベッドの上に寝転がっていた彼女が、和葉が、起き上がっていたからだ。

 音に気付いた和葉は、窓に向けていた顔を、こちらに向ける。そして浩一郎を視認すると、笑みを浮かべた。

 

─待っていました─

 

 口を動かし、かすれた声でそう伝えてくる。たまらず浩一郎は泣き笑いになり、和葉を抱きしめた。それに対し、和葉も力の入らない状態で返してくれる。

 嗚呼、やっと実感できた、やっと取り戻せた。自分が一番愛おしいと思っている彼女を。その思いが占めていたからこそ、次の和葉の発言は不意打ちだった。

 

「好きです…浩一郎…」

 

 耳元で囁かれ、思わず抱擁を離し、目を見開いて和葉の顔を見る。彼女は変わらず笑みを浮かべていた。

 

─実らなくても良い。自分のこの思いを、ただ伝えたかっただけ─

 

 その思いで伝えた気持ちは、和葉にとって予想外の形で返されることになる。

 

「和葉」

 

 浩一郎は名前を呼ぶと、和葉の両頬に手をあてる。何をするのかと思っていると、目の前に浩一郎の顔があり、口に何か感触がある。口づけをされたのだと、数秒遅れて気づいた。口を離した浩一郎は微笑んで、口を開く。

 

「僕も君のことが好きだよ。愛してる」

 

 今度は和葉が目を見開く番だった。しかし、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。そして、和葉から浩一郎に口づけをした。浩一郎はそれを受け入れ、先程より長く交わす。二人の心には、温かな気持ちが溢れていた─

 

 

 

 

「─ううん…最上階とはいえ窓側だから見えてるんだけど…。和ねぇ達分かってるのかな?」

 

「わかってるわけねぇだろ、この時間だぞ。誰が下から見られてると思う」

 

 それもそうだね~、と()()()()()()直葉が返した。峰高は溜息を吐き、それにしてもと思いながら直葉の背後に視線を向ける。

 

「お前、強くなったな」

 

「やった。お父さんに褒められた!」

 

 嬉しそうに笑う直葉を見るとほほえましい気持ちになる。が、ここに一般人がいたらそのように思わないだろう。なにせ、今直葉の足元には()()()()()()()()()()()()()()。その中には、須郷の姿も見える。

 ALOで負ければ、須郷は浩一郎に復讐をすると考えて待っていたが、まさか本当に来るとは。しかも数人の、恐らくは共犯者をつれて。

 

(まぁ。それも失敗したわけだが)

 

 危なくなれば手助けをするつもりでいたが、その必要はなかった。直葉は、自分が思っているよりも強くなっていたようだ。

 この男の敗因は二つ。桐ケ谷家を舐めていたこと、そして家族をさらったことだ。その代償は重い。

 

「よくもうちの娘を監禁してくれたな」

 

 峰高は須郷の髪をつかみ持ち上げ、声を低くしてそう言った。

 

「お前のやっていた実験の証拠は今頃、俺の部下達が回収しているだろう」

 

 須郷の瞳に浮かぶのは恐怖と絶望。ようやく、敵に回してしまった者の恐ろしさを知ったようだが、今更遅い。もうこの男は、この瞬間に終わったのだから。

 

「─二度と陽の光を浴びることはないと思え」




ここまで見ていただきありがとうございました。一応、あと一話でALO編は終わらせます。

誤字脱字または変なところがありましたらご報告宜しくお願いします。

質問がありましたら、活動報告のほうまでよろしくお願いします。

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