神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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ちょっと今回の話はごちゃごちゃしてますがお許しください。


トラウマなんてなかった




 仁慈のパーフェクト殲滅教室から数日。生徒役を務めていたユウさんとアリサさんの評価はまた違うものとなっていた。
 ユウさんの場合は、唯でさえ化け物のような強さを持っていたのに、受ける任務を殆どが十分以内で済ませてくるという速さまで身に付け始めたため「ような」という言葉が消えて化け物となった。断言である。今ではリンドウさんに匹敵するくらいではないかと噂されていた。
 

 そして、もう1人のアリサさん。今は亡きオオグルマの所為でリンドウさんを行方不明にしたことと、着任当時の高圧的な態度で嫌われていた彼女もまた、恐れられていた。


 before


 「例の新型神機使い。実践で戦えなくなったんだってよ」


 「プッ、何それ!アレだけえらそうなこといっておきながら結局口だけかよ!」


 after


「仁慈さーん!今日の実地での訓練、うまくいきました!コンゴウ四体とかボルグ・カムランとか来ましたけど、普通に倒せましたよ!これも貴方のおかげです!」


 「やだ、何これ……」


 こんなもん。
 高圧的な態度がなくなっただけでも他の人たちにとっては衝撃ものなのに、それが自分たちをはるかに超える実力をつけて帰って来たのだ。
 数週間の入院というハンデがあってこれである。そりゃ恐れるだろう。


 2人の現状はこんな感じだが、実は俺のほうにも進展があった。どうやら現支部長は俺の働きを色々評価してくれているらしく、特務を積極的に回してきている。最近、特務の量が増えているのだ。
 対象は基本的に新種のアラガミやその堕天種たち……このことから考えるに、どうやらコアだけでなく俺にアラガミの攻撃方法や習性なども確認させるためということもあるのだろう。
 極東ではここ一ヶ月で今まで見たこともなかったアラガミ達が増えているから、当然の処置かもしれない。


 他にも進展したことがある。それは、その特務のとき時々あの特異点の女の子が俺に会いに来るのだ。どうやらこちらが彼女の位置をある程度把握できるのとは違い、向こうは俺の場所が正確にわかるらしい。正真正銘地球から生み出された特異点だからだろうか?疑問は尽きないものの彼女は俺に会いにくるとどこかでしとめたアラガミのコアを持ってきて俺に一個差し出してくるのだ。どうやら一緒に食べたいらしい。
 

 まぁ、特異点ってことは今まで自分の同族なんて居ないし、1人だったんだろう。そこに曲がりなりにも一度特異点を勤めた俺が現れた……仲間とみなして一緒にご飯を食べようとするのは納得できる。
 俺もこの時間が嫌いではない。彼女と親しくなるということはこちらである程度、終末捕食のコントロールが効くようになるということだ。
 サカキ博士の部屋もあとは仕上げだけだし、それに先駆けて信頼度を稼いでおくのも悪くない。………なんか、こんなことを考えるって良くも悪くも大人になっちゃったなー。この前久しぶりに人を「処分」したから引っ張られているのかしら……。


 パンパンと頬を叩いて思考を切り替える。
 今はそんな事を考えて沈んでいる場合ではない。いつか彼女を保護するときのために人間の言葉をある程度教えておかなければ……。


 「オナカスイター」


 「何でその言葉だけ速攻で覚えたし」


 にぱーと笑いながら片言の日本語でそういう彼女に呆れながら俺はそこらでしとめた中型アラガミのコアを分け与えるのだった。
 





              ―――――――――――――――





 で、再び数日後。
 第一部隊が極東の神機使いたちの鬼門、ヴァジュラの討伐任務に出るらしい。その時コウタさんがアリサさんの実践入りを進言した。一応ツバキさんもアリサさんの実践入りには賛成らしい。だが、トラウマであるディアウス・ピターと同系統のアラガミということでツバキさんはアリサさんのことを気遣っていた。


 「……いいのか、アリサ?」


 うつむいているアリサさんにそう尋ねる。
 そんな問いかけを聞き、アリサさんはうつむいていた顔を上げると、晴れ晴れとした笑顔で言った。


 「はい。ヴァジュラなら既に倒した経験があるので」


 トラウマなんてなかった。
 ここで第一部隊の人たち+ツバキさんは動揺しただろう。彼女の大まかな事情は既に知れ渡っている。にも関わらず、この返答である。精神が不安定になった原因といっても過言ではないヴァジュラ系統アラガミへのトラウマが完全に消えうせているとなれば動揺も納得ものだ。
 そして、彼女が何故こんなことになったかといえば、例の如く俺の所為である。自分で例の如くとか言っちゃったけど、事実だから仕方ない。




