東方狐答録   作:佐藤秋

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第四十七話 プリズムリバー三姉妹

 

 人里から妖怪の山までの道を、特に当てもなく歩いて行く。最近移動するときは空を飛んでばっかりだが、俺は歩くのが結構好きだ。

 少しだけ小声で鼻唄を口ずさみながら、見通しのいい草原を抜けていく。近くに誰もいないからこそできる行為だろう。

 

「ん~♪~♪ ……ん?」

 

 ふと、自分の鼻唄のほかに、別の音が聞こえることに気が付いた。これは……ヴァイオリンの音色だろうか。微かにしか聴こえない上に、楽器の音色なんてあまり知らないから確信は持てない。どうやら前方から聴こえるようなので、そのまま耳を澄ませて歩いていくことにした。

 

 音色は着実に大きくなっていく。耳に感覚を集中させていたが、ふと前を向いてみると一人の金髪の少女が立っていた。恐らく彼女がこの音色の発信源だ。

 

「ああ、やっぱり……え?」

 

 少女の演奏している楽器は予想通りヴァイオリンだった(ヴィオラとかかもしれないが俺から見たらヴァイオリンだ)。しかし通常の弾きかた……ヴァイオリンを鎖骨に乗せる構えとは全く違い、宙に浮いたヴァイオリンが独りでに音を奏でているように見える。

 その異様な光景に、俺は少しだけ目が釘付けになった。

 

「……」

「……あ」

 

 ヴァイオリンを弾いていた(であろう)少女と目が合った。邪魔をしてしまっただろうか、俺に気付いた少女は演奏するのを止めてしまった。

 

「ご、ごめん。邪魔したか?」

「いえ、別に」

「……」

「……」

「……」

「あ、私に何か用?」

 

 少しの間沈黙が流れる。別に用があるわけではないが、ヴァイオリンを生で聴けるのは珍しい……というか初めてなので、良ければもう少し聞いていたい。

 

「えーと……邪魔じゃなければもう少し演奏を聴いてみたいんだけど……」

「え……」

「あ、駄目なら別にいいんだ」

「いえ……駄目というわけじゃないんだけど……私の音は……」

「やっぱり練習の音を聴かれるのは抵抗があるのかな。素人なので良く分からないが、綺麗な音色だと思ったんだが」

 

 ヴァイオリンどころか、普通の音楽に関しても俺は素人だ。どれがすばらしい音だとかは全く分からないが、それでも音楽を聴くことは嫌いじゃない。歌詞があろうとなかろうと、いいと思う音楽は沢山ある。

 

「む……そこまで言ってくれるなら折角だし聴いては欲しいんだけど……私の演奏を単体で聴いたら、気分が暗くなっちゃうのよね」

「……まぁ落ち着く感じの曲だとは思ったが」

「違うわ、本当に感情が落ち込んでしまうの。私にはそういう能力がある」

 

 少女が俺の目を見て言ってくる。相手の目をきちんと見ながら話す子だ、おそらく本当のことを言っているのだろう。

 しかし、感情が落ち込む……ということは良く分からない。さっきから演奏は聴こえていたが、俺は普段通り変わらないと思う。

 

「へぇ……でも遠くからこの曲を聴いていたけど、別に気分が下がったりはしていないが」

「……貴方がそれでいいならいいけど」

「ああ、ぜひ聴きたいな」

「むむむ、聴きたいと言われて演奏しないわけにはいかないわ」

 

 俺は草むらに腰を下ろす。聴くとテンションが下がってしまう音楽か…… 何やらよく分からないが、自分のテンションが落ちていく感覚は特に無い。おそらく俺が妖怪だからだろうか、抵抗力の無い人間と比べると感情操作はされにくいほうだと思う。西行妖の死の誘いにだって、少しは抵抗できたのだから。

 

「じゃあいくわね」

 

 少女は浮かせていたヴァイオリンを手にとって構える。どうやら普通に演奏も出来るようだ。俺は目を閉じて、意識を音楽に集中した。

 

 

 

 

