歌が力に!?俺の歌を聴けー!!   作:小此木

2 / 14
第2話

 

 

『・・・バサラ君、収録オッケーです!!』

「分かりました!!」

 

漸く今回の曲の収録が終わった。今回の曲も"俺ソロ"で『REMEMBER 16』。

 

あの事件から2年経ち、20歳になった俺は今"ファイヤーボンバー"というバンド名で活動している。無論、あの銀河中に広まっていた"FIRE BOMBER"の名前を借りたものだ。彼らの歌をこの世界に出すに当たって他の名前じゃあ俺自身納得がいかなかったからだ。楽曲の作詞、作曲は熱気バサラやFIRE BOMBERの面々の名前を使っていて、俺が曲を提供してもらっている事にしている。まぁ、俺の曲じゃねぇから当たり前だがな。

高校を卒業して直ぐにここに入隊?というか、入社。2年前超有名だった(俺はあの事件で見るまで全然知らなかったけど)"ツヴァイウィング"と同じ『特異災害対策機動部二課』って所にいる。あぁ、表向きは同じ事務所の歌手という事だ。両親にはプロの歌手になったと説明している―まぁ、歌手活動をしながらだから間違いじゃないしな―最初の1年間は・・・"地獄"って感じdeath。あの常識をポイしたオッサン...もとい、司令の指示で『どんな状況でも歌える精神と体力を付ける』事を目標に、

 

「お、俺の...歌を、き、聴け~!」

 

ある時はアルプス山脈を登山しながら歌い、

 

「お、ぼぼぼ、ぼぼぼ、ぼぼ(俺の歌を聴け)~!!」

 

またある時はセスナからのスカイダイビング中に歌い、

 

「お、俺の、危な!?」

「そらそら、そんな動きじゃ被弾するぞ。」

「いや、そんな、こと、言ったって!?」

 

終いには司令の攻撃を躱しながら歌うという暴挙までやらされた。・・・いや、最後の歌の特訓?(てか、最初から特訓じゃねぇだろ!?)は、ノイズ達を相手とって歌うことを前提に回避を磨けって事なんだけどあれは正直ヤバイ。今の俺、軍人より過酷な訓練を受けたんじゃねって思えたほどだ。

そして、後の1年はその特訓を行いながらバンドのメンバー集めと、FIRE BOMBER曲をCDにしていく事をやった。今のメンバーはボーカルの俺と、特異災害対策機動部二課音楽好きの職員というあからさまな突貫工事なので、正式なメンバー...特に女性ボーカルが欲しいところ。あと、ここの研究職員と意気投合し様々な機会を注文している。嬉しい事に、俺達のライブにもあのツヴァイウィングと比較するのが恥ずかしい人数だが、少しずつ人が集まりだした。

そうそう、この2年間で櫻井博士?監修の下、俺の歌に関して色々と調査した。分かったことは、弱いノイズに俺の歌を聞かせたら、消滅する。―正直、俺の歌を聴いた奴が消える事は実に不快に感じたが―強力なノイズにはある程度しか効かない事。最後に、俺の歌を聞いた人が少し癒される事は信じてもらえないだろうから秘密にしている。

ノイズの研究者である櫻井了子博士でも俺の歌がノイズに影響を与える事しか分からなかった。なぜ俺の歌が影響するのかが中々解明できないらしい。余談だが、検査を受ける時一々貞操の危機に遭いそうになるのは事に慣れたくなかったぜ...

 

 

■□■□■□■□

 

 

「...これが、2年間彼を調べた結果です。」

「フム、これは間違いないのかね?」

「はい。」

「そうか。」

 

アップにまとめたロングヘアーと白衣、眼鏡が特徴の女性、櫻井了子から受け取った調査資料を手に赤のカッターシャツとピンクのネクタイが特徴の男性風鳴弦十郎はそう答えた。

 

「彼、赤城バサラ君にはこれと言った異能やシンフォギアの様な聖遺物の反応もありません。全く()()の人です。」

「やはりそうか。いや、彼をこの2年ちょっと動けるように修行(地獄という名のスパルタ)していて薄々気付いていたんだが、これで確信したよ。」

「...ですが、彼の"歌"に関しては未知数。と表現するしか出来ません。どうしてあのような事が出来るのかサッパリです。」

「引き続き歌については調査してくれ。」

「分かりました。」

 

 

■□■□■□■□

 

 

「じゃあ、次の曲だ!!俺の、俺達の歌を聴けー!ファイヤー!!」

「「「ボンバー!!」」」

 

『ちょ!?バサラ君!!...もう、仕方ない。収録始めるわよ!!』

『『『はい!!』』』

 

「SEVENTH MOON!!」

 

