神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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一回だらけるとなかなかやる気がおきない……そんなこともあるよね。
……すいません唯の言い訳です。二日周期に戻せなくてごめんなさい。





第二十六話

 

 

 

 

 

 部屋の場所と様子をある程度把握した俺は、部屋の前に居たロミオ先輩と白いワンピースを着た女の子に関わらないようにしつつ、再びエントランスへと戻ってきた。先程無視した件についてダイアーさん……ダミアンさんから文句を言われたものの、時に右から左へと受け流し、時に相槌をうってやり過ごした俺は無事にカウンターへとたどり着く。

 

 

 「その腕輪……ブラッドの方ですね。初めまして、ここ極東支部でオペレーターを勤めさせていた居ています。竹田ヒバリです。これからよろしくお願いします」

 

 そういえば、さっきは適当に見回っていただけだったから、ここのオペレーターさんとは話してなかったな。

 

 

 「初めまして。樫原仁慈です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 簡単に自己紹介を終わらせて、任務の話をする。サカキ博士も今すぐ任務について欲しいと言っていたし、任務は入っていると思うんだけど。

 

 

 「確かにブラッド宛に任務が発行されていますが……そこに仁慈さんの名前はありませんね」

 

 

 「何故だ」

 

 

 俺はブラッドにカウントされていないのかという馬鹿なことを一瞬思い浮かべるものの、詳しく調べてみると第一部隊の受ける任務に俺の名前が載っていた。それこそなんで?

 

 

 「どうやらサカキ支部長が組んだようですね。おそらく、感応種と対峙するときのために、極東の神機使いとの連携を強固にするためだと思います」

 

 

 なるほど。

 ここは極東。アラガミとの戦いの最前線にして何が起こるかわからない……何が起きても不思議ではない場所になっている。赤い雨の事もあるしね。

 当然、感応種が複数体別々の場所に出現するというシチュエーションも充分に考えられる。俺が一緒に居る場合は一般の神機使いも接触禁忌種である感応種と戦うことができる。それはアミエーラさんの件ですでに証明されていることだ。ブラッドは普通に対峙できるもののそれでも数が足りない場合は、俺が一般の神機使いに混ざり、感応種と戦うことになるだろう。

 そのときのために、この極東の神機使いとの連携をしっかり取れるようにしておけということなのだろう。

 

 

 でも、アレ?第一部隊って藤木さんが隊長やってるあの部隊だよな。さっき任務にむかって行かなかった?

 

 

 「確かに向かおうとしてましたけど……任務の内容を見直して今は仁慈さんを探し回っているそうです」

 

 

 藤木さんェ……。

 いやきっとエミールさんとフォーデルヴァイデさん、ついでに俺の土下座のことで頭がいっぱいになってたんだろう。……あれ?これって俺の所為じゃね?

 

 

 「ちょっと、藤木さん探してきますね」

 

 

 「分かりました。任務自体はコウタさんがもう受けているので、合流したら任務に出てしまって結構ですよ」

 

 

 「分かりました」

 

 

 俺が謝った所為でこんなことになったかもしれないということで、俺の中にある良心が再び削られる。今日一日だけで俺の心削られすぎィ!

 なんにせよ、今度は普通に謝ろうと思いつつ、藤木さんを探し回るが、結局合流したのは三十分後だった。迷子のときはむやみやたらに動き回っちゃいけないのと同じだね。

 

 

 

 

 

               ―――――――――――

 

 

 

 

 

 多少のアクシデントはあったものの無事に合流を果たした第一部隊+αは現在目標のアラガミと対峙しているところである。

 今回の目標はよくよく見てみると普通に美人なサリエルちゃんである。しかし、このサリエルちゃん外見とは裏腹に、硬いし浮いてるしで相手するのは超面倒くさい。

 一生懸命ジャンプして神機振っても硬くて効果が薄い上に、バリア的な何かを張られるし、遠距離から狙い撃っていると向こうもビームで応戦してくる。正直、新人にはつらい相手なのだ。なのだが……

 

 

 「あ、サリエルのビームはこっちで処理するからみんな好きに攻撃しちゃって。ただしバリアには気をつけろよ」

 

 

 ビームを神機の弾で相殺している藤木さんの存在がその不利をほとんど軽減している。

 マジで、なんなのあの人。常識人かと思ったらぜんぜん違ったんだけど。普通に異常(あっち側)だったんですけど……。

 フォーデルヴァイデさんとエミールさんのほうをチラリと盗み見てみれば特に動揺した態度も見せずに普通にサリエルに攻撃を仕掛けていた。

 これが極東のスタンダードだとでも言うのだろうか?

