神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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前回同様投稿が微妙に遅れてしまって申し訳ありません。
この時期はレポート課題の提出が色々な科目で重なってしまっているのであまり時間がないのです。

なので、次回の投稿も遅れると思いますがご了承ください。


それでは第四十六話どうぞ。


第四十六話










 「仁慈。俺はな、いい加減一人でするのも飽き飽きしてきたところだったんだ。どうだ?久しぶりに俺と一緒にやらないか?」


 「いいですけど。……任務の話ですよね?」


 「当たり前だろ。他になにがあるって言うんだ?」


 「別に何でもありませんよ」


 誘い方に違和感を感じたので念のため確認しただけです、という考えは心の内にとどめておき唐突に危ない感じの誘いをしてきたジュリウス隊長に言葉を返した。


 ラケル博士が風になって支部長室から出て行き、その後も帰ってくる様子がまったくなかったのでサカキ支部長に一言告げてから自室に戻り、そのまま寝た。多分ラケル博士も用事があったら何かしらの手段で俺のことを呼び出すだろうと考えていたからである。

 
 そんな感じで一晩空けて、エントランスに来たら急にジュリウス隊長が一緒に任務に行こうと言い出し、冒頭につながることとなる。誘い方が某ホモ疑惑がかけられているデュエリストのようであったことについては深く突っ込まないことにして。


 「では任務を発注してくる。仁慈は適当に準備でもして待っていてくれ」


 クルリと身体を回転させ、階段の下にあるカウンターへと向かっていくジュリウス隊長。その姿を一瞬だけ視界に納めると俺は俺で、すぐさま背後にあったターミナルへと突っ走った。そして、自分の腕輪をかざして手早くログインを済ませると、預けてあるアイテム欄からありったけのスタングレネードと回復錠を引き出す。

 
 あのジュリウス隊長が俺を誘って行う任務が簡単であるはずがない。きっと頭がおかしい内容に決まっている。本来なら支部全体で取り組まなければならない任務も平気な顔で受注してくるからな。
 なら断ればいいじゃないかって?あの人意外に根に持つタイプだから放置しすぎるとかなり面倒なんだよ。
 カタカタと必死にターミナルの機械を操作していると、俺が何故そのようなことをしているのかと気になったのであろうナナがひょっこりと横から顔をのぞかせた。ちょっと邪魔である。


 「ナナ邪魔だからちょっとどいて。割かし命に関わる事態なんだから」


 「なになに?この後何かするの?」


 「ジュリウス隊長と任務」


 「うわぁお」


 ササッと素早く身を引っ込めるナナ。さすがだな。ジュリウス隊長との任務に行くに当たって前準備がいかに大切なものかをよく理解しているからこその行動だ。
 ナナの理解に賞賛を送りつつ、普段もったいないからという理由で絶対に持ち歩くことがないホールドトラップも引き出しておく。


 「仁慈ー。私も一緒に行っていいと思う?」


 引き出そうとするものが間違ってないか、見落としなどはないかを確認しているとき未だに俺の後ろを陣取っていたらしいナナにそう唐突に尋ねられる。正直、任務を受けに行っているのはジュリウス隊長なので俺の独断では決められないかなぁ。


 「じゃあ聞いてくるね!」


 思ったことを素直に彼女に告げてみればナナはだったら本人に突撃じゃー!といいながら階段を駆け下りていった。そんなに距離はないはずだから、歩いてでもよかったと思うんだが……。
 張り切ってジュリウス隊長のほうへ向かっていったナナの背中を見送ると、すぐにアイテムの確認作業に戻り、引取りのもらしがないことを確認してターミナルの電源を落とした。


 「ジュリウス隊長との任務の準備ですか?」


 「うわっ!?」


 その直後、シエルが下から俺の顔を覗き込みながら話しかけてきた。……驚きのあまり三メートルくらい後ろに飛び退いたわ。


 「ちょっとシエルさん?サカキ支部長みたいにいきなり話しかけてくるのやめてね?もしかしたらあの人みたいに根性というか人間性というか、何かがひん曲がっちゃうよ?」


 『ん?今どこかでさりげなくディスられたような……?』


 どこかでサカキ支部長の呟きが聞こえてきたような気もするが気のせいということにしてシエルに注意する。人に話しかけるときにはしっかりと相手の正面から話しかけましょうね。


