星の在り処   作:KEBIN

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学園祭のマドモアゼル(Ⅲ)

「ごめん、ごめん、クローゼ。すっかり忘れていたわ」

 ヨシュアは上目遣いで両手を合わせながら、「てへっ」とウインクして舌を出す。あまり反省しているようには見えないが、こういう可愛らしい仕種を拝まされたら何も言えなくなるのが惚れた弱みのなんとやら。

 更にはクラブハウス名物のジェニスランチの食券一枚であっさり買収され、不機嫌さを忘却するあたり、もしかするとクローゼは大陸一貧乏な王子様かもしれない。

「昔からヨシュアは後片付けを、結構他人任せにする癖があるからな」

 早速、ジェニスランチを注文するクローゼを横目に、男の癖に霜降り肉タップリのお嬢様プレートをがっついていたエステルは義妹の粗忽さをアピールする。

 元来の綺麗好きなので家屋に塵芥が溜まることはないが。年末の大掃除は指揮役に徹し汗水流して家具の配置換えを行うのはブライト親子だし、毎日の食後の食器洗いもエステルの仕事だ。

 まあ、エステルは食べ専なので適材適所の役割分担と言えなくもないが、新しいレシピ開発に余念のないヨシュアが厨房をそのまま放置し、また次の探求へと羽ばたく傾向があるのは確か。

「それでね、体育祭のアイデアを正式に取り入れることで纏まったのよ」

 やはりというか、全く自省していないようで、具体案へと話を移行させる。

 学祭中の服装を体操着で統一するのと、本来、お昼休みに充てられていた時間を利用し騎馬戦を行うのに合意を得たが、幾つか修正が加えられる。

 ほとんど練習時間も確保できない中、非力な女子だけで騎馬を組ませるのは危険なので、馬役の三人は屈強な男子生徒で固めて花形の騎手を軽量の女子生徒が担えば、ぶっつけ本番でも上手くいくのではとジルが具申した。

「これなら男子生徒も参加できるし、お客さんのお目当ても同時に叶えられるからね」

「運営の微修正に伴う雑務は全て俺が執り行うから、任せてくれ」

 ハンスはキリッとした凛々しい笑顔で頼もしく明言するが、直ぐに顔がふやける。

 ヨシュアの提案にハンスがダボハゼのように食い付いた光景は容易に想像がつくが、意外にもそのヨシュアでさえも羞恥するブルマに対して、ジルは何らの抵抗感も持っていない。

 男女で真っ二つに割れたブルマ廃止運動に参加したのも、敢えて女子内で波風を立てる必要性を感じなかったからで、実際にはルーシーの右腕面しながら、二重スパイとして暗躍。内部情報をハンスに横流しし、獅子身中の虫として面白可笑しく場を搔き乱していた。

「しかし、男子生徒はともかくとして、この企画を無理やり押し通そうとしたら女子側の反発が凄そうでしょう?」

「ふふん、クローゼ君。私が何の為に生徒会に属して、帰宅部の生徒が放課後の自由を満喫している中、毎日夜遅くまで居残りして馬車馬のように働いていると思っている?」

「ええっと、内申を良くする為ですか?」

 立身出世を夢見る彼女は、将来政界に打って出る野心を抱いていると聞き及んでいる。卒業後、最初のステップとして市の行政委員会に就職し、行く行くは憧れのメイベル先輩と肩を並べるルーアン市長のポストを伺う腹だ。

「ノンノン、それもあるけど、メインは何か面白そうな余興を思いついた時に、それを周囲に押しつける権力を維持する為よ」

「乾坤一擲の雄略だった男女反転劇はポシャってしまったので、少しは元を回収しないとね」

 すまし顔で職権濫用を仄めかすジルに、クローゼ達は唖然として声が出ない。

 性質の悪い生徒会長だと皆内心で思ったが、彼女を学内選挙で投票し最高権力の座につけたのは、他ならぬ生徒自身なのだ。

 リベールやエレボニアのような専制国家と異なり、カルバード共和国が採用する民主主義とやらは、政治の失策は国民一人一人が責任を持たねばならないので、王立学園の生徒も自らの安易な選択のツケを支払わされる時期が来たようだ。

