なんかじらしちゃってすみません。でも、もうすこしで終わりますので是非最後までお付き合いください。
今回は若干シリアル風味。
いや、いつものことか。
あ、そういえばバイトを始めたので今まで以上に更新が不定期になるかもしれませんがご了承ください。
ブブブブブ、と駆動音を鳴らしつつ、降下してくるヘリコプターに飛び乗ると、もう本部だろうと関係なしに暗黒面を被っている彼にこれからの行き先を告げた。
「エイジス島に向かってください」
「あれ?極東じゃなくていいんですか?旦那」
「サカキ博士から通信が入りましてね。彼らはシオを匿っているいたことがばれて見事に牢屋行きになったそうです。今俺たちが極東に行っても同じ末路を辿ることになると思います。俺だったら、第一部隊全員が匿ったものとして処理しますから」
そうすれば、ヨハネス支部長にとっての邪魔者である第一部隊をまとめて無効化できる。しかも、正当な理由付きでだ。俺たちは現在人類最後の砦たるフェンリル支部にアラガミという人類の敵を匿った裏切り者の烙印を押されている。そんなのがさらに闘争すれば待っているのはそこら辺の凶悪犯よりも難易度の高いリアル鬼ごっこが開催されることになるからな。だからこそ、俺は直接エイジスに乗り込む。表でエイジスは人類が安全で過ごすためのゆりかごとなっているが、実際はヨハネス支部長が秘密裏に作ってい終末捕食を起こすアラガミ・ノヴァを作り出すために確保したものだ。
そのため、彼の真意を知っている人間しか入れない。それ以外の人間を入れるということは今の自分の地位を陥れることになるからな。一応、極東にいる一部の人には真実が伝わっているようだが、それでも大部分の人が知らない。地球の環境リセットなんて知られれば絶対的に批判されるようなことを明かすような失態は絶対に起こさないだろう。
「………旦那、旦那。ものすごい数のお客様がこちらに向かってきていますぜ。大中小、そろい踏みです。やったね旦那。より取り見取りだよ!」
「おいやめろ。というか、いい加減キャラを安定させてくれませんかねぇ……シュコシュコいう暗黒面をかぶりながらそのテンションとかマッチしなさ過ぎてもはや気持ちの悪いレベルなんですが……」
なんて、軽口をたたきつつ、ヘリの扉をスライドさせる。なかなかの高度でヘリの出せる最大の速度でエイジスへと向かっているため、まるで吸引力の変わらないただ一つの掃除機のような感じで外に吸い出されそうになる。いや、実際ダイソンに吸われたことなんてないから知らないけどさ。
外に吸われそうになるのをヘリの扉をつかんで耐え忍びながら近くに置いてあった神機を手に取る。そして、俺はそのまま外に出てヘリの足の部分に膝をひっかけて蝙蝠のように逆さにぶら下がった。
「ちょっ……!旦那、何しているんですか!?」
「今回は本部に行く時とはわけが違う。敵はかなりの数でやってくる方向は四方八方だ。こうしたほうが狙いやすい」
「いや、上からの奇襲は避けれないんじゃ……」
「…………せやな」
「考えてなかった!?」
暗黒面の操縦士から呆れの色を多分に含んだ叫び声があがる。えぇい、俺だってこの状況のせいで結構パニック状態なんだよ。地面に足つけれいれば問題ないけど、ここは空中だ。人間は空中で自由に活動できるようにはできてないんだっての。
「くっ、せめて足場があれば……旦那の人外っぷりを発揮できるというのに……!」
「おい、今なんつっt—————それだ」
「………えっ」
「それだ。”足場”だ!」
暗黒面操縦士の発言からある発想が浮かんだ俺は、ヘリにもしもの時ように入っていたサカキ博士とリッカさん作、超頑丈なロープを取り出す。どうにもあの二人、極東の過去の資料からヘリコプターは往々にして墜落するものと考えていたそうで、いろいろ詰め込んでいたらしい。このロープもその一つで、アラガミに切られないようにアラガミ装甲壁と同じ原理でできているのだ。
ちなみに、本来の用途はこれをつけてヘリの壊れたところを直すための命綱の代わりとするはずだったらしい。普通に考えて、無理だと思う。
まぁ、それはともかく、そのロープを体に固定し、しっかりとヘリの内装にと釣り家と俺はそのままヘリの近くまで接近していたザイゴートにとびかかった。それと同時にザイゴートのコア部分を切り付け、結合崩壊で消滅する前にそいつを足場としてほかのアラガミにとびかかる。これなら、空中戦が可能だ。やったぜ。
「さすが旦那。常人には思いつかないし、実行しないようなことを平然とやってのける………そこに呆れる、唖然する」
何やら失礼なことを言われている気がするが無視無視。正直これ結構きつい。少しでも集中力を切らすと大変なことになるだろう。だから気にしている余裕なんてないのだ。さぁ、集中しろ、今の俺は源義経だ!受けてみよ、我が八艘飛びをっ!
