四獣戦記《仮》   作:北岡ブルー

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『力』求めし者

 これはまだ、人がこの世の半分も知らなかった時代。

毎日の探求の中に無限の発見があり、未知との遭遇があった(いにしえ)の時代。

 

 だが悲しきかな。そんな時代の中でも考えの違いなどを理由とする争いは絶えなかった。

 

 この頃の人間達は個々で小さな集落を作り生活しており、他者に友好的な集落もあれば敵対的な集落もあった。この頃に多かったのは後者だ。

 

 彼らは巨大な鉄鉱石やマカライトなどを削り、剣や弓の矢尻に変え土地の良い場所を奪い合い殺し合った。

 大剣や弓などの武器も、争いを重ねる度にその強さを増した。

 

 こうして産み出された武器を手に取り、他の集落の人間に襲いかかる人間達。

 

血飛沫が飛び、首が飛び槍が飛ぶ。

 

 そんな血生臭い同族争いを繰り広げる人間達を、崖の上から見守る竜がいた。

 

 体の半分が草木に隠れて分かりづらいが、その体は赤銅色で、背中には飛竜対策に生えた鉤状の突起を生やした二足歩行の竜。

 名は最後に明かすとして、今は若竜と呼称する事にしよう。

 

 突然だが、この若竜の種族は今、絶滅の危機に追い込められている。

 

 彼らの敵はドスジャギィやクルペッコなどの鳥竜種や、空を舞う飛竜種などの小回りのきく飛竜種達。

 

 彼の種族は今、『ある部位』が異常に発達しすぎたせいで小回りの利くモンスター達に餌を先に捕られたり、奪われたりして、飢えで絶滅しかけているのだ。

 

その憎き部位とは、なんと『尻尾』

 

 長さはここにいる若竜の尻尾だけを見積もっても、本体以上あるという程。子供でこれなのだから、大人はこの倍はあるだろう。

 しかも最近は重みでよく引きずるせいで、追い詰められ住み着いた火山の成分が尻尾に付着し、重さが増している始末。

 

 若竜はこの尻尾のせいで死んだ者を数えきれない程見てきた。尻尾の重みで逃げるのが間に合わず、獣竜に潰された兄弟姉妹、飛竜に尻尾を掴まれて空を飛んだ母親は、未だに帰ってこない。

 

 かくいう本竜も、幼い頃この尻尾が樹に引っ掛かって鳥竜達にいじめられた事がある。体中に僅かに残った切り傷と一際目立つ額の斜め一閃の傷がその証拠だ。

 

 

 ――この尻尾のせいで…――

 

 

 そう思ったのか若竜は、背骨が悲鳴をあげるのも無視して体をねじ曲げ、尻尾にありったけの恨みを込めて噛みつく。だが力が弱い若竜に噛みきれるハズもなく、虚しい噛み音だけが響く。

 

 しばらく噛み続け、背中の限界を感じた若竜は悔しそうに口を開き、尻尾を解放して背筋を元に戻すと、人同士の争いが落ち着いてきたのを確認する。

 

 ―今だ!―

 

 好機と見た若竜はヴォウッ!! と犬を思わせる鳴き声を後ろに放つと、続々と若竜の同族が現れる。若竜は人間が同族で争い合う習性を利用して、両者が弱った時を狙い群れの腹を満たそうとしているのだ。

 

 その群れの数はだいたい5.6匹程で、若竜より幼い個体もいればあの怨めしい尻尾を噛み切る事に成功し生き残った個体もいる。身長は尻尾を抜いてランポスより少し大きいくらいだろうか。

 

 ダッと若竜が崖を飛び出したのを皮切りに、弱った人間達を喰らわんとばかりに駆け出す若竜の同族達。その様子から若竜は若くしてリーダーと認められている事がわかる。

 

《《《ヴォオオオオオッ!!!》》》

 

「ひっ! ひぃいいいいいッ!!」

 

「うわっちきしょう!! またコイツらかッ!」

 

「やめろぉ!! 噛むなッ!噛ギャ!?」

 

 人間はアプトノスよりも弱く脆い、自分達でも狩れる最高の獲物だ。と態度で表すように、弱りきった人間達に襲いかかる若竜とその同族達。

 

