神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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初の一万文字越えだー。
それはともかく今回は色々と突っ込みどころがあると思いますができるだけスルーでお願いします。
どうしても見逃せないのがあればお知らせください。


第十九話


ロビーに着いた俺たちはフランさんから今回の任務の詳細を聞いていた。


「今回の任務は仁慈さんたちはすでに聞いていると思いますが、無人運用される神機兵三体の護衛となっています。神機兵αの護衛をジュリウス隊長、βをシエルさんγをほかのブラッドメンバーで護衛することとなります」


「ちょっと待ってください」


フランさんが言った内容に驚愕せざるを得ない。
なんだその人数配分、おかしいだろ。明らかに。
ジュリウス隊長が一人なのはよくわかる。あの人の強さは本当に人間か疑うレベルだからな。
しかし、シエルが一人とはいったいどういう事なのか?


「それについては仁慈さんたちの実験位置に多くの中型種を含めた多くのアラガミの反応が確認されたため、神機兵の護衛が一番困難だと判断し人数を固めたようです。シエルさんが一人で護衛を行う件についてはグレム局長からの指示なのです。正直、私の権限でどうこうできるものではありません」


少々苦しそうな表情で答えるフランさん。
……グレム局長の指示か。
古来から安全地帯でふんぞり返っているお偉いさんの指示は基本的に失敗もしくは死亡フラグなんだが……それを今言ったところで無駄だよなぁ。
なんならいつ言っても無駄ということもある。


「私なら問題ありませんよ。見たところ私が護衛をする場所は神機兵の相手である中型アラガミと少しの小型アラガミだけですから」


「……まぁ、本人がそういうなら」


ここ最近の戦い方を見るに確かにこの程度なら問題ないだろう。
いまだ言いようのない不安感があるものの、本人が心配ないと言って、実績も伴っているなら無理に任務内容を変更させることはできない。
しょうがないので俺は渋々引き下がった。


「仁慈。俺が一人のことについては何も言わなくていいのか?」


「アンタは一人で十分でしょうよ」


むしろ過剰戦力と言えるまである。
俺の即答にジュリウス隊長以外のメンバーも勢いよく頷く。
しかし、当の本人は納得いかなかったようで「解せぬ」と呟いていた。


「ジュリウス隊長。もう少し自分の実力を正確に把握しましょうね」


『お前が言うな』


解せぬ。
あまりに早いツッコミに思わずジュリウス隊長と同じ言葉を呟いた。


























ジュリウス隊長と同じ言葉を呟いてから一時間後、俺たちブラッドは任務の場所になっている蒼氷の峡谷という壊れかけのダムのような場所に来ていた。
何とここ、年がら年中雪やら氷やらがある摩訶不思議な場所である。


今回の目的である神機兵はデータ取りのために中型のアラガミであるコンゴウと一対一で戦うらしく、ほかにうじゃうじゃいる小型アラガミやもう一匹いるコンゴウ、何故かそこらを歩いていたシユウの相手は俺たちがやらなければならないらしい。


「今回は一対一の状況を作るために各アラガミの担当を言いますよー。まず、面倒なコンゴウは俺とギルさんで分断し、ギルさんに一匹の足止めもう一匹は俺が神機兵のところに誘導します。シユウはコンゴウ達とは真逆に居るので今は放置、ロミオ先輩とナナはそこらにうじゃうじゃいる小型アラガミの掃討してください。……なにか質問は?」


「異議なーし」


「俺もなーし」


子どものように語尾をのばしつつ返事をするナナとロミオ先輩。
己ら子どもか。
二人とも俺より年上なはずなのにどうしてこう年下を相手しているような感覚に陥るのか……。


「これ俺いらないだろ」


今まで一言も話さないと思ったら開口一番になんてこというんだギルさん。


「コンゴウくらいお前一人で十分なはずだ」


「確かに普通に戦う分にはそれでいいんですが、今回はコンゴウを分断し尚且つほぼ無傷の状態で神機兵のところにおびき出す必要があるので、どうしてももう一人必要なんですよ」


