神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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投稿が遅れて申し訳ありません。
ちょいとばかし学校で出されたレポートをかたずけておりました。
それでが四十五話、どうぞ。


第四十五話


















 上田二世誕生(未遂)事件からしばらくして、俺はサカキ支部長とラケル博士の最狂マッドコンビに呼び出しを喰らっていた。
 話の内容はこの前俺たちが一気に持ち帰ってきた感応種のコアの解析が終わったので、俺も交えて話がしたいとのこと。ちなみに例のごとく呼び出されたのは俺だけである。ジュリウス隊長とかシエルとかは呼び出されていない。解せぬ。

 
 というか、向かった先でこの前みたいに危険な神機兵擬き談義してるとかだったらかなり嫌だ。あの話が実現したらアラガミ殲滅しても人類が滅ぶかもしれないし。今では周りからキチガイといわれる立派な神機使いとなったが、元々は唯の高校生だからね?現在十五歳でブラッドの中で最年少だからね?さすがに世界を滅ぼしかねない兵器建造の話は荷が重いんだなーこれが。


 ここまで想像した所為か、普段よりも重く感じるようになった身体を何とか動かしつつ呼び出された支部長室へ一歩一歩足を進める。そうしてたどり着いた支部長室の扉。ノックをしようと伸ばした手が自然と引っ込んでしまうのを無理矢理抑えて、コンコンコンと扉を叩く。
 部屋の中から返事が聞こえてきたので、これまた引っ込みそうになる手を押さえつけてドアノブに手をかけ、中に入った。
 視界に移るのは何時もの通り、フェンリルのマークに地球儀そしていつもの胡散臭い表情を貼り付けゲン〇ウポーズでこちらを見ているサカキ支部長である。


 あれ?おかしいな。確かに何時もここに来たとき目にする光景なのだが、今回に限っては俺を呼び出した片割れであるラケル博士が居ない。
 あの人は少々頭があれだが、呼び出しておいてすっぽかすような人ではない。気になった俺は、未だゲンド〇ポーズでこちらを見ているサカキ支部長に尋ねてみた。俺がラケル博士について尋ねるとサカキ支部長はゲ〇ドウポーズをやめて、彼にしては珍しく困惑した表情で口を開いた。


 「そのことについては私もさっぱりわからなくてね。これから君にしようと思っていた話を彼女に話したら急にこの部屋を飛び出して行ってしまったんだ。彼女が乗っている車椅子から風を切る音が聞こえるくらいの速度でね」


 なにそれ超見たい。
 車椅子が風を切る速度で走るという光景も見てみたいが何よりそれにラケル博士が乗っているというのが俺的にすっごい見たい。


 「……ひとまず彼女のことは置いておくとしよう。私が君を呼び出したのは、君たちが偶然倒したという新種のアラガミたちのコアを調べて分かったことについてだよ」


 あー……あの新種フェスティバルのときに確保しておいたコアのことね。
 サカキ支部長がそのようなことを言ったので俺もラケル博士のことはいったん置いておき彼の話に集中することにする。


 「コアを研究した結果、ここ最近に起きていたアラガミの結託は君が倒したアラガミであるマルドゥークが原因であると判明した。実際、君がマルドゥークを倒した翌日にはほぼ全てのアラガミの群れがなくなっていたらしい」


 「あらま。ならこれでアラガミが集団で移動する件は解決ですか?」


 「あぁ。アラガミが集団を作り行動する謎はこれで解けた。けど、これだけならばわざわざ君個人を呼び出したりはしないよ。……実はね、また別の問題が発生してしまったんだ」


 「別の問題ですか……?」


 本当にトラブルに事欠かないところだな極東。
 常に何かしらのトラブルもしくは異常現象に見舞われている気がするぜ……。


 「その問題とはここ最近、正確には一週間ほど前かな。君が任務を受けているときに決まって確認されるアラガミの反応についてなんだ」

 
 「なにそれこわい」


 それってストーカーじゃないですかやだー。
 アラガミにストーカーされるとか誰得なんですかねぇ……。あ、でもサリエルとかなら別にいいk―――――いや、やっぱないな。


 「何やらよくわからないようなことを考えている気配がするけど……これは割と深刻な事態だよ?」


 でしょうね。
 普通に考えれば個人を特定してなおかつ様子見をしているような行動を取っている……つまりはある程度の知能を持ち合わせたアラガミが常に俺の周囲をうろついているということである。
 任務で疲れたときに背後から上田!なんてこともあり得てしまうわけだ。


 「それにこのアラガミのコア反応も頭を悩ませる一要因でね……神機と同じ、人工的に作られたコア反応だったんだ。このことをラケル博士に話したら、何故か一目散に出て行ってしまってね」