「けど、生徒会権限で服装を無理強いできたとしても、やる気まで強要するのは難しいんじゃないか?」

「そうだな、少女たちの煌めく汗の輝きこそが一層ブルマの魅力を引き出すのであり、無気力な騎馬戦を鑑賞するのは、何か違うんだよな」

 基本、頷き要員のエステルが意外と真っ当な疑問を提示し、ブルマソムリエのハンスが好事家の意見を代弁したが、ジルとヨシュアの双方に腹案があるとのこと。騎馬戦の参加は強制でなく、きちんと有志を募るとのことだが、こんな酔狂な企画に参加してくれる女子がどの程度いるか疑問だ。

「それは本番を楽しみにしていて頂戴。赤組の騎手役の女子はヨシュアが、白組は私が集めることにして、双方の馬役の男子はハンスが声を掛けるそうだけど、こっちは三倍の数が必要といっても問題なさそうね」

 思春期の男子生徒が合法的に異性と密着できる棚ぼたチャンスを逃す筈はない。むしろ、希望者多数で抽選になりそうだが、逆に言えばどうやって女子をその気にさせるのかが課題と言える。

 ジルは生徒会権力をバックにしているので、いくらでも遣りようがありそうだが、女子生徒から嫌悪されているヨシュアの方は人集めの想像が出来ず、最悪ヨシュアが単騎で出陣なんてお寒い事態も有り得るかも。

 もっとも、単に騎馬戦の勝利を目指すだけなら、ヨシュア一人でもお釣りがくるぐらいだが、ジルとの知恵比べを楽しんでいる節があるので、力業で終結させることだけはなさそうだ。

「それとジル、店舗許可をもう一つだけ用意してくれる? 私も模擬店をやるつもりだから」

 生来の怠け者が瞬間風速的にやる気を漲らせている姿に、エステルは違和感を覚える。もちろん、学際の思い出作りでなく、純然たる算盤。

 学生道楽の屋台は収益を出すどころか、赤字になるケースも頻繁に見受けられ、基本的に喜捨金の勘定に入っていないが、そこにヨシュアは目をつけた。

 五つ星シェフ顔負けの神の舌と五百のレシピを併せ持つ少女が本気で手掛ければ、寄付金に次ぐ収入源に生まれ変わらせる自信があるが、ヨシュアの腕前を知るエステルだからこそ成否とは異なる危惧を覚える。

 居酒屋アーベントのバイトで張り切すぎて、周囲の定食屋を営業停止寸前まで追い込んだ前科があったからだ。一例として幼児が楽しく球蹴りで遊んでいる中に、高校のサッカー部員が強引に割り込んできて無双自慢するのは大人気ないにも程がある。

「エステル、私もそこまで空気が読めない訳じゃないわよ」

 プロの料理人相手ならまだしも、生徒たちが学祭の為に未熟なりに自ら作り上げたレシピは尊重する構えで、競合して閑古鳥を鳴かせるつもりはない。

 ターゲットは外国の旅行者に限定するそうで、これなら客層で他の屋台とバッティングすることもない。

「それで寄付金を増やせるなら、ヨシュアの好きなようにして構わないわよ。有り難いことに学園祭の趣旨を弁えてくれているみたいだしね」

 寛大な生徒会長はあっさりと営業許可を出したが、もう一つ別の要求がある。それはエステルとクローゼの身柄。学園祭の前日から一日貸し出して欲しいとのことで、準備に最も人手を必要とする繁忙期の催促はジルも良い顔はしなかった。

