神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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メインヒロイン(三番手)

展開が停滞しだしたFGOの息抜きに久々更新。
今回のヒロイン別はナナですよー。


香月ナナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仁慈、はやくはやくー!」

 

「ちょ、待って。そんなに急がんでもいいだろ」

 

 ブンブンと身体全体を使って俺を呼ぶナナ。日々の激務をこなしている立派な極東人にも拘わらずどうしてここまで彼女は元気なのだろうか。やはり事務業の有無がネックとなっているのだろうか。……今度、元隊長のジュリウス(キチガイバナナ)でも召喚して事務処理を押し付けようと思う。隊長権限で。

 何?職権乱用?問題ない。今の今まであいつが巧みに放置してきた仕事も俺が片付けたんだからこれくらいは正当な権利と言えるだろう。

 

 

―――――それはともかく、どうして俺がここまでテンションの高いナナと一緒に居るのかということの説明に移ろうと思う。

 

 まぁ、そこまでもったいぶることでもない。簡潔に言ってしまえば、ナナと男女の関係になったために、デートに来たということである。……やだ、男女の関係ってなんか卑猥。ゴホン、えぇー。ことのはじめは俺がちゃっかり過去から帰って来た直後に遡る。

 一応前々からそんな感じの雰囲気というか、感情的なものは薄々感じ取っていたのではあるが、はっきり言われていない状況で踏み込んで間違いだった場合には俺のメンタルが捕食されてしまうためにいい方は悪いが放置していたことが災いし、半年間姿を消した俺がいきなり帰って来たということで感情が爆発した結果―――――襲われた(夜のアレ的に)ことが原因である。

 

 ………うん。言いたいことはわかる。ヘタレとか、女性に何させてんだとか、そういったことはわかるのだ。しかし、しかしである。あのナナだぞ?ぶっちゃけ、知り合った初めの方ですら妹(実は一歳年上)みたいな雰囲気を醸し出していたナナといきなりそのような関係になろうということは聊か厳しいと思うんだ(言い訳)

 と、こういうこともあり、正式にお付き合いすることになった。周囲からは祝福と怨念の両方を受け取りながらもなんとかやって来ている。

 

 このような経緯があり、今現在俺たちは恋人っぽいこと、いわゆるデートに来ているのである。当然、デート場所は戦場ということもない。神機も持ってない。普通に極東の街並みを歩いているだけである。というか、ここ最近俺たちが暴れすぎたせいで極東近くのアラガミは根こそぎ駆逐されているのでしばらく湧くことはないと思われる。

 

「あ、仁慈!これ食べよう!コクーンメイデンホットドック!」

 

「チョイスがおかしい。ついでにこれを売ろうとする店主もおかしい」

 

 アラガミに恨みを持っていないものが居ないと言っても過言ではないこの世界においてアラガミを模した食べ物を出すとかどういう神経しているんだろうか。しかも、売り文句が「――――神を、食らえ――――」だった。舐めてんのか。

 

「でも、並んでるしやめよっか」

 

 舐めてんのかと思っているのだが、これがすごい人気だった。ものすごい行列である。このご時世で出店を出してるのが珍しいというのを差し引いてもこの人気はすごかった。食べるわけではないが、どんな人がやっているのかということに興味があったために、ちょっとだけ横から中の様子を見てみた。するとそこには―――

 

「お待たせ。コクーンメイデンホットドック三つ。華麗に出来上がったよ。合計で150Fだね。ついでにオウガテイルマスクはどうだい?これを被れば君もマスク・ド・オウガに―――」

「要りません」

 

「……………そうか」

 

――――知り合いがいた。思いっきり知っている人だった。もう声というか発言を聞いただけでわかるレベルで知り合いだった。というかエリックさんだった。成程、この人の財力なら出店をしていても不思議じゃない。恐らく、自分にできることを考えた結果なんだろう。伝手は自分の家を頼っているが、料金は自分で払っているんだろうな。彼の性格から言って。

 

 オウガテイルをモチーフにしたマスクを勧めて断られ、目に見えてしょんぼりしているエリックさんを見つつ俺はそう考えた。

 

 

―――まぁ、今はデート中ですし、華麗にスルーさせていただきましたけど

 

 

 

 

 

 そんなことがありつつも、デートは特に変なことが起きることもなく終わった。普通に腕を組んで歩き、その辺にある店を冷やかした。世紀末な世界観故にそこまでこった店はなかったが、自分たちが普段守っている者を俺と一緒に見て回るだけでも楽しかったとナナは太陽のような笑顔を浮かべていった。やだ、なんていい子……。

 

 そうしてデートから帰って来た俺たちは現在、俺の自室にて夕飯の支度にとりかかっている。と言っても、ムツミちゃんが作ってくれた料理を運んできただけなんだけどね。……ほら、俺達二人とも家事スキルが全滅しているからさ。神機の装備で家事力アップなんて効果はないのだ。

 

「えー……私は作れるよ。なんなら今から作ってあげよっか?仁慈のためにねっ!」

「お願いだからやめろください」

 

 レーション、回復薬の悲劇を忘れたわけじゃねえぞ。お前が俺と同じような料理音痴なことはわかっている。だから大人しく座ってろください。

 

「……むー」

 

「あらら」

 