俺の言い分を聞くとそういえばそうだったなという表情を浮かべるギルさん。
……この人やっぱり神機兵のこと忘れてたな。
ギルさんは神機兵の話を聞いた時から好意的な態度ではなかった。それはおそらく長年前線で戦ってきたからこその態度なのだろう。
きっと彼は戦っているときに様々な場面でお金が必要な事柄を見てきたのだ。だからこそ大金をつぎ込んでいる神機兵にあまりいい感情が抱けないのだろう。例えこれが最終的に人類のためになったとしても。


「そうか、そうだな。悪かった。俺もお前の案に賛成だ」


「別にいいですよ。ギルさんも何か思うところがあったのでしょう?」


どこか気まずそうに顔をそむけるギルさんにそう言葉を返す。
ぶっちゃけ、神機使いになってそこまで日が経っていない俺が言えることではないのだが今回はこれでいいだろう。


「仁慈ー、その辺からいっぱいアラガミがわいてきたよー」


ギルさんとの話も一区切りついたところでナナの言葉が耳に届く。
彼女が言うように軽く周囲を見渡してみればその辺からコクーンメイデンとナイトホロウがうじゃうじゃ生えて来ていた。


「うわぁ、いっぱいいるよ……」


「ロミオ先輩の武器は相性いいんですからしっかりと頼みますよ」


「わかってるよ。ただ、この光景は少し遠慮したいわ」


言いたいことは分かる。
見渡せばどこもかしこもコクーンメイデンとナイトホロウが視界に入ってくるもんな。
にしても、想像以上に密度が高いな。
これはコンゴウのところに行くとなったら結構大変だ。


「ギルさん。作戦変更します。ここでコンゴウが釣れる様な音を出しつつ、小型アラガミを殲滅します」


「つまり派手にやっていいんだよねー?」


ギルさんに話しかけたのになぜかナナが反応しおった……。
しかも、返事をしようとしたときにはすでに一番近い位置に居たコクーンメイデンに攻撃を仕掛けようとしている。
話聞けよ。


「やっはー!!」


珍妙な掛け声とともに彼女がとったのは、ゴルフをするかのような姿勢でブーストハンマーを構えることだった。そして、そのまま振り切る。
ナナが全力で振り切ったブーストハンマーは加速し、その威力を確実に大きくしながらコクーンメイデンに接触する。
かつてイェン・ツィーを吹き飛ばしたこともあるナナの攻撃に耐えられるはずもなく、コクーンメイデンは生えていた地面ごと吹き飛び、一番アラガミが密集しているところに吹き飛ばされた。


さしずめ、ボール(コクーンメイデン)を相手のゴール(アラガミの密集地帯)にシュゥゥゥゥーー!超エキサイティン!ってところか。
ナナが行った行動に驚きを隠せないのだが次の瞬間俺はさらに驚愕した。なんとナナのシュゥゥゥゥーー!したコクーンメイデンが爆発し、さらに多くのアラガミを巻き添えにしたのだ。
一体どうしたんだと思いつつ周囲を見渡すと、ロミオ先輩が神機を銃形態にしてドヤ顔をかましていた。


「ロミオ先輩……いつの間に爆発系のバレットを……」


「すり替えておいたのさ!」


某クモ男のように胸を張って言うロミオ先輩。衝撃の真実である。
ていうかいつの間にくっ付けたんだ。
「いえーい」と声を上げながらハイタッチするロミオ先輩とナナに思わず溜息を吐く。


「これもお前の影響か?」


「何でもかんでも俺の所為にするのやめませんかね?……っと、今の爆発でコンゴウ達が気付いたようです。ギルさん、作戦通り一匹の注意を引き付けておいてください」


爆発で綺麗になった方角から仲良くこちらに向かってくるコンゴウ。その姿から目を離さずにギルさんに言葉をかける。
彼も「おう」と短く答えて神機を構え、お互いがお互いのコンゴウに向かって一気に肉薄する。
ギルさんのコンゴウは別にぶっ殺しても問題ないため、ギルさんも初めから神機を使っているが俺の場合は違う。
このまま何とかして俺たちの背後にいる神機兵の元に誘導したいのだが……神機で気を引くのはダメージが入るからな……。


