神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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ヒロインアンケートは明日で締め切りたいと思います。
今のところはアリサがトップ。時点でリッカですね。


い つ も の

 「(えー……マジかぁ……そうくるか……そうだったのか……)」


 この場には第一部隊に所属しているユウさん、リンドウさん、コウタさん、ソーマさん、サクヤさんと俺が居る。
 そして、その人たちの視線を集めているのは十代半ばか後半に差し掛かるくらいの少女だった。服装については……もう、何も言うまい。たとえ、下に何も着ていない状態にも関わらず、チャックを下まで下ろし切っていないとしても、だ。
 問題は、彼女の態度である。


 俺の知っているアリサさんとは似ても似つかない感じだった。いや、外見とか服装のセンスを見れば間違いなく本人なんだけど……俺の知っているアリサさんは、もっとこう、寛大というか……おおらかな人だった。どんな意見でも聞き入れ、自分で考えて発展させる力があった。
 後半はまぁ、若くして身に付く技能じゃないし普通としても、性格がすっごいクールだった。


 ……まぁ、いいか。
 よくよく考えてみれば、十代半ばの人が同じ性格を維持しているほうがおかしいのだ。うん、未来の彼らは様々な困難に立ち向かい、打ち勝ったからこその性格なのだろう。これからは未来のことを基準に人の事を考えるのを止めることとする。


 心の中で、そう結論をつけたところで、既にアリサさんの件については話が終わったらしくみんなが持ち場に戻っていた。
 アリサさんはこれからリンドウさんが面倒を見るらしい。まぁ、現在の極東においてこの人を超える神機使いは居ないだろうし、妥当なところだろう。


 ただ……、


 「そんな考えでよく今まで生きて来れましたね」


 大丈夫かなぁ。
 未来に居るってことは死なないってことだし、ソーマさんから粗方の話は聞いている。でも、俺が居る時点であてにならない気がするんだよな。今更だけど。
 アリサさんは、演習で優秀な成績をたたき出した。それが今の自信に繋がっている……しかし、実戦経験が少ないともツバキさんは言っていた。これがつまりどういうことなのかというと、



 ―――――思いっきり死亡フラグです。



 この一言に限る。
 それに彼女が受けていた演習というのはおそらくロシアの支部でのものだ。この極東は他の地域に比べてアラガミが滅茶苦茶強い。
 前に実験の一環として、極東のアラガミを一体他の地域に放ち、厳重な監視下の元で観察したことがある(マッドコンビ発案)
 結果は圧勝。
 うちのオウガテイルは他の地域に居るオウガテイル50匹にも負けなかった。一匹で無双してた。極東は神機使いもアラガミも頭がおかしい地域だということが再確認できた実験だった。そのことを踏まえると、演習での結果は役に立たない。
 そのことを瞬時に考え、この場を離れようとしているリンドウさんに視線を送る。


 「(リンドウさん、ちょっとやばくないですか。この認識)」


 「(心配すんな。いざとなったら俺が何とかしてやる。唯、新型同士にしか分からないこともあるだろうし、出来る限りサポートしてやってくれ)」


 やだ、出来る上司だわ。リンドウさん。どっかの元ブラッド隊隊長(バカ)も見習って欲しい。心底。
 

 なんにせよ、今更ながら慢心することなく気を引き締めることにした。






             ―――――――――――――――――





 翌日。
 今日はユウさんとリンドウさん、アリサさんと俺でシユウ2体を倒す任務に来ていた。まぁ、大した内容ではない。どちらかといえばアリサさんにこの極東での戦い方を教えるための任務だろう。後はユウさんの経過を見に来たのかな。


 「お、今日は新型三人との任務か……足を引っ張らないように頑張るわ」


 「何で俺を見ながら言うんですかねぇ……」


 この中で貴方のことを足手まといと思う人なんて居ないと思う。ユウさんだって思いっきり苦笑して、どんな反応を返せばいいのか分からないって感じだし。


 「旧型は、旧型なりの仕事をしてくれればいいと思います」


 やべぇ。過去のアリサさん超やべぇ。クールじゃなかった。やさぐれているだけだった。見ろ、あのユウさんが苦笑のまま石化したように固まったぞ。


 「はっは。まぁ、せいぜい頑張るさ」


 しかし、リンドウさん本人は気にしていないようで笑いながらアリサさんの肩に手を置いた。


 「きゃあ!」


 アリサさんが悲鳴と共に背後に飛び退く。


 「おっと、俺も嫌われたもんだ」


 「リンドウさん。年頃の女の子は難しいものなんですよ」


 「なるほど……悪かったな……」

 
 「い、いえ……すみません。大丈夫です」


 といいつつ、頭を抱える。
 全然大丈夫そうじゃないけど……。


 「はは、冗談だ。んー……そうだな……アリサ。混乱しちまったときはな、空を見上げるんだ。そんで動物の形をした雲を見つけるんだ。落ち着くぞ。それを見つけるまで、お前はここで待機だ。ちなみにこれは命令だからな」