 少女の演奏は凄かった。こういうときの自分の語彙の少なさにはがっかりさせられるが、凄かったとしか言いようがない。

 ヴァイオリンって結構高低さに幅があるんだな。透き通るような高音が聞こえたと思えば、響く重低音に切り替わる。それに複数の音を同時に奏でることもできるとは知らなかった。どうやったらできるんだろう。

 

「……ふー。どうだったかしら?」

「とても良かった。いや、聞くために残って正解だったよ」

「そう? ありがとね。 ……それで気分は……」

「別に普通だが…… いやあ、実に見事な演奏だった。憧れたと言ってもいい。 ……俺ももう少し若いときにヴァイオリンを始めていれば……ああもう遅いか、年だしな……」

「(あ、しっかり気分が落ち込んでる。でもやりたいと思うほど憧れてくれたみたい)」

 

 目の前で見るプロ野球選手の華麗なキャッチは、それだけで少年の進路を変えてしまう衝撃(インパクト)がある。少女の演奏に俺は一種の憧れを抱いていた。

 俺もこんな演奏がしてみたい。しかし今さらもう遅いだろう、今さら始めて何とかなるような甘い世界ではない。その事実にこの上なく気分が落ち込んでくる。

 

「はぁ……大体ヴァイオリンってものすごい高いらしいじゃないか、貧乏性な俺にそんな度胸あるわけないし……」

「なんてよく分からない落ち込み方…… どうしよう……メルランがいればなんとかなるのに……」

「変化の術で作る? いやそんな繊細なことが俺にできるわけが……」

「姉さんお待たせー。 ……どうしたのその人」

「ああメルラン、リリカ。それが……」

「大体なんで幽々子はいつの間にあんな食べるようになったんだ…… 暴食は七つの大罪の一つなんだぞ……」

「ルナ姉まさか……ソロで弾いたの?」

「うん……」

「あちゃー」

「……とりあえずメルラン、お願い」

「はーい」

「……ん?」

 

 考え事をして少し顔を伏せていたが、ふと顔を上げると少女が二人増えているのを発見した。薄水色でウェーブのかかった左右非対称の髪形をした少女と、茶色がかった銀色でショートカットの内巻きカールの髪形をした少女だ。それぞれトランペットとキーボードを持っている。

 その少女の片方が、俺の前でトランペットを吹き始めた。 ……ああこれも綺麗な音色だ。多分俺には一生出せない類いの音。そう思うと気分が更に落ち込んで……

 

 

 

 

「おお! ヴァイオリンも凄かったけどトランペットの音色もいいな!」

「そう? うふふありがとう」

「(……少し戻しすぎたかしら)」

「そうだよ、別に音楽は聴くだけでも十分楽しいじゃないか!」

「(あ、気分が上がるとそういう結論になっちゃうんだ)」

 

 ノリのいいトランペットの曲を聴き、なんだが気分が上がってくる。そういえば俺は、弾幕ごっことかはやるより見るほうが楽しいと思っていた。音楽だって同じだろう、演奏したい気持ちもあるが聴くだけでも十分満足だ。

 

「はは、それにしても、君も楽器を持たずに演奏できるみたいだな。見ててすごいし面白いな!」

「ええ、私たちは騒霊(ポルターガイスト)だからね、物を触らずに動かすのは得意なの」

「へえポルターガイストか! なるほどなるほど、それで楽器も演奏できるのか、ははは面白いな、ははははは!」

「うふふふふ」

「ポルターガイスト! はははポルターガイストて! なんだそれははははは!」

「……ルナ姉、このお兄さんのツボが分からない」

「……仕方ないわ、メルランの音に当てられちゃってるし」

 

 ポルターガイストとは物が勝手に動く現象の名前で、動かしている存在のことはクイックシルバーと言うのでは無かったか。それなのにこの少女は自分のことをポルターガイストだと言ってくる。なんだか可笑しくてたまらない。

 

「……こんなもんかな」

「…………ふう、いいものを聴かせて貰ったな。ええと、君たちは音楽を奏でるグループなのかな?」

「お、元に戻ったねお兄さん。そうだよ、私たちは三人で一つの幽霊楽団、プリズムリバー三姉妹。私は三女のリリカだよ」

 