 動きの早い鳥竜や飛竜に受けた屈辱をぶつけるかの様に、若竜の同族達は大量の獲物の息の根を止める。

 

 ある同族は人間の首を引っ張り脊髄を引きずり出し、またある同族は足を潰し動きを止めてから頭を一飲みにする。若竜より幼い者の中には無我夢中に暴れる人間に手間取り、大人に助けてもらう者もいる。

 

 そして若竜自身は群れが人間を喰っている間、周りを警戒し見回りをしていた。すると自分より幼い子供達が獲物で遊んでいるのを発見し、注意しようと走りよる。

 

 子供の一匹が人間の部位を引きちぎり、叫び声を上げるのを楽しんでいたのだ。その周りの二匹は止めようとせず、逆に飛び跳ねはやしたてている。

 

「あくぁああ"あ"あ"あ"あ"ッッ!!!!頼む"ぅ!!!もう、もう殺じてぐれええぇぇぇ!!!殺ッアアアアアアアアアアアアアッ!!?!腕ぇ!?コイツらまだ俺ン腕おをおををっ!!!」

 

「も"ヴごろ"じ√

 

 

 その先は続かなかった。グシャンと泥団子を踏みつけるかの様に、若竜がその人間の頭を潰し鳴き声を止めたのだ。

 

 え~?なんでとめたの~?と言う様にキャウキャウと鳴く若竜より幼い個体達。

 

 その個体の一匹の頭を若竜は足で掴み、地面に叩きつけ首を指で締める。突然の事態にもがく幼い個体の顔はどんどん人間の血で汚れていく。

 

 どよめき立つ周りの同族達。若竜は踏みつけている幼い個体とはやしたてた二匹にヴォウゥ!と吠え注意する。

 

 ―獲物で遊ぶな!―

 

 この若竜がどんな事を言ったかは分からない。だが上記の言葉に近いニュアンスを口にしたのだろう。踏まれいた幼い個体は大人しくなり、反省したのを感じた若竜も幼い個体から足をどける。

 

 すると踏まれていた幼い個体は若竜の顔に飛び付き乗り掛かり、じゃあ代わりに遊んで!と言う様にキャウキャウと鳴く。切り替えの早い個体である。

 

若竜が抵抗しない事を肯定と取ると、周りにいた二匹も若竜にじゃれつく。

 

 実はこの三匹、親は飢えや敵に襲われるなどして既に死んでいる。先ほどの遊びも親の鳴き声を聞いた事がない故にし始めたものだ。

 

 親のいない寂しさを若竜は知っているからこそ、先ほどは厳しく、今は優しく接しているのかもしれない。

 

 久しぶりに感じた満腹感の中でじゃれつく幼き三匹とその相手をする若竜。

 

だが、楽しい時間はそう長くは続かなかった。

 

 

《ギギャウオオオォッ!!!》

 

 

 空から響いた猛々しい咆哮に若竜や同族が気付いた時にはもう遅かった。

 

 彼らが空を見上げ、眼を見開いたその先には、既に大量の火球が空を覆いつくし、目前まで迫る光景。

 

 彼らは逃げようと踵を返すも火球は地面に落ち、人間の死体をかき消す程強力な爆発が辺り一面に鳴り響く。

 

 視界は閃光や粉塵でメチャクチャになり、逃げる術を失った彼らに許されたのは爆風で吹き飛ぶことのみだった。

 

《グルルルルゥ…》

 

 己の吐いた火球によって壊滅した大地に、犯人は空からホバリングをしながら降りてきた。

 

その犯人の名は『火竜リオレウス』

 

 リオレウスは目や耳などの感覚器官が他の竜の数倍も良い。これを利用して若竜の目の届かない雲の上に身を隠し、先ほどの人間の悲鳴を開始の笛代わりに奇襲を仕掛けてきたのだ。

 

 全てはこの機を伺っての事、今の時期はリオレウスにとって子育ての時期であり、子供の安全の為に周りをくすぶるモンスター達を排除している最中だったのだ。

 

《グルルルゥ…》

 

 邪魔者を消して上機嫌に喉を鳴らすリオレウスは、焼け野原となった原っぱを我が物顔で歩き、焼け残った人間の死体を見つけてはおやつの代わりのように口に食わえ、飲み込んでいく。