 「な、何でそんなことを……」


 「いいから。あ、仁慈。お前さんはここでアリサと一緒に残ってろ。ついでだし、二つに分けて一匹ずつシユウを狩ったほうがいいだろう」


 「えっ」


 まさかの言葉だった。
 これには流石に驚き、リンドウさんに近付いて小声で語りかける。


 「なんで態々分けるんですか?リンドウさん、アリサさんの実地での教官のようなものなんでしょう?」


 「それはそうなんだけどな……さっきの反応を見る限り、それはちと難しい感じがする。今は別にいいが、戦闘中でああなられるのも逆に困るだろ。その点、お前さんなら実力も十分すぎるほどにあるし、安心して任せることが出来る」


 「それは丸投げって言うんじゃないですかね?」


 「適材適所さ」


 「ものは言いようですね、ホント」


 俺の言葉を聞いてもハッハッハと笑うだけで訂正はしてくれなかった。というか、ユウさんを引き連れて本当に先に行ってしまっていた。マジか。
これから数分間俺はアリサさんと一緒に動物の形をした雲を探すこととなった。







             ―――――――――――――――――





 とっても適当な隊長に言われたとおり動物の形をした雲を見つけた私と、もう1人の新型神機使いは適当な隊長たちが相手をしていないもう一体のシユウの捜索をしていた。……こういう場合は素人2人だけで別行動は絶対にさせないのだが……あんな適当な采配でよく今まで生き残ってこれたものだと逆に感心してしまう。
 極東の人たちは最前線で戦っているという自覚が薄いのではないかと、この支部に配属されてから常に思っている。
 現に今も私の後ろを付いてきている、新型神機使い樫原仁慈に対してもそうだ。緊張感の欠片もない表情で当たりを見回している。何処に敵がいるのかもわからないのにあくびまでして……もう呆れるしかない。


 「オペレーター、周囲にアラガミの反応は?」


 『この近くには居ません。もっと奥の方ですね』


 「分かりました。そちらに向かいます」


 「………いや、その必要は無いみたいですよ」


 唐突に話しに割り込んできた樫原仁慈。
 彼が言った直後に、シユウがこちら目掛けて走ってきているのが確認できた。


 「アミエーラさん。好きに動いていいですよ。細かい援護はこちらで行いますから」


 「ふん。ちょっと早く実戦に出たから先輩気取りですか?別になったばかりの新人に援護なんて期待してませんから」


 「(それってすごいブーメランなんじゃ……いや、よそう。俺の勝手な推測で周囲を……)」


 なにやらぶつぶつ言っている樫原仁慈をスルーして、私はシユウと向き合う。シユウのことも当然私は知っている。攻撃力の高い叩きつけ攻撃に注意しつつ、ヒット&アウェイでダメージを稼ぐのが定石だ。ヒット&アウェイに関して言えば、全てのアラガミに言えることだが。
 早速シユウが両手に見える羽の部分を合わせてエネルギー弾を作り出して、こちらに放ってきた。
 私は横にステップを踏んで回避し、すぐさまシユウに接近する。そして、斬撃が有効な拳の部位に神機を振るった。両方は無理だったものの、私が切りつけた部分は結合崩壊を起こした。
 シユウが結合崩壊をしたことにより、よろけたためさらに追撃としてもう一方の拳も切裂く。
 両方の拳を結合崩壊させると、シユウは当然の如く活性化状態になった。だが、無駄である。どの攻撃モーションも頭に叩き込んだため、どんな形を取ればなんの攻撃が飛んで来るのかは一目で分かる。
 というか、あの樫原仁慈さっきから全然攻撃してない……やっぱり口だけの人だったのかと失望する。
 失望しつつもシユウに止めを刺そうと近付こうとしたその時、


 「■ ■ ■ ■ ■ ■ ―――――ッ!!」


 ロシアの資料には無かった攻撃をシユウが行ってきた。
 それはあとからわかったことだが、極東のシユウが行う固有の攻撃であった。本来なら放つしか出来ないはずのエネルギーを纏わせた回し蹴り。攻撃スピードが異常に早く極東においては注意すべき攻撃だった。
 直撃したら、まずい。


 咄嗟にそう判断した私はすぐにシールドを展開して来るべき衝撃に備える。
 しかし、シールドを展開する直前にシユウの頭に一発の弾丸が突き刺さった。見事に頭の結合を崩壊させたその一撃にシユウは回し蹴りを中断して、背後に下がった。私は思わず弾が飛んできた方向に視線を向ける。
 そこには先ほどまでやる気の欠片も感じられなかった樫原仁慈が銃形態の神機を構えたまま立っていた。