 キーボードを持った一番背の低い少女がそう答える。三姉妹ということは姉妹なんだな、髪の色は全く違うが格好などは似ている気がする。

 

「あー戻っちゃった…… 私は次女のメルランよ、よろしくね」

「メルランは、私とは逆に聴いた者の気分を上げさせる能力を持ってるの。で、私は長女のルナサ。一応リーダーよ」

「俺は真、よろしくな。ええとルナサ、メルラン、リリカだな。間違えたらごめん」

 

 三人の自己紹介を聞き、対して俺も自己紹介する。一度に名前を覚えるのは苦手だが、幸いこの姉妹は全員それぞれ特徴があるので混乱することは無さそうだ。

 全く同じ格好をしてる双子とかは厄介なことこの上ないと思う。

 

「あら、お兄さん元に戻ったら普通の人だね」

「……そんなにテンションに落差があったかな」

 

 リリカに言われて首をかしげる。酒を飲んでも記憶を飛ばさないことには自信があるが、先ほどの記憶が少しだけ曖昧だ。なんだか思い出さなくても良さそうな気がするので、そのまま別の会話を広げていこう。

 

「そうだ、えーと、リリカの音楽にも感情を揺らす作用があるのか?」

「いや、私は姉さんたちの音を中和させる役目があるからね。そういった能力は無いよ」

「へぇ、なるほどな」

 

 返ってきた回答に納得する。ルナサが気分を下げてメルランが気分を上げ、リリカがそれを調節する。なかなかうまくできているじゃないか。

 

「だから、普通の私たちの演奏をソロで聴くことはほとんど無いのよ。リリカだけは単体でも聴けるけど……この子はソロライブはやらないからね」

「ふーん。じゃあ三人でならライブを開いたりしていると」

「そうよ」

 

 なるほど、それでルナサは人がいないような草むらで練習をしていたんだな。ヴァイオリンやトランペット単体でもすごい演奏だったんだ、是非とも三人のライブを見てみたい。

 

「三人合わさった演奏も聴きたいなぁ……この後まだ練習するのか? それだったら……」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、今から別のところに呼ばれてるの。今日のところは残念だけど……」

「ルナ姉、待ってよ。聴きたいって行ってくれてるんだから連れていけば良いじゃない、お客さんは大事にしないと」

 

 どうやらこれから仕事があるらしい。断られるかと思っていたが、リリカがルナサを制止させた。

 

「別の場所で今から演奏会をやるのか? それなら俺も……」

「えー……でも私たちが今から行くのは冥界よ? ただの人間を連れて行ってもいいのかしら」

「いいんじゃない? 連れて行っちゃえば」

「なんとかなるよ多分」

「……まぁいいか」

 

 ルナサが俺のほうに向き直る。話はまとまったのだろうか。まぁ一人でもこれだけ見事な演奏だったんだ、会場が満員の可能性もある。今回はあまり期待できないかもしれない。

 

「じゃあ折角だし貴方も連れて行くわ。少し遠いけれど構わない?」

「いいのか!? 全然構わない! 一体どこで演奏を……」

 

 期待していなかったぶん、聴けると分かってテンションがあがる。どこにいけばいいのか尋ねようとしたら、ルナサに次の台詞を言わせてもらえなかった。

 

「いいわ、私たちが連れて行くから。行くわよ二人とも」

「は~い」

「了解」

「え? うわっ」

 

 三人が宙に浮いたと思ったら、俺も引き寄せられるように宙に浮く。上に引っ張られる感覚ではない、ふわふわと宙に浮かされた。

 

「うおお怖い! 触れられてないのに浮いてる感覚超怖い!」

「じっとしてなさい」

「しゃべると舌噛んじゃうわよー」

「待て待て待て! 自分で飛ぶ! 自分で飛ぶから!」

「あれ……お兄さん人間なのに飛べるの? じゃあ私放すよルナ姉?」

「そうね。こう言ってることだし……仮に落ちたとしても結局目的地に行けるわよね」

 

 なにやら物騒なことを言っているが、それはともかく自分の体の主導権が戻ってきた。すかさず体を自分で浮かしなおしてホッと一息つく。

 

