神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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もう五日周期でいいかな(諦め)。
今回はナナ偏の前編的なないようです。
本当はひとつにまとめたかったんですけど、リアルの都合で投稿が遅れそうなので報告もかねてあげることにしました。


第四十話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今日は仁慈さん個人に任務を出されているわけではなく、ブラッドに任務が届いています」

 

 

 「内容は?」

 

 

 「シユウ三体の討伐です」

 

 

 「どうした極東」

 

 

 最近軽い任務しか発行してないけど何かあったんですかね?今までの殺しに来ているんじゃないかと錯覚するくらいの任務に比べればだいぶ軽いのが続いていて逆に怖いんですけど。

 

 

 「仁慈さんが疑問に思うのもわかります。極東の殺意を直接浴びていたといっても過言ではないくらいのアラガミと戦ってきましたからね。すでに討伐数なら極東でも上から数えたほうが早いくらいにはなっています」

 

 

 「自覚する機会なんてなかったけど、これは働かせすぎだろ………」

 

 

 極東に来てそこまで経過していない俺が討伐数上位に食い込んでくるとは……極東の闇は深い。

 

 

 「サカキ博士があなたのことを気に入っているみたいですからね……まぁ、仁慈さんに任務を与えているのは大体ラケル博士ですけど」

 

 

 もう突っ込まないわ。あの人が何をしていようと俺にできることはないんだと最近悟ったから。

 

 

 「ま、ラケル博士のことは置いといて……ナナもその任務に参加するんですか?」

 

 

 ナナは昨日ぶっ倒れたばかりだ。今朝会った時には特に変わったところは見られなかったものの、戦場では僅かな隙が命取りになる。

 前日倒れたナナを連れて行くのはあまり賢い選択とはいえない。

 

 

 「本人の希望もあり参加ということになっていますね。現在はラケル博士の下でメディカルチェックを受けている頃かと思われます」

 

 

 ラケル博士止めたりとかはしてくれないのね……。

 彼女がナナのことを止めてくれないかと少々期待してみるものの、なんだかんだでブラッドのメンバー(俺を除く)には甘いラケル博士のことだし、止められないんだろうなぁ……。そうして最後には俺に放り投げてくるんだろうなぁ。

 

 

 「………分かりました。なら俺はいつぞやのように、ベテラン二人組みともしものときの対処の仕方を確認してきますね」

 

 

 

 ありがとうございましたと、いつものごとく竹田さんにお礼を告げて、俺はエントラスを後にした。

 あ、その前に回復錠買っておかないと……。

 

 

 

 

 万屋さーん!相変わらず通報されてもおかしくない格好、外見ですねー!

 うちで喧嘩の買取はしてないよ。

 

 

 こんなやり取りしてたら、集合に遅れました。

 

 

 

 

 

              ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 「……前々から思ってたんだけどさ。ここ年がら年中雪降ってるよな。なんでだ?」

 

 

 「さぁ?アラガミの所為じゃないんですか?」

 

 

 俺が元々居た世界では何でもかんでも妖怪の所為になっていたらしい。朝から寝坊したのも顔が悪くないのにモテないのも全部妖怪の所為なんだそうだ。

 だから、この世界の異常の原因は全部アラガミの所為なのである(暴論)。

 というか、モテないのは普通に顔が悪いんじゃね?それか性格。

 

 

 「まぁ、そんな事はどうでもよくて。ナナは体調、大丈夫か?少しでもきつく感じているならあのヘリで待ってても良いんだぞ?」

 

 

 自分から話を振ってきたのにかなりおざなりな反応を示すロミオ先輩。ナナを心配するのは良いですけど、扱いがあんまりじゃありませんか?普段が普段なので俺に言い返す権利はないけどね!自業自得とはこのことか……。

 

 

 「へいきだよー。まったくロミオ先輩は心配性だなー」

 

 

 つい昨日、それも目の前で倒れたとなれば心配もすると思うぞ。

 さっきヘリに乗っている時だって、どこか顔色が悪そうだったし。

 

 

 「そうか……けど、何かあったらすぐに言えよ?きっとジュリウスか仁慈が何とかしてくれるから」

 「オイ」

 