            ――――――――――――――――――




 アリサさんの評価も徐々に回復してきた頃、一緒にトラウマとなっているヴァジュラ種の討伐に行ってくれないかと頼まれたのだ。返事はもちろんOK。彼女の本来の強さは既にこの前の殲滅教室で実証されている。これを機に完全に克服してくれればとおもったのだ。


 そんなわけで、戦ってみたのだが、はじめはトラウマで彼女は震えて動けなくなってしまった。それは想定内なので気にせず彼女を庇いながら戦っていたのだ。
 しかし、一瞬の隙を突かれアリサさんを狙われたため、片腕を囮に庇ったらアリサさんが覚醒したのである。
 やばかった。瞳孔は見開き、獣のような咆哮をあげながら、俺の教えた戦術なんてまったく使うことなく、じらすようにヴァジュラをスライスしていく戦い方に俺は震え上がった。だって、途中でヴァジュラがあげた咆哮がもう唯の泣き声にしか聞こえなかったもの。
 

 当初の目的であるヴァジュラの討伐を終えるとアリサさんは目にも留まらぬスピードで俺の元へとやってきて、傷に直接回復錠を擦り付けるという珍行動を起こしたりもしていた。傷口にすり込むので普通に痛かったです。


 そこからアリサさんが持っていたほかの回復錠を貰ってのみながらヘリを待っていたのだが、俺の所為か極東の所為か、このタイミングで大型アラガミが乱入してきた。それは、ヴァジュラ種の第二接触禁忌アラガミ、プリティヴィー・マータである。流石のアリサさんでもトラウマであるディアウス・ピターにさらに近いアラガミはきついだろうと、神機を杖に立ち上がる。俺の肢体はアラガミに近く、偏食因子系統で治癒力を高める回復錠の効果も相俟って既に傷がふさがりかけていた。だから、戦闘にも支障はないだろうと思っていたのだが、事情も何も知らないアリサさんから見ればこの上ない無理をしようとしている人物に見えるわけで……彼女に押しとどめられてしまった。


 「仁慈さんは怪我しているので無理しないでください」

 
 「いや、でも……」


 「大丈夫です。…もう、先程のような失態は犯しません。あの時、気付きましたから。トラウマになんて怯えていてはまた、失ってしまうと」


 その瞳は何処までも澄んでいて、真っ直ぐだった。澄みすぎてどこにも焦点があっていないのではないかという不安もあるが、引く気がないのは一目瞭然だったので渋々頷いた。


 その五分後、ヴァジュラと同じく惨殺されたプリティヴィー・マータの姿が!
 ………笑顔で向かってくるアリサさんが俺は本当に怖かった。いや、マジで。


 



           ―――――――――――――――――――




 時は戻りアリサさんが第一部隊+αを凍らせた場面へと戻る。
 アリサの大丈夫を信頼できなかったのかツバキさんは念のためということで俺も同行させるように言った。これにアリサさんは大歓喜。もうなんかピクニック気分のようだった。ユウさんもアリサさんが完全にトラウマを克服し、普段の実力を発揮できる状態だということが分かったのか、とたんに物足りなさそうな表情を浮かべた。
 逆に仁慈のパーフェクト殺戮教室を受講していないコウタさんとサクヤさんはぽかーんとしていた。


 結果。
 ヴァジュラの討伐任務は三分で終わった。カップめんも驚愕のスピードである。大型アラガミがさらっとやられてしまったことにコウタさんとサクヤさんはもう絶句である。


 「どうですか仁慈さん!私完全に克服しましたよ!」


 「お、おう……」


 本家ディアウスを倒すまで分からないと思うんだけど、なんか普通に大丈夫な気がしてきたわ。


 「仁慈どうだった?俺の戦い方」


 「もう俺より強いんじゃなんですかね?」


 どうして俺に尋ねてくるんですかね?普通に強すぎて逆になんて答えたらいいのか分からない。
 

 「何……あれ……」


 「え?ユウ……?え?」


 ヤバイこの場の雰囲気というか色々カオスだ。この雰囲気をリセットするために早く極東支部に帰りたい。というか、あそこで取り残されている2人が俺に食って掛かる様子が容易く想像できるからヘリよ、早く着てくれ。


 

 こうして、正式にアリサさんは極東人にランクアップし、それが公の下にさらされた。
 未来ほどアラガミの種類が多様化していないので、本当にアラガミ絶滅するんじゃないかな……。