転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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はい!2ヶ月間音沙汰無しですいませんでした!!習い事やら大学やらで忙しかったんです許してください!!


再戦

 世界樹内部へ入り、ヒーラー以外の者が急上昇を開始。それと同時に窓から守護騎士がポップしているのを確認した。

 

「!?モ、モンスターのポップ量、既に秒間十二体に達しています!?」

 

 キリトのポケットから顔を出したユイが困惑した声を出す。それを聞いてやはりか、とキリトは考えた。この勢いだと、秒間三十体までいきそうだ。なにせ、守護騎士が生まれる窓は無数にある。どこまでも増えていくだろう。それでも上限はあると思うが。

 

「全員気を付けろ!更に増えていくぞ!」

 

 キリトの警告と同時に守護騎士は侵入者を感知、耳障りな声を発しながら殺到してくる。真っ先に激突したのは、最前線にいるコウ。二刀の小太刀ですれ違いざまに切り裂く。それに続くのはキリトとアスカだ。キリトが両手剣と見間違う程の剣とリズから貰った片手剣の二刀流で複数の守護騎士を撃破し、アスカがキリトの穴を埋めるように一体一体確実に屠っていった。他の者も順調に倒していくが、それでも数は減らず、むしろ増えていく。こちらも数がいるとはいえ、流石に物理だけで切り抜けられるほど甘くはないか─

 

「準備オッケーだヨーーー!!!」

 

─まぁ、予想通りではあるのだが。

 可愛らしいが良く通る声でそういうのはアリシャ。ほんの少し視線を下に向けると、飛竜の口からはオレンジ色の光が、シルフ隊の剣先からはエメラルド色の雷光が発生していた。頷いたキリトは声をあげる。

 

「全員、散開しろ!!巻き込まれるぞ!」

 

 全員がキリトの声に反射的に従い、壁に寄った。射線上に味方がいないことを確認し、領主らは合図を出す。

 

「ファイアブレス、撃てーーー!!」

 

「フェンリルストーム、放て!!」

 

 飛龍の口からは炎が、シルフの剣先からは稲妻が放たれ、大量の守護騎士を撃墜する。全体数から見ればまだ数は多いが、今の攻撃は目に見えて守護騎士を減らした。

 

「シルフ隊、突撃!!」

 

「ドラグーン隊は援護を続けるヨ!!もう一回ブレス準備!」

 

 守護騎士が補充される前に、行ける所まで行かなければならない。シルフが雄叫びをあげ、前進を開始した。彼らの武具はエンシェント級、数の差など苦にもならない。一撃で葬っていく。生還者も進軍を再開した。

 

(ふむ…助っ人と聞いてどの程度かと思っていれば、期待以上じゃないか)

 

 自身も長刀で守護騎士を斬りながら、サクヤは考える。キリトが助っ人と呼んだ者達は、凄まじいと言う他なかった。見た所、特に強者と感じるのは、バンダナを巻いた男が率いるサラマンダー、両手斧を振り回し複数の守護騎士を粉砕するノーム、男女五人のプーカ、軍人風のスプリガン、と言った所か。この中にシルフがいないのは残念だが、全員が強者なのは間違いない。この戦いが終わったら勧誘をするか、とサクヤが考えていると、バンダナを巻いた男が叫んだ。

 

「悪りぃ!!何体かそっちいった!」

 

 背後を振り向けば、複数の守護騎士がヒーラーに向かって行っていた。慌てて助けに行こうにも、絶対に間に合わない。かといってスペルも間に合わないし、フェンリルストームやブレスでは巻き込んでしまう。サクヤが諦めかけたその時、彼女にとって驚愕する出来事が起こった。

 

「はっ!」

 

 ヒーラーに努めていた男のウンディーネが片手剣で守護騎士の攻撃を受け止めた。それを受け流し、そのまま首を跳ねる。

 

「接近してくれるならこっちも本望。さぁかかってこい。シンカー達には指一本触れさせはしない」

 

 ウンディーネの男─ディアベルは片手剣と円盾(ラウンドシールド)を装備し、構える。

 通常、ヒーラーが前線で戦う事は無い。ステータスのほとんどを魔防と付与回復量に当てているからだ。剣を持とうにも攻撃力が足りない。攻撃手段は、あるにはあるが、魔法しかないので自衛するにはキツイ。それ故、ヒーラーは後方でタンクに守ってもらうのだ。

 では何故、今回の攻略では後方にタンクがいないのか。答えは単純、今現状タンクになれる者が誰一人いないからだ。シルフ、ケットシー連合は元よりタンクを連れて来ていない。攻略組は、そもそもヒーラーの存在を忘れていた。あの世界には無かった存在だったので、仕方ない。まさか、攻略組から何人かヒーラーになっているとは思いもしなかった。まぁ、ヒーラーになっているのを分かった上で、誰も後方にいなかったのは信用していると言うべきか否か。実際、ディアベルと数人が防衛に回ったので問題無いのだが。

 

「ピナ、バブルブレス!」

 

 場所は変わり中間地点、シリカの指示でフェザードラゴン─ピナが泡状のブレスを吐き、怯んだ所を短剣で斬る。

 

「鍛治師を、舐めんなーー!!」

 

 そのすぐそばでメイスを振り回して守護騎士をぶっ飛ばしているのはリズベット。自慢の筋力値を存分に使っている。

 

「───」

 

 更に聞こえてくるのはスペル、では無く『歌』。プーカの一人であるサチが穏やかな、それでいて戦闘音に負けないように声を張って歌う。

 プーカの『歌』は、魔法と比べてデメリットが多い。歌声の届く範囲でしか効果が出ない、効果持続時間が短い、ヘイトが集まりやすい。それに加え、プーカ自体が戦闘に長けた種族ではない。故に、スプリガンに続いてユーザー数が少ない。とは言うものの、勿論メリットもある。その一つに─

 

「おっらぁあ!」

 

─魔法よりも効果倍率が遥かに高い事が挙げられる。まぁ、デメリットの方が多いのに変わりはないのだが。

 

「レコン行くよ!」

 

「うん!」

 

 リーファの掛け声にレコンは勢い良く答え、共にサクヤ達後衛のいる所から最前線まで飛翔、キリト達と共に守護騎士を斬り払っていく。天蓋まで後少し、だが─

 

(─多すぎるっ!!)