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ここは極東の牢獄……正確には懲罰房だが、今の使い方は牢獄と何ら変わりない。普段ならば誰も入らないはずのこの懲罰房には現在、極東支部の主力ともいえる第一部隊の一部と、人類の中でも指折りの頭脳を持つペイラー榊が入れられていた。
「くそっ……!こんなとこに入っている時間はねぇっていうのに……」
「ソーマ、少しは落ち着こう。ここで文句言ってても状況は好転しない」
第一部隊の中でも上位の強さを誇るソーマと人類とは別枠の強さを誇るユウがそんな会話をしている間、サカキは仁慈とは別の人物に通信を行っていた。その相手とは、現在タイミングよく任務に出ていた第一部隊のメンバーであるサクヤとアリサである。
「お、繋がった繋がった。もしもし、アリサ君聞こえるかな?」
『……あれ?サカキ博士ですか?珍しいですね。私に直接通信をよこすなんて』
「まぁ、こちらにもいろいろ事情があってね。早速だけど、極東に戻ってくるときに馬鹿正直に戻ってきてはいけないよ」
『何でですか?』
「シオのことがばれた。私たち捕まった。第一部隊全員がグルだと考えられている可能性が高い。というか確実に思われている」
『………なにやってんですか』
アリサのあきれた声に対してサカキは苦笑する。
確かに、傍から聞いたら今まで散々隠し通してきたのになぜ今さら見つかっているのかと思うことだろう。しかし、サカキにも言い分はある。いくらなんでも、極東支部に侵入してきたアラガミがピンポイントで研究室の電気を担っているところを壊してくるなんて、考えてもいなかったのだ。電脳的な妨害工作なら片手間でなんとかなるが、物理となると少々面倒くさくなる。だから、自分の責任は少ししかないと内心で言い訳をした。
「ともかく、今正面から帰って来れば、君達も拘束されてしまう可能性がある。だから、見つからないように頼む。ついでに我々を助けてくださいお願いします」
「博士ェ……」
ユウの方からものすごく憐れまれた声がかけられるが、そんなことを気にしている場合ではない。サカキには急ぐ理由があるのだ。それは早くしないと終末捕食を食い止めることができなくなる———というのが約4割の理由。残りの6割はきっと仁慈がこの事態に対して面白おかしい方法で解決してくれるに違いないと彼は考えており、その方法を直接見れなくなってしまうからという理由だった。やはり、マッドはマッドなのである。
『…………はぁ。分かりましたよ。どちらにしてもシオが捕まってしまったのなら直接支部長のところに行くしかありませんからね。戦力も必要になるでしょうし、寄りましょう』
「ありがとう。ところで、一つ気になったんだけどね。アリサ君、どうしてそこまで冷静なんだい?こう言っては失礼かもしれないが、思いっきり取り乱すと思っていたのだけれど」
『いいですか、博士。この極東で神機使いをやっていれば大体のことを動揺することなく受け止めることができるようになるんですよ。主に、ユウさんと仁慈さんの
「そうだったのか………」
あの二人の名前を出されては納得せざるを得ないとサカキは通信を切断する。そして、内容をほかの二人にも伝えると、見張りに感づかれないようにしようと声をかけるのであった。
しかし、彼らは知らない。
既にこの極東支部にいる人たちはヨハネスの誘いを断り、自ら残った者たちしかいないことを。このまま普通に脱走してもまったくもって問題なかったということを。
——————————一方。
極東支部に帰還するぎりぎりのところでサカキから通信をもらったアリサとサクヤはどのようにして極東支部に帰還すればいいのかと頭を悩ませていた。というか、乗っているヘリが既に極東支部に到着しているので、ここから隠密行動は無理だとうと考えていた。
「で、どうしましょうか。サクヤさん」
「どうしようも何もないと思うのだけど………でも、大丈夫じゃないかしら。ヘリで来たんだし、支部長側の人たちが気づかないわけはないと思うわ」
「ですよね。……うん、ならこのまま行きましょう」
「そんなあっさりと決めていいものなの?」
「問題ありません。私の啓示スキルもこのまま進めと告げています」
「何からの啓示なのよ………」