 「ビューティフォー」


 なんか言ってた。


 「アミエーラさん。早く止めを」


 その言葉にハッとなり、体をすぐさま反転。
 うずくまっているシユウを滅多刺しにする。それを十数秒続けるとシユウは力なく地面に倒れこんだ。


 『討伐対象のアラガミの撃破を確認。お見事です』


 「お疲れ様です。アミエーラさん」


 「貴方、結局殆ど動きませんでしたね」


 「いやー、援護なんて殆ど必要なさそうな感じでしたので……」


 私の言葉に苦笑で答える。


 「しかし、よく動けていた方だと思いますよ。身のこなしは完璧に近いですね」


 「よくもまぁ、偉そうな言葉がすらすらと出ますね」


 「これはすみません。今回全く働いていない俺が言えることではなかったですね……っと」


 私と話をしていた樫原仁慈は急に背後を振り替えて、ある一点を見つめ始める。だが、そこには壁しかなく何も見るようなところはなかった。
 

 「………ヒバリさん。周囲に大きなアラガミの反応、ありませんか?」


 『えっ?今のところは確認――――ッ!?いえ、大型のアラガミ反応がそちらに接近中です!到着予定時刻は……今ッ!』


 「だろうね」


 オペレーターの言葉に軽い感じで返した後に、それは現れた。
 キャタピラを縦にした感じで生える四本の足。明らかに堅そうな装甲に囲われた胴体。そして、かつて人類が使用していたといわれる兵器、ミサイルを打ち出すようなことが出来るポッド。
 どれを取っても見たことの無いアラガミだった。


 『さ、最近発見された新種のアラガミです!』


 「クアトリガ……か」


 『え?知っているんですか?』


 「サカキ博士から話を聞きましてね、少し」


 『今、リンドウさんに状況を伝えました。五分ほどで合流できると思われます!それまで何とか耐えてください!』


 「了解」


 樫原仁慈が通信を切る。するとその直後に今度はあの適当な隊長から部隊全員宛の通信が入ってきた。


 『よう。かなり重たいおかわりが来てるって話じゃないか』


 「超ド級の重さですよ。これを食べたら胃がもたれます」


 『そうか。食いきれないんだったら俺が到着するまで時間を稼いでろ。そうすれば何とかしてやる……と、言ってもお前には必要ないか?』


 「えぇ。時間を稼ぐのはいいですけど――――別に、あれを倒してしまっても構わないでしょう?」


 『ははっ、言うねぇ。やれるものならやってみな。もし、倒せたら俺の分の配給で欲しいもの譲ってやるよ』


 「それは頑張らないといけませんね」


 これから未知の敵に挑む前とは思えない、何時も通りの気の抜けたやり取り。
 相対するのは威圧感が尋常じゃない新種のアラガミ、立ち向かうのは最近神機使いになった新人2人。
 そんな絶望的な状況においても、樫原仁慈はシユウと戦うときから変わらない気の抜けた態度で、相手に神機を突きつける。


 「行くぞ、クアトリガ。―――――ミサイルの貯蔵は十分か?」





 
            ――――――――――――――――





 黒歴史ってこうやって出来ていくんだね。
 堅そうな装甲をボロボロにして、グズグズに崩れていくクアトリガだったものを見ながら俺は空を見上げた。
 なんか、前にもこんなようなことがあった気がする。まぁ、それはいいか。


 事の顛末を話そう。
 死亡フラグっぽく挑んでみたものの、ぶっちゃけ俺からすればクアトリガは既存のアラガミである。ここでは新種と言われていたけど、俺としては何度も交戦経験があるわけで……結論から言うと、負けるわけが無い。
 普通に倒して普通にリンドウさんの配給品を貰いました。
 そのことに対して当のリンドウさんは苦笑。ユウさんも苦笑。アリサさん絶句という結果になった。
 出たばかりというクアトリガのコアも完全に持って帰って来たのでボーナスが入るらしい。
 

 結局どうなったかといえば、俺の金が少し増えたことと、アリサさんが俺に対してどうして接していいのか分からないような雰囲気を醸し出していることくらいだろう。
 





             ―――――――――――――――――






 「新種のアラガミのコア剥離に成功、か」


 下から上がってきた報告書を読み上げつつ、ヨハネスは呟く。
 それは樫原仁慈の戦跡だった。
 パッと見常軌を逸しているその戦跡を見て、彼は排除よりも利用すべきという考えを持ち始めた。
 確かに不確定要素はいらないが、彼は十分こちらの役に立ってくれそうだ。しかも、特務であれば接触禁忌種との戦闘もある。いっそのこと、それで死ぬまで特務を与え続けるのもいいかもしれない。
 そう考えるヨハネス。


 数分考えた後、彼は電話を手に取った。





               ――――――――――――






 「君は、抑えるということは知らないのかね?」


 「いや、すみませんつい。………でも、これで特務とやらに就けるようになった方が、色々動きやすくありませんか?」


 「それについては否定しないよ。でも、彼が本腰を入れて君を排除する可能性だってある」


 「別に、アラガミの10や100来た位じゃ死にませんよ」


 「妙に説得力があるのは何故だろうね?言っていることは無茶苦茶もいいところなのに」



 ある博士の研究室でそんな会話が繰り広げられたらしい。