転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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和葉「どうしました?今月は早いですね」
作者「ワイヤレスキーボードを手に入れたらテンションがあがっているのか、執筆が早くなった」


 今更ですが、この作品ではリーファのレコンへの態度が原作よりかなり優しくなっています。具体的には

原作
 リーファ←←←←レコン
今作
 リーファ→←←←←レコン

くらいには。レコンも少し落ち着きを持っています。


ではどうぞ


出発

 昨日泊まった『すずらん亭』でログイン(目を覚ま)した四人は一階で合流し、店を出る。空は朝焼けの色に染まっていた。

 ALOは、毎日同じ時間にしかログイン出来ない者達(会社員等)の為に、ALO内では十六時間で一日が流れる。リーファもコウも最初は慣れなかったが、学校があり決まった時間からしかログイン出来ないので、今ではこのシステムが気に入っている。

 

 ユイも呼び、四人と一人は店を出てアイテムと武具を買いに行く。《世界樹》のある《アルン》までの道のりは長く、そこそこ強いモンスターもいる為、回復ポーションやマナポーション(魔法を使う為に消費するMPを回復するアイテム)、蘇生アイテム等を上限まで買った。

 続いて武具。キリトとアスカの分を買うだけなのでそこまで時間はかからないと思っていたのだが、全て揃え終わる頃には太陽が真上まで昇っていた。いや、防具は時間がかからなかったのだ。

 キリトは胸当てと短パン、アスカが「露出が高すぎる」と言ったのでコート、格闘戦用として篭手を購入。因みに全部黒い。

 アスカは白を強調として青いラインがある服に、防具らしいものは胸当てと軽さ重視のグローブのみ。

 アスカの武器選びはすぐに終わった。ただ攻撃力の高い細剣(レイピア)を選ぶだけだからだ。時間がかかったのはキリトだ。ご存知だとは思うが、キリトは重い片手剣を好む。故に、武器屋のプレーヤーから剣を渡される度に「もっと重いやつ」と言って交換しまくったのだ。最終的に、キリトの身の丈程もある剣に決定した。それとは別に、キリトは短剣を購入した。曰く、「他の武器も使えた方がいいだろ」とのこと。

 基本的に短剣や《(クロー)》を装備するケットシーが両手剣並の剣を装備していると目立つらしいので、キリトは短剣を装備しておく事にした。

 そしてそのまま一行は、スイルベーン中央にそびえ立つ《風の塔》に向かう。何故そこに行くのかというと、風の塔の屋上から翔べば飛翔距離が稼げるからだ。因みに、昨日アスカが衝突した塔でもある。

 ふとリーファは、風の塔の裏にある《領主の館》を見上げる。本来はそこにシルフの領主であり、リーファの親友であるサクヤがいるのだが、シルフの紋章旗が上がっていないので今日一日留守のようだ。挨拶してから出発しようと思っていたが、仕方ないと諦めた。

 

「どうした?リーファ」

 

 それに気付いたキリトが声をかけてきた。リーファは正直に答える。

 

「うん、ちょっと領主に挨拶してから行きたかったんだけど。留守みたいだから大丈夫」

 

「あれ、ホントだ。サクヤさんが一日留守なの珍しいね」

 

「二人は領主さんと親しいんだ?」

 

 まぁね、とアスカの問いにリーファは返す。

 同じ女性プレーヤーということもあり、レコンを除けばリーファが最初に親しくなったのはサクヤだ。以来、リーファは彼女の個人的な頼みを引き受けており、代わりにリーファに困った事があればサクヤが協力してくれる事になっている。

 風の塔に入ると、そこそこの人数のシルフのプレーヤーがおり、キリト達は周囲のプレーヤー達の視線を集めていた。これは、リーファとコウが有名だからだ。

 先も言ったが、リーファはシルフ内での実力が三本指に入る。それに加え、見た目も社交性も良い。リーファに憧れる女性プレーヤーもいる程だ。

 続いてコウ。彼は最初はスパイじゃないかと疑われていた。しかし、誰も見下さない態度や差別をしない(区別はする)事、リーファが彼を『コウにぃ』と呼んでいる事から彼女の兄妹と思い、その疑いは無くなった。実際は義理の兄妹なのだが、そこまで訂正する必要は無いと判断し、放置している。

 更にそこに、ケットシーのキリトとウンディーネのアスカが加わっているのだから、視線を集めるのは当然と言える。

 ある程度進むと、三人の男が正面から歩いてきた。その者達を見た瞬間、リーファの顔が一瞬歪む。その反応からキリトとアスカは、この者達がリーファとコウのパーティメンバーだということを察した。

 

「こんにちは、シグルド」

 

 なんとか笑顔を作って挨拶するリーファに、シグルドと呼ばれた男は挨拶を返す事無く問いかける。

 

「…二人ともパーティから抜けると聞いたが、本当なのか」

 

「あれ、リーファちゃんまだ言ってなかったの?」

 

