まぁ、それはともかくアリサさんはヒロイン確定ということで、今後増えるかわかりませんけど……私のことなので増えることは無いと思います多分。
何はともあれ、ここから一応アリサさんがヒロイン路線で進めて行きたいと思います。なのでユウ×アリこそ至高と言う方や仁慈とアリサとかないわーという方は閲覧しないことをお奨めします。
昨日は散々だった。
絶賛包囲中だったユウさんたちを守りながら何とか極東まで帰って来たものの、その姿は無事とはいえない様子であった。
怪我などは殆ど無い。俺とソーマさんが頑張った結果、肉体的損傷はごくごく軽症のものしか付くことは無かった。だが、精神面では多大なダメージをソーマさん含めてあの場にいるみんなが受けていた。
何があったのかは分からないが、アリサさんは面会謝絶状態、サクヤさんもリンドウさんがあの場に取り残されたことによって自室に引き篭もった。ユウさんもコウタさんもアレは大分堪えたようだし、ソーマさんは自分が死神なんて呼ばれているから自分の所為なのではないかと自責の念に駆られている。
一応、未来から来た俺としてはリンドウさんが無事なことは分かっているのだが、それだって俺がここに居る時点でどれだけ信憑性があるのかわからなくなってきている。
………だからこそ、俺は覚悟を決めた。
ソーマさんから聞かされた話に振り回されることなく、自分で現在の状況を見つめ考えてから行動することにした。
もちろん、知識としては活用するがそれは参考程度……その結果を絶対のものとは思わず、自分が取れる最善の行動を取ることに決めた。
そう。無駄に知識があって行動していたからこそいけなかったのだ。
ラケル博士の計画を台無しにしたとき、俺が考え、狙ってやったかといえば否である。元々よくも無い頭だ。考えるだけ逆に事態を悪化させることだってある。
つまり、なにが言いたいのかというと………俺は自重を捨てる。
今までは色々ありえないからとかいいつつ、ナメプに近いことをしていたが、今後はそれをなくす。
極東支部ブラッド隊隊長、樫原仁慈として、これから行動することにする。
「すみません、ヒバリさん。贖罪の街での任務って今ありますか?」
「は、はい。一応ありますが……どうして?」
「いえ、ちょっと任務にかこつけてリンドウさんの捜索をしようと思いましてね。あ、このことは内緒でお願いします」
「あはは……わかってます。……私も、リンドウさんが居ないのは寂しいですし、悲しいですから……」
「ありがとうございます」
任務を出してくれたヒバリさんにお礼をいいつつ、俺は昨日と同じく贖罪の街に向けて飛び立つのであった。
もはや俺に自重という文字は無い。自分の出来ることは全力で遂行する。
前回風に言うのであれば、
いくぞ、現支部長―――――悪巧みの貯蔵は十分か。
―――――――――――――――――――
1人、ソーマは廊下を歩く。
考えることはリンドウがあの場に取り残されたときのこと。あの時、最近極東に配属されてきた自称新人の樫原仁慈が居なければ確実に全滅していた。
何故なら、あの場には接触禁忌アラガミがオウガテイルやザイゴート、コクーンメイデンのように沸いて出ていたからである。
そして、それは―――――
「クソッ!」
ドン、とソーマは自販機の隣の壁を叩いた。
何も悪くは無い。リンドウがああなったのは防ぎようが無かった。だが、あそこまでプリティヴィ・マータが集まらなければ、まだ手はあったかもしれない。
考えても仕方ないと思いつつも、そう考えてしまっていた。
「やぁ、ソーマ。随分荒れているじゃないか……いや、無理もないか」
そう、耳に残る声で話しかけて来たのは、この前ソーマと一緒の任務で死に掛けたエリック・デア=フォーゲルヴァイデである。
ソーマは、彼が近付いてきた瞬間壁から手を離すと、彼に対して背中を向ける。
「なんのようだ」
「そうつれない態度を取らないでくれたまえよ。僕と君の仲じゃないか」
エリックはこの前死に掛けたことなんて気にしていないような風に笑いかけてきた。しかし、それがソーマにとっては何よりも辛いことであった。
彼は他の神機使いとは少々異なる方法で神機使いになった。生まれたときから人類のために戦うことが約束された子。彼は、受精卵のときに偏食因子を投与された存在なのだ。そのため、通常の神機使いよりもアラガミに近く、多くのアラガミを呼び寄せることがあるのだ。
そのことからソーマは極東内で死神と呼ばれ、恐れられている。ソーマによって誘き寄せられたアラガミに同行者が喰われてしまうからである。
エリックもこの前その仲間入りになりそうだった。ソーマも彼のことは嫌いではない。自信過剰だが、妹想いのいい兄貴だった。だからこそ、自分なんかが一緒に居てはいけないと考えてしまう。
「俺とお前の仲?フン、笑わせるな。別に俺はお前のことなどどうとも思っていない。むしろ、あの程度の雑魚に殺されそうになるなんて論外だ。お前も、自分の技量がわかっただろう。今後は俺に近付かないことだな」
それだけ残して自室に戻ろうとするソーマ。しかし、エリックはそんなソーマの手を掴んで止めた。
「まだ何か用か?」
「……確かに、僕はあの時死に掛けた。君がどのように思われていて、そのことに君がどのような感情を持ち、どんな対応を取っているのか……そのことを知っていながら、無様をさらした」