「前日といえば、『白き花のマドリガル』のお芝居も入念なチェックが必要でしょ? 完璧超人のヨシュアと違って、エステル君をはじめ皆役柄を覚えるのに必死なのよ」

 何を手伝わせるつもりか知らないが、帰宅部の暇そうな生徒を何人か見繕うので、それで代替するようにジルは提言してみたが、ヨシュアも譲らない。

 少女の企図するスペシャルゲスト専用の屋台を成功させるには、他でもない二人の協力が必須条件だからだそうで、それを聞いたジルは渋々ながら折れる。

 莫大な身銭を切らせるリスクをヨシュア一人に負わせた手前、彼女の行動を全面的にバックアップする責務が生徒会にあるからだ。

「ということだけど、二人の意志は……問題なさそうね」

 既に腹を括った殿方二人の表情を見て、ジルは嘆息する。例の密約により、どう事態が転んでも再建自体は成し遂げられたも同然だが、それでもヨシュアの金銭負担を1ミラでも減らすために滅私奉公する覚悟。

 当然、孤児院の子供たちが楽しみにしているお芝居も手を抜くつもりはない。今日からヨシュアも参加する連日の通し稽古は、学祭前日まで寮の門限無視の荒行の場と化すだろう。

 ただ、ヨシュアお得意の秘密主義により、二人にしか頼めない一日がかりの大仕事とやらの要約はジル達には伏せられた。

「なるほど、自慢じゃないけど、これはロレントの太公望と謳われた俺様以外には不可能な難題だな」

「エステル君ほどじゃないけど、僕の役割も重要ですね。ベストを尽くします」

 生徒会幹部の面前でひそひそ話が敢行される。こんな意味深な会話が零れてきたら、嫌でも好奇心を刺激されるが、むしろ学祭までに内容を推測するのも楽しいかと思い直して、質問を腹の内に押し込む。

 当日には外泊許可を申請する予定らしく、ヨシュアの用事は学園の外にあるみたいだが、ヒントはエステルの口から出た太公望という言葉か。確か『封神演義』という小説に出てくる賢人だった気がするが、尚更目の前の脳筋お兄ちゃんとは結びつかずに謎は深まるばかり。

「お祭りを盛り上げるアイデアは、大体、出尽くしたかしら? あとは時間があったら来賓の父兄も交えて、学際のフィナーレをフォークダンスで締め括りたい所だけど、これは流れを見て余裕がありそうならで良さそうね」

 幾つかのアドリブ要素を含めて細部を煮詰めたら、最後はどうやってこの企画を外部に宣伝するか。体育祭を取り止めて既に五年が経過しているので、今更ひっそりと再開した所で帝国人にとっては寝耳に水だろう。

「そのあたりも、抜かりはないわよ。図書館を出る前にきちんとマスコミの人間に声を掛けておいたから、もうしばらくすれば現れる頃……」

「ヨシュアー! 王立学園内で発生した一大スキャンダルはどこだー?」

 クラブハウスの扉がガラリと開く。無精髭を生やした中年男が背広を左肩に背負って、息を切らせながら乗り込んできた。

 リベール通信の自称敏腕記者、ナイアル・バーンズだ。船員酒場『アクアロッサ』で昼間から飲んだくれていた所を電話一本でヨシュアに呼びつけられ、ご苦労にもヴィスタ林道の坂道を全力疾走してここまで辿り着いた。

「あら、ナイアルさん。思ったよりも早かったわね。けど、私は「学園内でスキャンダラスの炎が燃え上がり…………そうになったけど、未然に鎮火しました」と言おうとしたら、途中で電話を切っちゃうだもの。ちゃんと人の話は最後まで聞かないと駄目よ」

「な、なにぃ? ふざけんな、この腹黒娘。俺は実のないトンチや言葉遊びが嫌いだとあれ程……」

「まあまあ、オジサン。絞りきりジュースでも飲んで落ちついて」

「おう、悪いな。ちょうど喉がカラカラで。ぷっはぁ、旨えー。……って、俺はまだ二十九歳で、おっさんと呼ばれる年齢じゃねえ!」

 小悪魔的に微笑む確信犯の少女に全身汗だくのナイアルのイライラは最高潮に達したが、ジルから差し入れられた清涼水で気分を落ち着けると、苦虫を噛み潰したような表情でハンスの隣に陣取る。

