星の在り処   作:KEBIN

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ジェニス学園の黒い花(Ⅴ)

 ルーアン市から南へ伸びるアイナ街道を、ジェニス王立学園の制服を着た男女が下っていく。言う迄もなくヨシュアとクローゼの一組。結局、クローゼはヨシュアの言霊に抗うこと叶わず、お供を仰せつかる。

 先行するヨシュアは相変わらず身一つで身軽そうだが、クローゼは正面に抱え込んだ五段重ねの重箱に視界を塞がれ足元をふらつかせる、どこか既視感を感じさせる光景が展開されている。

(何をやっているんだろうか、僕は)

「ヨシュアさん、エステル君たちが脇目もふらずに稽古に励んでいる中で、あなたはこんな所で何をしているんですか? あまつさえデートとか、今なお講堂で頑張っている皆を馬鹿にするにも程があります」

 という正論は音声化され外部に漏れることなく、まるで苛められっ子の脳内復讐のように彼のインナースペースにのみ木霊して、何時の間にやら彼女から手渡された重箱を抱えて、カルガモの雛のように母鴨の背後をトレースしている自身を発見。

(ホント、何をしているんだか。けど、この街道の先にあるのはエア=レッテンの関所だけだよな? 名所の滝壺の轟々たる流れは確かに絶景だし、そんな場所でヨシュアさんと二人きり……って、本当に何考えているんだ、僕はー)

 クローゼはブンブンと首を横に振る。惚れた弱みか、天使の戒めと悪魔の甘言が同時に頭の周囲を跳ね回り、途方に暮れるクローゼにヨシュアが声をかける。

「着いたわよ、クローゼ」

「えっ、まだ関所には早すぎ……ってここは、まさか?」

 クローゼは顔をあげる。彼が持つ重箱と同じ階層の巨塔が威風堂々と聳え立つ。リベール重要文化遺産に登録された四輪の塔の一つ、紺碧の塔。

「あのデートって、ここでですか?」

 古代遺跡探索を生業とする泥棒、もといトレジャーハンターにお宝を根こそぎ奪い尽くされた魔獣ひしめく危険なだけの塔内がデートスポットに最適とは思えず、ついつい不平を漏らすが、次の瞬間、ヨシュアのペースに乗せられていたのに気づいて赤面する。

「まあ、そうなんだけど。その前に片付けないといけないお仕事かあってね、ほら?」

 塔の入り口付近にたむろする複数の甲殻魔獣の巨体を指差す。空中を浮遊し、黒光りする甲殻の合間から青白い光りが駄々漏れている。

「あれは、もしかして、ヘルムキャンサー?」

「そう、導力革命以前は、無敵と恐れられた魔獣よ」

 ヘルムキャンサーの最大の特徴は、自分の周りに特殊な磁場を形成して、あらゆる物理的な攻撃を反射する防護膜を常に展開している点にある。

 そこまで好戦的な魔獣でなく、縄張りと定めた場所から出張ることも滅多になかったので、有史以来放置するのがこの魔獣への最善の対処法とされていた。

 オーブメント技術の発達による攻撃アーツの普及により、遂にヘルムキャンサーの不敗神話に終止符が打たれたが、それでもこの魔獣の特殊能力が厄介な現実に相違ない。

「本来なら無視して、紺碧の塔に忍び込んでも良かったけど、訳あって退治する必要に迫られているの。手伝って貰えたら有り難いんだけどな」

 有り難いも何も、最初からヨシュアはその腹なのだろう。

 また、アガットあたりから白い目で見られそうだが、少女の価値観からすれば男が惚れた女の為に身体を張るのが本来あるべき男女の形。遊撃士や民間人とかの立場で括るのがナンセンス。

 ヨシュアお得意の殿方に媚びる愛くるしい上目遣いでお強請りするが、クローゼは重箱を地面に降ろすと心苦しそうに首を横に振る。

「手伝いたいのは山々なんですが、今日は非番ですから得物のレイピアを持ち合わせていないんです。力になれそうもなくて申し訳……」

「判っているわ。でも、私がお願いしたいのは、あなたの得意分野に関してよ」

 男を惑わす上目遣いを継続しながら、左手の人指し指で彼の唇に軽くタッチして発言を塞ぐと、いそいそと首元に手を掛けて、Yシャツの第一ボタンを脱がしにかかる。まさか、この野外で行為(何の?)に及ぼうというのか?