 

 全力で他人に寄りかかってくるスタイルを取るロミオ先輩。違うな。寄りかかるどころかこちらにキラーパスしてきやがった。

 そこまで言ったら自分で何とかするとか言おうよ……。

 

 

 「うん!もし何かあったら仁慈を馬車馬のごとく使うねー」

 

 

 「え?マジで?」

 

 

 笑顔で肯定された。何この子、超たくましいんですけど。

 昨日もしくは今朝に見られた弱々しい彼女の姿はそこにはなかった。いや、この態度も強がりの可能性があるからまだ一概に良いとはいえないんだけどね。

 

 

 ロミオ先輩とナナが俺に対して好き勝手言っている中、会話に参加していなかったジュリウス隊長は同じく会話に参加していないものの、僅かに唇の端を吊り上げていたシエルに今回の目標であるシユウの捜索を頼んでいた。

 

 

 「とりあえずあいつらは放って置いて……シエル、今回の目標であるシユウがどの辺に居るのか分かるか?」

 

 

 「少々お待ちください」

 

 

 ジュリウス隊長の声に簡潔に反応した後、シエルは自分の神機を地面に突き刺してざっと辺りを見回す。

 

 

 「北側、東側、西側にそれぞれ大きなアラガミの反応があります。おそらくシユウでしょう。この距離ならば合流する可能性は低いと思われます」

 

 

 「つまり?」

 

 

 「ヤるなら今ですね」

 

 

 あらやだシエルさんたら物騒だわ。満面の笑みで言い切った彼女に対する恐怖は計り知れないと、戦々恐々としたものの、割と日常の範疇だったので気にしないことにする。

 それにしてもやっぱりシエルの力は便利だな。彼女の能力も活用できたらさらに生存率が上がるよね。

 

 

 「シエルその三体のうちどいつが一番近い?」

 

 

 「西側、東側共に同じくらいの距離です」

 

 

 んー……なら二手に分かれてそいつらを同時に倒すか。んで、最後に残った北側の一体をブラッド全員で袋叩きにすれば良いだろ。

 今しがた思いついたそれをジュリウス隊長に伝えると彼はパッパとブラッドを二つのチームに分けた。東の敵は俺、ナナ、ロミオ先輩。西はジュリウス隊長、ギルさん、シエルという構成だ。

 

 

 「よし、分かれたな。仁慈、そちらの指揮は任せる」

 

 

 「了解です」

 

 

 それじゃあ、アラガミを殲滅するだけの簡単なお仕事はっじまるよー。

 ジュリウス隊長に背を向けて俺が率いるβチームは死角から出てくる小型アラガミを相当しながらシエルが示した地点へと向かう。

 その途中でさりげなく背後にいる二人の様子を見てみるが特に変わった様子はなかった。いつも通りアラガミがかわいそうなことになっているだけだった。

 

 

 「仁慈。シユウ見つけたよ」

 

 

 「わかった」

 

 

 俺が背後の方に気を配っているとナナが先にシユウを見つけたらしく報告をしてくる。彼女の指差す方向を見てみれば、確かに入り組んだ道の端で、地面から何かを拾って捕食しているシユウを発見できた。

 毎回思うんだけどあれ、何を食べてんだろう?俺たちがたまに回収する素材を食べているんだろうか?

 

 

 そんなことを考えながらも、捕食に夢中になっているシユウに気づかれないように接近をする。

 普段は見た目通り人外的な視覚・聴覚でこちらを補足してくるのだが、このように捕食に集中している場合は割と簡単に近づけるのだ。さすがに神機をガシャガシャしたら気づかれるけど。

 

 

 「おぉー。相変わらずいい食べっぷりだね」

 

 

 「んなのんきなこと言ってる場合かよ……」

 

 

 「とりあえず、ロミオ先輩。そのバスターでこのシユウを一刀両断してください」

 

 

 「はいよ」

 

 

