神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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この設定はこの小説独自のものです。
公式と違っても見逃してください。
致命的に間違っているのであれば、ご報告ください。


仁慈君のパーフェクト殲滅教室(対アラガミ編)











 さて、新型神機使い三人による特別訓練が開始した。
 生徒はユウさんやアリサさんといった期待の新人達、教官は畏れ多いことにこの俺、樫原仁慈である。
 未来を知っていればまったく考えることが出来ない配役である。というか、本来なら俺よりもすごくて年上の人に教えるんだよな……なんか色々違和感あるわー。


 喉に魚の小骨が引っかかっているような違和感を覚えつつ、嘆きの平原にやってきた。今回はアリサさんのリハビリもあるので比較的簡単な任務から受けようと考えたのでターゲットはシユウ一体である。アリサさんはシユウに一杯食わされたこともあるので丁度いいだろうしね。
 何時ものように高台から飛び降りると、コホンと咳き込みながらユウさんとアリサさんに向き直る。


 「それでは今から樫原仁慈のパーフェクト殲滅教室を始めます」


 「どっかで聞いたことあるようなタイトルですね」


 「なんかバカっぽいなぁ……」


 この叩かれようである。
 そんなにダメだったか……名前の感じはともかくゴロはよかったと思ったんだけどな。
 

 ユウさんとアリサさんのだめ出しに若干傷つきつつも何とか立ち直り、今回のターゲットであるシユウの捜索を開始する。
 三分ほど遮蔽物もない平原を歩くと、ビルの角に捕食を行っているシユウを見つけた。その姿を確認したユウさんはすぐに戦闘態勢を取り、アリサさんも久しぶりの実践で戸惑いつつも、シユウに視線を固定する。
 俺はここで戦闘術の第一を口にした。


 「はい、ではここで殲滅術の一番基本的なことです」


 俺の声にいったん戦闘態勢を崩し、耳を傾けてきた。彼らがしっかりと聞いていることを確認した俺は言葉を紡ごうとして……耳につけてる通信機から聞こえてきたヒバリさんの声が聞こえた。ん、丁度いいな。


 『大型アラガミがそちらに向かっています。目標の到着時刻は三分後です!』


 「……このように極東ではよくアラガミが乱入してくるので、迅速な討伐を心がけましょう」


 「………」


 「………」



 どうやら今までこのようなことは少なかったのだろう。リンドウさんと行った任務の二回くらいか、想定外のアラガミの乱入は。
 俺の場合、体の関係上割と仕方ないところもあるから心構えも出来てるけど、別に俺と一緒に居ないからといってアラガミが乱入しないわけではない。むしろ、ここが極東である以上乱入の可能性はかなり高い。心構えは結構重要である。



 「次に、固体ごとにコアの位置を把握しましょう。先ほどもいった通り、極東では迅速にアラガミを倒すことが最も好ましい戦い方です。その一番の手がコアを抜くことです。この辺の知識はサカキ博士から習っているでしょう?」


 ユウさんとアリサさんが頷く。
 アラガミにとってコアは心臓のようなものだ。一応、ダメージを与えまくれば形を維持できなくなって倒すことは出来る。しかし、それでは時間がかかるし、こちらの疲労も大きい。
 一撃で倒せる場所が存在するなら積極的にそこを狙うべきだ。


 「理論上はそうですが、コアの位置なんてわかるんですか?」


 「ある程度の予想をつけることは可能です。例えば、中型から大型はそれぞれ結合崩壊を起こす部分がありますよね?基本的にその近くにコアはありません。自身の弱点をそんな脆いところに隠すはずがありませんからね。例外として、今回相手するシユウの場合は、頭の結合は大して強固でもないのにかかわらず胴体の真ん中……人で言うところの鳩尾に位置しています。これはあえて頭の結合を脆くし、胴体の強度を上げているのでしょう。体が比較的に人に近く、その分特定の武部に受けるダメージ量が他のアラガミに比べて多いため、このように特化したのだと考えられます」


 俺の言葉を何処からか取り出したメモ帳にメモしていくアリサさん。ユウさんのほうもうんうんと頷いていた。
 さて、戦闘前の講義はこのくらいでいいだろう。
 知識も大事だが何よりそれらを実践できなければ宝の持ち腐れだから。


 「では、今いったことを踏まえてあのシユウを倒してください。あ、一撃で決めることが理想とは言いましたが、それに囚われて無駄に体力を消費するのは本末転倒なので、焦らずじっくりやってくれて結構ですよ」