「知っていたのですか」

てっきり肢体を使った籠絡かと思いきや、そうではない。観念したように軽くヨシュアの手を遮ると、自ら第三ボタンまで外してネクタイを緩める。

 すると見開いたブレザーの胸元から、彼専用にカスタマイズされた戦術オーブメントが姿を現す。メインの水属性の中央スロットの他、クオーツを嵌める合計六つのスロットの穴が一つのラインで綺麗に繋がっている。

全連結構造(ワンライン)ね。大陸全土まで範囲を広げればともかく、リベールではワンラインの適正者は数える程しかいないと聞き及んでいたけど、その一人がまさかこんな学舎に隠れ潜んでいたとはね」

 戦術オーブメントのスロットは合計六個と常に決まっているが、ラインの数はその人間が生まれ持った適正によって異なる。ライン数が少なく、逆に一つのラインのスロットが多い程に高度なアーツを組むのを可能とするので、ワンラインはアーツ遣いの頂点と尊ばれる。

「からかわないで下さい。ワンラインと謳ってもスロットの半分は水属性で固定されていますから、そこまで取り回しが効くわけじゃないですし」

 戦術オーブメントのラインや各々のスロットの固定属性は、自由に設定できる訳ではない。生まれ持った適正によって最適な配置図が予め定められおり、その設計図以外でオーブメントを組んでも、導力魔法(オーバルアーツ)は作動しない。

 そういう意味ではヨシュアはツーラインながらも、固定属性をメインの時属性の中央スロット一つで抑え、一つのライン上の自由な属性でクオーツを組めるフリースロット数はクローゼよりも一個多いので、汎用性だけならワンラインのクローゼを上回る。

「クスクス」

「どうかしたのですか、ヨシュアさん?」

「いえねえ、エステルは大陸全土でも数少ない完全無属性(固定属性スロット数がゼロ)でありながら、スリーラインと今一つの性能だからアーツは完全に諦めて、物理攻撃を強化する方向で能力値アップ系のクオーツだけでスロットを組むことにしたの」

 スロットだけでなく、アクセサリもガチガチに物理系で固めているが、褐色の秘宝(タイガーハート)を二枚重ねで装着したのはバランスを欠いた。

 結果、タイガーハートのデメリット効果で魔力(ATS)がマイナス化。火を極端に苦手とする鳥形魔獣(フレスベルグ)を相手に炎系アーツを唱えてもダメージが通らなくなったが、物理とアーツのどっちつかずの中途半端な状態よりはどちらかに特化させた方が戦士として有能だったりする。

「それでも五つに枝分かれしている父さんに比べたら、全然マシだけどね。親子揃って完全無属性なのに共にアーツが不得手って、本当に適正は遺伝するものなのね」

 士官学校で戦術オーブメントの審査を受けたカシウスは、綺麗な五芒星の形をした無連結構造(オールライン)という大陸無比の持ち主であることが発覚する。

 「本来、高度なアーツ遣いの立場を約束された完全無属性で、ここまでラインに救いがない人間は初めて見た」と教官を呆れさせて、相当凹んだらしい。

 しかし、だからこそカシウスは己に唯一残された物理の道を突き詰めようと、常人の及ばぬ修行に明け暮れて剣と棍の(ことわり)に到達し、剣聖の称号を欲しいままにした物理の守護神と成り果せた。

