神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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蛮族の心臓落ちなさすぎワロエナイ。
石とリンゴ溶かして一日中回ったのに、二個って……自害せよ庄司。

まぁ、それはともかく。今回は零號神機兵の対策&解説回なので文字が密集しております。読み難いと思いますがご了承ください。


第四十九話





 「……イイハナシダナーしているところ悪いのだが、そろそろ私も話をしていいかね?」


 「あ、はい」


 ゴホンと咳払いひとつして、俺たちの会話に入り込んできたサカキ支部長。そういえばこの話し合い元々は零號神機兵とは一体何なのかまたアレにどう対処すればいいのかという話し合いだった。すっかり忘れててすいませんでした。


 「気にしなくていい。今の話は私にとっても大変興味深いものだった。この騒動が終わったら君の身体を徹底的に調べさせてもらおう」


 「ヒッ」


 そういうこというのやめましょうよ。まったく冗談に聞こえないんですから。


 「冗談じゃないからね。まぁ、そのことについては後々話をするとして……今は零號神機兵のことについてだ」


 さりげなく俺の考えていることを当てながらサカキ支部長は何時もの糸目ではなく、しっかりと瞳を開いた状態でラケル博士の顔を見る。いや、あそこまで言ったらもはや睨むといっても過言じゃないな。
 

 「あの零號神機兵から我々がかつて倒した終末捕食を行うアラガミ……ノヴァと同じ偏食場が確認された。そのことについて納得のいく説明を求めるよ、ラケル博士」


 「私の目的が元々終末捕食の実行という話はしましたね。つまりはそういうことですよ。サカキ博士。終末捕食を起こしたいのなら、それを引き起こすノヴァの残骸くらい回収していたとしても不思議ではないでしょう?」


 「それはそうなんだがね。私が疑問に思っていることはそうじゃない。君は私が仁慈君に零號神機兵の話をする時とても焦っていただろう?つまり、零號神機兵が外に出たことは完全に予想外だったわけだ。このことからノヴァの残滓を予め零號神機兵に捕食させていたということはなくなる。何故なら、ノヴァの残滓を捕食してしまえば、終末捕食を引き起こすためにその辺のアラガミを捕食しに行くに決まっているからね」


 なるほど。
 あの時既にロマンに目覚めていて、終末捕食?知らない子ですね状態だったラケル博士が零號神機兵にノヴァの残滓を食わせていることはないし。予め食わせていたとするならば、自分の制御も振り切って勝手に終末捕食を起こすためにそこらでアラガミを捕食しまくることになる。自分のやろうとしていることがばれていない状態でそんな事すれば自ら自白しているようなものだ。だからその線はなくなるということか。
 頭の回転が速いなーさすがに。
 変人でも、マッドでも改めてサカキ支部長は天才なんだということを改めて自覚する。俺が感心している間もサカキ支部長とラケル博士の会話は続いていた。


 「これはまるで、あのアラガミ自身が意思を持って行動しているとしか思えない」


 サカキ支部長の言った言葉にラケル博士は押し黙ってしまう。


 「……サカキ支部長。あのアラガミにある程度の知能があることはこの前俺に言ったじゃないですか。今更そんな事言わなくても……」


 「確かに君にそう言ったね。けれど、あの零號神機兵の行動はある程度の知識で行動できる範囲をどう考えても超えているんだ」


 「……?」


 何がどう違うのか分からずに思わず首を傾げてしまう。俺以外の支部長室にいる面々もその大半は俺と同じようにサカキ支部長の言葉に疑問を抱いているようだった。
 首を傾げていないのは、いかにも頭が良さそうなシックザールさんとラケル博士だけである。


 「確かに、今まである程度の知能を有するアラガミは居たよ。自分よりも下位の固体を従えて群れを成していたアラガミ、ディアウス・ピターやマルドゥークなんてのがいい例だろう。でもそれは捕食し、進化の過程で取り込んだ性質の延長線にすぎないんだ。今話題にしている零號神機兵は元々神機兵、捕食なんてまずしないししたとしても自分をわざと傷つけさせ、ジュリウス君の性質を取り込むなんてピンポイントで性質を他の生物から取り込んだりはできないんだよ」


 ……その通りだ。
 その辺のアラガミを捕食してそんな性質を取り込めるわけがない。そもそも、攻撃をわざと受けるという行動自体がアラガミに備わっているわけがない。


 「ちょっと待ってください。ジュリウス隊長の性質を取り込んだとはどういうことでしょうか?」


 「簡単なことだよシエル君。終末捕食を起こすアラガミであるノヴァは、その名の通り世界の全てを捕食しなくてはならない。しかし、通常のアラガミにはそれぞれ自身が持っている偏食因子によってその捕食傾向が決められているんだ。町に残っている建物などはその食べ残しだね。ノヴァはその食べ残しも纏めて食べきるんだ。だったら、全ての偏食因子に適応することができるというジュリウス君を特異点とする性質を取り込みに行くのも自然なことだとは思わないかな?」


 「え?じゃあ、零號神機兵ってもしかして……」


 「ナナ君も気がついたようだね。……そう、あの零號神機兵はジュリウス君のことを特異点になる存在だと知っていたんだ。これはどう考えても『ある程度の知識』の範疇を超えている」



 サカキ支部長の口から出てくる言葉に俺を含めた理解していませんでした組はしきりに首を縦に振っていた。


 「………あの零號神機兵には元々私の中に居た荒ぶる神々の意思が取り付いているのだと思います。アラガミ装甲と同じ原理でできている金庫の中に入っていたノヴァの残滓を捕食したことと私の中に居た荒ぶる神々の意思を感じれなくなった時期からして、これが最も可能性のある予想です」