「で、用件はなんだ?」

 スクープはデマだとしても、互いにメリットのある土産話でもない限り、態々こんな場所まで御足労しない筈。遊撃士姉弟に利用価値のある間はこの程度弄ばれるのは覚悟の上だ。

「シェラさんもそうだけど、話か早い人って本当に助かるわね。腹に一物抱えてそうだから無償の友情を築くのは無理そうだけどね」

 己自身が十分に打算的でありながらもヌケヌケとそう言い切ったヨシュアは、双方向で手早く紹介を済ませると早速本題へと入った。

 

「ふーん、学園祭の宣伝ねえ。市内でお前らの姿を見かけないと思ったら、校舎内で勉学に勤しんでいたとはな」

 最初は二人の恰好(ヨシュアは体操着姿だが)から、てっきり噂に聞く学園の潜入捜査かと勘違いしたが、相変わらず愉快そうな騒動の中心となるあたり、ブライト姉弟に目をつけたナイアルの勘に狂いはなかったようだ。

 マーシア孤児院の放火から始まって、お芝居を手伝う為に二人がジェニス王立学園の制服に袖を通すことになった経緯を全て聞かされたが、寄付金の使い途まではジャーナリストに漏らす訳にはいかないので、その部分は秘匿された。

「確かリベール通信社は帝国内でも海外新聞として部数を発行していますよね? 五年ぶりに体育祭が復活した旨を大々的にコマーシャルして欲しいのよ」

 神聖な学舎の中にも関わらず、禁煙する素振りさえ見せずに堂々と煙草の煙を吹かすナイアルは、ヨシュアから手渡された写真を見てギョッとする。

 例の若かりし市長さんが騎馬戦で取っ組み合っているスナップ。帝国の社交界でも顔が広いメイベル市長のブルマ姿なら広告効果は抜群だろうが、ナイアルはブルブルと首を横に振る。

「おいおい、勘弁してくれよ。そうでなくても先の失態で市長さんから睨まれているのに、こんな破廉恥な写真を掲載したら本格的にボース商会を敵にまわしちまう」

 ナイアルとしては体育祭の件は庶民受けしそうなネタなので是非とも記事にしたいが、これ以上メイベルの心証を悪化させるのは御免被りたい所。

「前にも話したけど、メイベル市長はもっと酷いジェンダーの壁と戦ってきたから、友人のリラさんを巻き込んだりしない限りはこの程度のことで目くじら立てたりはしないわよ」

 ボース商人も決して一枚岩という訳ではなく、若くして世襲に近い形で市長職と財政基盤を受け継いだメイベルを快く思っていない勢力は多い。敵対側が槍玉にあげるのは決まって市長の年齢と性別で、その手の誹謗中傷には慣れっこになっている。

 このあたりの内情は、貴族の既得権益を侵して多くの大貴族から敵意を買っている帝国の鉄血宰相オズボーンと似ていなくもないので、新聞記者のナイアルも心得てはいるが今一つ踏ん切りがつかない。

「仕方がないわね。ギブ&テイクで、私達が今掴んでいるカードを見せてあげるわ。ジル……」

「はいはい、ここから先は素人さんは立ち入り禁止なわけね。行くわよ。ハンス、クローゼ君」

 ヨシュアの無言の催告にジルは軽くウインクすると、クラスメート二人を引き連れて席を外す。ジルは場の空気を読んでの行動だが、男子二人は各々ナイアルと顔を合わせたくない裏事情を抱えて退出の機会を伺っていたので、彼女の提案は渡りに舟。

「随分と良い友達を持っているみたいだな。けど、あの二人、どこかで見たような気がするが…………って、思い出した。紅髪の方は例のブルマ小僧じゃないか」

 昨年、『ブルマ廃止反対』のいかれた川柳の鉢巻きをした男子生徒の集団が王都をデモ行進した際の中心人物の一人がハンスだ。インタビューで小一時間かけてブルマの素晴らしさを得々と語られ辟易させられた記憶をフラッシュバックさせた。