 

 だがリオレウスは、ガサゴソと隅で足音をたてる不届き者を逃しはしなかった。

 

 素早く後ろへと大きな翼を羽ばたかせて後退し、足音がした方向に火球を打ち込む。

 

 その火球から横に転がる事で回避し、爆発を背に立ち上がったのは。子供達が覆い被さっていたお陰で軽傷ですんだあの若竜だった。その瞳には同族を吹き飛ばされた怒りにより入った赤いヒビが無数に走っている。

 

《ヴォオオオォウッ!》

 

《ガギャアアァァァァアアアウッ!!!》

 

 大気を震わせ威嚇し合う二匹の竜。だが万全の状態であるリオレウスに対し、若竜は見回りをしていたが為にロクに喰っておらず、不意討ちと同族をやられた事によるショックで咆哮の時点で足がふらついている。

 

 逃げようとしても忌々しい尻尾に邪魔されて終わりだろう。

 

ならばせめて群れの仇を討つ、一矢報いてやる。とばかりに若竜は前へと駆け出す。

 

《ヴォオオオオオ!》

 

 腹を括った若竜の動きは早かった。小回りの利く飛竜に回りこんで攻撃を仕掛けるのは無理だと悟り、窮鼠(きゅうそ)猫を噛む勢いで一直線にリオレウスの元へ向かう。

 

 がむしゃらに向かってくる若竜に対し、リオレウスは翼でバックをしながら口の中で火球のエネルギーを溜めこみそれを吐きつけるバックジャンプブレスを放つ。

 

 砲弾の様にブレもなく向かってくる火球は吸い込まれるかの様に若竜の顔に直進し、大爆発が響く。

 

 その強力な一撃で周りの死体は宙を舞い、地面はさらに焼き払われる。

 

 翼が生み出した浮力で僅かに浮かんだリオレウスがグルル…。と勝ちを確信し喉を鳴らしたその時。

 

 火球が爆発したことにより出来た黒煙の中から、鬼を思わせる形相をした若竜が姿を表した。

 

《ッ!?》

 

 自慢の火球を食らって少しの怯みも見せない若竜に驚きを隠せないリオレウス。

 だがそれに構うことなく、若竜はリオレウスの耳の下に生えている突起物に目掛けてありったけの怒りを込めて噛みついた。

 

《ギャアアァ!!?》

 

 風速を測る器官である突起に食いつかれ、思わず叫び声を上げてしまうリオレウス。

 耳元で叫ばれても無視してさらに噛みつき、歯を食い込ませ血飛沫を噴き出させる若竜。

 

 自分の最強の攻撃である火球を食らっても傷1つないこの若竜(バケモノ)に、言い様のない危機感を感じたリオレウスは「コイツを今。ここで消さなければ間違いなく末代の脅威になる」と悟り、本気で若竜の排除に乗り出す。

 

 頬の突起から走る激痛に歯を食い縛りながら翼を強くに羽ばたかせ、浮かび上がるリオレウス。

 

 細い前足と逞しく発達した後ろ足で逃がすものかと腹を掴み、必死でにしがみつく若竜を尻目に、リオレウスは咆哮を上げながら人間達が来た所から横にある谷に向かって無我夢中の思いで走る。

 

 若竜は谷に向かっている事に気付き、落ちる気だと考え離れようとするが、もう間に合わない。

 

 リオレウスは谷の端まで迫ると足と尻尾に全力を込めて地面に叩きつけ、宙に浮かびダメ押しとばかりに2、3発の火球を崖に撃ち込み、爆風に乗って地上から離れる。

 

 腹にしがみついている若竜が邪魔になって少しふらついているが、アノプトスを持ち上げられる筋力を持つリオレウスは「そんなの関係ねぇ!(×2)」とばかりに崖の地形を利用した上昇気流に乗り勢い良く上昇する。

 

 雲を突き破るまで上昇したリオレウスは、その場でメチャクチャな軌道を描き、きりもみ回転したり再度雲の中に入ったりして若竜をふるい落とそうとする。

 

