神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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IF END第二弾はフランさん。
彼女はラケル先生と同じくらい好きです。

ラケル先生よりはまともな感じになっている……はず。


フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ

 

 

 

 『目標アラガミの討伐を確認しました。お疲れ様です仁慈さん。すぐに迎えを出しますので、そこら辺に落ちてる素材でも回収して待っていてください』

 

 「了解」

 

 通信越しに聞えるいかにもできる女という感じの声。なんだかんだで、結構長い付き合いになるフランさんの声である。

 もはやこれがデフォルトなのではないだろうかと言わんばかりに現れた新種のアラガミを倒してコアを回収した俺は、彼女からの指示に従いそこらに落ちている素材集めに勤しんでいた。

 

 それにしても、とりあえず新種が出たら俺をぶつけるのやめてほしいなぁ……本当に。別に今回のは大したことなかったからよかったけど、この前相手した奴は本気で死にかけたこともあったからなぁ。なんだよあれ。廃棄された神機兵が突然変異を起こしたアラガミが出たということで仕事を受けたはずなのに、実際に行ってみてばドヒャと移動する人型兵器だったんだけど。流石に体に悪そうな緑色の光こそは出さなかったものの、攻撃が当たらない。弾幕は張るわで酷かったわ。

 

 「というわけで、フランさん。そこのところどうにかなりません?」

 

 『私に言われても困ります。けど、そうですね………労りを込めて、今日は私が料理を作ってあげましょうか?』

 

 「是非ともお願いします」

 

 『くすっ、即答ですか。分かりました。帰ってくることにはできているようにしておきますので早く帰ってきてくださいね』

 

 「了解」

 

 先程とは打って変わり、どこか柔らかくなった声音に短く返事を返すと、丁度上空から聞こえてきたヘリコプターの駆動音に向かって跳躍し開けてあった部分から中に跳び乗った。

 そのせいでヘリの操縦士(ベーダーじゃないよ)がとんでもなく驚いて機体が若干斜めってしまった。

 ……うん。いくら楽しみにしていたからと言ってやりすぎた感はある。ほんとうにごめんなさい。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁー……疲れた」

 

 仕事からしばらくして、今回倒した新種のアラガミのコアに大して並々ならない興味を注ぐサカキ博士とこの前相手にした人型アラガミ兵器、AC擬きを模倣して作り出そうとするラケル博士を一生懸命止めた俺は心身ともにボロボロになりつつも自分に割り当てられている部屋に帰って来た。

 

 ウィーンという自動ドアの音を聞きつつ部屋の中に入るといつもの無人とはうって変わっていた。明かりはしっかりとついて、何より鼻腔を刺激するとてもいい匂いが漂っている。どうやら先ほどの通信で言っていたことを行ってくれていたようだ。

 

 「あ、おかえりなさいませ。遅かったですね。タイミングとしてはちょうどいいですけれど」

 

 「ラケル博士とサカキ博士が暴走して……」

 

 「あぁ、察しました。お疲れ様です。……さて、もうできているのでそこに座ってください。今よそいますから」

 

 「ありがとう、フラン」

 

 「気にしないでください」

 

 フランの言う通り引かれていた椅子に座る。

 すると彼女の方もさっさとご飯をさらに盛り付けて俺の正面に座った。お互いに手を合わせてから食事に手を付ける。

 しばらく無言で食事をしていたのだが、俺はどうしても視界の端っこでちらつくある存在が気になって仕方がないためついつい我慢できずに彼女に問いかけた。

 

 「ところで、フラン。そのボトルは?」

 

 「私が楽しみにしていた年代物のワインですが?今日、せっかくなのであなたと飲もうかと思いまして」

 

 「………えっ?誰が、誰と?」

 

 「私とあなたが」

 

 「まじで?」

 

 「はい」

 

 俺は戦慄した。

 ここでワインを飲むという選択を取った彼女の選択に自分の背筋にとんでもなく冷たいものが走っていることを自覚した。

 というか、何をどうしたらそんな選択肢を取ることができるのだろうか。こういっては何だけれど、彼女はアルコールに滅茶苦茶弱い。例えるなら、ラケル博士を相手にしているときのレア博士に匹敵するくらい弱い。一回二人で飲んだ時は色々大変だった。にもかかわらずこの暴挙。

 

 もしゃもしゃと咀嚼して口の中に入れていた料理を胃の中に流し込んだ後、再びフランに問いかける。

 

 「それは、ここで飲むの?」

 

 「もちろんです」

 

 「自分が酒に弱いってことわかってるよね?」

 

 「今回は大丈夫です。私には秘策があります。プランBです」

 

 「ねーよ」

 

 フラグビンビンじゃないですかーやだー。

 茶碗と箸を持ちつつどや顔を披露するフラン(かわいい)を見つつ、俺は胸の中でさらに大きくなった不安を紛らわすように料理を勢いよく腹の中に詰め込んでいった。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 「まぁ、わかってた」

 

 「ちょっと、聞いているんですか。あなたに言っているんですよ!」

 

 

