後、GODEATERを初めにやったときサカキ博士がラスボスだと思ったのは私だけではないはず。
どことなくデジャヴっていた感応種討伐依頼を無事に終わらせた俺たちブラッドは、時々進路上に現れるアラガミを掃除しながら順調に極東へと向かっていた。
もちろん、今日も今日とてフライアの進路上にたむろっていたアラガミを蹴散らしてきたところだ。相手ヴァジュラだったけど。この世界、一回遭遇したアラガミが出る頻度、おかしくないですかね。明らかに増えてるんですけど……。この世界では仕様なのか。
現在は赤い雨が降っているので、外に出ることができずブラッドの皆さんフライアのロビーで待機中です。
「……赤い雨が続くな」
「極東の範囲に入りましたからね。やがて極東支部に到着するのでは……」
シエルの言葉から考えると極東は赤い雨が降りやすいのか?だとするならすげぇな極東。神機使いといいアラガミといい赤い雨といい、話題に事欠かなさすぎだろ。
極東の話題の豊富さに若干戦慄していると、赤い雨というキーワードで何か思い出したのかロミオ先輩が急に口を開く。
「赤い雨ってあれでしょ?この前の神機兵護衛任務のときに降ったやつ。あの雨に濡れたらマジやばいんだよね?」
「何だっけ、あれでしょ。コクシャ……コクシェ……」
「……黒蛛病。赤い雨に触れることにより、高確率で発症する病です。現段階で治療不法は未だ確立されておらず、発症した場合の致死率は100%とされています」
シエルの説明にいつぞやターミナルで調べた内容か思い浮かぶ。
黒蛛病
相手は死ぬ
……大体あってたよ。あってたけど、なんか釈然としない。
「ぬ、濡れなきゃ……平気なんだよな」
若干震え声でそういうロミオ先輩。気持ちはよく分かる。致死率100%相手は必ず死ぬ。そんなことを聞いてしまえば怖がるのは生き物として当然である。
「病気はやだよねー。食欲なくなっちゃう」
「お前食欲そればっかだな」
ここまでぶれないと感心するな。一方俺にそう言われたナナは「そんなことないよ!」と俺に反論しつつおでんパンが入っている袋に手をかけていた。お前、それでいいのか……。
『現在フライアは赤い雨を抜け、極東地域を南下中です』
ナナのあまりに早すぎて手首がぼろぼろになるレベルの手のひら返しに呆れ、ため息を吐いていると、フライアに放送が流れ出した。
どうやら赤い雨を抜けたらしい。
俺は組んでいた腕を解いてエレベーターへと向かう。
「仁慈ーどこ行くのさー」
「ちょっと外に出てくる」
ナナの問いに返事を返してからエレベーターに乗り込む。ここフライアには一応、外を見ることができる場所がある。俺が向かっているのはそこだ。理由としてはこれからしばらく滞在するであろう極東支部とその周辺の様子や状況を大まかに知っておきたいというものだ。
まぁ、極東支部についてからもできなくはないが……暇つぶしもかねてね。
「これが極東ね」
今、俺の目の前には仮設住宅……いや、それよりも少しお粗末な建物が多く建っている町並みと、それらを囲うように存在している分厚い壁、そしてその一番奥に鎮座する巨大な建物だった。
贖罪の町や鉄塔の森などの様子から予想はできたが、ずいぶんと荒廃していた。極東は激戦地にして最前線。これでもかなりましなほうなのかもしれないけど。
「それにしても、」
俺は改めてグルリとあたりを見渡す。
「これはあまり歓迎されそうにないなぁ」
俺たちの乗っているフライアはぶっちゃけかなり大きい。割かし何でもそろっているし、今こうしているように移動することもできる。何がいいたいのかといえば、かなりの金がかかっている。局長があれだしそのことはもはや言うまでもない。
そんな連中を、このご時勢で歓迎するところなんて早々ない。極東の神機使いたちは戦力として考えて気にしないかもしれないが、周囲の神機使いではない人たちは絶対に気にする。そんなもの作る余裕があったらもっと俺たちに金を回せってな。
……考えなければよかった。
沈んでしまった気持ちを何とか戻しつつ、極東支部に到着したという放送を聴いて俺はフライアの室内に戻り、ジュリウス隊長たちと合流した後、極東支部の中に入っていった。
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極東支部に入ってみたものの、特に絡まれるといったことはなく無事に極東支部の支部長の部屋にたどり着くことができた。散々見られはしたけどね。特に腕輪を。
どうやらブラッド以外の神機使いは腕輪の色が黒ではなく赤らしい。これは見分けがつきやすいね。ついでに因縁もね!……さすがにマイナス思考が過ぎたな、カットカット。今は極東支部の支部長のことに集中しなくては。
思考に埋もれかけた意識を何とか引っ張りあげて椅子に座っている極東支部支部長を見る。なんというか……色々と失礼なんだけど……支部長より研究者という第一印象を抱いた。どことなくラケル博士に通ずるものがある。
「ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティ以下隊員各位、到着しました」
「ようこそ極東支部へ!私がここの支部長、ペイラー・サカキだ。エミールがお世話になったそうだね。できれば直接会いたいと思っていたんだ」
……そういえばいつの間にかいなくなってたよな、エミールさん。今の今まで完全に忘れていた。あんなにキャラ濃いのに。
「あれでしょ、マルドゥーク!撃退したのこいつですよ、こいつ!」
「ハハハ、こやつめ。……余計なことを抜かすなニット帽……ッ!」
「辛辣っ!?」
「なるほど、君が!私からも礼を言うよ」
ほら見ろ、ニット帽。礼を言うとか言っているがサカキ支部長がきらきらとした目で俺を観察しだしたじゃないか。糸目だから実際はわかんないけど、雰囲気がそんな感じだ。こういうタイプは興味をもたれると面倒なことになる。研究者に向いていると漠然と思ったのはこういう一面があると感じ取ったかもしれない。
「さて、すぐにでも調s……任務に入ってもらいたいところだけど……まずは改めて極東支部が置かれている状況を説明するよ?」
この人さらっと調査って言いかけたぞ。こっちに視線がきてたけど、一体全体何を調査するつもりだったんですかねぇ……。
「今極東支部は、いくつかの大きな問題に直面している。ひとつは黒蛛病。赤い雨を浴びることによって発症する未知の病だね。そして、もうひとつが……」
「感応種、ですね」
「そう、いわゆる接触禁忌種と呼ばれている新種のアラガミだね。……君たちブラッドは交戦経験があるんだよね?」
「はい、二回ほど」
「なら知っていると思うけど。感応種は『偏食場』、つまり強力な感応波を用いて周囲のアラガミを従わせる、特異な能力を持っている。神機もオラクル細胞の塊、すなわちアラガミの一種だ。普通なら感応種の影響で、機能停止してしまうのだけれど……」
「俺たちはそれを無視し、感応種と戦うことができる」
「その通り!とても心強いよ。特に、樫原仁慈君。君の能力は特にね」
怖い、怖いよ。何で俺が発言したときだけそんなに食いつくんだよ。表情変わらないし考えていることがまったく分からない……。
「話を戻そうか。……『赤い雨』と『感応種』この二つの問題の解決を君たちにも協力してほしい、というわけさ。どうだろう?」
「承りました。最善を尽くしましょう」
「ありがとう、こちらも惜しみないサポートをしよう。ここを自分の家だと思って、くつろいでくれれば幸いだ」
ここで話は終わりなのか、部屋の雰囲気が心なしか少し軽くなった気がした。色々と緊張していた俺は思わず両手を上に上げて体をほぐす。すると、急に背後にあった扉が開き、オレンジ色の髪の青年が入ってきた。赤い腕輪をしていることから彼が神機使いだということが分かる。
その青年は俺たちがいることに気づいていないのか、端末を見ながらサカキ支部長に話しかけた。
「博士ー! 歓迎会のスケジュール、みんなに聞いてきましたよー……ってあれ? もしかしてブラッドの人たち?」
「ありがとうコウタ君。そうだよ、彼らがブラッドだ」
「極東支部第一部隊隊長藤木コウタです。これから、よろしくね」
「ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。こちらこそよろしくお願いします」
隊長だったのか、藤木さん。ジュリウス隊長と藤木さんが自己紹介をしている間俺はあることが気になっていた。藤木さんの声である。どっかで聞いたことあるんだよなぁ……何だっけ?
歓迎会の準備やら、飯はうまいか?やら色々周囲が盛り上がっている中で俺はじっと考え込む、考え込む、考え込む……あ、思い出した。あれだ。
「眼鏡が本体の人だ」
「誰が眼鏡が本体っ!?」
やべっ、声に出てたしガッツリ指差してた。おかげで、会話が終わり、部屋を出て行こうとしていた藤木さんが勢いよくこちらを向いて叫んだ。
ま、まずい……何とかしてごまかさなくては……ッ!
「すいません。藤木さんの声が昔の友人に似てまして……つい……」
「コウタでいいよ。……友人から眼鏡が本体と呼ばれる君の友人とはいったい……」
「彼は常に眼鏡が本体、人間をかけた眼鏡と呼ばれていました……」
「なぜだろう。俺にはまったく関係ないはずなのにとても胸に刺さる……」
「眼鏡かけてないのに…」と呟いて退室していった藤木さんに俺の罪悪感がマッハである。今度あったら、とっておきの三回転DO☆GE☆ZAを披露するしかない。
なんとなく変な空気になってしまったが、話は終わったので次々とサカキ支部長にお辞儀して退室していくブラッド。その流れに乗って俺も支部長室から退室した。
UA20000越えました。ありがとうございます。これからもがんばっていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。