神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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本日二度目の投稿。



蒼穹の月








 やさぐれアリサさんと一緒にシユウとついでにクアトリガを殲滅した翌日。俺は支部長室の前で突っ立っていた。
 別に施設のものを壊して呼び出しを喰らったとか、そういう話ではない。おそらくだが、今回の話は俺に特務を受けさせるか否かという話だと俺は思っている。自分で言うのもなんだが、新種のアラガミのコアを初見で剥離するというのはかなりの技量が必要だ。
 普通、そんな余裕は無い。唯、必死に戦って勝つくらいしか出来ないからである。まぁ、未来での極東はコア剥離が一番手っ取り早い方法として定着しているので、コアは腐るほどあるんだけど。このときの極東ではそうではないのだろう。リンドウさんに言ったら物凄い驚かれた。
 ノヴァを作るために多くのアラガミのコアを必要としている現支部長が、俺という人材を無闇につぶすわけがないからな。


 「失礼します。樫原仁慈です」


 「入りたまえ」


 許可を貰いドアノブに手を掛ける。
 中に入れば、現支部長。ヨハネス・フォン・シックザールが御馴染みのゲンドウスタイルで机に座ってた。お偉いさんその座り方大好きだな。これがソーマさんのお父さんか………あんまりそんな感じはしないな。未来のソーマさんだったらなんとなく似ている感じはするけど、現代のソーマさんでは似ても似つかない。
 なんだろう。技術者やってないからか?


 「君の活躍は、私の耳にも届いているよ。何でも、新種のアラガミを1人で倒したそうだね」


 「1人は言いすぎです。あの場にはアミエーラさん、神薙さん、そしてリンドウ少尉が居りましたので」


 「なるほど。リンドウ君の力も大きかったということか。しかし、新種のアラガミのコア剥離には成功している。それは、並大抵の実力では行うことの出来ない所業だ。その手腕を見込んで君には私が出している、特務を受けてもらいたい」


 「特務ですか?」


 来たな。
 予想通りの言葉に内心微笑みを浮かべつつ、表面では驚きの表情を浮かべる。はじめは出来なかった腹芸も、ラケル博士とサカキ支部長相手に訓練(強制)済みだ。


 「……君は、エイジス計画を知っているかな」


 「アラガミ装甲を利用した超巨大なアーコロジーを作り、アラガミに脅かされる心配のない楽園を作り出すこと……ですよね?」


 「その通りだ。そのためには、より多くのアラガミのコアが必要となる。新しい偏食因子やどのように作用するのかということを知るためだ。この特務とは、普通の部隊では相手に出来ない高難易度の敵のコアを剥離してもらうことである。……人類の未来のために、この任務を受けてくれるか?」


 「………はい。もちろんです」


 「よかった。任務はこちらが出すまで通常の業務をこなしていてくれ。後、君以外に特務を受けているものはリンドウ君とソーマだ。何か困ったことがあれば、彼らに協力を仰ぐように。以上だ」


 「失礼します」



 ガチャリと扉を閉めて、そのままエレベータまで一直線に向かう。
 取り合えず、目標は達成できたといってもいいだろう。ここからが本番とも言うが、それについては気にしない方向で。


 肩の荷が折りたため、ふぅーと息を吐きながらエントランスに入る。何時、どのタイミングで特務が来るのかは分からないけれど、当日からいきなり出すことは無いだろう。そんな事を考えつつミッションカウンターに行くと、1人の少女が俺の目の前に立ちふさがる。
 その少女はなかなかよい素材の服を着ており、その服装から裕福な家の出だということがわかる。ついでにどっかで見たことある顔つきと髪型をしていた。


 「ねぇ、貴方が樫原仁慈?」


 「そうだけど……君は?」


 「やっぱり!初めまして!私はエリナ。エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ。エリックを助けてくれてありがとう!」


 どっかで見たことあるはずだ……。この子あのエリナだったのか。
 

 「ねぇねぇ、貴方ってすごい神機使いなんでしょう!?強いアラガミをバッタバッタなぎ倒すことも出来るってエリック言ってたもん!百匹くらい余裕だって」


 子どもになんてこと教えているんだ。エリックさん。確かに、妹とか身内にいいカッコしたいのは分かるけど、言うことにも限度があるでしょう。まして、人の事を伝えるときはハードルを上げすぎることのないようにお願いしたい。
 出来るけどさ。大型アラガミ百匹と組み手擬きとかしたことあるけどさ。
 

 この後、無茶苦茶お話した。





              ――――――――――――――――






 私がこの極東に配属されてから5日がたった。はじめのうちは、この人たち自覚が足りないんじゃないかとか、もっとしっかりとした意識で望むべきだと考えていたけれど、それは初めの2日で終わった。残りの3日間はもっぱら1人の神機使いにずっと注目し続けていた。
 

 樫原仁慈。

 
 この極東に来て、2回目の任務で同行した新型神機使い。
 シユウとの戦いには殆ど手を出さない、口だけの人物かとも思ったけど……すぐ、それは間違いだったということに気付かされた。
 何故なら乱入してきた新種のアラガミの対応が完璧だったからである。