「あら……本当に自分で飛べたのね。先に言いなさいよ」

「急に浮かしてきたのそっちだろ!」

「あははごめんごめん」

 

 リリカが笑いながら謝ってくる。なんとも軽い謝り方だが、俺はそこまで本気で怒ってはいないので気にしない。

 

「飛べる人間なんて滅多にいないものー。それに今から行くのは冥界だからね、歩いていけない場所なのよー」

「生きてる人間を冥界に連れて行くなんて、死んでもらう以外にはこうするしかないと思うじゃない」

 

 ルナサが悪びれる様子も無くそう言った。どうやら行き先は冥界らしいが、冥界に行ったことのある人間を俺は三人ほど知っているし、そもそも俺は人間じゃない。

 

「全く……大体俺は人間じゃなくて妖怪だ。冥界にだって行ったことある」

「あら……真さんは妖怪だったの? 見えないわ」

「本当。随分人間くさい妖怪ね」

 

 メルランとルナサにそう反応されたが、それは何度も言われている。別に俺の中では悪口でも褒め言葉でもない普通の言葉だ。

 

「別に……人間も妖怪も似たようなもんだろ」

「あはは確かにー。どっちも大事なお客さんだもんね、あと幽霊も」

 

 リリカが俺の意見に同意する。なるほど、そういう考え方もあるのか。

 

「そういえば……冥界にはなんで呼ばれたんだ? 幽霊に演奏を聴かせに行くのか?」

「うーん、まぁそういうことになるのかな?」

「名目としては白玉楼の主に呼ばれたってことになるんだけどー……」

「人がいなくて練習もできるし、こっちにとっても都合がいいのよ」

「ああ、やっぱり冥界って白玉楼だったんだな」

 

 俺は冥界といえば白玉楼しか知らない。やけにだだっ広いことは分かるが、未だに幽々子がどのように死霊を管理しているのかも分からない。

 どうやらこいつらは、練習がてら幽霊相手に演奏を聴かせに行くらしい。幽霊は人魂のような形をしてリアクションはあまり取らない。それでも演奏を聴かせることには意味があるようだし、練習するには丁度いいようだ。白玉楼とはwin-winの関係になっている。

 何度も訪れているのだろう、俺は未だに行くのに少し迷うのに、こいつらはすいすいと雲の中を進んでいった。

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 白玉楼について、幽々子の屋敷まで訪れる。門を通ると妖夢が俺たちを出迎えた。

 

「楽団の皆さんようこそ白玉楼へ。 ……あれ、真さんじゃないですか、どうしてここに?」

「あら、真さんのこと知ってるの?」

「お兄さん本当に冥界に来たことあったんだね」

「……それなら事情は自分で説明しといて。私たちは一足先に行ってるから」

「ああ、分かった」

 

 そう言うと三人は屋敷の裏のほうに飛んでいった。妖夢が案内に行かない程度には何度も訪れているのが分かる。

 残った俺は、妖夢に事情を説明した。

 

 

「……というわけで、俺も演奏を聴きたいんだけど」

「……なるほど、分かりました。それでしたら屋敷の中を右に行って出たところでですね……」

「そうだ、妖夢も一緒に聴かないか?」

「えっ」

 

 妖夢が言葉で説明しようとしてくれたところを遮り、妖夢も聴かないかと誘ってみる。どうやら聴く人数が増えても問題ないようだし、それなら一人より二人だろう。

 

「だって人魂に聴かせているところに、俺だけなんか浮いてるじゃん」

「いや、じゃんって言われても……私はこれから幽々子様のお夕飯をつくらないといけませんし……」

「手伝う手伝う。 ……っていうかまだ夜まで時間あるじゃないか」

「知ってるでしょ真さん、幽々子様がどれほどお食べになるか。今から作って丁度いい時間になるんですよ」

「そうか…… それなんだが、前回の経験を生かして俺に作戦があるんだよ。実はな……」

 

 俺は妖夢に作戦の内容を話す。もともと幽々子は、幽霊になった直後もそこまで食べる娘ではなかったのだ。次また幽々子と飯を食う機会があったら、試してみたいことが一つあった。

 