どこか自信満々のアリサとそんな彼女を見つつ大丈夫かと考えるサクヤ。結局彼女たちは普通に極東支部に入ることにした。哀れサカキ。彼の忠告は全く生かされることがなかった。今回はそれで正解であるが。
通り慣れた通路を堂々と歩く。だが、ヨハネスの息がかかった人間が捕まえに来るどころか、従業員の一人とすらすれ違うことはなかった。
「これ、かなりやばいんじゃないんですか?」
「そうね。その通りだと思うわ。……多分、支部長から支給されたチケットを使って今頃宇宙旅行でも楽しんでいるじゃないかしら。みんな」
支部内の様子を見てそう結論を出した二人は、同時に床を蹴り、第一部隊の一部+αが閉じ込められているであろう懲罰房へと向かう。階段を下がり、めったに使わないがために見慣れない通路を全力で駆け抜けて、ユウたちが捕まっていると思われる懲罰房の扉を蹴り破った。
「ぐぼぁ!?」
そして、聞こえる叫び声。
視線を懲罰房の中に向けてみれば、そこには唖然とした様子でアリサのことを見つめる捕まった男3人と、固く冷たい床に熱いヴェーゼをしているコウタの姿が。
「ドン引きです」
「……おばえのぜいだがら(お前の所為だから)……」
………いろいろ閉まらないが、今ここに極東きってのキチガイ集団、第一部隊が集結した。
なお、仁慈は当然のごとくはぶられる模様。
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ここに来る途中にアリサたちがいたった結論を第一部隊は聞き、もはや一刻の猶予もないということがわかった。
そのため、彼らは急いで自分たちの武器を持ってエイジスに殴り込みに行くために無駄に長い階段を全力で駆け上っていた。
そして、いつもの場所。任務を受けたり、出たりする極東で最も多く利用する場所……エントランスにまでたどりついた。するとそこには誰もいない————ということはなく、見覚えのある影がいくつか立っていた。
「やぁ、みんな。遅かったね。てっきり僕が残ったのは無駄だったかもしれないと思ったけど……杞憂で済んで何よりだよ」
「おー、遅かったな。どうした、そんなハトが豆鉄砲食らったような顔をして」
「大方、全員あのロケットに乗っていったのだとでも思ったんじゃないの?」
「あははー……私、ロケットは苦手なんですよねー。乗ったことありませんけど」
「私は神機のない世界には興味がないからね。仕方ないね」
「はぁ………どうしてここはこうも癖のあるやつが多いんだ………」
どの人影も彼らには見覚えのあるものだった。
極東の第二部隊隊長であり防衛班班長、ヒバリちゃん命の大森タツミ。
同じく防衛班所属のトリガーハッピー、ジーナ・ディキンソン。
頭のおかしい極東の神機使いの動きを把握し、的確なオペレートを行う隠れ人外、竹田ヒバリ。
神機のことならお任せ、むしろそれ以外はお断り、橘リッカ。
旧型でありながら今まで生き延びてきた元歴戦の神機使いで現在では鬼教官、雨宮ツバキ。
極東随一の華麗な男、グラサンかけててもその狙いは正確、エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。
この6人である。
どうして居るのだろうと第一部隊の誰もが疑問に思ったことを代表してユウが問いかけた。
「あれ、どうして……?」
「おいおい、もしかして俺がロケットに乗って行っちまったと思ってたのか?そいつは心外だな。防衛班の班長たる俺が、自ら率先して逃げ出すわけにいかないだろ?」
ニカっと現在ロケットに乗り込んでいるであろう某ブレンダンさんの良心をズタズタに引き裂くようなことをサラッと告げるタツミ。だが、
「で、本心は?」
「ヒバリちゃんが残っているのに俺が逃げるわけないだろいい加減にしろ!!」
ジーナの言葉に先ほどと比べるのもおこがましい強い言葉で言い放った。これにはさすがのヒバリも苦笑い。
「……私も、そこまでして生き残ろうとは思わん」
「そうですね。正直、何もなくなった地球に降り立っても生きていける気がしないからね」
どこか遠い目をして答えるツバキ。そのあとに続いたのは屈託のない笑顔でそういったリッカだ。
そんな彼女たちの後にエリックが口を開く。