「あいつなら、体育祭の復帰を全力でプッシュするのも納得だな。で、もう一人の紫髪のイケメンはどこで見かけたっけか?」

 両腕を組んで小首を傾げる。クローゼが最後に公の場に顔見せしたのは五年も昔の話で、生誕祭すら欠席する皇太子の御尊顔を拝せる人物は王宮外では極少数。

 ヨシュアでさえ公爵との一件がなければ見落としていたが、曲者の新聞記者のこと。切っ掛けさえあれば王子様の正体を看破しそうな予感がするので、ナイアルの思考を別方向に誘発する為にキールの置き土産を開示した。

「おいおい、情報部そのものが一連の空賊事件の黒幕って、マジかよ?」

 人一倍神経が図太い筈のナイアルも仰天するが、言われてみればいくつか心当たりもある。

 遊撃士の捕り物時の図ったようなタイミングでの強引な介入といい、カノーネ大尉のジャーナリズムの自由を汚した喧伝方法など。偏見のフィルターを通してみれば、清廉に思えた情報部にも幾らでも怪しい点が目についた。

「まだ確証を手に入れた訳ではないわ。けど、マーシア孤児院の放火に関わっている可能性すらあるのよ。ナイアルさんなら、可燃燐についてご存じでしょう?」

「現物を見たことはないが、紛争地帯で用いられるというアレか?」

「ええ、そしてこれが実物よ」

 ポーチから真っ赤な粒を取り出して、ナイアルの掌に落とす。孤児院のラベンダー畑で見つけた可燃燐の最後の一粒。万が一火の元に触れたらとんでもないことになるので、銜え煙草の誘爆には注意するよう悪戯っぽく警告し、ナイアルは大慌てて火のついた吸殻を灰皿に押し付けた。

「空賊事件は王国軍内部での情報部の勢力拡大の効果があったから判らないでもないが、地方の無害な孤児院を焼き払って奴らに何の利益があるんだ?」

 ヘビースモーカーには危険極まりない発火物をヨシュアに返却すると、当然の疑問を呈する。

 かつて、カシウスの部下だった情報部指令リシャール大佐とナイアルは直接面談した。見掛けほど単純な良い人ではないにしても、少なくとも無辜の民衆を苛めて悦に浸るような卑劣漢でないのは確か。

 目的の為なら手段を選ばなそうな女狐の副官なら、上官の為に自ら汚れ役を引き受ける可能性も十分有り得るが。

「それを調べるのは、私たちよりもむしろ貴方の領分でしょ、ナイアルさん? とにかく一連の事件は氷山の一角に過ぎず、このリベールで何かとんでもない災厄が起ころうとしている。そんな不吉な前触れのような予感がしてならないわ」

 事件を引き起こした空賊の親玉のドルンは、ヨシュアより格上の魔眼でマインドコントロールされていた。そんな異能を行えるのは顔も名も忘れたあの女しか存在しない。

 かつてヨシュアが属していた組織が闇で蠢動しているのだとしたら、情報部すら真の黒幕を覆い隠す単なるヴェールの一枚でしかない。

 事件の規模の壮大さにナイアルは一瞬目眩がしたものの、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』を信条とする彼は、大小様々なリスクと目の前にチラつき始めたフューリッツア賞を秤にかけて、散文的に後者を選択する。

 放火事件に情報部が関与したかの内偵調査や、国内外のリベール通信に早急に学園祭の宣伝記事を載せることを確約して、ジェニス王立学園を後にする。

 リベールを揺るがす陰謀の影を匂わせながらも、今現在エステルとヨシュアが真剣に取り組むべきはお芝居や寄付金集めの準備。多くの人間の運命が交差する学園祭の日限は刻一刻と近づいていた。

 


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