 まだ彼に言ってない筈なのだが。多分、レコンがサラッと言ったのだろうとリーファはアタリをつける。しかもコウがついて行かないはずがないと思っているようだ。それにサラッと乗る彼も彼だが。まぁリーファ自身、シグルドに伝えるということをすっかり忘れていたので今回は良しとしよう。

 

「まぁね。これから伝えようとしてたとこ」

 

 そんな事を思っている事などおくびにも出さずに、肩を竦めながらリーファはそう言った。シグルドはそれに太い眉を吊り上げ低い声で言葉を発する。

 

「勝手だな。残りのメンバーが迷惑すると思わないのか」

 

 やはりそうきたか、とリーファは溜息をつきたくなった。

 そもそもパーティーにいるのは、前々回のデュエルイベントでリーファがシグルドに勝って優勝した後、彼がスカウトしに来たからだ。リーファはレコンと二人で狩り続けるよりは効率が良いと思い、それを承諾した。条件付きで、だ。

 

「リーファちゃんは『行動に参加するのは都合のつく時だけ』、『抜けたい時にいつでも抜けても良い』の二つの条件で入ったんじゃなかったっけ?」

 

 そうなのだ。コウの言った通りの条件で、遠回しに束縛するなと伝えたつもりなのだ。残念ながら、彼にその思いは伝わっていなかったようだが。因みにコウが入った理由は、そこにリーファがいたから。リーファが抜けるなら自分も抜けると、ハッキリと伝えた。

 

「だとしてもだ、お前達二人は既に俺のパーティーメンバーとして名が通っている。お前達が理由も無く抜け、他のパーティーに入ればこちらの顔に泥を塗られる事になる」

 

 流石にリーファは言葉を失った。というより、若干引いていた。先程シグルドは自分に勝手だと言ったが、自分勝手なのは彼ではないか。正直に言えば、彼の評価などどうでもいい。そんな事で自分達を縛ろうとするんじゃない、リーファはそう言おうとして。

 

「仲間はアイテムじゃないぞ」

 

 シグルドの物言いに我慢できなくなったキリトがそう言う。それにアスカはやれやれと肩を竦め、シグルドは唸り声をあげた。

 

「なんだと…?」

 

 前に出たキリトはリーファとシグルドの間に割って入り、下から睨みつけ言う。

 

「他のプレーヤーはアンタの大事な武具の様に、装備欄にロック出来ないって言ったんだよ」

 

「っ!貴様…!」

 

 キリトのストレートな言葉にシグルドは顔を真っ赤に染めた。そもそも、とキリトは続ける。

 

「リーファから入れてくれって言ったんじゃなく、アンタから頼んだんだろう?で、それをリーファは条件付きで承諾し、アンタもその条件を受け入れた」

 

 腕を組んで淡々と、キリトは話し続ける。背はシグルドの方が高いのに、周囲のプレーヤーはキリトの方が大きく見えた。

 

「だったら、自分勝手なのはアンタの方じゃないか。抜けられるのが嫌なら、最初から『抜けたい時にいつでも抜けて良い』なんて条件、受け入れるなよ」

 

 はぁ、とキリトは呆れた様に溜息を吐く。ついで、何故リーファはこんな男のパーティーに入ったのだろうか、とキリトは疑問に思った。組むならもっと他にもいただろうに。ただその考えは、シグルドの装備を見て納得に変わる。

 彼の装備はどう見てもレア装備で堅そうなのだ。プレーヤースキルがどの程度のものか知らないが、リーファが組んでいたのだから低くはないだろう。

 

「キッ…、貴様ッ!先程から黙っていれば好き勝手言いやがって!!」

 

 シグルドは顔を真っ赤にさせ今にも抜刀しそうな勢いで、ALOでの禁句を言ってしまう。

 

「どうせ領を追放された《レネゲイド》だろうが!!」

 

 瞬間、リーファとコウは怒りで支配されそうになった。それは、良識ある者なら絶対口にはしない蔑称なのだ。

 《脱領者(レネゲイド)》とは、所属する領から離れ《中立都市》を本拠地とするプレーヤーの事を指す。領から離れた理由は大きく分けて二つ。一つは、不祥事を起こし領主に追放された者。そしてもう一つが─せっかく空を飛ぶための翅があるのだからこの世界でくらい自由でいたいとし、自ら領を飛び出した者だ。ALOが始まった当初はその蔑称は誰もが口にしていた。

 基本的に同種族の勢力を拡大する事を目的としているALOでは、彼らは良い扱いを受けない。しかし、前者はともかく後者の考えは共感する者も多く、いつしか彼らの事を脱領者(レネゲイド)と呼ぶ者は少なくなっていた。

 

「レネゲイド、ねぇ…。今じゃあ良識あるプレーヤーは口にしないって聞いていたが」

 

 その事を予備知識として知っていたキリトは静かにそう言い、そしてアスカが引き継ぐように言葉を発する。

 