 「さすがにそれだけで人間性が歪んだりはしないと思いますが……分かりました」

 
 うん。素直でよろしい。
 ………あれ?そういえば俺はシエルにこれからジュリウス隊長と一緒の任務に行くなんて言ってないよな?ナナとの会話を聞いていたんだったら知っているのは納得できるが、あの時、会話が聞こえるくらいの距離には人の気配なかったぞ。


 「フフ……そんなの見れば分かりますよ。眉を3㎜吊り上げ、眉間にしわを寄せて真剣な表情でポーチを見ているときは、大体ジュリウス隊長と任務に出るときだけです」


 「お、おう」


 し、シエルは物知りだなー。
 聞かなければよかったと、若干後悔しつつ彼女の返答に何とか反応を返す。この子、時々言っていることが怖いんだよね。


 「その任務、私も参加して大丈夫でしょうか?」


 「下に居るジュリウス隊長に聞いてください」


 「わかりました」


 どうしたみんな。今日は何時も以上に働こうとするじゃないか。数分前に見送ったナナの背中同様にシエルも見送り、俺はとうとう暇になった。ジュリウス隊長がまだ登ってこないのはおそらく俺が送り込んだ女性陣の相手をしているからだろう。なんとなくジュリウス隊長には悪いことをした気がする。


 「……どうした仁慈。何処となく背中に哀愁が漂っているぞ?」


 「あ、ギルさん」


 ジュリウス隊長に謎の罪悪感を抱いていると、今度は我らがブラッド隊の元頼れる兄貴兼常識人、現在ではスピード狂いのギルさんが話しかけてきた。珍しいな。


 「どうしたんですか、ギルさん」


 「俺も任務に参加するぜ」


 聞いていたのかこの人。
 

 「多分参加してもいいんじゃないんですかね。ジュリウス隊長も喜ぶと思いますよ」

 
 こんだけ人数が居ればあの人も寂しくないだろ。
 さりげなくジュリウス隊長が寂しがりやということ前提で話を進めていたら、階段の下からナナとシエルを伴ったジュリウス隊長が上がってきた。彼女たちの表情を伺うにどうやら断られたりはしなかったようである。


 「なんだ、ギルも行くのか?」


 「あぁ」


 「割と難易度の高い任務を受注したと思ったが、このままだとピクニックになりそうだな」 


 ジュリウス隊長めっちゃ嬉しそうですね。普段通りに振舞おうとしているみたいだが、唇の端っこが微妙につりあがっている。本当にピクニック好きだよねジュリウス隊長。なんか特別な思い出でもあるんだろうか……。

 
 ま、ともあれ人数も決まったことだしジュリウス隊長が受けた任務に向かいますか。



 「あれ?みんなどうしたの?」


 「あ、ロミオ先輩。これからみんなで任務に――――いや、どうせ行くでしょう。ロミオ先輩、準備してください。任務に行きますよ」



 「俺に選択権はないんですか!?」


 ロミオ先輩が何か騒いでいるがそこは無視。どうせこの人も任務に出かけるに決まってる。ジュリウス隊長と同じようにおいて行かれるのはすごい嫌がるタイプの人だからね。

 
 とりあえず、騒いでいるロミオ先輩の首根っこを引っ張ってブラッドは久しぶりに全員そろって任務に出るのであった。







             ―――――――――――――――――――――――――




 ジュリウス隊長が受けてきた任務は俺とナナが初めての実地訓練を行った場所であった。正直、アラガミにそこら辺を食い散らかされているのが当たり前だと思われている現代の中ではすごくきれいな場所だと俺は思っている。
 実はシエルとナナが来たあたりからピクニックする気満々なんじゃないか?
 そんな考えをよぎってしまい思わず楽しそうに前を歩くジュリウス隊長にジトーっとした目を向けてしまった。


 「さて、今回の任務で狩るのはハガンコンゴウ4体……任務の名前はピクニック2だ」


 「ピルグリム2でしょ」


 やっぱり初めからピクニック行く気だったんじゃないですかーやだー。
 任務の名称すらピクニックに変換するくらいになっているとは……。ここまで来るともはや病気だろ。ピクニックジャンキーだよピクニックジャンキー。


