転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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和葉「言い訳はありますか?」チャキ
え、えぇとですね…。定期考査がありまして…
和葉「終わったの二週間前ですよね」
か、艦これのイベントが…
和葉「それも同じ時期に終わってますよね」

和葉「で、本当は?」
…読みに走ってましたぁぁぁぁぁぁ!!すいまs「さよなら」ギャ



ではどうぞ


朝露の少女

「ん…」

 

 カーテンの隙間から差し込んでくる光に眩しそうに目を開けたキリハは、眠たげに上体をベッドから起こし昨日の記憶を遡った。

 

(えっと…確か昨日─)

 

 

 

 

 

─『辻斬り』もとい、エンバと斬り合って数日経ったある日のこと、キリハはヒースクリフに呼び出されていた。特に何かしでかしたわけではないので、呼び出される理由が思いつかないままKOB団長室をノックする。

 

「入りたまえ」

 

 許可が出たので部屋に入る。そこには相も変わらず机の上で手を組んでいるヒースクリフがいた。

 

「僕に何の用でしょうか」

 

「いやなに、君にも休暇を与えようと思ってね」

 

 それを聞いたキリハは、自分が抜けても大丈夫なのかと心配する。唯でさえ二人が抜けて攻略スピードが落ちているというのに。

 

「なに、心配は無用だ。君が頑張ってくれているおかげで迷宮区の七十%がマッピングされているはずだ。キリハ君が抜けても問題はない」

 

 それに、とヒースクリフが続ける。

 

「風林火山や黒猫団を筆頭に、攻略組の者達が君にも休暇を与えろと言ってきてね。働きすぎだと」

 

 優しげな笑みを向けられ、キリハは溜息をついた。こうまで善意を向けられると、断る方が悪いみたいではないか。

 

「はぁ…分かりました。ありがたく休暇を受け取りますよ」

 

「そうしたまえ。といっても、一週間あるかないかの短い休暇だろうがね」

 

「僕には充分すぎます」

 

 それにしても、と。他の皆は休暇を取っているのだろうかと思い始める。もし取っていないのなら、自分達だけが休暇を貰うのは流石に悪い。が、その心配は杞憂だった。

 

「安心したまえ。他の者は時折、休暇を取っている。君のように全く休みを取らない者はいないさ」

 

 キリハは肩をすくめた。

 ヒースクリフの言うとおり、キリハは全くと言っていいほど休みを取らない。精々、ワンフロア攻略出来たら一日休みを取る程度だ。しかも、その休日は武具を見たり、攻略情報を整理したりと、前者はともかく後者は本当に休めているのかと首を傾げそうになる。

 

「では、僕はこれで失礼しますよ」

 

「あぁ、休暇を楽しみたまえ」

 

 

 

(─あぁそうでした。休暇を言い渡されたんでしたね)

 

 正直、休暇を出されたところで何をすればいいのか全く思いつかない。現実での休日の過ごし方といえば、小説を読むか家族と鍛練するかだった。後は、家族全員が休みの時に外出したくらいか。

 

(さて、何をしましょうか)

 

 自分で垂れたコーヒーを飲みながら考える。一瞬、キリト達の所へ行こうかと思ったが、せっかく二人きりの生活(新婚生活ともいう)を手に入れたのだから、それは気が引ける。久々にアシュリーの服を見に行こうかと考えた所で、メールが来た。キリトからだ。

 

『from キリト

 明日加が面白い場所に心当たりがあるって言ってるから姉さんも来ないか?どうせ暇なんだろ。休暇を貰ったってヒースクリフから聞いたぞ

               to キリハ』

 

 ヒースクリフは何故、二人に自分が休暇を貰ったことを話しているのだろうか。

 だがまぁ、何もやることが思いつかなかったので丁度いいと思い、了承の返事を送った。ただ…。

 

(なぁんか嫌な予感がするんですよねぇ…)

 

 具体的には、自分が苦手としている物を用意してその反応を二人が楽しもうとしてるような予感。…考えすぎか。

 取りあえず行けば分かるかと思い、パジャマから外出用へ着がえる。黒いデニムに黒いシャツ、黒いジップパーカーと黒一色で、髪が長くなければ男と間違えられるかもしれない格好だ。ファッションに全く興味が無いわけではないが興味が薄いことは確実だ。そのくせ、アシュリーの服を見に行こうとしていたのだから意味が分からない。

 

閑話休題(それはともかく)

 

 そんな黒一色の服装に着替えたキリハはホームを出て転移門へ向かい、キリト達のホームがある層の名前を言う。

 

「転移、コラルの村」

 

 

 

 コラルの村があるのは二十二層。ここは森林と水に囲まれた層であり、迷宮区以外でモンスターが全く出現しない珍しい層だ。迷宮区のモンスター及びボスもそこまで強くはなく、僅か三日で突破された。攻略組の記憶に残ってるかどうか怪しく、ここにいるのは田舎が好きなプレイヤーか、キリト達のようにゆっくりしたいプレイヤーくらいだ。