「リーちゃんは引き抜かせてもらうよ。アンタみたいなプレーヤーに任せておけないから」

 

 青筋をたてて、シグルドは腰にある長剣に手をかけた。

 

「貴様ら…、多種族の領に足を踏み入れるとは、斬られても文句は言わんだろうな…?」

 

 それに対してキリトとアスカは、肩を竦めて応じた。シグルドが抜刀しようとした時、彼の仲間が小声で囁く。

 

「シグさんマズイっすよ。こんな所で無抵抗の、しかもケットシーをキルしたら」

 

 領が隣同士と言うのもあり、シルフとケットシーは仲が良い。そんな相手を人目のあるこの場所で斬ってしまったら、シグルドの評価はどうなるか。そんな事分かりきったことだ。故にシグルドは剣から手を離そうとして─

 

「うっわ、自分の評価ばかり気にする男とかめんどくせぇ。アスカはこうなんなよ」

 

「なるわけないじゃん。評価とかどうでも良いし」

 

「貴様らぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

─二人の明らかな挑発発言に我慢が出来なかったシグルドは、仲間が言葉をかける間も無く斬りかかった。なるほど、リーファが組んでいただけあって疾い。だが、まだまだだ。

 キリトは迫ってくる剣に慌てる事なく左手を前に出し、手の甲に当たった瞬間、左に滑らす。そのまま長剣を踏みつけた。

 

「っ!?」

 

「おいおい、アンタが使ってんのは長刀だろう?だったら─」

 

 キリトは先程買った巨大な片手剣をオブジェクト可、右手で柄を持つ。そして、

 

「─このくらいの速度で振らないとな」

 

 その場で回転し右へ薙ぎ払う。目視出来ない程の速さで振るわれたそれはシグルドの首に命中、壁まで吹き飛ばした。唖然とする周囲と「やっちゃったよ…」とでも言いたげなリーファ達を無視して、剣を肩に担いだキリトはこう言った。

 

「もう二度と妹の前に出てくるなよ」

 

 と。

 

 

 

 エレベーターで塔の最上階まで上ると、そこから見える景色は中々に絶景だった。

 

「へぇ…、凄い眺めじゃないか」

 

「でしょ!リトねぇならそう言ってくれると思ったんだ!」

 

 キリトの言葉にリーファは胸を張ってそう答える。やはり自分の気に入ってる場所を褒められると嬉しいものだ。笑顔だったリーファはしかし、次には少し表情が暗くなる。

 

「リーちゃん、大丈夫?」

 

 アスカの声にリーファは「うん…」と弱々しく答える。

 

「どこにでもああやって縛ろうとする人がいるのはなんでかなぁって思って…。せっかく翅があって、自由に飛べるのに…」

 

 それに答えたのは三人ではなく、キリトの胸ポケットから出てきたユイだった。

 

「人間はフクザツですね。他者を求める心を、あんなややこしく表現する心理は理解出来ません。ママとパパはもっとシンプルに伝え合っているので余計にそう思います」

 

 ユイはキリトとアスカの間で止まり、首を傾げてそう言った。そして突然、ユイはキリトとアスカの頬にそれぞれ口付けをする。

 

「やはりこうした方が相手にも伝えやすいですし、分かりやすいです」

 

 それにキリトは苦笑して答える。

 

「俺達みたいな人間は少数派だよ、ユイ。人間ってのは、そんな単純に生きられないんだよ」

 

 難しいですね〜、とユイは呟いた。ユイは人間と触れ合ってまだ日が浅い。これからもっとたくさんの人と触れ合って欲しいと、キリトとアスカは願う。

 そこへ、新しい声が聞こえてくる。

 

「リーファちゃーん、コウさーん」

 

 四人が振り返ると、レコンがエレベーターから降りてこちらに走り寄っていた。

 

「レコン君、どうしたんだい?」

 

「見送りに来たんですよ」

 

「ん?てことは、君は行かないって事かい?」

 

「はい」

 

 コウは少し驚いた。レコンは付いてくるものだと思っていたからだ。

 そのコウの反応にレコンは、リーファがまだ説明してなかった事を察して苦笑した。

 

「リーファちゃんには言ったんですけど、少し調べたい事があるので残ります。

 キリトさん、アスカさん、二人の事よろしくお願いします」

 

 そう言ってレコンは頭を下げた。キリトとアスカは笑顔で「任された」と言ったが、正直コウに関しては心配することは無いと思う。

 

「それじゃ、行ってくるね。何か分かったら連絡ちょうだい。あんま無茶しないでよ?」

 

「うん分かった。そっちも気をつけてね。調べ終わったっら僕も向かうから」

 

 そうして四人はレコンに見送られ、空に飛び立った。向かうは《世界樹》のある街『アルン』。そこに和葉がいるはずだ。




 うーむ。最近終わり方が雑になって来た気がする…


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