 それに負けじとさらに四肢の爪を食い込ませ、リオレウスに血を吐かせる若竜。しかし若竜も雲の上という未知の環境に対応できてないのか、酸素が薄いせいで時々意識を失いかけている。

 

 

意地と意地のぶつかり合い。我慢比べ。

 

 

 そんな言葉が相応しい戦いの中で、ついにリオレウスが勝負に出た。

 

 リオレウスは首を下に向けると、腹にしがみついている若竜に向かって火球を放ったのだ。

 

 さすがに二度目の直撃は効いたのか、思わずリオレウスの腹から四肢を離してしまう若竜。

 一方リオレウスも無傷では済まず、腹に受けた傷が焼かれ、痛みで悶え頭から墜落する。

 

 雲を突き抜けたが地上までまだ距離がある、翼のあるリオレウスは滞空姿勢さえ取れば生き残れるだろうが、翼も無い若竜は…。

 

《ヴォオオオオオオォォォオオオオオ―――ッ!!!!》

 

 切々舞いで手足をバタつかせながら回転し、軽い混乱を起こし吠え続ける若竜。そんなパニックの中で、ならばとばかりに視線を尻尾に向ける。

 

 もし終わりなら、せめて尻尾(コイツ)でアイツの骨を折ってやる。そう決意した若竜は回転し続ける体を利用して尻尾をリオレウスに叩きつけようと回りながら近づく。

 

 しかし相手もバカではない、それに気づいたリオレウスはそのままの姿勢で横に旋回する事で若竜の飛鳥文化アタックを回避する。

 

 何度も両者は交錯するがリオレウスの華麗な動きに若竜の攻撃は当たらず、ついには地上と湖が見えてきた。

 リオレウスも翼を揺らし初め、回復してきた事を感じさせる。

 

「絶望」そんな言葉がお似合いの状況だろう。だがしかし! 若竜は閃いた!! ヤロウに尻尾の一撃を食らわせる方法を!! ←(ジョジョ風)

 

 回転しまくり、まるで投げられて戻ってくるブーメランの様にしつこく様々な方向から攻撃し続ける若竜。

その余りのねちっこさに、いい加減イライラしてきたリオレウス。

 

 ―いい加減に諦めろ!―

 

と吠える代わりに若竜を吹き飛ばそうと、リオレウスは全力の火球を数発、線で結べば三角を描ける形に吐き出す。それに向かって若竜は、何かを勢いよく突き出す。

 

 それは尻尾。憎んでも憎みきれない程に恨んできた尻尾だった。

 

 本体よりも倍の重さと長さを併せ持つその尻尾で放たれた『突き』は回転の勢いを一瞬にして殺し尽くし、若竜を空中で棒の様に真っ直ぐに立たせる。

 

 回転している獲物に対して放たれた火球はそのまま一直線に向かうも、若竜の頬や甲殻の一部を掠めるだけに終わり、通りすぎてしまう。

 

 それならもう一発撃ち込む!とそれを見たリオレウスが口の中に火を含んだ、その時だった。

 

リオレウスの耳に、不穏な音が届く。

 

《…ッ?》

 

 その音は若竜から聞こえてきており、ドドドドッと何千何万のアノプトスの大群が迫って来る音に似ていた。

 だが似ていると言うだけで、リオレウスの耳はアノプトスの足音ではないと告げている。

 

 なら一体、この音は何だ?

 

そう思って若竜のいる真下に目を凝らした、その瞬間。

 

 すぐ横を一瞬で若竜が通りすぎ、それに驚く間も無く謎の白い煙らしき塊がドバァン!!と勢いのある音でぶつかって来たのだ。

 

《ガギャアアアァ!!?》

 

 突然現れた障害物に驚きの(鳴き)声を上げ、急停止の体勢を取るリオレウス。その熱さに若竜に受けた傷が悲鳴を上げ、思わず吠える。そしてその状況の中でリオレウスは白い塊の正体を掴み、その驚愕の答えに驚きを隠せなかった。

 

 ―何故『水』がこんな所に飛んでくる!?―

 

そう、若竜の狙いはこれだったのだ。

 彼は自分を囮にすることで下にあった湖に火球を命中させ、蒸発した水をぶつけることでリオレウスの視界と動きを妨害したのだ。

 

 そして若竜自身はその水蒸気を一足先に受け、吹き飛ぶ事によってリオレウスを瞬く間に通りすぎる程のスピードを手に入れたのである。

 

これでやっと、遂に…

 

 ―お前はオレに諦めろと言ったな…―

 

尻尾の一撃を、

 

 ―オレが諦めるのを…―

 

浴びせる事ができる!

