神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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先に謝っておきます。ごめんなさい。
ノヴァ戦まで行きませんでした。


第五十二話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……諸君。いよいよ、今日の20時にノヴァとの決戦だ。詳しい作戦などを、ラケル博士の口から説明してもらおうと思う」

 

 

 普段と変わらず糸目だが、口元を引き締めて真剣な表情で自分の背後に居るラケル博士に語りかける。彼女のほうも普段の胡散臭い笑みを完全に引っ込めて滅多に見ない表情で前に出た。

 

 

 愛すべき馬鹿共(ブラッドメンバー)が死亡フラグをおっ立てまくり、無駄に不安に思った数時間後の話である。場所は支部長室ではなくその一回下、大きな機械やら配線やらでごちゃごちゃしていたあの部屋。朝一で呼び出されて向かってみればノヴァへの対策会議だった。決戦は今日だし、当たり前である。

 

 

 「私たちは今日戦うノヴァをアルマ・マータと名称し、これの排除に向かいます。具体的な方法としましてはアルマ・マータが目覚める前にブラッド全員で準備を整え、覚醒したと同時にロミオの血の力でアルマ・マータの弱体化を図ります。そこからは通常のアラガミを討伐するときと同様の動きになります。極東の方々はその他のアラガミたちを引き受けてもらいます」

 

 

 ノヴァじゃダメなのか……。まぁ、完全体じゃないからかもしれないし。以前に現れたノヴァもアリウスって言う名称だったらしいし気にすることじゃないと思うんだけど……若干、こうばしいと考えてしまう。

 そしてそんなくだらないことを考えられるように余裕を持たせてくれたブラッドにも感謝する。馬鹿だけど。

 

 

 「以上がアルマ・マータとの戦いの作戦内容となりますが、聞いていて分かる通り詳しいことは神機使いの皆さんにゆだねられています」

 

 

 今回は向こう側にも知能があったし、何より手が出しにくくなるほどにまで成長するのが早かったからなぁ。

そもそも今回のことは元凶ラケル博士、とどめブラッドと1から10までこちらの落ち度である。ぶっちゃけ責められたら文句も言えない立場だ。裁判とかあったら有罪判決から豚箱シュート待ったなしの状況だ。他の人よりもしっかりと戦わねばなるまい。

 え?さっきまでこうばしいとか考えていた奴の言葉とは思えない?知らん、管轄外だ。

 

 

 「私も、戦力増強にラケル博士と共同開発をしていた『神機兵Ver山猫』とか作っていたんだが……間に合わなくてね。三年前の同じく君たちを信じることしか出来ないんだ。すまないね」

 

 

 『(よかった……ラケル博士とサカキ支部長(サカキ博士)最悪マッドコンビの最狂傑作が誕生しなくてよかった……ッ!)』

 

 

  サカキ支部長が本当に申し訳なさそうにそう言ったとき、部屋に居るサカキ支部長とラケル博士以外の考えが一致したようにも感じた。

 コジマは……まずい……(二回目)。

 

 

 とまぁ、微妙にしまらない空気になりつつもアルマ・マータ対策会議は幕を閉じた。後は20時……正確には19時30分から行われる作戦を待つだけだ。

 

 

 

 

              ――――――――――――

 

 

 

 

 時刻は19時を指しており、作戦開始時刻が目の前まで迫っている。三十分もあるじゃないかと思うかもしれないが五分前行動ならぬ三十分前行動を心がけている身としては当然のことである。

 それにあくまでも20時という時間はサカキ支部長とラケル博士の予想であることを忘れてはならない。彼らなら日数や時間単位での誤差はないと思うが、分単位まで確実にあっているとは限らないのだ。だからこそ、本格的ではないにしろ俺たちブラッドは既にうっすらと血の力を発動し始めている。

 ちなみに配置はロミオ先輩を真ん中として、前に三人後ろに二人という感じ。前はジュリウス隊長、ギルさん、ナナ。後ろはシエルと俺である。

 

 

 「うっわ、間近で見るとなんかアレだな……」

 

 

 「覚醒が近いのか点滅していますね」

 

 

 「その光の所為で中が時々見えるのがまたなんともいえないよねー」

 

 

 「本当に蛹みたいだな」

 

 

 「というか、普通に気持ち悪いな」

 

 

 こいつら緊張感なさすぎぃ!