「……どうだ?」

「……うーん、でも成功するとは限りませんよね?」

「失敗したら俺が別に食べ物を用意するよ。すぐに食べられるものも結構携帯してるからな」

 

 そう言って俺は懐から取り出した木の葉を団子に戻してみせる。 ……ただ、失敗したら結構大きな痛手だ。携帯している食料を全部食べられてしまうかも知れない。

 

「……まぁそれなら……」

「よっしゃ決定。そうと決まったら早速聴きに行こうぜ。霊と俺の間に半人半霊がいたら目立つこともなくなるだろ」

「あっ、ちょっ、案内するから押さないで下さい!」

 

 俺は妖夢の背中を押して急かすように、プリズムリバー三姉妹が演奏している場所まで歩いていった。

 

 

 

 

「(うわ、すごい人魂…… 座るところ無いのか?)」

「(無いです)」

 

 三姉妹が演奏しているという部屋……というか庭のとある場所にたどりつく。演奏は既に始まっていて、そこにはたくさんの人魂がいた。演奏だけが鳴り響く空間で、俺は妖夢と小声で話をする。

 

「(そうか…… なら、ほいっと)」

「(わっ…… 椅子ですか)」

「(妖夢も座っていいぞ)」

 

 変化で椅子を二つ作り出し、妖夢と並んでそれに座る。少し遠くて見づらいが、演奏はばっちり聴こえるので問題ない。

 

 あまり声を出すのもどうかと思い、ここからは妖夢と話さず演奏に集中する。

 あいつらは本当に三人なのか、ヴァイオリン、トランペット、キーボード以外にもいろんな楽器の音が聴こえてくる。見ると舞台の上では、いろんな楽器が空中で所狭しと踊っていた。

 

 優れた演奏というのはこんなにも時間を忘れさせるのか、楽しんで聴いていたらあっという間に終わりの時間になってしまった。

 

「……うぇ、もう終わりか……」

「真さん、ものすごい集中してましたね」

「そうか? まぁ時間が経過するのは早かったが…… 妖夢、アンコールしようアンコール」

「しません」

 

 妖夢と話していたら、演奏していた三人が人魂を掻き分けてやってきた。実際の会場ではこうはできない。

 

「やっほーどうだったお兄さん私たちの演奏は」

 

 リリカが俺に尋ねてきた。そういえばリリカだけは単体で俺に演奏を聴かせていないのだが…… それは置いといて、素直に自分の気持ちを感想にする。

 

「凄くよかった。もう終わりなのが残念だな……」

「あははそれはなにより。次も機会があったら聴きに来てね」

「ああ。普段はどこでやってるんだ?」

「お祭りが有る日は人里に行くこともあるしー、妖怪たちの間にも呼ばれたら行くかなー」

「……まぁここにも結構来るから、それでもいいけど」

 

 メルランとルナサが質問に答える。ルナサは演奏してるときはものすごく生き生きしていたのに、終わると普通の表情に戻ってしまうな。

 

「ええ。皆さん次もお願いしますね」

「「「はーい」」」

 

 妖夢が三人に呼びかける。個人的にはここでまた聴くのが丁度いい。タダで聴けるみたいだし。

 

「それじゃあ地上に戻るけど…… 真はどうする? 運ぼうか?」

「だから俺は飛べるって」

「真さんは白玉楼でやることが残っているので」

「あ、そうだった」

 

 妖夢に言われて思い出す。そう言えば幽々子に食事を作る手伝いをするんだっけ。

 

「あら、そうなの? じゃ、またねお兄さん」

「ばいばーい」

「じゃ」

 

 手を振って出て行く三人に、俺も同じように手を振り返す。今日はいい経験をさせてもらって、とても楽しい日となった。

 

「……じゃあ真さん行きましょうか」

「……あー、めんどいなー」

 

 妖夢に連れられて、白玉楼の台所まで行く。楽しい経験の後に面倒なことがあるのは少し嫌だ。 ……まぁ、これから幽々子に試す実験が、成功するかどうかを楽しむことにしようかな。

 俺は耳に残る音楽を鼻歌にしながら、妖夢の後をついていった。

 

 


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