「そうでしたか。稀代の戦術家と呼ばれたカシウスさんも、そんな断腸の思いを味わっていたのですね」

 クローゼの剣術師範のユリアのそのまた師匠筋で、文武両輪を極めたとされるカシウスも決して万能な存在ではなく、意外と身近な苦悩を抱えていたことに新鮮な驚きを享受する。

「まあ、与太話はこのぐらいにして、協力してくれないかしら? 対集団戦闘を得意とする私としては本来なら魔獣の群なんて殿方同様に鴨同然なのだけど、ヘルムキャンサーの反射能力だけは正攻法じゃお手上げなのよ」

 ヨシュアが再度、両手の掌を合わせてお強請りし、クローゼは天を仰ぐポーズで嘆息する。

「判りました。それでは手早く片付けましょう」

 甘え上手の黒猫の猫招きにとうとうクローゼが折れ、ヨシュアはぱっと表情を輝かせる。どのみちここまで着いてきて、今更手ぶらで帰る訳にもいくまい。

「ありがとう、クローゼ。それじゃ、これを渡しておくわね」

 懐から取り出した宝石を、クローゼの掌に落とす。滴る血のような真紅の色。まるで魂そのものが宝玉の中に吸い込まれるような禍々しいオーラを解き放っており、思わす唾を飲み込む。

「ヨシュアさん、これは?」

真紅の秘石(クリムゾンアイ)と呼ばれる一部から持ち主に災いを齎す呪いの宝玉と忌み嫌われ、別なコアなコレクターが求め続けた曰く付きの逸品よ」

 釣りをしていた時、大物(ギガンコラー)のお腹を割いたら出土したと付け加える。

 尚、釣り名人のエステルの部屋のジャンクボックスの中には、釣り上げたギガンゴラーやガーウェルズから吐き出させた光り物がゴロゴロ転がっている。ほとんどは骨董価値のないガラクタだが、中には希少品(レアアイテム)も入り混じっている。

 鑑定眼に優れるヨシュアは小遣いに困っているエステルから、それらのレアアイテムを二束三文で買い叩いた挙げ句、王都のオークションに出品し十倍差額でぼろ儲けするというアコギな商法を繰り返しており、少女の口座の20%は実質、エステルが釣りで稼いだようなもの。もしかすると、エステルは職業選択の道を誤ったのかもしれない。

 義兄の無知蒙昧に容赦なくつけ込むヨシュアも鬼だが、それでもタイガーハートのようにエステルに有益なアクセサリについては、きちんと効能を教えた上で手元に残しておくあたりは鬼の目にも涙というべきか。

 また、釣り素人のヨシュアが唯一自力で獲得したクリムゾンアイは、マニア価格で一万ミラは下らない値がつく代物だが、対象者の魔力を大幅に増幅させる特殊効果が封じられているので、売却せずに保持していた。

 ただし、この宝石に秘められた呪いを嫌って装備自体は敬遠していたが、クローゼならこの装飾具(アクセサリ)のプラス効果を最大限に引き出せる筈。

 ヨシュアに勧められるがまま、無警戒にクリムゾンアイを身につける。その瞬間、まるで宝玉の呪いに蝕まれたかのように身体が重くなり、思わすその場に片膝をつく。

「それが、クリムゾンアイのデメリット効果よ。魔力アップの反動として身体に負荷を与えて、行動力(SPD)を著しく低下させるの」

 「昔の人はその現象を、この宝玉に呪われたと思い込んでいたみたいね」と目の前のクローゼの苦悶を無視して、解説魔が他人事のようなしたり顔で講釈を垂れる。

 全て判っていてクリムゾンアイをクローゼに押し付けたヨシュアの性根はどうかと思うが、人並み外れた敏捷性を生命線とする漆黒の牙にとっては今一つ使い勝手の悪いアクセサリなのは確か。

