俺でしたー!
そんな32話ですどうぞ!
三神先輩が大声をあげて俺の眉間にお札を叩きつけてから数分たち、やっとの事で周りからの視線が消えた。
広い境内を見渡すと、どこもかしこも巫女巫女ナース。嘘、ナースはいない。
ナースはいないはずなのだが何かが記憶に引っかか……おぉっと、背筋に寒気が!
きっと思い出さないほうがいいのだろう。
世の中そんなことでいっぱいである。主に俺の黒歴史とか。あれ、目から汗が……。
そんなどうでもいいことを考えていると、慎ましやかな胸をした顔見知りの巫女さんがおみくじを持って帰ってきた。
2つのうちひとつを受け取り、そそくさと先輩がおみくじを開く。先輩を見ているとなんだか少し子供っぽく見えて、頬が緩んでしまう。
「き、吉だ……」
ガクッと項垂れる先輩を見て、受験生なのに不憫だ…と思ってしまうあたり俺もこの人と少なくない時間を過ごしてきたんだな、と思わず考えてしまう。
「大丈夫だって香奈、おみくじ何ひいたかなんてどうせ一週間で忘れるからさ!」
「いや、巫女さんがそれ言うのはどうなんですか……」
ケラケラ笑っている三神先輩をよそに、俺は三神先輩が持ってきたもう一方の折りたたまれたおみくじを開く。
「だ、大吉っ……?」
思わず声に出してしまった。
大吉なんて最後に見たのはいつの事だろうか。たしか3年前の小町のおみくじがそうだったような……あ、俺大吉引いたの初めてだわ。
苦心16年、やっとの事で引き当てた大吉をニヤニヤしながら見ているとなにやら横から唸り声が聞こえてくる。
すると唸っている先輩に俺のおみくじを取り上げられた。
「むー、ずるい!」
「いやいや、何言ってるんですか。俺の初めてを返してください」
なんだか卑猥に聞こえなくもない言葉を言いつつ、先輩の手からおみくじを取り上げる。
少し涙目になっている先輩を見ると、年上なのになぜだか年下に見えて庇護欲をそそられるのが不思議である。
やっぱり課金額が100円じゃあ……などと不穏なことをブツブツ呟いている先輩の肩をトントンと叩き、振り返った先輩の手のひらの上に俺のおみくじを乗せる。
「やっぱりあげます」
「えっ、いいの?」
「まぁ、俺が持っててもアレですしね」
「アレってなによ。でもそっか、ふふっ。ありがと」
うっすらと笑みを浮かべて、先輩はおみくじを大事そうにしまう代わりに、自分で引いたおみくじを取り出した。
「じゃあこれ結ばないとね」
そう言って先輩はおみくじが沢山結んであるところまで行くと、どこに結ぼっかなぁ〜、と悩み始める。
「あ、なんか上の方に結んだほうがいいらしいよ?神様から見えるってさ」
流石は神社の娘なだけはある。
噂程度のものと思っていたが巫女さんが言うのなら本当なのだろう。
なんか思わず感心してしまった。
「へぇー、それって本当だったんですね。さすがみこみー先輩!」
「うん、さっきお客さんが言ってた!ってか、みこみーって誰だよ!やめてよ恥ずかしい!みっこみっこみーとかやんないからね?」
「といいつつやってくれるんですね……」
しかもソースはお客さんなのかよ!と心の中でツッコミをいれていると上着の裾をグイッと引っ張られる。
見るとふくれっ面をした先輩が涙目で俺を見上げていた。
「えっと、どうしたんですか?」
「……コレ結んで」
そう言って差し出された俺のより一回り小さい手のひらには、先程の先輩が引いたおみくじが乗っていた。
潤んだ瞳をまじまじと向けられ、思わずたじろぐ。……そんな顔されたら断れねぇじゃねぇかよ。
「まぁいいですけど……」
しかたなく先輩の手からおみくじを取り背伸びをして1番上に結び付けた。
ふぃー、仕事完了。もう一生働かない。
神様に不殺の誓いならぬ不働の誓いをたてているとちょんちょんと背中をつつかれた。
見れば、先輩がもう一度手をこちらに伸ばしていた。
「……こう?」
「ちっがーうっ!」
俺が握手するように握った手を半ば叫びながら振りほどくと、先輩はまるで恋人同士が手を繋ぐように握りなおした。
「えっと……手が繋ぎたかったの………」