 

 ―諦めろッ!!―

 

《ヴォオオオオォオオオオオオオオオォオッッ!!!!》

 

 リオレウスがその遠吠えを聞きつけ、上空を振り返った時にはもう全てが遅かった。

 

 目視できたのは、自分に向かって降り下ろされる尻尾と、自分達が貫いた雲の穴から見える太陽を背に輝くあの若竜の姿。

 

『とんでもないモノを目覚めさせてしまったかもしれない』

 

 そう気付いたリオレウスが最期に思い浮かべたのは、愛らしい鳴き声をあげる我が子といとおしい我が妻の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 一閃

 

 

 

 

 

 

 

 若竜は元々、この重ったらしい尻尾の一撃でリオレウスの翼の骨を叩き折り、相討ちを狙う予定だった。生きるのを諦めていた。

 

 だが若竜の尻尾は、本体でも予想不可能だった予想外の結末をもたらしたのだ。

 

 

『斬った』

 

 

 あの堅牢な甲殻を誇るリオレウスを、文字通り右肩から左の後ろ足まで『真っ二つ』にして殺したのである。

 

 初めて見るその死に様に、そしてそれを引き起こした己の尻尾に、相討ち覚悟の予定だった若竜は驚愕するものの。咄嗟の判断で真っ二つになった死体を足で掴み、それをクッションにすることで地上への生還を果たしたのだ。

 

 一か八かの賭けに勝った若竜は今、リオレウスの火球でくぼみだけとなった湖跡地のそばで信じられない物を見るような目で己の尻尾を見ていた。

 

実は若竜、先ほどもこの尻尾に助けられている。

 

 リオレウスが開戦時に火球を若竜の顔に吐きつけた時、若竜は体を横に回転させ、尻尾を犠牲にして防ごうとしていた。

 

 だが尻尾は防ぐ所か火球を『切り捨て』、若竜に攻撃のチャンスを与えてくれたのだ。この尻尾がなければ、本来なら自分は開戦直後で倒れ伏していただろう。

 

 

『ストレスから来る尻尾への自傷行為』

『火山で引きずり回した事による鉄分の付着』

『尻尾による自然淘汰』

 

 

 今まで若竜と同族達を苦しめ続けていた様々な要因が重なり、それが一つとなることで邪魔なだけ『だった』尻尾は、火竜をも切断しうる強力な『(つるぎ)』と化したのである。

 

 

 

 

これは、『力』を求めた者の物語、その始まり。

 

遠い未来、世界が彼と出逢いし時。その尻尾で敵を斬り伏せるこの若竜とその種族はこう呼ばれる事になる。

 

 

 

 

 ―『斬竜』ディノバルド―

 

 

 

 

その伝説は、今幕を開ける。




▲▽▲▽▲▽▲ディノバルド古代種▲▽▲▽▲▽▲

かつて古代林に生息していたディノバルドの祖先にあたる獣竜種。

いずれ確認されるであろうディノバルドと比べると、尻尾は刺々しい鉤状の突起を生やした板状の木炭の様であり、体重 体長共にディノバルドと比べて小さい。

尻尾の先が地面に擦れてすり減った跡があること、人間の祖先にあたる生物の骨が腹の中から見つかったことなどから総合して考えると、ディノバルド古代種は中級、または下級捕食者のニッチに位置する肉食獣竜種であり、体が小さかったことからディノバルドと違い尻尾を武器として扱う場面は皆無に近く、そのために骨が多いが倒しやすい人間を狙っていたと思われる。

むしろ、個体の中には尻尾を噛みきった者や無数の噛み跡を残している個体がいるため、古代種にとって尻尾は邪魔でしかなかったのだろう。

その苦境の中で尻尾を武器にする個体が現れ、大きな生物を捕食し大型化していった者だけが現在のディノバルドになったと考えられる。

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