神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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ナナちゃんのキャラ崩壊注意


第五話

仁慈がジュリウス隊長の許可をもらって勢いよく飛び出していく。そして、空中で神機をプレデターフォームにするとすぐ下にいたオウガテイルを一撃で倒しもう一体のオウガテイルに向き直っていた。一方、残ったオウガテイルは負けじと咆哮を放ち、近くにいる仲間を呼び寄せる。未だ、訓練を終わらせていない神機使いにとっては絶望と言っていいような状況に陥る仁慈。
それでも、彼は恐怖で動けなくなるどころか唇の端を吊り上げてどこか楽しそうな雰囲気すら放ちながらオウガテイルの群れに襲いかかった。

同じ新人でもオウガテイルに襲われて動けなくなる私とオウガテイルの群れに果敢に襲いかかる仁慈。何が違うのだろう?どうして私はあそこにいないのだろう?と自問自答をする。


「ナナ、あまり自分を責めるな。実戦経験のない神機使いならばその反応は正常だ」


するとジュリウス隊長が私の状態に気が付いたのか励ましの言葉をかけてくれた。
でも―――――


「なら、仁慈は?」


私と同じ新人であるにもかかわらずオウガテイル相手に無双している彼はいったいどういう事なのだろうか?


「俺が育てたからな」


そんな、ドヤ顔で言われても…。
仁慈の言ってること本当だったかもなー。ジュリウス隊長は確かに天然っぽい。


「それに、あいつはずっとこんな状況よりも厳しい訓練を積んできた。だから、自分自身とアイツを比べることはない」


厳しい訓練は自分の意志でしてるわけじゃないって愚痴ってたけどねー。なんか、認識の差が激しいよ。この二人。
でも、そのことを考えると少し体が軽くなった気がする。初めて実際の戦場にもかかわらず複数のオウガテイル相手に大立ち回りしている仁慈も、愚痴や不満を吐き出すちゃんとした人間なんだってそう思えたから。


「ありがとうございます、ジュリウス隊長!もう大丈夫です!」


地面に置いておいた神機を担いでそう言う。
仁慈があんなに頑張っているんだもの、私がこんなところでへこたれるわけにはいかないよね!


「フッ、そうか。…ナナ、俺たち人類の最大の武器は今お前が持っている『強い意志』と仲間との連携、そして戦略だ。それさえ忘れなければアラガミに負けはしない」


「はい!」


ジュリウス隊長の言葉を胸に秘めて、私たちは仁慈が戦っている場所に向けて、飛び込んだ。
ってなれば、いい話で終われたんだけど……


「飛び道具なんかに頼ってんじゃねぇぇ!!」


急に聞こえてきた仁慈の声に思わずこの方向を見る。するとそこには、オウガテイル達の攻撃を刀身をのばして複数のオウガテイルをまとめて薙ぎ払ったり、プレデターフォームの神機でオウガテイルを持ち上げて別のオウガテイルにぶつけ、銃形態でまとめて打ち抜いたりする仁慈がいた。


「ジュリウス隊長ー。あの光景にさっき言った人類の最大の武器が使われているようには見えないんですけど…」


「あいつ、この短期間であそこまでやるようになったか。これは負けていられないな」


対抗心を持ち始めたッ!?
あーもう、変なとこでかみ合ってるなぁ!この二人!
とりあえず、オウガテイルの方は心配なさそうなので私は仁慈のから逃げている二足歩行のカブトムシのようなアラガミ、ドレッドパイクに走り出した。


















オウガテイルの群れに襲いかかってから五分くらいして、すべてのオウガテイルを文字通り食い荒らした俺はいくらか冷静な状態に戻っていた。それと同時に自分の先程までの状態を思い出し、悶えた。


は、恥ずかしすぎる……!
声には出していないものの思ったことは中二特有の病気と何ら変わりないじゃないか!
思わず頭に手をついて天を仰ぐ。キョウモイイテンキダナー。


「おーい、仁慈ー」


おぉ、この声は最近俺の癒しとなりつつあるナナちゃんの声ではないか!
……まだ、ちょっとおかしいな。このままいったら確実に黒歴史が増えることになる。
何とか通常のテンションを保とうと気を引き締めてナナの声が聞こえる方を向くと、ブーストハンマーのブーストをふかしながらこちらに急接近するナナがいた。って、