「…………」
「だが、だからこそ、僕はあのような無様をさらすことは二度としない。我がフォーゲルヴァイデの名に懸けて、僕は必ず生き延びて見せる」
「………そんなもの、なんの役に立つ。どれだけ強くても、死ぬときは死ぬんだ」
「フッ、それでも足りないなら妹との買い物の約束だってかけてもいいよ!」
自身満々にいうエリックにソーマは呆れてものが言えないくらいの表情を浮かべる。そんな彼を見てエリックは、
「だから、君が僕を遠ざける必要は無いんだ。いいたいことがあれば素直に吐き出せばいい。どれだけ時間を共有したとしても、唐突な別れは訪れることはないのだから」
「…………フン、勝手にしろ」
「あぁ、そうさせてもらうよ。ついでに明日贖罪の街に行ってみようか」
「1人で行け」
そうエリックを振り払うソーマだったが、その表情はどこか嬉しそうであったと後にエリックは語り、ソーマにボコボコにされた。
―――――――――――――――――
贖罪の街に行ってみたが、昨日の今日だからかアリサさんが崩落させた壁はそのままの状態にされていった。でも、人も機材もあったのでおそらくこれから壁を取り除き調査……というか神機を回収しに行くのだろう。
その調査隊に見つからないように、逆方向からちょうど教会のステンドグラスが割れているところに向かう。
普通の神機使いの身体能力では届かない穴でも、肢体がアラガミと同じ俺には関係ない。神機を落とさないようにしっかりと握りながら両足に力を込めて、跳躍をした。
軽々と穴の中に入り、あたりを見渡す。中にはアラガミの姿もリンドウさんの姿も彼の神機も何も無かった。
まぁ、これは予想済みである。
俺はもっと詳しく教会内を見回った。
しばらくして分かったことだが、リンドウさんが死んでいる可能性が低いということだ。何故なら、教会内には血のあとが少ししか存在しないからである。その量は致死量には程遠かった。彼ほどの実力者であれば、丸呑みでやられる可能性は排除していい。彼の実力は、どんなアラガミでも一矢報生き残ることが出来るほどだ。
どれだけ絶望的な状況になったって、丸呑みされる醜態はさらさないと断言できる。そもそも、アラガミは捕食を行うことが前提の生き物だ。丸呑みなんてしない。どうやっても対象を噛み砕く。この出血量は、それには到底届いていなかった。
何処に行ったのか分からなくても、とりあえず死んでいないことが分かっただけでも十分な収穫だろう。
壁を切り崩していく音が聞こえ始めたので、俺は早々に退散することにする。
極東に帰ってから、俺はアリサさんの病室に行ってみることにした。
どうやら、今は先生がいるためにギリギリ面会できるらしい。病室のドアを開き中に入る。すると、アリサさんの鎮静剤が切れたところだった。
「……あ、あぁ……私、わた…し……。な、何を……?」
しばらく自分の両手を見つめて放心していたが、すぐに何をしたのか思い出したのか、
「あ、あぁ!ち、違う。違うの、そんなつもりじゃ……!あぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
目を限界まで見開き、頭をかきむしりながら絶叫する。彼女の絶叫を聞きつけてすぐに看護師が来て彼女をベットに押し付ける。
しかし、アリサさんは止まらずベッドの上で暴れ続けていた。
「パパ……ママ……違う…違うの!そんな……そんなつもりじゃなかったの!」
看護師さんが叫び、急いで別の人が鎮静剤をうった。
物凄く暴れていたアリサさんはそれで徐々におとなしくなっていき、落ち着いたように眠った。
……しかし、その表情は若干よろしくない。未だに苦しそうな表情を浮かべていた。
一瞬だけ安心させるように手を握り締める。すると、自分では見たことのないヴィジョンが頭の中に映し出された。
そこには病室でアラガミの映像を見せられるアリサさんとそんな彼女に怪しげな呪文を教えながらリンドウさんの写真を見せている白衣だけをきた小汚いおっさんの姿。
―――――どう考えてもこいつが元凶です。本当にありがとうございます。
確かこのおっさんはアリサさんと一緒にこの支部に来た主治医だったはずだ。で、彼らをこの支部に引き連れてきたのは現支部長のヨハネス………これは怪しいな。
映像が途切れ、視界が元に戻る。
アリサさんの表情を見てみると落ち着いているようなので、俺は看護師さんに挨拶をして病室を後にした。
とりあえず、サカキ博士に報告からはじめるとしよう。
サカキ博士の研究所に向かう途中で、ちょうどアリサさんの記憶と思わしきものに映っていたおっさんとすれ違ったのでありったけの殺気をすれ違いざまにぶつけておく。
なんか、後ろで、六十キロくらいの荷物が地面に落ちたような音がしたが、気にしないことにした。
アリサが感応現象で起きなかったのはレベルが違ったからです。一応、ブラッドは感応現象を利用した血の力を持っているので、そのあたりのことに関しては格が上かもしくはコントロールができるものだと考えています。
なので、情報は拾い上げることは出来ますけど、逆に仁慈から得る情報は少ないということにしています。今回の場合は、記憶などは見ずに、安心させるという感情のみを受けたために目覚めには至りませんでした。