神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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よっし!師匠来た!これで勝つる!
ゴホン、失礼しました。ついついFGOで念願の☆5を手に入れたのでつい。


そんな事は置いといて、四十七話どうぞ。


第四十七話

 「ちぃ……!堅い!」

 

 

 唐突に現れたストーカーアラガミ擬き(多分ラケル博士が関与している)を倒すために、ジュリウス隊長の号令と共にそのアラガミ擬きの下へ別々の場所から一斉に攻撃する。

 

 

 しかし、俺を含めたブラッドメンバーの攻撃は当たってはいるものの、異常に堅い表面に弾かれてしまった。アラガミ擬きの様子を見る限りでもあまり効いているようには見えなかった。まさかジュリウス隊長の攻撃すら弾くとは……最近アラガミはサンドバックかそれに類似するストレス発散器具かと思っていたが、随分骨のあるやつが居たもんだ。いや、ラケル博士が関与した疑いがある時点でこのくらいは想定しておくべきだったな。

 

 

 「なんか神機の効きがわるいな……」

 

 

 「速さが足りてないんじゃないの?」

 

 

 「俺が遅い!?俺がslowly!?冗談じゃねぇ!!野朗オブクラッシャー!」

 

 

 「混ざってる混ざってる」

 

 

 ロミオ先輩の言葉に過剰反応を示したギルさんが、唯でさえ壊れているキャラをさらに崩して敵に突貫しようとするので俺とロミオ先輩で何とか押さえつける。後ギルさん、それ本当は「野朗ぶっ殺してやるぁぁぁ!」って言ってるんですからね。

 

 

 「っと……!本当に効きが悪いな。……実にすばらしい。切り応えがあって最高だ」

 

 

 「おい、誰かジュリウス隊長(コイツ)も止めろ」

 

 

 獰猛な笑みを浮かべて再びアラガミ擬きに切りかかろうとしているジュリウス隊長にナナとシエルをストッパーとして送り出す。ナナがジュリウス隊長の目の前にハンマーを振り下ろしたことで彼は止まったようだ。冷や汗をダラダラと流しているが、今回はちょっと擁護できないのでスルー。まったくブラッドはキチガイの巣窟だぜぇ……。

 

 

 暴走した男性陣の鎮圧を達成したので、改めて現在の状況を整理することにする。

 相手であるあのアラガミ擬きの皮膚?装甲?どっちだか分からないが、あれは今まで相手して来たアラガミの中でも群を抜いて堅い。クアトリガもなかなかに堅かったがそれ以上だ。ブラッドメンバーで一斉に攻撃を行ったわけだが、傷ひとつ付いてない。まだまだ余裕綽々ってかんじだ。

 今現在も、こうして考え事をしている俺に対して熱烈なアプローチを仕掛けてくるくらいだしな。他の人達を完全に無視して。

 

 

 「GUUUUUUUAAAA!!ジン……ジィィイイイイ!!」

 

 

 「えぇい!しつこいな!お前みたいな化け物に迫られても嬉しくないわ!人型美少女になって出直して来い!!」

 

 

 俺の名前を呼びながら、胸部の装甲を開けてヴァジュラよろしく電撃を放とうとしているアラガミ擬きにそう叫ぶ。

 こちらに発射された電撃は自分に当たる分だけしっかりと切り払いつつ、必要ないかもしれないが俺に注意を向けさせるためにいくつかの電撃はしっかり返しておく。別に電撃を返したからというわけではないが、自分の周囲にいるブラッドメンバーを華麗に無視し、自分の右前足に巨大な剣を出現させて振り上げた。よくよく見てみるとその剣はバスターのチャージクラッシュ時の形態にも似ている。

 神機の技術が思いっきり流用してるじゃないですかー。

 

 

 帰ったらラケル博士に洗いざらい吐いてもらおう。ブラッドのみんなで押しかければさすがに話してくれるだろう。

 ん?お前ラケル博士のこと苦手に思ってなかったかって?知らんな。

 

 

 しかし、それは悪手だアラガミ擬き。

 四つん這いで移動しているお前が前足を上げて作り出した剣を振り上げるということは必然的に動けなくなるということだ。そして、お前の周りには散々無視されて若干青筋が浮かんでいるブラッドが居る。

 結局何が言いたいのかというと、それは致命的な隙となる。完全に剣を振り上げたタイミングを狙い、無視されていたブラッドメンバーは関節などの防御が薄いと思われる部分に自らの神機を突き立てる。

 

 

 意識外からの攻撃に加え自身の身体を動かすために使う関節を攻撃された所為か、アラガミ擬きはその巨体を支えていた足を折り無様に地面に倒れこんだ。

 