 どうやらはっきりと言いすぎたらしい。ナナは拗ねたように頬を膨らませて視線を逸らしてしまった。そして、やけ食い気味に自分が持ってきた料理に手を付け始めた。これは長くなる奴だな、と過去の経験から予測した俺も一先ず料理を食べようとして――――既に自分の分がなくなっていることに気づいた。視線をずらせば、ナナの頬袋がリスのように膨れ上がっている。………これは激おこですわ。

 

 

 結局、俺はもう一度ご飯を取ってくる羽目となったのだった。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「つーん」

 

「…………」

 

 これは困った。すごく困った。まさかナナがここまで怒るとは完全に予想外だった。まさか彼女がそこまで気にしていたなんて、流石に無神経すぎたか。

 非は完全にこちらにあるため、俺は意を決してツンツンモードのナナに頭を下げる。

 

「ごめん。ナナがそこまで気にしているとは知らずに……」

 

「………………」

 

 くっ、やはり唯の謝罪では意味がないのか……。ここで俺が取れる手段は奢るか、ご飯を御馳走するか、料理を持ってくることしか……!

 

「仁慈、今私の機嫌を取る手段はご飯しかないって考えてるでしょ」

 

「何故バレたし」

 

「わかるよ。………だって、ずっと見てきたもん」

 

「お、おう」

 

 ……ちょとシャレにならんしょこれは……?不意打ちとかあまりに卑怯すぎる……これで俺はナナを嫌いに………なれんわ。なんだこの子かわいいなおい。

 

「……ふぅ。もういいよ。許してあげる」

 

 ナナからの不意打ちに脳内が混乱していると、そんな俺の様子を見ていた彼女がふと、頬のふくらみをなくして仕方がないなという表情を浮かべながら笑顔を見せた。そしてそのまま俺の近くまでやってきて、そのままがばっと正面から抱き着いてきた。ジャンプしてきたこともあり、俺は支えきれず、座っていたベッドに押し倒されてしまう。

 正面から感じる柔らかい感触を頭の片隅に置きつつ、俺は機嫌を損ねないように彼女の髪を手ぐしでとかすようにしながら撫でる。するとナナは浮かべていた笑顔を更に破顔させ俺の胸にぐしぐしと顔をうずめて来た。耳のように見える髪型も相俟ってまるで猫のようだった。

 

 しばらく頭をなでながら静かな時間を過ごす。すると、ぽつりとナナが言葉を溢した。

 

「……別にね、怒ったわけじゃなかったんだよ」

 

「……?」

 

「私が料理できないのは自分だってわかってるもん。只、ね。不安に思ったの。私なんかより、もっと家事ができる人とか、女の子っぽい人の方が良かったんじゃないかって。仁慈とこうして過ごせるのは、私がその……襲ったからなんじゃないかって……」

 

 なるほど納得。

 彼女は自分が襲い掛かったという負い目、後は料理ができないという劣等感から来る不安を感じていたと。ははぁ……。

 

「……馬鹿だなぁ」

 

「な、なにおう!こっちは真面目に悩んでるんだからね!?仁慈には――――」

 

 何やら騒ぎ立てるナナを黙らせるために俺は空いていた左手を彼女の腰に回して抱きしめた。その所為か、ナナは一気に黙りこむ。

 

 全く馬鹿だなぁ。確かに、始まりこそ褒められたものではなかったものの、それは俺が煮え切らない態度をとっていたからであり、彼女だけに責任があるわけではない。それに、付き合ったのは他ならない自分の意思だ。俺は、情けない自覚の仕方だったのは否定しないけれども、それでも自分の意思で彼女を―――ナナを選んだのだから。

 

 

「心配しなくていい―――とは言わない。心配にさせることも、不安にさせることもあると思う。でも、これだけは信じてほしい。……俺は、ナナが好きだ」

 

「――――――――――――――――」

 

 ナナが大きな目を更に見開く。まさにお手本のような驚きの表情である。

 

「――――仁慈はずるいね。卑怯だね。………そういわれたら、私も答えるしかないじゃん」

 

「卑怯卑劣は褒め言葉ですから」

 

 そうして二人でくすくすと笑い合う。

 

 

 数分笑い合っていると、唐突にナナがその笑みを消し、代わりに別の種類の笑みを浮かべた。それはまるで、獲物を前にした猛獣のような、なんというかデンジャラスビースト的な雰囲気を纏わせた妖艶な笑みを浮かべだした。

 

 あ、これはやばい。

 

 

「じゃあ、今度は私が反撃するね?」

 

「………………手加減をしてください」

 

 

 このあと無茶苦茶(ry

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




樫原仁慈

言わずと知れた極東のキチガイ。
その実力は世界各地に伝達されており、ユウにも並ぶ知名度を誇る。彼の言った先には一体としてアラガミが残らないとされている。
が、釣った魚に餌をやらなかった結果、その魚に捕食(意味深)をされた被捕食者でもある。
始まりこそあれだったものの、自覚した後は普通に付き合っている。余り表には出さないがナナのことはかなり好きな模様。

香月ナナ

メインヒロインと銘打っておきながらそこまでヒロインとして活躍はしていない。だいたい私(トメィトの所為)なので彼女を責めてはいけない(戒め)
割と病み病みだったのだが、仁慈と付き合い始めた結果安定したのか、元の純粋無垢な姿に戻った。ただし、仁慈に近づく女性を見ると時々封印が解かれる模様。
付き合い始めたきっかけを気にして少々自信を持てないでいたのだが、今回のことで完全に吹っ切れたらしく、更に輪をかけていちゃつくようになった。そのおかげで極東は今日も阿鼻叫喚の地獄と化している。

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