 

 斬っても斬っても数が減らない。むしろ増えていっている。それはつまり、駆逐速度よりも敵のポップ量が上回っているということ。下からは絶えずブレス攻撃で支援してくれているというのに。

 一体一体倒していくのではキリがない。高度な範囲魔法が必要だ。

 

(けど、どうする…?)

 

 リーファ自身、そんな魔法を習得していないし、そもそも風属性魔法にそんな魔法は無い。たとえ火属性の範囲魔法でも、全てを壊滅させることは不可能だろう。下からの支援攻撃に頼るのも無理だ。シルフ隊のフェンリルストームとドラグーン隊のブレス攻撃は《面》ではなく《点》を攻撃する。大量に殲滅するのには不向きだ。打つ手が無い。

 いや、実を言うと一つだけ、この場を打開の可能性のある魔法を知っている。そして、それを使える人物も。

 

(でも、あれは…)

 

 チラッと目線を向けると、その人物─レコンが丁度こちらを向いた所だった。その目は、何かを決意したように見える。レコンは分かっているのだ。自身の魔法が打開策に繋がるということに。

 任せて、とレコンの目が語っていた。リーファは一旦、目を強く瞑り、次いで声をあげる。

 

「三人とも、一回下がって!!」

 

 コウ達はリーファの言葉に一瞬怪訝な表情をしたが、すぐに頷き下降を開始した。

 

「レコン!!」

 

 リーファの指示にレコンは力強く頷き、詠唱を開始した。体を、深い紫色のエフェクトが包む。

 今、レコンが詠唱しているのは闇属性の魔法だ。複雑な立体魔法陣が展開し始め、それが高度な魔法だというが分かる。魔法陣は周囲から押し寄せる守護騎士達を包み込んだ。複雑な紋様が一瞬小さく凝縮、次いで眩い閃光が放たれる。

 

『『『『っ!!!?』』』』

 

 あまりの光量に、全員が顔を覆う。視界が回復するのに一秒程かかった。なんとか爆心点に視線を向けた者達は、例外なく息を呑む。そこに有ったのがリメンライトのみだったからだ。あれだけ密集していた守護騎士の群も、魔法を放ったレコンの姿も無かった。

 彼が放った魔法は《自爆魔法》。現在実装されている魔法の中で最強の威力と範囲を誇る代わりに、全HPを失うデメリットを持つ。更に通常よりも数倍のデスペナを課せられる、ALO内では禁じ手に入るモノだ。痛みが無いとはいえ、死ぬという感覚を自ら味合う者はいない。それをレコンは、この場を打開するために戸惑いなく放った。

 

「今のうちよ!!」

 

 リーファの声に全員がハッとなった。

 そうだ、彼の開けた穴は、ほんの一時的なものに過ぎない。凹んだ水面が戻るように、守護騎士が埋め尽くしてしまう。そうなる前に、コウを突破させなければならない。

 やはりと言うべきか、リーファが声をあげる前にコウ、キリト、アスカは上昇を開始していた。そして守護騎士に斬りかかりながら、キリトはユイにコウの元まで飛んでもらう。突破した時にユイがいた方がいいだろうと考えたからだ。

 生還者、シルフらも守護騎士の群れに突撃しているが、こじ開けるのにはまだ足りない。後もう少し、何かがあれば─

 

「─一点集中、ファイアブレス、撃てーー!!!!」

 

「っ!回避ぃぃぃい!!」

 

 誰かがそう叫び、反射的に中心を避けるように散った瞬間、そこを貫くように炎が通る。それは十数体の守護騎士をまとめて焼き尽くした。

 

「っ!」

 

 それを逃さず、コウは空いた穴へ急上昇、守護騎士の壁を突破した。それを確認したキリトは全員に撤退の指示を出し、世界樹から外へ出る。

 

 

 

「サクヤ、来てくれてありがとう。アリシャさんも本当にありがとうございます」

 

「なに、友人が困っていたら助けるのは当然だろう?」

 

「そうそう、それにお金も貰っちゃったしネ〜。恩返しだヨー」

 

 そして出来ることなら自分達が世界樹攻略をする時には手伝ってもらいたい、と言われリーファは勿論と頷いた。そして彼女達は、しばらくこの街を見ていくと言って去っていく。

 

「来てくれてありがとうな」

 

「お前らにはデケェ借りがあるからな」

 

 一方こちらではキリトが生還者達に感謝を述べていた。それに対しクラインらは当然だと返す。

 またいつでも頼れ、と言って生還者達はログアウトしていった。エンバだけは去り際に「キリハ殿を助けられなかったら、代わりに貴殿等の首を頂くであります」と言ってきたが。

 

「それじゃあスグ、()()()()()()()()

 

「分かった。佳奈ねぇ達もね」

 

 そう言ってリーファはログアウトしていった。残ったのは、キリトとアスカのみ。

 

「さて、後は浩一さんが姉さんの所まで行ってくれれば終わりだな」


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