 

 「どんな感じだった?」

 

 

 「衝撃は届いたんだけどね……」

 

 

 「ダメージが入っているかといわれれば少々首を傾げますね」

 

 

 ちょうど俺の近くに下がってきたシエルとナナに話を聞いてみると、どうやら結果はあまりよろしいものではなかったらしい。

 アラガミ擬きのほうも既に立ち上がろうと、肢体に力を入れているようだった。

 

 

 くっそ……何でストーカーアラガミ擬きとか言う意味不明で気持ちの悪いやつに限ってこんなにしぶといんだ……泣けるぜ。

 

 

 「……なんか違和感を感じるんだよな。まるでロミオの血の力を食らったときみたいに神機の機能が制限されているような感覚が、あいつに神機を突き立てた瞬間に感じるんだよな」

 

 

 「俺はここ最近のギルさんの態度に違和感を感じまくっていますけど……」

 

 

 というか、ギルさん。ロミオ先輩から血の力使われるくらいのことをやらかしたんですか。

 

 

 「仁慈そのことは言っても無駄だぞ。本人はまるで気になってないから。まぁ、そのことは置いといて……確かにギルの言うことも分かるんだよなぁ。なんていうか、何時もなら神機から伝わってくる手ごたえがまったく感じられないんだよ」

 

 

 これはギルさんにワンテンポ遅れて下がってきたロミオ先輩の言葉。

 うーん……神機から手ごたえが感じられないか……。その感覚が誰か一人だけだったら神機の不備と言えるが、みんな思うところがあるらしい。ロミオ先輩の言葉を聞いた瞬間にどこか腑に落ちたような表情を浮かべた。

 

 

 何も解決していないのにどこかすっきりした気持ちで残りのジュリウス隊長を探すが、近くには彼の姿はなかった。もしやと思いアラガミ擬きのほうに視線を向けると、あの人は未だに一人で切りあっていた。わざわざ無視して俺に向かってこようとするアラガミ擬きの進路上に割り込んで。良くやるわ。

 

 

 俺も囮になるよりも直接殴りに行きたいので、アラガミ擬きに襲い掛かろうと下半身に力を込めるが、絶妙なタイミングでこちらを向いたジュリウス隊長に視線で窘められた。

 

 

 『この面白いの、俺にやらせろ』

 

 

 視線でそう語りかけてくるジュリウス隊長。

 俺がこの頼みに従う義理はまったくといっていいほどないのだが、無視して突っ込んだ暁には俺が初めにこま切れにされそうだったので直接手を出すことはやめることにする。代わりに、神機を銃形態にして顔面に弾をぶち込んでみた。全然効いてないけど。

 

 

 

 「GUAAAAA!ジンジィィイイイイ!」

 

 

 「オイオイつれないな……今は仁慈のことでなく俺の相手だけをしていろ……ッ!」

 

 

 いい加減しつこいとアラガミ擬きのほうも感じたのか、初めて俺から視線を逸らしジュリウス隊長に継ぎ接ぎだらけの不細工な面を向ける。

 そしてそれと同時に自分の前足を今度は両方とも上げて、一瞬だけ後ろ足だけで立ったかと思うと、自分の身体が前に倒れることを利用したのしかかりをしようとした。

 

 

 だが、ギルさんではないが速さが圧倒的に足りない。巨体を持ち上げたとき既にアラガミ擬きのやることを予測したジュリウス隊長はとっくに攻撃範囲外に離脱している。

 ズゥン……!と重量感漂う音と砂埃が周囲に響き渡るも、視界が悪くなるということ以外まったくもって効果を成していないという事実がどこか虚しさを感じさせた。

 

 

 当然その隙をジュリウス隊長が見逃すわけもなく、後退していた身体を半回転させアラガミ擬きに人間とは思えないスピードで接近を試みる。

 

 

 「AAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 

 「!?……チッ!」

 

 

 しかし、どうやらのしかかりのほうはジュリウス隊長をおびき寄せる餌であったらしくある程度まで接近していたジュリウス隊長にアラガミ擬きが練成した大剣が横薙ぎで襲い掛かる。

 

 

 彼はその攻撃を棒高跳びの背面とびの要領で回避すると、空中で足を腹のほうへ抱え込むようにして回転、地面に着地する。その後、大剣を振り切った状態のアラガミ擬きの顔面に一太刀お見舞いしていた。

 

 

 

 「フッ」

 

 

 「うわ、めっちゃドヤってる……」

 

 