「僕が、逃げる?ありえない。そんなのは全く華麗じゃない。僕はフォーゲルヴァイデの名をかけて神機使いの任についている。それを捨てて、逃げ出すことは今まで僕が築きあげてきたものを壊すことに等しい行いだ。それに、友達を捨てて逃げ出すことはフォーゲルヴァイデ以前に男として恥ずべきことだと思っているからね」
彼らの言葉に唖然とするしかない。
ユウをはじめとする第一部隊の人たちは言葉が出なかった。その中で、唯一平然としているサカキ博士が、いまだ口を開いていないジーナに問いかける。
「それで、君はどうして残ったのかな?」
「あら、私が残った理由が気になるのかしら?別にいつも通りよ。私の存在意義はアラガミに赤い花を咲かすことだけだもの。それに……」
彼女はここで一度言葉を切ると、思わず背筋が凍るような笑みを浮かべて、続きの言葉を紡いだ。
「アラガミのない世界に次の世代の元となる優秀な人間を残すのでしょう?だったら
その言葉はサカキ以外の人物の表情を固めるには十分な言葉だった。
「ふむ、確かにその通りだ。アラガミのいない世界というのは、当然のごとくオラクル細胞や偏食因子がない世界のことだ。大雑把に行ってしまえばアラガミとも呼べる君たちを連れて行ったら、いつまたアラガミが繁殖してもおかしくはないね」
「だったら………どうして………?」
サクヤが思わずこぼした言葉に、ジーナは反応する。
「さぁ?でも、あの支部長なら私でも考えつくようなことに気づいていないということはないでしょう。考えられる理由とすれば……何なのかしらね?」
言葉を濁したジーナであったがその視線はただ一点、ヨハネスの息子であるソーマに向いている。それだけで、その場にいた誰もが彼女の言いたいことを理解した。当然、ソーマもだ。
「…………」
「………まぁ、気になるのなら本人に直接聞いてみればいい。どうせ、行くんだろう?」
エリックが場の雰囲気を変えるようにそう切り出すと、すぐさまユウがのっかった。
「はい。でもエイジスに通じる道って何かありましたっけ?多分、正規のルートは全部封鎖されていると思うんですけど……」
「それなら地下にあるよ」
「ほう、よく知っているな。コウタ」
「エイジスにかかわることは軒並み勉強しましたから」
「素晴らしい情熱だな。お前はそれをもっと別の方面でも発揮できれば……」
「この状況で小言っすか……」
げっそりとするコウタとツバキ。
普段ならこのまま正座からの説教コースだが、今回は状況が状況なのでツバキはそれ以上突っ込むことはなく、いつもと同じく凛とした表情を作り出した。
「第一部隊諸君に告ぐ。これより、緊急任務を発令する。依頼者は私、任務達成の条件は終末捕食の阻止および全員が無事に帰ってくることだ。……わかったな?」
『はい!』
「よし、では行け!!」
ツバキの号令とともにリッカが用意していた各々の神機をつかんで一斉に地下へと向かう。
ほかの人たちはここで、アラガミが襲ってきたように待機するため、エイジスへと向かうのは第一部隊だけだ。
彼らを見送った後、ツバキは歩いて彼らの後を追うサカキに話しかけた。
「…………ところで、樫原仁慈はどうしました?」
「彼なら後から来るよ」
「はぁ………どうしてこうあいつはいつもいつもタイミングが合わんのか……」
こういう時ぐらい、全員でそろっていってほしかったと、彼女は小さくつぶやいたのだった。
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「ところでコウタ。どうして急に私たちの側についたんですか?」
「かーちゃんとノゾミに言われたんだよ。どんな楽園よりも、みんなと一緒に過ごすほうがいいってね。兄貴ってのはかわいい妹の頼みは断れないものなんだよ」
「へー………コウタってロリコンですか。ドン引きです」
「おい、何で
「そんなことはどうでもいい。………ついたぞ」
「どうでもよくないんだけど。俺にとっては死活問題なんだけどっ!?」
「コウタ。空気を読みましょう?」
「ちっくしょう!俺の周りはいつも敵だらけだよ!」
「あ、ガム食べる?……やべっ、そもそも持ってなかった」
「唐突!懐かし!そしてまだ根に持っていやがった!!」
こんな感じで、いまいちシリアスになり切れない雰囲気のまま、彼らはエイジスへと突入した。
さぁ、神が人を喰いつくすか……人が神を喰いつくすか……決着の時だ。
GOD EATER編を終えたら何をしましょうかね。