 後もう少ししたら人類……いや、世界の存亡をかけた戦いが始まるっていうのに小並感(小学生並みの感想)みたいなこと言いやがって……。

 

 

 「フランさんフランさん。みんなの緊張感のなさが半端じゃないんですけど、大丈夫なんですかね?」

 

 

 『知りませんよ。私には関係ないですし、失敗して責められるのは皆さんですし。現状を作り出したのは何処のどいつだとか言っておけばいいんじゃないんですか?』

 

 

 「やだ……辛辣……」

 

 

 なんというセメント対応。しかし……圧倒的ッ!圧倒的正論……ッ!!

 くやしい、でも言い返せない。

 

 

 と、色々な意味でビクンビクンしているとフランさんの声が再び通信機越しに聞こえてきた。

 

 

 『ラケル博士も仁慈さんたちも、私をフライアにおいていくからですよ。残ってるメンバーを考えてみてください。豚に骨に処女ビッチですよ?』

 

 

 「ねぇ、フランさん?酔ってないよね?直前にお酒飲んでたりしてないよね?」

 

 

 彼女の口から出てきたとは到底思えない言葉の数々に反射的にそう聞き返してしまった俺を一体誰が責められるだろうか。

 

 

 『皆さんが居ないからオペレーターとしての仕事はなくなるし、それが分かっていながら豚はネチネチ小言言って来てお尻凝視するし、骨は小声でラケル博士の名前を永遠と呟いてるし、処女ビッチは怯えてるし………』

 

 

 アカン(確信)。

 まるで蛇口を思いっきり捻ったときに出てくる水の如く、愚痴を吐き出すフランさん。どうやら彼女は彼女でかなり苦労していたらしい。

 

 

 『まぁ、この前退職届を豚に叩きつけてやりましたけどね。これでやっと私も皆さんと一緒に極東支部で働けるようになりました』

 

 

 「アグレッシブすぎる……」

 

 

 どうやら俺が知っているフランさんはどこかに行ってしまったらしい。というかこの人も結局ブラッドメンバーと雰囲気変わらないじゃないですかーやだー。

 

 

 『ヒバリさんが担当している極東組も似たような感じですし、むしろ仁慈さんのほうが場違いなのでは?』

 

 

 これが常識の違いによる弊害か……。

 非常識が蔓延している中で常識を語ってもこっちがおかしい人扱いされるアレだな。アニメとかでは見たことあったけど、俺も今更になって体験することになるとは。

 

 

 小声でぼそりと面妖な……なんて呟いてみれば、急にブラッドメンバーが黙り込んでしまう。

 何事?と首を傾げつつ視線を彼らに向けるとどうやらアルマ・マータの蛹のほうを見て固まっているらしかった。

 この時点でやな予感しかしないのだが、意を決して俺も蛹のほうに視線を動かす。

 

 

 ――――ピキッ……ピキピキ…パキン!

 

 

 そうして俺の視界に入ってきた光景は、先程よりも短い周期での点滅を繰り返しつつ小さな音を立てて蛹を破ろうとしているアルマ・マータの影であった。

 

 

 『周囲の偏食場が、過去に現れたノヴァと同じ反応になりつつあります!皆さん、血の力の準備をお願いします!』

 

 

 先程とは打って変わり、オペレーターとしてふさわしい雰囲気に変わったフランさんの声が耳を貫く。

 予想よりも若干大きかったフランさんの声にビビリつつ、俺は喚起の力を発動させて他のブラッドの血の力に眠っている潜在能力を全力で引っ張り出す。他のみんなも前もって知らされていた作戦通りに血の力を使い、ロミオ先輩の力を最大限に引き出せるように自分の力を操作する。

 

 

 

 「仁慈、ギル、シエル、ナナ。今だ!パワーをロミオに!」

 

 

 『いいですとも!』

 

 

 「お?おぉ……?なんかすげぇ力が沸いてきた……!よっしゃ!やってやるぜ!」

 

 

 あふれんばかりに赤いオーラを放ち始めるロミオ先輩。一瞬だけ界〇拳かな?と思ってしまった自分を戒めつつ、成り行きを見守ることとする。

 ここで余計なこと言ってアルマ・マータにロミオ先輩の血の力が外れてしまったりしたら取り返しが付かないからな。

 

 

 アルマ・マータは順調に蛹をブチ破っているようで、僅かに空いた隙間から茶色い木のような部分がチラチラと見えている。

 そんなチラリズムはいらないけど。

 