 二人のホームがあるのは南西エリアの南岸、だったか。そこまで歩いて行きながらキリハは景色を楽しむことにした。

 

(静かですねぇ…)

 

 時折、小鳥の鳴き声が聞こえる程度で、それ以外では木の葉が揺れた音くらいだ。だが、この静けさは心地いい。なるほど、確かにゆっくりしたいプレイヤーはここに集まるのは当然だな、と納得した。

 

(あ、あれですね)

 

 そんなこんなで森を歩いていくと、一つのログハウスが見えた。その家の前に人影が見える、キリトとアスカだ。ただ、何故キリトはアスカに肩車されているのだろうか。

 

「お、来た来た」

 

 その状態のままアスカがこちらに気付いた。キリトもこちらに気付き、ついで顔をボンッと真っ赤に染めた。

 

「今すぐ降ろせ!姉さんが来るまでって話だっただろ!?」

 

「ん~?何のことか分からなゴメンホントゴメン俺が悪かったから首絞めるのやめて」

 

「じゃあ今すぐ降ろせ」

 

「あ、でもこれはこれで役t「…」ぐえっ!?」

 

 恋人…訂正、嫁が器用に足を使って首を絞めて、それを役得と言いかけた旦那の首を今度は()りに行った。グキッと嫌な音が聞こえた気がして、アスカが地面で痙攣しているが、まぁ心配ないだろう。若干のダメージが入っているだろうが。

 因みにキリトの服装はショートパンツにダボダボの白いシャツだ。何故アスカが役得と言いかけたのか、お分かりいただけただろう。

 

 

 

「で?明日加が面白いと言っていた場所とはどんな所です?」

 

 数分して復活したアスカにキリハは尋ねる。因みに場所はホームの中、テーブルを挟んでキリハの前にアスカがおり、その隣にキリトが座っている。キリトも聞いていないのか聞く体制になった。するとアスカはマップである座標を指しながら口を開いた。

 

「村で小耳に挟んだだけなんだけどな?この層のここら辺、出るらしいんだ」

 

「出る?なにがだ?」

 

 疑問符を浮かべたキリトに、アスカはニヤァと悪い笑みを浮かべながらこう言った。

 

「幽霊だよ」

 

「「は?」」

 

 予想だにしない答えに二人そろって間抜けな声を出した。

 

「幽霊って…ゴースト系モンスターのことですか?」

 

「違う違う。本物だよ。プレイヤー…人間の、幽霊。女の子だってさ」

 

 ヒクッと頬が引き攣ったのを自覚した。それはキリトも同じらしく、少し顔が青ざめてる。

 実はこの二人、ホラー系統の話が大の苦手だった。かといってゴースト系モンスターが苦手というわけではなく、ホラー系フロアでは普通にしていた。…時折聞こえてくる物音に二人してビクッとしていたが。

 曰く、モンスターは索敵で発見出来るし倒せるから問題ないけど、現実の幽霊は気配もないし見えないし、見えたとしても攻撃が通じなそうだから苦手、とのこと。お化け屋敷もスタッフが脅かしてくるタイプは平気だが、機械で脅かしてくるタイプは気配がないから無理。

 

「いやいやいや、ないだろう本物の幽霊なんて。ここは仮想世界、デジタル世界だぜ?」

 

 頬を引き攣りながらキリトはそう反論した。それにキリハも同意する。が、二人がそういう話が苦手な事を当たり前に知っているアスカはやめない。

 

「ないとは言い切れないんじゃないか?例えば、恨みや後悔を持ったプレイヤーが死んで、その思いがナーブギアに移ってそれが電子の世界に影響を及ぼしているとか…」

 

「「っ」」

 

 キリハとキリトは同時に息を飲んだ。アスカは先程までの笑みをやめ、苦笑した。

 

「ま、俺も本当に出るだなんて思ってないけどな。でもさ、どうせどっか行くなら何か起きそうなところがいいじゃん」

 

「…それ、僕を呼ぶ必要ありました?」

 

 ホームを出る前に感じた嫌な予感は的中したわけだ。ただし、二人が、ではなく、アスカが、だったが。

 

「別に二人だけでも良かったんだけどさ、和葉も休みだって言うじゃん?」

 

「じゃあ姉さんも呼ぼうかってなったんだけど…まさかこういう話だとは思わなかったぞコノヤロウ…」

 

 悪い悪いと言いながらキリトの頭を撫でる。撫でられているキリトは拒むことはせず、逆にもっと撫でろと言わんばかりに擦り寄った。まるで猫のようだ。

 

「ま、まぁ、取りあえずその場所へ行ってみましょう。正直怖いですが、本当に幽霊が出るならそれはそれで興味深いですし」

 

「幽霊なんていないって事、証明してやる…」

 

「みつかんなかったら、次は夜行こうぜ」

 

「「それは絶対に嫌(です/だ!!)」」

 

 

 

 