 食事の後。

 一緒に食器を片付けて、ひと段落したところでフランはワインをコップに注いでいき俺に差し出してきた。

 そこからはもはや流れるよな感じだった。乾杯をして、一杯飲んで目が座り、ノータイムで二杯目に突入、その二杯目を呑んだ後には顔を真っ赤にして俺に愚痴をぶつけてくるよっぱらフランちゃんの誕生である。

 

 いつものノースリーブの制服なので彼女の柔らかい部分が結構ダイレクトに体に触れてきてとっても落ち着かない。そして顔が近い。

 

 「何で神機使いの人は毎回、私の脇とかお尻とか見てくるんですか!どうして仕事中にナンパしてくるんですか!」

 

 「知らないよ」

 

 「な、何で興味なさげなんですか?私のことですよ?あなたのこ、恋人である私のことですよ?」

 

 しまった。簡潔に返しすぎた結果、フランさんの涙腺が結合崩壊を起こしそうだ。

 自分の失敗を即座に感じ取った俺は彼女の柔らかい肢体を壊れ物を扱うかのような力加減で抱きしめるとゆっくりと短いながらも美しい金髪を撫でた。

 

 「ごめん。今のは素っ気なかった」

 

 ここだけ見ると行動で女を丸め込むダメ男に見えるかもしれないがこれにはわけがある。よっぱ状態の彼女に基本言葉は通じないのだ。しかし、人のぬくもりなどは効果抜群なので、このような行動に出ているのである。俺は過去の経験から学べる男だ。

 

 「あっ、ふふっ………………って、そんなものじゃ誤魔化されませんよ」

 

 「思いっきり流されかけてたように見えたけど」

 

 今でもだらしなく弛緩させている顔が丸見えですよー。

 

 そんなことを言いながらフランのほっぺをムニムニしてみる。餅のような弾力と張りがあって大変気持良い。 

 だが、ムニムニされている本人はそれが気に入らなかったらしくぺしっと俺の手を払いのけた。

 

 「反省の色が見えませんね……。反省をしないのであればあなたに罰を与えます。これから一生あなたは私のそばにいないといけません。途中で死んだらあの世に行っても連れ戻しに行きます」

 

 「うわぁお」

 

 酒が入っているとは言え、すごい発言がフランの口から出てくる。普段はクールという言葉が擬人化したくらいの彼女でもアルコールには勝てなかったよ……ということだろうか。

 あとこれ罰じゃなくてご褒美だな。

 

 「わかった。その罰、謹んで受けいます」

 

 「よろしい。では、一杯注いでください」

 

 「それはいいけど、フラン。明日の仕事は大丈夫なの?」

 

 「溜まりにたまった有休を少しだけ使ってきました。ついでにあなたの分も」

 

 「ちゃっかりしてんな」

 

 「だから……んっ」

 

 「はいはい」

 

 また機嫌を損ねられたらたまらないのでフランの言う通りかの女が差し出したコップにワインを注いでいき、同じように自分の方にも入れた。

 

 

 

 ちなみに、俺は体の半分がアラガミなのでアルコールに飲まれるということはない。片っ端から捕食していくためそもそも酔わないのだ。便利な体だよ、ほんと。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 「~~~~~~~~~~~っ!!??」

 

 「おー……予想通りの反応」

 

 あ↑さ↓。

 

 結局四杯目でろれつが怪しくなったフランさんを何とか風呂に突っ込んで体をさっと洗った後、彼女の部屋に連れて行こうとしたのだが、抱き上げた際に捕まれた腕を全く離す気配がなかったため苦肉の策として一緒の布団で寝たのだ。

 で、現在。俺は正気に戻った!なフランは起きてすぐ隣の居た俺の存在と昨日のことを思い出して顔を真っ赤にさせている。フランは酒に飲まれても記憶は残るタイプなのだ。

 

 「おはよう。だからお酒はやめておけと言ったのに……」

 

 「おはようございます。それと、大きなお世話ですよ。たまには私だって羽目を外したくなります。というか、昨日さりげなく一緒にお風呂に入れたじゃないですか。この変態」

 

 「特に変なことしてないでしょ。そして俺が変態というのは否定しない」

 

 「くっ……!まさか素直に認めてくるとは……!」

 

 「男はみんな変態だってハルさんが言ってた。それはともかく。ほんと、どうして急にワインを飲もうって言ってきたのさ。こうなることは自分でも予想できたでしょ」

 

 「……………」

 

 俺の問いかけにフランは顔を真っ赤にして下を向いてしまう。だが、逃がさない。顔を下に潜り込ませフランの顔を下から覗き込む。そこで彼女は観念したのか、視線をそらしつつも小声でつぶやいた。

 

 「最近、あなたと過ごせてないから………甘えたくて……」

 

 「…………………」

 

 言葉が出なかった。

 なにこの可愛い生き物。

 

 フランの言葉を聞いた瞬間俺は彼女を後ろから抱きしめる。急に抱きしめられたことで動揺するフラン。俺はそれをスルーして彼女を抱きしめ続けた。フランもフランでそこまでいやそうな顔をしてなかったから多分いいってことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりにとることができた休暇。

 俺達はこうしてゆっくりと過ごした。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フランさんが酒を飲めないというのはこの小説での設定ですのであしからず。

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