この2年間で残念だった事がある。ツヴァイウィングだった天羽奏さん(今は19歳。正直俺より若いとは思ってもみなかったぜ)が、あの戦闘があった数日後ツヴァイウィングを引退した事だ。彼女は2年前のあの戦闘の影響がまだ癒えず無期限の療養中だ。少しの会話や散歩するぐらいには回復したもののあまり進展していないそうだ。声は出せるが、意思疎通はあまりできず、たまに吐血をしてしまう。こんな状況では歌うことや動く事は...と言うより普通の生活もままならないらしい。んで、もう一つ。2年前のあの時奏さんの「ガングニール」って対ノイズ兵器のシンフォギア?ってもんが砕けて無くなってしまったらしい。彼女は、それを纏う為色々頑張ったそうだが...辛いだろうけど、今はゆっくり心と体を休ませてほしい・・・次、歌うために。

 

そして、ツヴァイウィングだった風鳴翼さんは単独の歌手として活動をしている。偶に同じ事務所だからライブのギター役で一緒に演奏したりしている。が、俺の目にも分かるように一人で突っ走っている。歌も、ノイズとの戦いも。なので、ノイズとの戦いは彼女とろくに連携も取れず、個々で演奏(戦って)いる。

 

天羽奏さんには、俺の歌の分析や体の調査や修行でやらで、ろくに話もしていない。最近まで檻に入れられた様なものだったから仕方がないのだが...そう言えば、俺の、FIRE BOMBER歌を一曲しか聴いてもらっていない。そうだ!俺の歌を聴いてもらって、少しずつもでも元気になってもらおう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は走る。かつて自身を守ってくれた女性のように。ノイズに襲われていた女の子を連れて。しかし、行く手にはノイズ達が待ち構えておりとうとう工場の中にある一つの施設の屋上に追い詰められてしまった。そして、

 

「_____!!」

 

あの歌を歌った。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「反応絞り込めました!!」

「位置特定!!」

「ノイズとは異なる高出量エネルギーを検知!!」

「まさか、これって...」

「ガングニールだと!?」

 

基地内に響く警報音と職員達の迅速な敵位置の確認。そして、奏から失われたシンフォギアのガングニールの反応がその場所から感知された事実。

 

「クッ!!」

 

最後の事実だけで、風鳴翼を動かすには十分だった。

 

「待て、翼ぁ!!一人で無茶を...」

「もう、行ってしまいました!!」

「クソッ!!あの場所に一番近い隊員は!?」

「今調べていま...バサラ君が近くで収録をしています!!」

「よし!!直ちに連絡!!(頼むぞバサラ君!!)」

 

 

 

 

 

けたたましいサイレンが鳴る中、彼らは収録を一旦中止し"楽器のチューニング"を入念にしていた。

 

「ギターは!?」

「調整オッケーです!!」

「バックパックのスピーカーとマイクは!?」

「いつでも行けます!!」

「じゃあ、ファイヤーボンバーとして初めてのノイズ専用ライブと洒落込みますか!!」

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「オイオイ、満員御礼ってやつかよ!!」

 

俺は司令の指示でノイズが発生した所にヘリで来たんだが、何か翼さんの戦闘服を彷彿とさせる姿の少女が女の子を守ってる。こりゃぁ、急いで助太刀しないと子供が危ねぇ!!

 

「さ~て、熱気バサラが使っていたやつを模して"あの研究員"に特注で作ってもらったコレの初お披露目だ!!じゃ、行くぜぇ!!『俺の歌を聴けー!!』」

 

ギターとバックパックが一体になった楽器を構えヘリから飛び降りたバサラはノイズと少女のど真ん中に着地し、

 

『突撃ラブハート!!』

 

ノイズと少女達両方に向かって歌い始めた。

 

よし!ギターの音も響きも申し分ない!!・・・ん?バイクの音...

 

<ドゴォ!!>

 

って、翼さんが来たな!!後はあの人と連携して...って一回も一緒に戦ったことないじゃん!!

 

 

■□■□■□■□

 

 

突然ヘリが来たと思ったら、見知らぬ男の人が何か叫んで飛び降りて来て...突然歌いだしちゃいました。でも彼が歌っている周りは薄い膜?みたいなものができていてそれにノイズが触れたら消滅しています。それも、私の様な突然現れた凄い服も着ずに。そして、何故かあの翼さんがここに駆けつけて、私と同じような服で彼と一緒に突然現れた剣を持って一気に...ノイズ達を切り伏せています!?私は女の子を庇いながらその光景を呆然と見るしかできなかったよ...

 

この日、初めて赤城バサラとこの少女、立花響は出会った。そして、運命の歯車は動き出す。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。