 攻撃方法も分からず、明らかに重量感のある相手だった。新人である自分達では太刀打ちできないと思ってしまったアラガミを、なんの気負いもせず戦闘し、勝って見せた。
 しかも、近くにいる私には決して注意が行かず、尚且つ流れ弾も飛んでこないような立ち回りで鼻歌交じりに狩り倒していた。


 あの強さは常軌を逸脱していると思いながらも、それを見て学び、自分に取り入れることが出来ればもっと強くなるのではと私は考えた。
 だから、樫原仁慈の任務に動向が出来れば同行した。常日ごろの行いも目を盗んでは監視していた。本人からはまたお前かという視線も貰ったりした。


 それだけのことをしても、強さの秘密は分からなかった。しかし、めげずにこれからも研究を続けようと思う。
 ただ、小さい女の子と長時間話していたのはドン引きした。





             ―――――――――――――――――





 ストーカーまがいのお前にはいわれたくない(電波受信)


 いきなりすいません。これを言わなければいけないような気がしたので。
 まぁ、それはいいとして、俺が特務を受けられるようになってからしばらくが経った。支部長から送られてくる特務はまぁ、簡単なものだった。スサノオやウロヴォロス、クアトリガの堕天種……どれもこれも複数で来るならまだしも一体だけでやってくるもんだから特に手こずることもなく終わっていった。


 そして、今日新たな特務が発行された。
 第二接触禁忌アラガミ、プリティヴィ・マータが贖罪の街で発見されたらしい。現在は一体だけでコア剥離のチャンスなので必ず成功させろとのお達しである。


 プリティヴィ・マータとはまた懐かしいものを……。
 接触禁忌アラガミの中でも最弱の部類に入るマータさんはもはや、俺達のいたところでは通常のアラガミと変わらない扱いだったなぁ。


 現支部長が用意した特別な運送用のヘリに乗りながらそんな事を考える。
 

 「目標の場所に到着しました」


 「了解です。ドア開けてください」


 ヘリの運転手にそういうと、ガラリとヘリのドアがスライドして動く。神機を片手に持って俺はそのままヘリから跳び下りた。
 着地時に受身を取ることで衝撃を逃がして着地する。上空数千メートル上からスカイダイビングかました身ならこの程度余裕である。
 

 着地と同時に俺は違和感を覚えた。
 


 ――――――感じる気配が多すぎる。


 プリティヴィ・マータかどうかは分からないが大型アラガミの気配はする。だが、それは複数だ。
 現支部長も仕事が粗いな。


 そうぼやきつつ、気配の感じるところに向かう。しばらくすると多くの大型アラガミの反応があるところから、戦闘音のような爆音が聞こえてきた。
 聴いた瞬間に俺は、その場所に向けて疾走する。


 誰かが戦っているとしたらかなりピンチだぞ。これは!


 所々喰われた建物の角を曲がると、そこにはプリティヴィ・マータが少なくとも5匹おり、ソーマさんとコウタさんが戦っていた。
 なんであの人たちがここにいるんだと疑問に思ったけれど、ひとまず思考を切り替える。
 そして、気配を限りなく殺しながら一気に接近し、コウタさんにねこぱんちをかまそうとしているプリティヴィ・マータを一太刀の元に切り伏せる。


 「お前……ッ!?」


 「え?仁慈?なんでここに!?」


 「話は後です!今はこの状況を切り抜けるのが先です!ここにいるのは貴方達だけですか!?」


 「ま、まだサクヤさんとアリサ、ユウとリンドウさんが中に!」


 「ここは俺が受け持ちます!コウタさんは中の人を出してきてください!」


 「わ、分かった!」


 コウタさんを中に行かせ、会話をしているふいをついて攻撃してきたプリティヴィ・マータの攻撃を回避する。
 その後、反撃として胴体に捕食形態の神機を突っ込みコアを引っこ抜く。
 力なく倒れるプリティヴィ・マータを視界の端に収めつつ、次のマータに切りかかる。


 バックステップと共に出した氷柱を正面から真っ二つにして切裂き、着地で僅かに隙のあるマータを咬刃展開状態にした神機で、コアごと真っ二つにした。


 「お前……なんだその強さ……」


 「慣れです」


 ソーマさんと2人でマータ相手に無双していると、中からユウさんに背負われたアリサさんと泣いているサクヤさん。それを支えるコウタさん出てきた。


 「それで全部ですか?」


 「いや、中にリンドウさんも居るけど……瓦礫でふさがれて……」


 それで撤退命令を出したのか……。
 とりあえず、このままだと全滅は必死だ。俺が庇うといっても、限度がある。撤退が現実的か……。
 

 「俺が殿を勤めます」


 「……わかった」


 俺の言葉にソーマさんが同意し、ソーマさんを先頭で俺が後方で間に動けない人、戦えない人を挟んで極東に撤退した。



 こうして、リンドウさんは行方不明となった。


 




ちなみに仁慈は大方の話を聞いては居ますが、所詮よっぱらったソーマの言葉なので詳細な情報はありません。
だからこそ、この結果です。