「只でさえ高いワンラインのあなたの魔力が割り増されば、ヘルムキャンサーも一撃だと思う。私が前衛として壁になるから、後衛の砲台としてメイン火力役をお願いね」

「判りました」

 クローゼは冷や汗を掻きながら、重々しい動作で何とか立ち上がる。他にヘルムキャンサーにダメージを与えられる有効な手段は存在しないし、今はヨシュアの作戦につき従うしか道は無さそうだ。

 

        ◇        

 

 魔獣の群からやや離れた位置から両手で印を組んで、アーツの詠唱態勢に入る。身体に感じる重みとは別に不思議とクローゼの意識は今までになくオーブメントへと集中。溢れんばかりの魔力の高まりを感じる。

「アクアブリード!」

 遠距離スナイプの先制攻撃で、彼の得意とする水属性アーツが炸裂。

 鋭い水柱がまるで水龍のような勢いで魔獣に襲いかかり、ヘルムキャンサーの固い甲殻を紙のように貫通し、巨体を地面に横たわらせた。仲間の一匹が倒され、魔獣の群が怒りに震えながらこちらに向かってくる。

「ほらっ、魔獣さん、こちらにいらっしゃい」

 挑発クラフトで誘導された魔獣が、方向転換してヨシュアに襲いかかる。その隙にクローゼは再び次のアーツの詠唱態勢に入る。奇襲が通じるのは最初の一回こっきりで、ここから先は逐一アーツを唱え直して、一匹ずつ駆除していかなければならない。

 壁役のヨシュアは物理反射というヘルムキャンサーの特性上、攻撃に転じる訳にもいかず、無手のままひたすら避けまくるだけ。

 ヨシュアの高速機動力を以てすれば、複数対一とはいえ、そうそう接触事故は起きないが、魔獣を惹き付ける必要性からあまり距離を取る訳にはいかず、先程から紙一重で波状攻撃を避け続ける。

 相変わらず異常な回避率(AGL)の高さだが、体力不足のモヤシ娘に何時までもこんな芸当を続けられない。

「華奢なヨシュアさんのスタミナが尽きる前に、早く魔獣を全匹駆逐しなくては」

 内心は焦りながらも、クリムゾンアイの鎮静効果で意識だけはアーツに集中するという摩訶不思議な精神状態で、水属性アーツ『アクアブリード』を連発する。まさに一撃必殺の名に相応しい高火力で、ヘルムキャンサーを次々と沈める。残すは後二匹。

 ヘルムキャンサーはそこまで賢い魔獣ではないが、野生の本能にわざわざ頼るまでもなくこれまでの推移から、囮役の少女の無害さと後方のアーツ遣いの少年の危険度を認識したようで、再度のヨシュアの挑発クラフトをキャンセルして真っ直ぐにクローゼに突進する。

 詠唱態勢に入って無防備状態のクローゼに、ダンプカーとの正面衝突に等しいヘルムキャンサーのぶちかましを避ける術はなく、ヨシュアは選択を迫られる。

(仕方ないわね。ダメージさえ与えなければ、物理クラフトの特殊効果だけは有効の筈)

 琥珀色の瞳を真っ赤に輝かせると、巨大な聖痕のイメージが宙に浮かび上がり、クローゼとの衝突寸前で金縛りにあったように、ヘルムキャンサーの動きがストップする。

 遅延効果を持つ『魔眼』のクラフトを、あの蛇女の魔眼のように上手くノーダメージに調整。反射機能を働かせることなく、魔獣をその場に足止めするのに成功する。

「急いで、クローゼ。そう長くは拘束できないから」

「判りました」

 お互いにそう会話したが、詠唱時間は常に一定。駆動系クオーツの有無や詠唱するアーツのランク等の外的要因に左右されることはあっても、気合で短縮するなどという奇跡は起こり得ない。

 学識不足のエステルじゃあるまいし。どちらも、その程度のオバールアーツの基礎理論ぐらい弁えてはいたが、それだけ状況が切迫し必死という顕れ。

「やぁっ!」

 アクアブリードがヘルムキャンサーを貫通し、ドサッと重音を響かせて地面に平伏す。残り一匹と安堵したのも束の間、倒した魔獣のお腹に開いた風穴から、ポムポムっとした柔らかそうな丸っこい物体が蜘蛛の子のように溢れだしてきた。