 俺は今日この部屋で何度驚けばいいんだ……。もう精神が疲弊してリアクションをとることすらできなくなってきたわ。
 ロミオ先輩は元気よく「な、なんだってー!」と言っているが。


 「なるほどそういうことか。それならば零號神機兵の行動全てに説明がつく。ノヴァの残滓を食べることができたのは、アラガミ装甲の性質を意思で無視したため、ジュリウス君のことを知っていたのはそもそも彼を特異点にしようとしていた元凶であったからか……」


 「ついでに言うと、零號神機兵が仁慈に並々ならぬ執着を見せているのもそうでしょう。色々仕掛けていたのにそれを全て真っ当じゃない方法で潰されましたから」


 「逆恨みじゃないですかーやだー」


 自分で拾って手駒にしようとしていたくせに……。10割自業自得じゃねーか。


 「ちょっと待って、話を整理すると……つまり俺たちがこれから相手するのは、三年前に戦ったアリウスと同じような性質を持って、ラケル博士並みの知識を兼ね備えた奴ってことだろ?………結構ピンチじゃね?どう思うよ、ソーマ」


 「言った通りだ」


 「つまり?」


 「大ピンチ」


 「oh……」


 あ、昔ノヴァと交戦経験のある藤木さんとシックザールさんが軽く悟りの表情を浮かべ始めた。
 確か昔相手したノヴァは色々な偏食因子を取り込んで神機の攻撃がかなり効きづらくなったんだっけ。……打つ手なくね?


 「サカキのおっさん、どうする?また超弩級アラガミのコアをぶち込もうにも、そんな存在はアリウスをぶっ倒した後全て倒しちまったぞ」


 「うーむ……あの時は残して置いたら第二第三のノヴァとなる可能性があったから根こそぎ刈り倒してもらったが………まさかその行動が裏目に出るとは……」


 過去に交戦した経験のある人とその状況に居合わせたシックザールさん、藤木さん、サカキ支部長が考えを巡らせるが前回使った手はどうやらもう使えないようだ。
 ……いや、待てよ。結局ノヴァもオラクル細胞、偏食因子の塊だろ?


 俺はみんなが頭を抱える中、ロミオ先輩に近付いて肩を軽くPON☆と叩く。


 「ロミオ先輩。貴方がナンバーワンだ」


 「え?何の話?」


 急に俺がそんな事を言うので困惑をあらわにするロミオ先輩。
 本人は困惑しているもののサカキ支部長、ラケル博士、シックザールさんは気付いたようで先程のようなくらい表情ではなく、驚きを含みつつも希望を見出した顔を見せていた。


 「ノヴァも結局はオラクル細胞だ。ロミオ君の血の力で活動停止、もしくはそれに近い状態にできるかもしれない」


 「……その手がありましたか。どうせ王の贄になるためだけの存在と思っていたのですが……まさかこんなところで希望に転じるとは……」


 「え?マジで?こういうのって普通、ジュリウスとか仁慈とか明らかに主人公しているやつらの役目じゃないの?ていうかやっぱり俺死亡フラグ立ってたのかよ……」


 ロミオ先輩怒涛のツッコミ。
 急に自分が超超重要な役割についてしまったためもうわけが分からなくなっているご様子。


 「そもそも、俺の血の力だけで抑え込めるのか?向こうは世界を喰い尽すほど強力なアラガミなんだろ?」


 その疑問はもっともである。ロミオ先輩の血の力は桁違いに強力だ。それはもう人類の想いが結晶化したのではと思うくらいに、対アラガミに特化されている。けれど、規模が違う。ロミオ先輩の最大レンジは4体だがあくまで普通のアラガミに対してのレンジであり、これから相手するのはいわば世界と同等の位をもつ化け物である。効くか聞かないかでいったら正直不安が残る。


 「それについては多分問題ない。シエル君の血の力『直覚』によって最も有効な場所を測り、ナナ君の『誘引』でその場所まで誘導、ロミオ君の血の力を仁慈君の『喚起』で限界まで引き出しギル君の『鼓吹』でそれをさらに強化、最後にジュリウス君の『統制』でブーストをかけてぶつければいけるかもしれない」



 「おぉーなんかすごいねー。でも……結局どういうこと?」


 「要するに、『パワーをロミオに!いいですとも!』ってこと」


 「なるほどー。まさに最終決戦!って感じだね」


 「みんなそれで納得していいのかよ!」



 ロミオ先輩がなんか騒いでいるが現状これしか取れる手段がないのである。致し方なし。


 「ロミオ、これくらいしか方法がないんだ。男ならドンと構えて任せろと言っておけ」


 「他人事だと思いやがって……」


 「心配するなロミオ。俺たちがそばに居る」


 「時々奇行に走る人の言葉はちょっと……」


 口ではそんな事言いつつも雰囲気は何時も通りになってきているので一応落ち着いてきたんだろうと一安心する。



 「……さて、方針は決まった。ぶっつけ本番な上に分の悪すぎる賭けだが、我々に残された手段はこれしかない。……零號神機兵は今ノヴァの完成系となるためのいわゆる蛹の状態になっている。これが孵化するのは、過去の経験からして三日だ。この三日間のうちに取れる手段は全て打つ。みんな協力してくれるね?」


 サカキ支部長の言葉に皆は先程までのふざけた雰囲気を霧散させて頷く。





 最終決戦は三日後だ。そのときにどちらが勝つかは、神ですら知らない。