 俺の言葉に簡潔に反応し、ロミオ先輩は両足を程よく広げて重心が安定しやすい体勢を取ると、神機を担ぐよう構える。

 そして、神機が謎の黒いオーラに包まれると、その神機を垂直に振り下ろした。

 唐突に脳天から自身を両断する一撃を受けたシユウは何の反応もできずにそのままコアを切り裂かれ、絶命した。

 

 

 「コレデヨイ」

 

 

 「自分でやっといてなんだけどえげつないな……」

 

 

 「ロミオ先輩やるぅー」

 

 

 予想以上に早く倒してしまったので、とりあえずジュリウス隊長に連絡を入れる。

 

 

 「ジュリウス隊長。こっちはもう終わったんですけど、そっちはどうですか?」

 

 

 『こちらも終わった。だが、仁慈気を付けておけ。俺たちが請け負ったシユウ……すでに手負いだった』

 

 

 「共食いですか?」

 

 

 『おそらくそうだろう。しかし、アラガミの性質から言って残り一体のシユウである可能性は低い。近くにシユウを攻撃したほかのアラガミがいるはずだ』

 

 

 「わかりました。こちらも警戒しておきます」

 

 

 通信を切って今もたらされた情報を自分の中で整理する。

 シユウが傷を負っていたということは、ほぼ間違いなく中型、大型のアラガミが相手だろう。正直、無傷のシユウをオウガテイルなどの小型アラガミが倒したとは考えにくい。

 そもそも、生物をかたどっているからか自分より強そうな相手には基本的に向かっていかない。手負いでも少々渋るくらいだ。

 つまり、今このエリアの付近にはシユウを傷つけた中型もしくは大型アラガミが存在しているということだ。……さすが極東。

 今朝どうした極東とかナマいってすいませんでした。極東先輩マジぱねっす!

 

 

 ハァ……とにかく伝えておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 ロミオ先輩とナナに警戒する旨を伝えた後、残り一体のシユウを倒すために階段を登り、一番奥にある寺へとやってきた。

 

 

 「ん?」

 

 

 「おぉ、タイミングばっちり」

 

 

 元々、合流する予定だったのだがその必要はなかったらしい。俺たちとジュリウス隊長はほぼ同時に最後のシユウが居る場所についてしまった。

 俺とジュリウス隊長はお互いに頷き合うとその身を影に隠しつつ、寺の中に居るであろうシユウの様子を伺う。

 すると中には、すでに絶命しているシユウの姿があった。

 

 

 「こいつは……」

 

 

 「先程のシユウよりもひどいですね。既にヤられた後のようです」

 

 

 ジュリウス隊長と共に手負いのシユウと戦ったギルさんとシエルが呟く。

 多少崩れつつも、形を保っているということはやられてから時間は殆どたっていないな。

 

 

 「皆周囲をよく警戒しろ。近くにこいつをやった奴が居る可能性がある」

 

 

 「必要ありませんよ。向こうから来ました」

 

 

 シエルがそういうのと同時に、寺の穴からヤクシャ・ラージャが五体侵入しこちらに向けてロックバスターを構えていた。

 この狭い空間でヤクシャ・ラージャ五体はさすがにきついぞ……!

 

 

 『ブラッド隊聞こえますか!半径100m内に大きなアラガミ反応。おそらくは全員ヤクシャ・ラージャです。数はおよそ10体!』

 

 

 「勘弁してくれよ……」

 

 

 同感だロミオ先輩。

 ここに来ておかわりとか勘弁して欲しいぜ。

 なんて嘆いているうちに俺たちが入ってきた方向からもヤクシャ・ラージャが優々と歩いてきた。

 普段と変わらない表情のはずなのにどこか愉しんでいるような雰囲気をかもし出していて実に不愉快である。

 まぁ、囲まれたとしても俺たちのやることはかわらない。目の前に出てきたアラガミは倒すだけである。慈悲はない。

 ぐっと足の筋肉に力を入れて、地面を蹴り、ヤクシャ・ラージャに接近を試みようとしたときに、

 

 

 「お、かあ……さん……」

 

 

 あ、なんか嫌な予感。

 

 

 

 

 

 

 

 

               ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなが、ブラッドのみんなが無数のヤクシャ・ラージャに囲まれている。

 こんな光景を前にも見たことがあるような……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――ナナ、貴女だけでも……逃げて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――大丈夫……君の事は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――なに!?く、くそぉぉおおおお!!