 えぇい!極東の神機使いは化け物か!?

 

 

 「っと、呆けて居る場合じゃない。俺も攻撃に参加しないと」

 

 

 今日、極東支部で見てきた印象と違いが大きすぎて少しの間固まってしまったがここは戦場、油断は死を招く。そのことを思い出し、気持ちを切り替え俺はサリエルに襲い掛かる。

 

 

 しかし、唯単純にジャンプして切りかかるのはぶっちゃた話効率がかなり悪い。一回だけだが、交戦経験があるのでこれは良く分かっている。実際そのときは接近はあきらめて銃形態で倒したし。

 ならば、どうするか。

 相手を地面に叩き落すという手段もあるが、それは手間がかかる。そうなると自分で足場を作ってそこから攻撃するしかないな!

 そうと決まればすぐに行動しよう。

 

 

 自分の行動を決めた俺はいつもの通り、体勢を低くした後、全力で地面を蹴って一気に加速する。そして藤木さんの斜線上に入らないようにサリエルに向かっていく。銃形態の神機を構えているフォーデルヴァイデさんの横を抜け、一番近くでサリエルと戦っているエミールさんに接近する。

 

 

 「エミールさん!少しだけ肩借りますよ!」

 

 

 「了解したぞ、我が友よ!」

 

 

 具体的に何をするか言っていないのに迷わずそう答えられるエミールさんはかっこいいと思います(小並感)

 エミールさんが下から上へとブーストハンマーをブーストを噴かしながら振りぬく。急に今まで感じていた衝撃より強い衝撃を受けたサリエルは一瞬だけその身体をふらつかせた。チャンス。

 

 

 「行きますよ」

 

 

 一声かけてエミールさんの肩に飛び乗り、そこから跳躍する。普通なら肩が外れるが俺たちは神機使いだし、エミールさんはサリエルの体勢を崩したときに神機を支えとして衝撃に備えていたから大丈夫だ。

 跳躍した俺が向かう先は、体勢を立て直したサリエル。そのサリエルに飛び移り、人間とほとんど変わらない細っこい首に神機を当てて思いっきり後ろに引いた。しかし、

 

 

 ガキンッ!

 

 

 「硬っ!?」 

 

 

 金属と金属がぶつかり合ったような、不快な音を立てて神機が弾き返される。嘘でしょ!?サリエルのこの部位はそんなに硬くなかったと思うんですけど!?極東か?極東という世紀末的環境がアラガミをここまで強くするのか!?

 

 

 「――――――――――――ッ!」

 

 

 サリエルが俺を振り落とそうとしているのか激しく舞い始める。

 ……いや、違う。これは範囲が広いバリアを使う準備だ。このままでは攻撃をそのまま受けることになる。でもせっかくエミールさんに手伝ってもらって引っ付いたんだから降りたくないよなぁ。そうすると……上だな。

 

 

 「I CAN FLY!」

 

 

 などと口に出してみるも実際に飛ぶわけではなくただの跳躍です。サリエルがバリアを展開する直前にエミールさんと同じようにサリエルを踏み台にして跳びあがる。自分でもなかなかの高さまで跳んだと思うが、バリアを避ける分には割とギリギリで思わず冷や汗が流れた。少し後悔した。

 

 

 範囲の広いバリアは展開が速い変わりに消えるのも早い。俺がちょうど重力に従って落ちていくのとサリエルのバリアが消えたのはほぼ同時だった。俺の武器では致命傷を与えることはできない。ならばいっそ重力を加味した踵落しでも見舞って、地面にたたきつけようか。

 普通であればそんなことは不可能だが、過去にコンゴウを蹴飛ばしてしまった(不本意)実績があるため試してみる価値はある。ぶっつけで不安なところはあるが、大丈夫だ。俺には魔法の言葉がある。

