恋人?いませんよそんな人…。
和葉「工業生の悲しい性という奴ですね」
まぁいるけどね!!彼女持ちの奴!!
ではどうぞ
『─ッッッ!!』
「キリト!」
「はいよ!」
現在迷宮区にてキリトとアスカは骨型モンスター『デモニッシュ・サーバント』三体と戦っており二人は互いの名前を呼ぶだけで意思疎通をしていた。そんなことが出来るのはSAOの中ではこの二人だけだろう。
『ガァァァアッ!!』
対してキリハは三体のリザードマンロードと戦っていた。三方向から囲まれている状況だというのに全く苦戦していない。というより遊んでる。キリハ自身は全く攻撃せずにリザードマンロードの攻撃を受け流して別のリザードマンロードに当てていた。しかし、ここはゲームの中だとはいえ敵は学習する。受け流させたとしても仲間に当たらないように上から振り下ろす。
「せいっ」
『『ギャッ!?』』
が、キリハに対してはまだ甘い。キリハは振り下ろされた腕を掴み背負い投げの要領で別のロードに投げ飛ばした。
「キリハ-、こっちは終わったからそっちも遊んでないで終わらせろー」
アスカの声に視線だけ送ると既にデモニッシュ・サーバントの姿がない。キリハは「了解」と言い三体のロードへと突っ込む。繰り出すのは、刀三連撃ソードスキル『朧月夜』。
『ギッ!?』
一撃目、正面にいるロードの顔へ突きを繰り出す。
『─ァ?』
二撃目、横斬りで右隣の唖然としているロードの首をはねる。
『ゴッ!?』
三撃目、縦斬りで最後のロードを真っ二つにする。
先程までキリハに遊ばれていてHPが減っていたロード達は全員ポリゴンへと変わった。キリハは刀を鞘に納め、二人と合流する。
「珍しいな。キリハがソードスキルを使うなんて」
「さっさと終わらせたかったので」
「なら何で遊んでたし」
「楽しめるかなと思ったんですけど…、思ったより楽しめませんでした」
「「あっそう…」」
そんなこんなで
「これ…ボス部屋…だよな…?」
「もうそんなに潜ってたのか…」
アスカが確認をし、キリトはもうボス部屋まで来たことに軽く驚いていた。七十四層に入ってからまだ二週間経ってないからだ。
「開けてみます?」
キリハの提案にアスカが難色を示す。
「ううん…確認だけなら大丈夫…か?でも俺達三人しかいないし…」
「大丈夫だろ。フロアボスは部屋から出られないんだからさ」
心配性だなぁ、とキリトは言わない。アスカが自分のことを想って言っていることがわかっているからだ。
キリハはキリトの言葉に頷く。
「キリトの言うとおりです。ですが一応、転移結晶は準備しておきましょう」
「「了解」」
キリトとアスカが結晶を用意したのを確認したキリハは門をぐっと押した。開いた門の先に見えたのは薄暗い空間。顔を見合わせた三人は一つ頷き、ボス部屋に一歩踏み出した。途端、青白い炎が奥から壁に沿って部屋の中を照らし出す。そして部屋の中央でポリゴンが集まり形を成していった。
人の様に四肢があり、手には大剣を持っている。ここまでは今までの人型モンスターと同じだ。違うのは、腰から蛇が生えており、顔はヤギ。その姿は悪魔を連想させられる。いや、それは確かに悪魔型モンスターだった。
名前は『
グリームアイズは顔をゆっくりと上げこちらを確認した─瞬間
『グォォォォォォォォォォォオ!!!!』
咆哮を上げながらこちらへ直進してきた。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?」」
あまりにも突然のことにキリトとアスカは悲鳴を上げながらダッシュで来た道を逆走、ちゃっかりとキリハの腕を掴んで。
「ちょっ、二人とも!?」
キリハが「止まってください!!」と叫んでも二人は止まらず─この時の二人の頭からは、原則ボスは部屋から出られないということはない─安全エリアまで逃走した。
「「すいませんでしたっ!!!」」
現在、迷宮区内にある安全エリアにてキリトとアスカの二人は土下座していた。無論、相手はキリハだ。経緯は以下の通り。
あの後、安全エリアに入って二人はホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、二人は後頭部を(キリトはフード越しに)ガッと掴まれた。あっ、と思いギギギと錆びた機械の様に後ろを向けば、そこにはニッコリと、それはもうすんばらしい笑顔(ただし口だけ)をした
何度も止まれと意思表示をしているのに止まらなかったのだから流石のキリハも怒る。これは二人が悪い。
と、そこで安全エリアに複数のプレーヤーが入ってきた。
「ふぅ、やぁっと安全エリアかぁ。お前ら少し休んで─ってキリハ達じゃねぇか」