頬を染めながら俯向く先輩にグラリと心を揺さぶられながらも、なんとか平静を装って言葉を返す。
「また夏みたいに迷子になっちゃいますもんね」
「うるせいやいっ!」
先輩はギュっと握っている手に力を入れてくるがたいして痛くはない。
そんな微笑ましくもなるようなささやかな仕返しを繋いだ手に感じながらポツリと呟く。
「そんなことされたら勘違いしちまうじゃねーか」
× × ×
「ほら! 次あれ行くよ!」
振袖とは思えないような早さで俺の手を引きながら、先輩が人混みを縫うように進んでいく。きっと彼女の頭の中は屋台のことでいっぱいで、さっき引いたおみくじで何がでたかなんて覚えていないだろう。
みこみー先輩の言ってた事は正しかったんだな。
屋台のおっちゃんと楽しそうにジャンケンをしている先輩の後ろ姿はとても年上の人には見えず、きっとそんなところも彼女の魅力の一つなのだと思う。
よっしゃあ!と歓喜の声を上げ、チョコバナナを2つ貰って嬉しそうにしているそんな彼女をみて思わず微笑んでいると、振り返った先輩が怪訝そうな顔をしながらチョコバナナを1つ差し出してきた。
「どうしたの比企谷くんニヤニヤして。あとこれあげるね!」
「……どうも」
おっかしいなー。微笑んでたはずなのになー。
イメージでは爽やかイケメンがはにかんでいる感じだったのに。誰だよそれ俺じゃねぇな。
先輩の言葉に少し傷付きつつも、貰ったチョコバナナを食べていると、空いている左手が何か柔らかなものに包まれる。
思わずピクッと反応するとクスクスと笑われて顔が火照るのがわかる。
「笑わなくてもいいじゃないですか」
「だってピクッてなったからさ」
「……反射的になっただけですから」
はむはむとチョコバナナを食べながら笑っている先輩を横目に、人ごみの中を歩いていく。
べ、別にチョコバナナを食べる女の子はちょっとアレだなー、とかおもってないんだからねっ!
10分程人混みを掻き分けて進み、やっとの事で入り口にたどり着いた。
やはり振袖を着ていると少しばかり歩きにくいらしく、疲れたーと声をもらす先輩の横で、俺も人混みから出られたことに安堵のため息を吐く。
「じゃ、帰ろっか」
「そっすね」
未だ離されない手を少しこそばゆく感じながらも、カラカラとなる先輩の履き物の音に合わせ、いつもより少しばかり遅い足取りに合わせて歩き出す。
「比企谷くん、今日はありがとね」
突然のお礼の言葉に驚いていると、先輩はさらに話を続ける。
「比企谷くんと初詣に来られてよかったよ」
「……お、お役に立てたならよかったです」
役に立ったよ〜、えらいえらい、と俺の手の甲を撫でる先輩に少しドキッとして目をそらしていると、満足したのか先輩はふんふ〜ん♪と鼻歌を歌い始めた。
「あの、先輩」
そんな先輩にふと疑問に思った事を聞いてみた。
「なーに?」
「お守りとかって買わなくても良かったんですか?」
「………………しまったぁぁぁあああ!」
数秒の空白の後、大きな叫び声を上げながら先輩が地面に崩れ落ちた。
こんにちは大和 天です!
投稿おくれてすみませんでした!
最初の頃の毎日更新が懐かしい……
32話いかがだったでしょうか?
本編のネタを多々使わせてもらいましたがヒッキーが2年生になった時の初詣や修学旅行でこの時のことを思い出しながら言ってたなら面白いかな〜と思って書かせてもらいました(*^^*)
UA150000突破しました!ありがとうございます(*^^*)
てな訳でそれにこじつけて次話のアンケートしたいと思います!
八幡、鹿波先輩、三神先輩のうちのだれ目線でどんなお話がいいか募集したいと思います!
一応センター試験とかの話とか書いてみたいのでお正月からセンター試験の間で不自然じゃない話題を募集します!
誰目線かor話題のどちらか片方だけでもいいのでじゃんじゃん活動報告のところに書いてもらえれば嬉しい限りです(*^^*)
期限は一応月曜日までです!
感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)