 

 『……偏食場が完全にノヴァのモノと一致しました!来ます!!』

 

 

 その通信と同時に、完全にアルマ・マータが蛹をブチ破って外へと出現した。

 

 

 出てきたのは、零號神機兵の面影をまったく残していなかった。四つん這いなのは変わらないもののその体は機械のようにごちゃごちゃしたものではなく、木のような材質に変化している。何より変化したのは、まさしくプロトタイプと思わせるような継ぎ接ぎだらけの顔である。あの継ぎ接ぎは完全になくなり、人間にしか思えない風貌になっていた。というか、どっかで見たことある風貌である。具体的には常に喪服着て、薄ら笑いを浮かべてそうな感じ。

 

 

 ここまで言えば分かるだろう。

 このアラガミは……アルマ・マータは、

 

 

 『フフフ……ようやく、まともに話が出来るわね。仁慈』

 

 

 ラケル先生をそのままアラガミにしたような奴だったのである。

 

 

 

 『あら?どうしたの?もしかして……ラケルに似てるから攻撃できないt』

 「ロミオ先輩やってしまえ」

 

 

 「おうよ!」

 

 

 アルマ・マータが何か言いかけていたがとりあえずスルーして、ロミオ先輩の血の力を発動させる。

 余裕というか、油断していたアルマ・マータはロミオ先輩の血の力を真正面から喰らった。

 

 

 『うぐっ!?普通話している途中に攻撃する!?しかも、自分たちの知り合いに似ている相手を!躊躇なく!!』

 

 

 「知らんわ」

 

 

 「そうだな」

 

 

 「そうですね」

 

 

 「そうだねー」

 

 

 「その通りだな」

 

 

 「そうだそうだ!特に俺なんか、ジュリウスのために殺されるところだったんだぞ!これくらいしたって許してもらえるに決まってんだろ!」

 

 

 『つらい』

 

 

 『あー……ラケル博士……残念ながら今回ばかりは擁護しかねます。私でもそう思いますし』

 

 

 俺たちの返答に本物のラケル博士がダメージを負っていた。ついでにフランさんが追撃も加えていた。

 

 

 『………くっ、せっかく仁慈に言われたとおりに美少女になったのにこの対応なのね』

 

 

 「俺が言ったのは人型美少女だし、そもそもラケル博士は少女じゃないだろいい加減にしろ!」

 

 

 『屋上』

 

 

 やっべ。

 

 

 『まぁ、そこはどうでもいいわ』

 

 

 自分で言ったくせにどうでもいいとは……俺はお前の所為でこの戦い乗り切った後でも、いやむしろ乗り切った後のほうが死ぬ確立高くなったんだぞ。

 

 

 『お遊びはここまでよ。貴方達はロミオの血の力で私を弱体化させたといっても多少攻撃が効く様になった程度……このくらいなら誤差の範囲よ』

 

 

 頭上に光の輪を出現させ、戦闘態勢をとるアルマ・マータ。

 その姿は天使のようにも見えたが体のサイズと、四つん這いの格好で台無しである。

 

 

 『今ここには半径百キロメートルに居るアラガミを全てここに向かわせるようにしてあるわ。さぁ、仁慈。私の計画を散々邪魔してくれた貴方に教えてあげるわ。本当の絶望を』

 

 

 紅い目を俺に合わせてそう宣言する。

 ならば、とこちらも対抗するようにアルマ・マータに視線を固定して、神機を突きつける。

 

 

 「やってみろ、その前にお前を今までのアラガミと同じようにしてやるけどな」

 

 

 宣言と共に、俺とアルマ・マータは同時に動き出した。俺の動きに追随するように後ろからギルさんとジュリウス、ナナが付いてくる。残りの二人は後ろから援護するようだ。

 

 

 

 

 ―――――――アルマ・マータ戦、開始。

 

 

 

 

 

 

 




最後の台詞

『今ここには半径百キロメートルに居るアラガミを全てここに向かわせるようにしてあるわ。さぁ、仁慈。私の計画を散々邪魔してくれた貴方に教えてあげるわ。本当の絶望を』

「やってみろ……この、仁慈に対してッ!」


て、いうのが一番初めに思い浮かびさすがに最後の台詞でネタはダメだろと思い新しいのを考えたのですが、DIO様に引っ張られすぎて三十分ずっと考えてました。



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