「やぁ、クライン」
入ってきたのは六人の小規模ギルド《風林火山》。こちらに気付いたのは皆さんご存じ、野武士面の侍ことクライン。
クラインに気づいたキリハは顔を向けて挨拶をし、クラインは片手を上げながらこちらへ歩いてきた。
「ようキリハ。んで、何でこの二人は土下座してんだ?」
「僕が止まれと言っていたのに止まらなかったので説教をしようとしたら土下座を」
クラインはなるほどと思うが、同時にキリハの説教はそんなに怖いものなのかとも思った。それを二人に聞くと
「…お前は姉さんの説教を食らったことないからそんなこと言えんだよ」
「クラインさんも食らってみれば分かりますよ…」
と返ってきた、かなりガチのトーンで。クラインはおぉう…と反応するしかなく、他の風林火山のメンバーも似たような反応をした。おかげでその場に変な沈黙が流れた。
「まぁ二人とも反省しているようなので説教はやめにしましょう。まだ昼食も食べていませんし」
その変な沈黙はキリハが破った。その言葉でようやく二人は土下座を直す。因みに今の時刻は十五時、とっくに昼を過ぎている。
三人+風林火山のメンバーで遅めの昼食を食べていると、全員が重装甲を身に纏った十二人のパーティーが入ってきた。
「全員休め!」
その中で一人だけ、ほんの少し装飾を施したパーティーのリーダーと思わしき男のその合図で他の十一人は倒れるように座り込んだ。男はチラリとそれらを見てからこちらに歩み寄ってきた。そしてキリハ達の前で止まり、兜を外し名乗った。
「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツだ」
因みに元のギルド名は《ギルドMTD》で、《軍》というのは周囲の者が揶揄的につけた呼称だ。
「キリト、ソロだ」
「キリハ、同じくソロです」
「KOB所属、アスカだ」
「風林火山所属、クラインだ」
相手が名乗ったならこちらも名乗る。キリハ達にとって常識だ。コーバッツは一つ頷き、こう聞いてきた。
「君達はこの先を攻略しているのか?」
「えぇ、ボス部屋の前まではマッピングしてあります」
それを聞いたコーバッツは
「出来ればそのマップデータを提供してはいただけないか」
と片手を差し出して言ってきた。返事は勿論─
「構いませんよ」
─yes、だ。その返事に驚いたのはクライン達風林火山のメンバーだけだった。キリトとアスカは、キリハの返事が分かっていたので軽くため息をついた。
「お、おい、いいのかよキリハ」
「街に戻ったら公開しようとしてましたし、そもそもマップデータで商売する気はありません」
そう言ってキリハはウインドウを開きコーバッツにマップデータを渡す。コーバッツは受信したのを確認すると「協力感謝する」とだけ言って後ろを向いた。
「ボスに手を出すのはやめといた方が良いぜ」
しかしその背にキリトが声をかけ、コーバッツは顔だけを僅かに向けた。
「…それを判断するのはリーダーである私だ」
「さっきちょっと覗いたけど、あれは生半可な人数でどうにかなるボスじゃない。あんたの仲間も消耗してるみたいじゃないか。少しは休んだ方がいい」
「…警告は感謝する。しかし我々は進まなければならない」
KOB副団長の言葉に声を荒げることも無く、そう言ってコーバッツはパーティーの元へ戻っていき全員を立たせ、先へ進んでいった。
いくら見かけ上のHPが満タンでも目に見えぬ疲労は出てくる。キリハの見た限り、コーバッツと
「大丈夫なのかよ…あの連中…」
「あんなに疲労困憊なんすよ?。流石にぶっつけ本番でボスに挑むことはないと思いますが…」
軍のプレーヤーがいなくなった空間にクラインと風林火山のメンバーの一人が気遣わしげな声を出した。普通に考えれば、そんなことはないと言い切れる。だが─
「─追いかけた方がいいでしょう」
キリハの言葉にその場の全員が頷いた。ここで自分達だけ脱出して軍のプレーヤー達が全員未帰還、などと聞いたら寝覚めが悪い。
そしてキリハ達は軍を追うため、迷宮区の奥へと向かっていった。
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因みにこれを友達に試し読みして貰うまで、自分はコーバッツの名前を『ユ』ーバッツと勘違いしてました…。ハズい…
あ、後、コーバッツはタグの『キャラ改善』に入っています。セリフを見れば、原作より言葉が柔らかいです。…少なくとも自分的には柔らかく書いているつもりです。
それでは皆様、年明けにまたお会いしましょう。よいお年を~(*^^*)ノシ
和葉「それでは、僕は浩一郎と年越ししてきますね~」
あ、裏切り者!!