 

 

 できるできる絶対にできるどうしてあきらめるんだそこで駄目だ駄目だあきらめちゃ駄目だできるってもっと

 

 

 「熱くなれよぉぉおおおお!」

 

 

 大きな声を出すことで、身体のリミッターを外しつつ全力で踵落しをサリエルの頭に叩き込む。

 

 

 「――――――!?」

 

 

 どうやら俺の異常な胆力は今も健在らしい。踵落しを食らったサリエルはなかなかの速度で地面へと落下した。

 敵がダウンした!総攻撃のチャンスだ!眼鏡とかもう一人の自分とかないけど。

 サリエルを文字通り蹴落とした光景が信じられなかったのか少しだけ固まっていた第一部隊の人達だったが、すぐに気を取り直しダウンしているサリエルを袋叩きにし、そのまま倒した。

 

 

 

 いやぁ、極東のサリエルは強敵でしたね。

 

 

 

 

             ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 こんなの絶対におかしいよ……。

 コウタ隊長がアレなのはもう分かってる。今も鼻歌交じりにサリエルのビームを相殺しているがそれはいつもの光景だ。神機使いになって間もないけれどそれは分かっている。というか、極東の神機使いは大体こんな感じだし。

 でも、ブラッドまでこんな感じとか聞いてないよ……。

 極東支部にやってきたブラッド隊の副隊長がサリエルに踵落しを食らわせ、地面に叩きつけている光景を視界に捉えつつ、思う。

 普通アラガミは、神機以外での攻撃は無意味である。銃火器なんかを受けても無傷ですむアラガミに踵落しで地面に叩きつけるなんてどう考えてもおかしい。

 それに、踵落しをする前にした跳躍もおかしい。神機使いの身体能力を加味してもあんな不安定な足場であの跳躍は無理だ。

 アレはいったい何?極東に伝わるKARATE?ブラッド隊ってニンジャ?

 

 

 私はブラッドが極東に来ると聞いていい思いを抱いてなかった。エリートって聞いてたし、私の中のエリートのイメージは相手を見下したり必要以上に自分の戦果を誇ったりするやつだと思っていたから。実際、神機使いになる前に出席した家関係のパーティーとかではそういうやつが腐るほど居たのもそう思わせる一員なのかもしれない。

 

 

 だから、勝手に敵対意識を持ってきつく当たっていた。見下していた。

 温室育ちのエリートなんかに、この最善戦線で戦ってきた私たちは負けないって。どうせすぐに弱音を吐くだろうって。

 

 

 そう思った結果が目の前のこれ。私は思い違いをしていた。ブラッドは温室育ちではない。YAMA育ちだ。

 

 

 「いやぁ、極東のサリエルは強敵でしたね」

 

 

 地面に叩き落したサリエルを袋叩きにして倒し、しっかりとコアを捕食した後にブラッドの副隊長がそういった。

 どの口がいうか。サリエル地面に叩きつけるような人が強敵とか思うわけないでしょ!?

 

 

 「仁慈、お前……リンドウさんみたいなことするな」

 

 

 「リンドウさんもこんなことできるんですか!?」

 

 

 「できるよ。ていうかあの人できないことのほうが少ないんじゃないかな?」

 

 

 

 「……さすが極東。この程度はまだまだ序の口と……そういうことか」

 

 

 「そうだな友よ!これから僕たちもその境地を目指し、共に高めあおうではないか!」

 

 

 待って!勘違いしないで!極東支部の神機使いみんながそんなことできるとは思わないで!あと、エミールは勝手に煽らない、ブラッドの副隊長も納得がいったように頷かない……!

 ツッコミ所が多すぎる……。もう私の手には負えないよ。

 

 

 「どうしたエリナ。元気なさそうだな?もしかして、今ので疲れたのか?」

 

 

 顔を覗き込んで、声をかけてきたコウタ隊長に私は思わず……キレた。

 

 

 

 「あんたらの所為でしょうがぁああああ!!」

 

 

 この所為で私はブラッドの副隊長から危ない人を見るような目でしばらく見られた。ブラッドの副隊長とまた溝が深まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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