 顔面に攻撃を入れた後、寸分のブレもなく地面に着地したジュリウス隊長はわざわざ背後に居る俺のほうを見てドヤ顔をかましてきた。ぶん殴りたい。

 このまま俺にドヤ顔を見せ付ける気か?と危惧したタイミングでジュリウス隊長の登場が曇りを見せる。

 何事だと思って彼が向けている視線の先を辿って見ると、継ぎ接ぎだらけの顔面に新しい切り傷が刻まれていた。ざっくりと深くまで。

 

 

 貫通力に優れたスナイパーで放った俺のバレッドも難なく弾き返すくらいの強度があるにも関わらず、急に目に見えて分かるほどの深い傷がついたのか、そのことについて考えているのか。あの表情は。

 

 

 そのことに気付くと確かにあの傷つき方は少々違和感を覚える。どうせやることもないし、このことに対して考察でもしようかと破損した顔面を観察しようとしたところで、

 

 

 「ん?」

 

 

 深い切り傷が入ったアラガミ擬きの顔面の内側から急に激しい光があふれ出した。何?自爆でもするのか?

 予想していなかった事態にさすがのジュリウス隊長も後退する事にしたらしく、アラガミ擬きに向かって背を向けて俺たちが居るところまで下がってきた。

 

 

 「ジュリウス……お前あの化け物に何したんだよ……」

 

 

 「顔面を神機で切り裂いただけだ。唯……おそらくそれは誘われたものだったのだろう。俺が切りつけた顔面は、仁慈の弾丸を弾いたとは思えないくらいに柔いものだったし、アレは俺が傷を付けた瞬間に嗤っていた」

 

 

 「うわぁ……あの顔面で嗤うとかないわぁ……。まぁ、今はいいか。それで切った結果がアレですか」

 

 

 顔の位置をジュリウス隊長からアラガミ擬きに戻すと、先程まで顔からあふれていた激しい光はアラガミ擬きの全身にまとわりつくようになっていた。しかもシルエットが若干変化している。まるで、ポケモ〇の進化のようである。Bボタン連打すればキャンセルとかされたりしないかな。

 

 

 『――――――――ッ!?仁慈君!今すぐその場を離れるんだ!』

 

 

 「え?サカキ支部長?」

 

 

 目の前の光景がどうあがいてもポケモ〇の進化シーンにしか見えなくなった俺は一週回ってどうなるのか気になってしまい、暢気に元アラガミ擬きを眺めていたのだが、その時部隊全体に知らせるための回線に普段の様子からは想像もつかないくらいに焦りを含んだサカキ支部長の声が乗せられてきた。

 この段階でただならぬ事態であると考えた俺たちは、進化を始めたアラガミ擬きからすぐさま距離をとり、そのまま離脱した。

 タイミングから考えるとサカキ支部長はあの現象に関して何か知っているようだし。

 

 

 「サカキ支部長あれはなんですか」

 

 

 『今は説明する時間がない。詳しいことはこっちに戻って来た時にするよ。唯一つ確実に言えることは、君のストーカーは我々が思っていたよりもさらに性質の悪いものだったということかな』

 

 

 「思ってる以上なのか……」

 

 

 唯でさえ、あの不細工な顔面で四速歩行で人じゃない化け物ストーカーというまったく嬉しくない属性盛りだくさんなのに……。

 

 

 『いや、そうではなくてね。あれは最悪の場合、全人類を滅ぼすことのできるものになることができるのさ』

 

 

 「それは思っている以上ですわ」

 

 

 俺の精神の問題ではなく、普通にとんでもないものだった。規模も人類と壮大なスケールである。これにはさすがのブラッドメンバーも驚愕の表情を浮かべていた。よかった。ここで笑ってたら本当にどうしようと思った。

 

 

 『とにかく、先程も言った通り早く極東支部に戻ってきて欲しい。一刻も早くこの状況に対する対応策を練らなければならないからね。帰還のためのヘリは既に飛ばしてあるし、合流ポイントも送ってあるから』

 

 

 「了解です………ラケル博士はどうですか?今そこに居ます?」

 

 

 『あぁ、彼女もなにやら決意を固めたようでね。君たちの帰還を待っている』

 

 

 「準備万端ですね。分かりました、全速力で帰還します」

 

 

 通信が切れた後に、送られてきたという合流ポイントを確認。それに向かってさらにペースを速める。

 

 

 「仁慈……今の話……なに?どうしてラケル先生の名前が出てくるの?」

 

 

 俺とサカキ支部長の会話内容を聞いていたナナがそう尋ねる。ナナはラケル博士が作った施設、マグノリア・コンパスの出身であり親代わりの彼女の名前があの会話の中で出てきたことに戸惑っているようだ。

 他の人の様子を伺っていると、ギルさん以外のメンバーはみんなナナと同じような疑問を抱いているようだ。そういえばみんな施設の出身だったな。

 

