神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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仁慈「俺は自重を捨てたぞー!アラガミー!」


遭遇







 「それは感応現象というものだよ」


 「感応現象……ですか……」


 アリサさんの記憶らしきものを見た状況をサカキ博士に話してみると彼は興味深そうに聞いた後、そう結論をつけた。
 感応現象というのは一応知ってはいる。ブラッドがブラッドたる所以の血の力もそもそもは感応現象を利用したものであるからである。しかし、新型同士が触れ合うことによって感応現象が起こり、お互いの記憶を覗き見ることができるという効果があるのは初めて知った。
 俺の居たところ……つまり、未来の極東支部において新型神機使いは第二世代とされており、そこまで珍しいものではなかった。もちろん、彼らと触れ合ったりしたこともある。しかし、感応現象なんてものは起こらなかった。何故、あのタイミングで発動したのかは謎である。おそらく、発動条件は新型同士ということ以外にもあるのだろう。普通に考えて触れるだけでそうなるなら日常生活に支障がでるし、ユウさんがアリサさんを背負っていたときも感応現象が起きていたようには思えなかった。


 「正直、感応現象についてはまだわからないことのほうが多い。どのような条件化で発生するのかも定かではないんだ。でも、君が見たのは間違いなく感応現象によるアリサ君の記憶であると断言しよう」


 「なら、アリサさんの主治医。オオグルマは警戒しておいてくれませんか?それで裏が取れたら俺に教えてください。……意地でも情報を引き出して見せますから」


 「……本当、君は一体何者なのかな」


 「前にもいったでしょう?それが答えですよ」


 それだけを口にして用が済んだサカキ博士の研究室を後にする。
 エントランスに来て見れば相変らずお通夜のような雰囲気が充満していた。リンドウさんの行方不明が与えた影響はやはり大きいようだ。
 俺はマジで不審者じゃないんだよね?と疑問に思うこと間違いなしの万屋にスタングレネードに必要な素材を注文し、それをパパッとスタングレネードに調合した後、自分の倉庫に突っ込み、自室に戻った。
 とりあえず、俺がこれからすることは任務と特務を受けつつ、オオグルマと彼とつながっていると思われる現支部長の尻尾を掴むことだな。万が一ばれて、命を狙われる結果になったとしてもそれはそれで堂々と支部長のところにいけるわけだし。


 



             ――――――――――――――――




 今日の任務は仁慈が合流して行われた。
 アリサもサクヤさんも戦闘に参加できる状態ではないから取られた処置である。……確かに、今の精神面では簡単な任務すら達成することは難しいかもしれない。ソーマの表情もコウタの表情も優れていない。もちろん、俺だって未だ浅くないダメージを受けている。
 だからこそ、このなかで一番変わらない風に見える仁慈がいることはありがたかった。
 

 「………別に辛いならここで待っててもいいですよ?一人で片付けてきますから」


 何時もと変わらないのだろうか。
 これが何時も通りというのはそれはそれであれなのではないか。そう考えずにはいられなかった。


 「いや、そういうわけにもいかないでしょ。大丈夫だよ、切り替えはしっかりするさ。な?ユウ」


 「うん」


 「そもそも、新人のお前に心配されるほど落ちぶれてはいない」


 コウタ、俺、ソーマの順番で仁慈に言葉を返す。すると彼はフッと微笑んで失礼しましたと謝った。


 「無用の心配でしたね。では、はじめましょうか」


 そうして始まった任務。
 …………仁慈の言葉に嘘偽りなんてものは存在していないのだということを真正面から突きつけられた。


 今回の任務はコンゴウと小型アラガミの掃討というごくごく簡単なものだったはずなのだが、何故かアラガミの乱入が連続して行われた。まず一回目にシユウが四体現れた。それだけでも大分辛かった。ソーマが一体、コウタと俺で一体、仁慈が二体という不平等きわまりない分け方が行われたのだが、討伐した時間はほぼ同時だった。チラリ、と戦闘中に盗み見たけど捕食形態を利用しシユウをもう一体のシユウにぶつけてたりしていた。
 