 「ピルグリムかぁ……数の暴力、その真髄を見せられた任務だったなぁ」


 そう呟いて視線を空に向けるのは俺が引っ張ってきたロミオ先輩である。彼の気持ちはよくわかる。
 神機使いになりたての頃、ジュリウス隊長監督の下で数多くのアラガミをいっぺんに相手したこともあったからな。まぁ、俺はそのうち物量も圧倒的な個の力で食い破ればいいじゃないという結論を下したけど。


 「しかしなんということでしょう。今のロミオは凶悪な血の力に目覚めておりソレを使えばアラガミが悲劇的ビフォーアフターを遂げることに……」


 「やめろぉ!」


 自重を大気圏に届くくらいの彼方へ投げ捨てたギルさんがロミオ先輩を弄り、彼は彼で律儀にそれに反応する。
 そんな精神年齢が低い男性二人をよそに女性陣と俺、ジュリウス隊長は既にこちらに寄ってきていたハガンコンゴウの相手をしていた。


 あの二人がぐだぐだ話しているから戦ってないと思った?残念、戦いながらの雑談なんて極東人にとってはデフォスキルですよ。


 「ひゃっはー!ハガンは虐殺だー」


 「GUBBBBBBB!?」


 いつぞやの悲劇再び。
 哀れ、ハガンコンゴウは唯でさえ脆い顔面で凶悪な散弾を全て受け止めることなり、変な叫びを上げて地面に倒れ付した。ショッギョ・ムッジョ。
 自分の仲間がやられたからか、自分の胸をドラミングして怒りを表し始めたハガンコンゴウの顔面にヴァリアントサイズを突き刺した。ビクビク痙攣を起こし始めたハガンコンゴウから視線を外して周りを見てみれば、残りの三人も同じようなことをしていた。


 「これにて任務完了ですね」


 「いやーハガンコンゴウは強敵でしたねー」


 「白々しすぎる……」


 「ロミオ!その辺の小型アラガミと遊んでないで、持って来たシートを敷け。作ってきたサンドイッチを食べようじゃないか」


 「俺は引きずられてきたんですがねぇ……ていうか、ギル!いつまでも遊んでないでこっち手伝ってくれよ!無駄にでかいんだよ、このシート」


 「また世界を縮めてしまt――――あぁ、今行く」



 崩れ行くハガンコンゴウの死体に囲まれてシートを敷き、持参したサンドイッチをほおばる。
 ジュリウス隊長曰く自作のサンドイッチをパクつきながら、ふと現在の自分たちの状態を振り返ってみた。
 ……今考えてみるととんでもなく奇妙というか、恐怖すら感じる集団と化している気がする。


 「ジュリウスにこんな特技があったなんて知らなかったなぁ」


 「他にも掃除や裁縫なども得意だ」


 「ブフッ!……ゲッホ……やめろジュリウス。いきなり笑わすな……ゲホ、危うくお茶噴出すところだったぜ」



 ―――――――――――――――――ガシャンガシャン



 「もうみんな!ジュリウスのサンドイッチだけじゃなくて私の特性レーションも食べてよ!味もちゃんと改良したんだから」



 ――――――――――――ガシャンガシャン



 「青紫色で、腐臭を放つ物体なんて食べれるわけないだろうが……何時ものおでんパンはどうしたんだよ」



 ――――――――――――ガシャンガシャン



 「ロミオ、さっきからゲームの音がうるさいですよ。ガシャンガシャンって」


 ――――――ガシャンガシャン



 「ゲームの音でこんな重そうな音が出るわけないだろ。そもそも任務に持ってくるなんていうこと、俺でもしないわ」


 ――――ガシャン


 「音が止まった……?」


 「………あー、なんか嫌な予感がする。私の中のおでんパン(ゴースト)がそう叫んでいる気がする」


 「ナナ。多分正解だ」


 俺がそう言った直後―――――――



  グォン!!