「ミントポム? しまった、雌の固体も紛れ込んでいたのね」

 ミントポムはヘルムキャンサーと共存関係にある。普段は雌のお腹の中に隠れ住んでいて、宿主に胎児の成長に必要とされるミントを支給している。

 この魔獣の生態にはまだまだ不明な点が多いが、ヨシュアが唯一問題としているのは、奇妙な共生の成り立ちでなく、目の前の小柄なポムの群が見掛けに反してかなり危険なアーツを使いこなすという現実。

 まるで子宮を間借りしていた母屋の復讐の如く、複数のポムは『ダイヤモンドダスト』という凍結効果を備える水属性の高レベルアーツの詠唱をクローゼのいる足場に照準を重ね合わせる。

 クローゼも既に次のアーツの詠唱態勢に入っているが、恐らくは敵の方か早い。ダイヤモンドダストの集中砲火を浴びて戦闘不能を免れるとは思えず、万が一生を拾ったとしても、アーツの効果で凍結した所にヘルムキャンサーの巨体で体当たりを喰らえば、クローゼの身体は粉々に砕け散るのは必至。どちらにしても詰んでいる。

 端正な顔が焦りと恐怖で歪むが、彼には打つ手がない。せめてヨシュアの為にもギリギリでもこちらの詠唱が間に合い、最後の一匹を道連れにするのを祈るぐらいだ。

「これしかないみたいね」

 合理的な思考フレームの高速演算で何度シミュレートしても、たった一つの解法しか見出せずにヨシュアは腹を括る。

「こんなことなら意地を張らずに、駆動解除系のクラフトを習得しておくべきだったわね。ううん、アレは基本単体技だから、こんな広範囲に散らばったポムの詠唱を纏めて止めるのは、どのみち無理だったのよ」

 せめてもの悪あがきとして、「自分のポリシーは間違っていない」と己に言い聞かせながら魔眼を解除し、太股のバインダーに納められていた双剣を展開させる。

「ヨシュアさん、まさか? それは駄目です! そんな真似をしたら、あなたは」

 背水の覚悟を気取ったクローゼが大声を張り上げる。彼と目を合わせたヨシュアは一瞬儚げに微笑むと、再び琥珀色の瞳を真っ赤に光り輝かせて、全体Sクラフト『漆黒の牙』を先の魔眼クラフトの待機時間を無視して、割り込みで強引に発動させる。

 今まさにクローゼに向かってアーツを同時発動させようとしていたミントポムの群が、一瞬で壊滅する。

 ただし、無差別蹂躙技である漆黒の牙は戦場の特定の敵を標的から外すような器用な真似は不可能。ヘルムキャンサーを襲った痛恨の一撃が特殊磁場によって跳ね返され、ヨシュアは己の剣撃をその身で味わった。

 肩口からお腹に向かって大きく斜めに引き裂かれて、血飛沫をあげながら糸の切れた人形のように地面に倒れ込む。

「ヨシュアさん!」

 アクアブリードの詠唱が完了し、反射行動によって一瞬だけ動きを止めたヘルムキャンサーの隙を逃さず、水の槍が口から尻尾を貫通して串刺しにする。

 最後の魔獣が地面に沈み戦闘に勝利したが、クローゼの眼中にない。クリムゾンアイのマイナス効果と詠唱の待機行動時間で鈍重になった身体を引きずるようにして瀕死のヨシュアの側へと駆け寄り、彼女を寄り起こす。

 まるで『白き花のマドリガル』の白の姫セシリアのように、蒼の騎士たるクローゼの手の中でヨシュアはグッタリと息絶える。ドクドクと血が溢れ出る傷口に両手の掌を翳しながら、クローゼは祈るように必死に水の回復アーツを唱え続けた。

 


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