 俺の声を聞いて二人が弓から放たれた矢のように素早くシユウへ接近する。戦闘方法は格闘の達人っぽいのに気配に疎いことと盲目に定評のあるシユウ=サンはまったく気付いておらず、アイサツ前のアンブッシュを見事に喰らうハメとなった。
 ユウさんとアリサさんがほぼ同時にシユウの背中に斬撃を放つ。クロスして放たれた攻撃はその重なった部分がシユウの背中に僅かな切れ目を作った。
 どうやら2人の攻撃が重なったところは強化した装甲でも防ぎきれなかったらしい。シユウはその衝撃でよろける。これで仕込みは十分だ。
 アリサさんは卓越したエイムで、切れ目の入った部分にピンポイントでオラクル弾を当ててその切れ目を大きくする。
 よろけから復帰したシユウは、先程から攻撃を行うアリサさんに狙いを定めて彼女に向かった走っていくが、ユウさんがそんな事を許すわけがない。
 自分が視界から外れたことをいいことにあっさりとシユウの背後を取ると、切れ目に神機を突き刺す。そこから、捕食形態に移行し中にあったコアを引きずり出した。


 ………もう習得しちゃったよ。俺の教えること殆どなくなったじゃないか。アリサさんに厳しいぞ(キリッとかやったのにこれである。
 ズジャァァァァと地面を滑りながらその形状を崩す愉快なシユウを見つめながら俺はそう考える。
 流石は元祖スーパー極東人。俺の動きを数回の任務だけで模倣したびっくり人間。単純な神機使いということを考慮すれば俺なんか足元にも及ばないくらいの化け物っぷりだ。アリサさんも、久しぶりの実践だというのに正確に、連続で傷に弾を当てるということをやってのけた。やはり、精神が安定した彼女は強い。芯がしっかりとしたことにより戦闘にもその影響が出てきたか。


 「なるほど」


 「確かにこれは早い……戦い方を少し変えるだけでこんなに早くなるものなんだ……」


 こんなに早く戦い方を変えてアラガミを倒せること自体がおかしいんだけどなぁ……少なくとも、自分のスタイルを体得しているであろう期間、実践で戦ってきたユウさんはなおさら難しいはずなんだけど……俺の模倣しているくらいだし今更か。


 そう考えていると、ヒバリさんが言っていた大型アラガミが姿を現す。
 お相手は今極東で旬のボルグ・カムランである。
 ……ふむ、ついでに未知の敵に対する戦い方も伝授しておこう。というかそれくらいしかもうない。第一回目の開催にしてこのザマである。



 「お2人は、ボルグ・カムランと戦ったことありますか?」


 「俺は一回だけ」


 「私はありません」


 「ふむふむ……では次に未知の敵に対する戦い方を教えますね。一番大切なのは観察です。既存の敵なら先程のように一撃で処理することが出来ますが、未知の敵の場合は止めましょう。まずは相手の出方を見て、どのような攻撃を行ってくるか……これを見るのです」


 「それは、先程の迅速な対処と矛盾しているのでは?」


 「未知の敵と対峙する場合、この観察を入れることが一番討伐できる確率が高く、早いのですよ。結果的にはね」


 そこまで、言うとボルグ・カムランが両手を合わせて盾をつくりそれを前に押し出しながらこちらに走ってきていた。
 俺たちは左右にステップを踏むことでそれを回避する。回避されたボルグ・カムランはその足を止めて、尻尾を下ろしてその場で一回転した。
 アリサさんはシールドでガード。対戦経験のある俺とユウさんは跳躍することでその攻撃を回避する。


 その後もしばらくは近付いたり遠ざかったり跳躍して上から攻めてみたりしながらボルグ・カムランの動きを観察していく。それが終われば今度はこちらの番である。結合崩壊も起こしやすい足を集中的に狙ってボルグ・カムランを転ばせると、無防備に空いた口の中に三人同時に神機を突っ込む。そして何時もの体内捕食。これしか攻撃方法がないのかといわれるかもしれないが、ぶっちゃけこれが一番有効である。
 どれだけ外壁が堅くとも、中身まで固いやつはそういないからな。


 無事、ボルグ・カムランを葬った俺たちはヒバリさんから連絡を受けて迎えのヘリを待つ。


 「まぁ、他にもいくつか小技がありますが、大体こんな所ですかね。どうでした?」

 
 「結構ためになったよ。自分では考え付かない戦いかたばかりだったけど……なんか、実践の元で最適化された戦い方って感じだ」


 「同感です。私も教えられてきたものとはまったく違いますが……なんかこちらのほうが体になじみます」


 「ためになったのならよかったです」


 満足げな2人を見て俺も胸をなでおろす。
 普通にアラガミ相手にするときより疲れたなぁ。でも、何かためになったのならよかった。ユウさんやアリサさんが強くなることは将来的にかなり大きな利益を生むしね。




 そんなことを考える俺だったが、後にこの2人がこのことを極東中に言いふらし、俺が後々極東の神機使いの殆どに仁慈君のパーフェクト殲滅教室を開くことになるとはこのとき欠片も考えていなかった。 



 






アリサ「そういえば、小型アラガミの場合は何処にあるんですか?」
仁慈「大体胴体の中心部ですね。他の場所では、多少深く入った瞬間に当たってしまうので」
ユウ「でも、仁慈はこのことをどうやって知ったの?」
仁慈「試しました」
ユウ&アリサ『全部自分で(ですか)!?』