 その発想は無かったと思わず考えてしまった。
 

 二回目の乱入はこの前倒したばかりのヴァジュラだった。新人神機使いの壁とも言われ、極東ではこれを1人で倒せるようになれば一人前として認められるらしい。しかし、今の自分にはみんなで協力して一体倒すことができた。
 それが二体同時に現れたのである。正直、リンドウさんのこともあって本調子とは言いがたい俺たち三人にとって最悪の相手である。そんな中仁慈は俺達のコンディションがついに戦闘できる状態ではないことを見抜いたのか、1人で相手をすると言い出した。ソーマも含めて全員で止めようとしたが、それをする前に2体のヴァジュラに向かっていってしまった。


 そして勝利を収めた。


 仁慈はアラガミのコアの位置をある程度把握しているのか、殆ど無駄な攻撃を行うことは無かった。
 ヴァジュラの電撃を避けるではなく神機で斬り裂くという離れ業をやってのけ、その後、前足を振り払うヴァジュラの頭上に位置を取り、空中で神機を捕食形態に移行して首元を捕食する。すると、捕食を喰らったヴァジュラは一瞬で動かなくなり、グズグズと地面に吸い込まれるように消えて行った。コアを捕食すると共にバーストモードになった仁慈はさらに強化された身体能力をフルに生かし、ヴァジュラの突進をすれ違うようにして避ける。何も唯避けるだけではない。死神を連想させる大鎌をヴァジュラのほうに向けてすれ違ったのだ。
 ヴァジュラの突進と仁慈の移動の力を乗せられたその大鎌はヴァジュラの体を見事にコアごと真っ二つにした。
 アラガミの突進と自分の推進力で物凄い負荷がかかった神機で表情を変えずにそのまま切裂いていくという異様な光景であった。そして何より、


 「あ、終わりましたよー」


 この笑顔である。
 一瞬で大型アラガミを葬り去ったにも関わらずこのさわやか笑顔。俺とコウタは思わず表情が引きつった。あのソーマですら冷や汗を流している。一応、この中では一番仁慈の実力を知っているつもりだった。出会ってすぐにヴァジュラを葬り去ったり、第二接触禁忌アラガミたちにも一歩も引かない立ち回り……どれをとっても驚愕に値したが、今回はなんというか、強い相手をどうこうしたとかではなく、手順とそれに対して慣れを感じる行動がなんともいえない気持ちを抱かせた。


 『え、えーと……迎えのヘリが付きましたよ』


 「わ、わかりました」


 ヒバリさんの通信に返事をすると俺たちは神機を担いでヘリが居るポイントに向かう。しかし、仁慈は一向に動く気配が無かった。

 
 「仁慈。どうしたー?」


 「先に帰ってて下さい。ちょっと用事を思い出しました」


 「えっ?」


 それだけ言い残すと彼は神機を担いだまま歩いていってしまった。
 

 「なんか、仁慈って時々ソーマよりわからないよな……」


 「聞こえてるぞ」


 「やべっ」

 ソーマとコウタのごたごたを聞きながら仁慈の背中を見つめる。確かに色々謎だらけな人物ではあるけど、悪人には見えないし何より………リンドウさんを置いて極東に帰って来たこととエリックさんが死に掛けたときの光景を鮮明に覚えている今だと、あの強さに憧れを抱いてしまう。


 あれほどの強さがアレば自分は何も失うことは無かったのではないかと、考えてしまうのだ。






              ―――――――――――――――








 ユウさんたちに無理言って単独行動を取った俺は数分贖罪の街を歩く。
 ……ここに来たときからどこから監視されているような視線を感じている。先ほどまではアラガミが近くにいたからそいつらのものかと誤認していたが、どうやら違うようだ。そこらへんにいたアラガミを粗方片付けた今もその視線は俺に向かっている。


 「………さっきから見ているのは誰だ。隠れてないで出てこい。今なら殺さないでおいてやる」


 数分歩き回って、大体の居場所はつかめたので、その方向に向かって言葉を掛ける。数十秒間が出来たが観念したらしく、俺を見ていたものが姿を現した。


 「……………これは、マジか……」



 そして、出てきたものを見て俺は思わずそんな驚愕の声を洩らしてしまった。
 何故なら出てきた人物とは、服というか、適当に布を巻きつけたような格好をしている少女だったからである。その肌は色白というレベルを超越して白く、瞳の色は金色だった。


 何より、彼女の気配には覚えがあった。
 こうして正面から見てようやく思いだす。この気配は―――――







 






 ――――――――――かつて俺が相手にしたアルマ・マータと同じもの、すなわち特異点と同じものだったのである。
 
 











まさかのフライング出演