 

 「………とりあえず、極東支部に戻ってからな」

 

 

 

 現状はなんともいえないので、無難な言葉でその場をやり過ごし俺たちはさらにペースを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

              ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「サカキ支部長。ブラッド隊全メンバー只今帰還いたしました」

 

 

 ヘリの操縦者さんに無理言って限界ギリギリの速度で送ってもらったため、ブラッドメンバー全員はサカキ支部長との通信を切った三十分後には極東支部へと帰還することができた。

 

 

 「待っていたよ。さぁ、入ってくれたまえ」

 

 

 サカキ支部長の許可が下りたと同時に扉を開ける。

 部屋の中には、サカキ支部長に極東の第一部隊隊長である藤木さんと俺に意味深な言葉を残したシックザールさん。そして最後に今回話し合うことについて、最も重要な情報を握っていると思われるラケル博士が居た。

 

 

 「さて、みんな色々と思うことがあると思うがまずは君たちが相手していたもののことを話そうと思う。ラケル博士、よろしく頼むよ」

 

 

 「えぇ。……貴方達ブラッドが対峙したアレは簡単に言ってしまえば神機兵のプロトタイプです」

 

 

 プロトタイプ。つまりは俺たちが相手していたあれはあの鉄屑の試作品のようなものだったということである。

 何でもあのプロトタイプはどのくらいならアラガミに対抗できるのかというコンセプトで作られたため強さの面で言えば今の神機兵をはるかに上回る性能らしい。

 上回りすぎてると思うんだけど。それに、あいつの動きは今必死に作ろうとしている無人神機兵もびっくりな身のこなしだったんだけど。

 そのことが気になったので、ラケル博士に直接尋ねてみると彼女は少し考えるような仕草をした後に口を開いた。

 

 

 「……それにはまず、私の話を聞いて頂かないといけません」

 

 

 そう前置きしてから語られた内容は信じられないことの連続であった。怪我を治すためにP73因子を取りいれていたこと、それにより荒ぶる神々の意思とか言うものの声が聞こえるようになったこと、それを利用してプロトタイプの神機兵……零號神機兵を自らの手駒としたこと、最終的に終末捕食を起こそうとしたことなどなど、そんなところまで言っていいの?とこっちが思ってしまうほどのネタバレのオンパレードだった。

 ついでにブラッドも終末捕食の根幹を成すジュリウス隊長を特異点というものにするための舞台装置にするためだったらしい。これには俺以外のブラッドメンバーもショックを隠しきれなかったようだ。

 

 

 「考えがえぐいですね」

 

 

 「あら、あまりショックを受けていないのね」

 

 

 「第一印象から知ってました」

 

 

 「解せないわ……」

 

 

 だって、一目見たときからそんな事を思ったんだもの。人間構えていれば割りとダメージ少ないからね。

 

 

 「……だったら貴方が度肝を抜くような、とっておきの情報を言ってあげる」

 

 

 「え゛?」

 

 

 やべ、余計な事言ったかも。

 

 

 「貴方、この世界のこと異世界だと思っているでしょう?」

 

 

 「……は?」

 

 

 ラケル博士の口から何気なく出てきた言葉に俺は驚きを隠せないで居た。

 何でこの人がそのことを知っている?

 

 

 今の彼女の発言で、沈んでいたブラッドメンバーが俺の方に視線を向けてくるが正直その辺に気を配っている余裕がない。

 

 

 「考えて見なさい。ジュリウスやギルが言っているネタは何処から仕入れてくるのかを、いったい今は何年なのかを」

 

 

 「……まさか」

 

 

 ラケル博士に言われて初めて年代のことを考慮して考えてみる。するとあるひとつの答えにたどり着くのだ。

 この世界は、俺が生きていた世界の未来の姿という結論に。

 

 

 

 「それだけじゃない。貴方、自分が別の世界から来たと思っていた割りには随分と戦うことに慣れるのが早かったわね。まるで、それが当たり前だといわんばかりに」

 

 

 確かに。

 いくら訓練で戦い方を身に着けたからといって、普通の生活を送っていた俺がいきなり命のやり取りを行えるのだろうか?

 

 

 「アラガミを素手で殴り飛ばすこともそう。神機使いとはいえ、そのことが本当にできると思う?人間の身で」

 

 

 考え出せば止まらない。違和感の数々。

 困惑の表情を浮かべているであろう俺の顔を見てラケル博士は真剣な表情をしていった。

 

 

 「教えてあげるわ、仁慈。貴方のことを貴方が知らない事まで、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、仁慈君の秘密が明らかに!……なるといいね。

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