「あぶねぇ!」


ナナのやつそのままハンマーを思いっきり俺の顔面に向かって振りぬきやがった。
いや、おかしいだろ。もし当たったら俺の顔つぶれたトマトみたいになるぞ。


「あーあ、外しちゃったか……」


「外しちゃったかじゃねーよ。いったい何が原因でこんな暴挙に出やがった」


なんかこの子黒くなってるんだけど。俺の所為じゃないよね?違うよね?


「仁慈が暴走するからー、何度かアラガミと一緒に切られそうになったんだよー」


「マジすいませんでした」


咬刃展開状態は仲間がいるときは使わないでおこう。アラガミと一緒に仲間も両断しましたなんてシャレにならない。


「そちらも無事に終わったようだな」


内心己の武器の意外な弊害が明らかになり、少し沈んでいるとナナより少し遅れてジュリウス隊長が神機を上げながら近づいてきた。
今更ながらあんな重そうな神機を片手で持ち上げるとか神機使いおかしいよな。
人のこと全く言えないけど。


「お疲れ様です。ジュリウス隊長」


「あぁ、そっちこそお疲れ様。初めての実地訓練とは思えないくらいの立ち回りだった。日ごろの訓練の成果……つまり、俺のおかげだな」


「それはもうわかりましたよ。どんだけ推してくるんですか」


「仁慈が戦っているときも言ってたねー」


マジか。
もしかして弟子的な人である俺の成長を嬉しく思いすぎてちょくちょく自慢げに言ってくるとかそういう理由か?
いや、これはさすがに自意識過剰か。まぁ、いいか。それよりも、


「これで任務完了ですかね?」


「あぁ、今回の任務はこれで―――――」


『連絡班より報告。周囲に新たなアラガミの反応が複数見られます』


これより帰還、という雰囲気が出てきたと思ったら急にフランさんからそのような報告が無線から聞こえてきた。


「種類は?」


『オウガテイルと思われます』


フランさんが種類を言うのとほぼ同時に目の前の空間に黒い煙のようなものが集まりやがてオウガテイルの形となった。オウガテイル先輩今日は大活躍っすね!


「ちょうどいいな。今からお前たちにこれから目覚めるであろう『血の力』を見せてやろう」


言って、神機を正眼に構えるジュリウス隊長。
すると俺とナナの体が一瞬だけ光り、その後アラガミを捕食した時のバースト状態に近い状態になった。


「今から対象に向けてブラッドアーツを放つ。少し下がっていろ」


「ブラッドアーツ?」


ナナと同じく首を捻る俺。
血の力は聞いた気がするけど、ブラッドアーツは初めて聞く気がする。


「戦況を覆す大いなる力……。戦いの中で進化し続ける、刻まれた血のなせる業……とまぁ、難しく言っているが簡単に言えばブラッドが使える必殺技だと思えばいい」


「一気にしょぼくなりましたね」


なんか簡単に必殺技って使うと逆に強くなく思えるんだよね。俺だけかな?
くだらないことに思考を割いているとジュリウス隊長は神機を居合のようにして構えた。そして、


「―――――――――――ハァアアア……ッ!」


キィン!と甲高い音とともにジュリウス隊長の体が一瞬だけ光る。すると、次の瞬間にはオウガテイルの群れを通り越しオウガテイル達の背後を取っていた。
オウガテイルには無数の切り傷が付いており、すぐに地面に沈んでいった。
な、何が起きたのかさっぱりわからなかった……なんなんだ、これは。ジュリウス隊長はイアイ・ジツの使い手だったというのか。


「これがブラッドアーツだ。俺たちの中に眠る血の力とブラッドアーツをどう使い、どう生かしていくかはすべてお前達の意思次第だ。いいな?」


中二病が加速しそうな能力だな。ブラッドアーツ。
ジュリウス隊長の言葉に神妙にうなずくナナの隣で、そんなことを考えている俺なのだった。




早くも話が迷走している気がする