 
 ――――――巨大な何かが空を切り、俺たちの頭上に振り下ろされていることを空気の振動から察知した。


 
 俺たちはすぐ隣にあった神機を手にとり、その場から発射されたかのような勢いでそれぞれ散っていく。するとその数秒後には俺たちが先程まで居たシートに巨大な大剣のようなものが振り下ろされていた。
 そのときに発生した空気圧にバランスを崩しそうになるも、何とか体勢を立て直し地面を抉って勢いを殺し、無事に着地を果たす。
 大剣の出所を確認するために、根元を探して視線をずらしていくと三メートル……いや、その倍くらいはある距離に大剣を振り下ろした状態で固まっている顔が継ぎ接ぎのデミウルゴスみたいなアラガミ?の姿が。


 「何だアレ?アラガミか?」


 「デミウルゴスかクアトリガの親戚じゃないか?」


 緩慢な動きで顔を持ち上げこちらを見てくるアラガミ?を警戒しつつ、みんなで意見を交わす。
 そんな中、部隊用の回線が突然開き竹田さんの声が聞こえてきた。


 『ブラッド隊、聞こえますか!?今近くに巨大なアラガミ反応が現れました!直ちに周囲を警戒してください!』


 「すいません。さっき不意打ちくらいまして、現在対峙しています」


 『遅かったですか……え?わ、わかりました』


 大剣を振り下ろして以降まったく動かないアラガミ?に警戒していると、なにやら竹田さんのほうで何かあったらしい。


 『サカキ博士が仁慈さんにおっしゃりたいことがあるらしいので代わりますね』


 『―――やぁ、仁慈君。状況の方はどうだい?』


 「どうでしょう?正直分かりません。というかサカキ支部長。俺たちが今対峙しているアラガミ擬きはなんですか?」


 『そうだね……今まで君の事を監視していた例のアラガミといえば分かるかな?』


 「あれがですか」


 畜生。サリエルのほうがまだよかったじゃねえか。
 何でこんな気持ち悪いのが……と思いつつ、ラケル博士が作ったもしくは調教したアラガミ擬きを睨みつける。
 すると、目が合った。



 「AAAAAAAAAA!!ジ…ン……ジィ!!ジンジィイイイイイイイイ!!!」


 「キャァアアアアシャベッタァァァァアア!!」


 しかもこの気持ち悪いの、俺の名前を呼びやがった。
 

 「……なんだ、仁慈のお客さんだったのか」


 「びっくりしたぜ」


 「ならここは……」


 「ご指名が入った仁慈に任せて、私たちは帰ろうかー」


 「頑張れ仁慈。お前が……ナンバーワンだ!」


 「おい、ちょっと待て」


 俺がアラガミに名前を呼ばれた瞬間、他のブラッドメンバーはこれ幸いと俺に一言ずつ言葉を投げかけ、極東支部に帰ろうとし始めた。


 「この状況に仲間一人置いて帰るとかおかしいでしょ」


 「冗談だ。しかし、気をつけろよ仁慈。あのアラガミ……多分お前のことしか見てない」


 背後に居るアラガミ擬きを指しながらそういうギルさん。ソレはどういう意味かと聞こうとしたその瞬間、何時ものごとく第6感的な何かが発動し、反射的に神機を背後に振るった。
 振るった神機は俺の背中に飛来しようとしていたエネルギー弾を見事に切り裂く。しかし、それに続いて同じようなエネルギー弾が発射されてきたため、神機使いの身体能力をフル活用した超人的ジャンプで残りの攻撃を回避した。


 このとき、近くにギルさんたちがいたにも関わらずエネルギー弾は全て俺のほうに向かってきていた。どうやらギルさんの言っていることはあたっているらしい。


 足のバネを使って着地の衝撃を緩め地面に降り立つと、近くに先程まで俺を置いていこうとしていたブラッドメンバーの姿があった。どうやら俺をおいて帰るのはやめることにしたらしい。


 「さて、ふざけるのもここまでにするとして……みんな、相手は話すことのできるいわば知性を持ったアラガミである。決して油断せず仲間との連携を駆使して戦え。……では、行くぞ!」


 『了解!』


 ジュリウス隊長の掛け声と共に一気にアラガミ擬きに突貫する。
 そんな俺たちをアラガミ擬きは咆哮と共に向かい合うのだった。