 

 

 

 

 

 

 

 思い……出した……。

 アレは私の所為だったんだ。

 私の所為でみんな死んじゃったんだ。

 わたしのせいでしんじゃった。

 

 

 このままだと、ぶらっどのみんなも死んじゃう?

 また、わたしのせいで?

 いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだいやだ。

 

 

 

 「いやぁぁぁぁああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

               ―――――――――――――――

 

 

 

 

 「ナナ!?」

 

 

 なんかすっごい紅い波動が出ているんですが大丈夫なんですかッ!?

 

 

 『これは……偏食場パルスの乱れが……!ブラッド隊聞こえますか!?強力な偏食場パルスの乱れを確認!周囲のアラガミがそこに向かって集まってきています!』

 

 

 

 全然大丈夫じゃなかった。

 強力な偏食場とかどう考えてもナナのことである。さっきナナからでた波動のことから考えて、血の力の暴走か?

 ナナの様子を伺っていたことが隙と見たのか、巨大な爪を振り上げるヤクシャ・ラージャに習得したは良いもののまったく使わなかった二つ目のブラッドアーツをぶつけて分解する。

 ちなみにこの血の力、俺が神機を振るうとその近くに無数の斬撃が現れて追撃してくれるというものだ。気分は某堕ちた英雄さんである。

 

 

 「仁慈!アラガミのほうは俺たちに任せてナナを落ち着かせろ!」

 

 

 「いきなり無茶言わないでくれません!?」

 

 

 お前ら俺に投げれば良いとか思ってないだろうな!?

 そんな事を考えつつ、昔我が家族の知恵袋であったおばあちゃんの言葉がよみがえる。

 曰く、泣き止まない子が居るならそのこを抱いて、心臓の音を聞かせつつ背中を叩いてやるのだと。

 男女間でこれをやるのはちょっと戸惑うが生憎とそんな事を言っている場合ではないので即実行。文句を言われたら後で土下座でもすればいいだろ。

 

 

 神機を地面にほっぽって、空に向けて嘆くナナの肩をなるべく優しく抱きこみ、頭を俺の心臓の辺りに当てるように軽く右手で誘導する。

 そして、余った左手で彼女の背中を一定のリズムで叩いた。

 よーしよーし、もう大丈夫ですよー。

 

 

 初めのうちはえんえん泣いていたナナも、三十秒たつころには落ち着いてきたようで、大きな声で鳴くのではなく少々ぐずる程度になった。

 おばあちゃんの知恵袋はさすがやでぇ……。

 ちなみに三十秒間どうしてそんなに無防備で居られたのかというと、ブラッドメンバーがきっちり守ってくれました。

 ラージャのほかにも大型アラガミが増えてたというのにすごいわ。

 

 

 

 『こちら極東支部第一部隊!ブラッド隊の状況を聞いて応援にきた!ある程度の数はこっちで請け負うから早く撤退するんだ!』

 

 

 「応援感謝する。仁慈、ナナをつれて先に離脱していろ。ここは俺たちが足止めしておく」

 

 

 この戦況でさらっといえる辺り、頼りになるし負ける気がしなくなるな。

 

 

 「よろしくお願いします。……ナナ、自分の神機は持てそう?」

 

 

 

 問いかけに、神機を強く握り返したことで返事をくれたナナを横抱きにして持ち上げて、その場を離れようとジュリウス隊長に背を向ける。そして、戦線を離脱しようと走り出そうとした俺の背にジュリウス隊長の言葉が届いた。

 

 

 「任せておけ。足止めなんてたいしたことはない。むしろ――――別にあれ等全てを片付けてしまってもかまわんのだろう?」

 

 

 やべぇ。一気に不安になったわ。

 大丈夫なのかと思わず振り返りそうになったが、何とか自制して俺は戦線を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――その日の夜。第一部隊およびブラッドは特に問題もなく極東支部に帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




祝四十話(ボソッ
意外と早いものですね。

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