 そんなこんなで森の中。アスカが真ん中で右側にキリト、反対側にキリハが並んでいる。

 

「それで?噂ってどんなのだ?」

 

 聞きたくはなかったが、聞かないのも不安なのでキリトは問いかけた。アスカは記憶を遡るように、確かと呟いた。

 

「一週間くらい前、木工職人(ウッドクラフト)プレイヤーがこの辺の丸太を採取しに来たんだと。ここで採取出来る木材は結構質が良いらしくてな、夢中で集めていたら暗くなっちまったから、急いで帰ろうと歩き始めた所で…少し離れた木の陰に、白いものが見えたそうだ」

 

「「…」」

 

 まだ大丈夫だ。既に限界の半分までは来てるけども。

 

「モンスターかと思ったけどそうじゃない。小さい女の子だったそうだ。プレイヤーかNPCだと思って視線を頭上に動かしたら…カーソルが出ない」

 

「「ヒッ…」」

 

「そんなはずないと、やめときゃあ良いのに近づいてオマケに声もかけた。その子はこっちを振り向こうとして…そこでそいつは気づいた。女の子の白い服を月明かりが照らして、その向こう側の木が─透けて見えた」

 

「あ、明日加っ…もうやめ…」

 

 キリトが止めようと声をかけるが、アスカはやめない。

 

「その子が振り向いたら終わりだ、そう思った男は無我夢中でその場から逃げた。そして、街まで逃げた男が後ろを振り向くと…」

 

「「──っ!?」」

 

「何もいなかったとさ、めでたしめでtグフォ!!」

 

「あ、わ、悪い明日加…つい…」

 

 ボディブローを食らい崩れ落ちたアスカにキリトは謝った。どうやらあまりに怖くて咄嗟に手が出てしまったらしい。それに苦笑していたキリハだが、視界にチラリと何かが見えたのでそちらを向いた瞬間、硬直した。

 

「ん?姉さんどうし…」

 

 それを不思議に思ったキリトもそちらを向き、同じく硬直した。視界の先で、白いワンピースを着た少女がこちらを見ていたからだ。さっきアスカの話に出てきた女の子と特徴が一致している。

 

「あ、明日加っ、起きっ」

 

「んあ?どう…嘘だろおい…」

 

 キリトに起こされたアスカも、やはり硬直する。ただの噂話だと思っていたのだから、当然だろう。だが、女の子の体がグラリと傾いた瞬間、キリハはその子に向かって駆け出した。

 

「っ!」

 

 なんとか地面に倒れる前に受け止めることが出来た。

 

「「(姉さん/和葉)!」」

 

 数秒遅れて二人は少女のもとに到着した。

 

「和葉、その子…」

 

「えぇ、幽霊ではありません。ですが…」

 

「何でカーソルが出ないんだ?」

 

 キリトの言うとおり、少女の頭上にカーソルが見えない。通常ならプレイヤーだろうとNPCだろうとカーソルが見えるはずだ。

 

「ひとまずうちに連れて行こう。いいだろ?佳奈」

 

 アスカの言葉にキリトは頷き、それを確認したキリハは少女を横抱きに抱え、二人のホームまで駆け出した。

 

 

 

 ホームに着き少女をベッドに寝かせたが、少女は目を覚まさなかった。

 

「十…はいってないよな…。七、八くらいか」

 

「だろうな…。俺が見た中では最年少だ」

 

「シリカが十三くらいでしたね」

 

「誰?」

 

「ビーストテイマーの子に会ったって前言ったろ」

 

「あぁ」

 

 二人がそう話し合ってる中、キリハは立ち上がり外に出ようとした。

 

「姉さん、どこ行くんだ?」

 

「新聞を買いに行って来ます。その子を探している人がいるかもしれません」

 

「じゃあその間に簡単な夕食を作っておくよ」

 

 

 

 

 キリハが帰宅し、三人でパンとレタス風スープだけのの簡単な夕食を済ませてキリハの買ってきた新聞をあさる。新聞には攻略情報から訊ね人コーナーまである。キリハは訊ね人コーナーの枠に少女を探している人物がいるかもしれないと思ったのだが…。

 

「…」

 

 新聞から目を離したキリハは二人へ視線を向けた、が二人とも首を横に振る。三人の反応で分かると思うが少女を探している人物は見つからなかった。後は少女が目を醒ますのを待つしかない。

 もう夜も遅く、少女の事もあるのでキリハは泊まらせて貰うことにしたが、ここで問題が発生、寝る場所だ。ベッドは一つ、少女を寝かせているがダブルサイズなので後二人は寝られる。よって一人はソファで寝ることになる。勿論、キリハはソファで寝るつもりなのだが二人が良しとしなかった。がキリハの

 

「君達が別れて寝るのでしたらベッドで寝させて貰いますが?」

 

 の一言で二人を黙らせた。

 キリハはソファに向かう前に少女の頭を優しく撫でた。明日、目覚めて欲しいと思いながら。




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