 「サカキ支部長。わかってて言ってるでしょ」


 そこまで言われたら俺でも気づくことができるんだ。この極東が誇るキング・オブ・マッドのサカキ支部長が気づかないわけがない。


 神機のコアを利用した神機兵を開発しているのはラケル博士の姉であるレア博士、それとなんか死にそうな研究者。どちらもフライアの関係者である。その二人と同じくフライアの研究者のラケル博士だ。あのどこか抜けてそうな二人から神機兵のデータパクって変態的性能を誇る神機兵を作っていてもおかしくはない。


 正直に言おう。
 このストーカーアラガミ擬き。ぶっちゃけラケル博士が作ったか、手なずけた神機兵だと俺は考えた。
 だってストーカーアラガミ擬きが出現しだした時と、ラケル博士が別の意味で突き抜けた時期が重なっているんだもの。

 
 「さて、どうだろうね?私は科学者だから、確証のないことは断言しないんだ」


 「それは答えているようなものですよ」


 「おっといけない。ともかく、このアラガミが今後君に危害を加える可能性があるということだけ頭に入れておいてくれ。話はこれで終わりだよ」


 「はい。ありがとうございました」


 ある程度の知能を持ったアラガミか……。
 まぁ、アラガミの体を形作っているオラクル細胞一つ一つにどのように進化するかという思考擬きが備わっているんだ。知能を持つアラガミが生まれるくらいは予想がついていたけど……あんまり相手はしたくないよな。





             ―――――――――――――――――――――




 一方、仁慈が見たがっていた風を切る車椅子に乗っているラケルは急いでフライアの中に戻っていた。
 しかし、今向かっているのは彼女の研究室ではなく未だ実用には程遠い、実験段階の神機兵たちが置かれている保管庫である。
 四角いカプセルに覆われている神機兵を素通りし、成人男性の三倍はありそうな壁に近づいて手をかざす。すると壁は左右に割れて一つの通路が現れた。
 ラケルはそれに何の反応も見せず、フライアに来る時と同じくらいの速度で駆け抜ける。車椅子で。


 50mくらい進むと先ほど割れた壁と同じくらいの大きさの扉にたどり着いた。ラケルは扉に近づき、取り付けられていたロックを手早く解除すると扉が開ききる前に中に飛び込んだ。
 

 彼女が飛び込んだ部屋は、家具などはなくただ大きな空間という感じなのだがその部屋の壁には大きな穴があけられていた。
 

 「………大変なことになったわね」


 ラケルは呆然とつぶやく。しかし、それは壁に大きな穴をあけて彼女が“先生”に言われて飼っていたモノが逃げ出した――――ことではない。
 ある世界線ではその逃げたものが脅威となるだろうが、樫原仁慈に感化されたもしくは元々持っていた素質を覚醒させた覚醒ブラッド隊には脅威とはならない。オウガテイルを倒しに行く時と同じくらい気楽に討伐を果たすだろう。


 ならば、彼女は何を見て呆然としているのか。
 それは無残にも食いちぎられた一つの箱であった。この箱は対アラガミ装甲壁と同じ原理で作られているもので、以前彼女が仁慈に“先生的存在”と表現したモノに言われて確保しておいた最終兵器が入っていた。


 その最終兵器とは―――――――――
































 ――――――――――約3年前に月へと飛び去った終末捕食を起こすアラガミ、ノヴァの残骸である。


















 “先生的な存在”が彼女の前から消え、当初の目的よりもロマンを求め始めているラケルにとってこれはものすごい致命的な問題である。
 もっと早くに自分のしたいことを見つけていれば……と場違いなようで強ち間違っていない自責の念にかられているラケルだったが、やがてふと顔を上げた。


 「……極東の人に、すべてを話して協力してもらいましょう」


 彼女の天才的な頭脳をもってして出した答えがこれである。
 過去にノヴァを退けた極東の神機使いたちとその神機使いたちでも引くくらいのことをやらかすブラッドがいれば何とかなるだろう。
 その過程で、自分が犯した罪や彼の事についても話すことがあるだろうが、自業自得だろう。


 そう結論をつけて彼女は来た道を今度はゆっくりと戻り始めた。






            ―――――――――――――――――――――――
 


 
 グチャグチャ





 肉を貪る音が聞こえてくる。






 ガシャガシャ

 
 


 機械音を伴いながら、それは自身が倒した獲物たちを喰らう。







 ゴクン





 アラガミをアラガミ足りうる存在にするコアを飲み込む。



 ブチ、ブチブチブチ。






 内側から肉を突き破り、骨格単位でその体を作り変えていく。






 そして、






 「GOAAAAAAAAAAAA!……ジ…ン・・・・・・・・・ジィィイイイイイイイ!!」






 継ぎ接ぎだらけの顔を上げ、それは月に向かって吠えた。