神機以外の攻撃は効果がほぼないアラガミだが多少の衝撃くらいは受けてくれるかもしれない。知らないけど。
たまには考えなしに行動するのもいいだろう。うん。
方針が決まったため、俺はギルさんに向かおうとしているもう一匹のコンゴウの注意を引くために渾身の跳び蹴りを放つ。


「イィィヤッホォォォオォォ!!」


なんか奇声を上げてしまったがこれはあれだ。気合入れてるからだ。


「ゴァァアアア!?!?」

そのおかげか「おーっとコンゴウ君吹っ飛ばされたー!」と言えるくらいに見事にコンゴウが吹き飛んで行った。って、えっ?


『えっ?』「ゴァ!?」


時が止まった。
コクーンメイデンを次々シュゥゥゥーー!してたナナもすり替えておいたロミオ先輩もコンゴウを串刺しにしようとしていたギルさんも串刺しにされそうなコンゴウも、皆固まってこちらを見ていた。
かく言う俺も蹴った後の状態で固まってるけど。
唯一動いていたのは都合よくぶっ飛んできたコンゴウに反応して攻撃を仕掛ける神機兵くらいである。


「えっと………ま、まぁ結果的には予定した通りになったな」


咄嗟に言葉をひねり出したものの、今だ俺に向けられる視線は途切れない。
ブラッドの皆はともかくコンゴウまでこっち見てんだけど……こっちみんな。
とりあえず、固まっている連中に攻撃を仕掛けようとしているコクーンメイデンやらナイトホロウを片っ端から潰すことでみんなが復活する時間を稼ごうと考え、近くにいる奴からバラバラに切り刻んでいった。


その後、そこらにコケの如く生えてきたアラガミを排除し、惚けていたコンゴウを四人で滅多打ちにし、遠くを歩いていたシユウを俺とギルさんの銃形態でハメ殺しにした後、俺たちはコンゴウと戦いを繰り広げる神機兵γの応援を行っていた。


「いけー!そこだー!」


「あぁ!攻撃が来るぞ……よっし、避けた!」


主にロミオ先輩とナナだが。
ギルさんは帽子のつばをいじりながら神機兵を睨みつけているといってもいいくらいの鋭い目つきで見ている。俺はそんなギルさんの隣でぼんやりと神機兵の戦いを見学していた。


「一撃が強いって言っても、全然当たりませんね」


「動きも硬いし攻撃が大振りすぎる。何とか敵の攻撃は避けているもののこのままじゃきりがないな」


「確かに………おっ、ようやく当てたか」


神機兵が横一文字に振るった剣がコンゴウに直撃する。その衝撃でコンゴウが少し体制を崩した。
さすがにこのようなわかりやすい隙は逃さないらしく、そこから怒涛の連続攻撃を浴びせコンゴウを撃破した。
ちなみに俺たちが周囲のアラガミをすべて倒し終えてから20分後の事である。
時間かかりすぎィ!


「こちら仁慈、神機兵γの戦闘が終了しました」


『了解しました。神機兵αの護衛をしていたジュリウス隊長もすでにフライアに向かっているので皆さんも帰投準備をお願いします』


フランさんに任務完了の旨を伝え、みんなに帰投準備をするように指示する。
さてと、俺も準備しようかな。


肩を回して解しつつ、帰投準備をしようとした時。
切り忘れていた通信機からジュリウス隊長の切羽詰まった声が聞こえてきた。




















仁慈さんからの報告を受け、後はシエルさんからの連絡を待つのみとなり、ふぅと軽く息を吐く。
このままだと、問題もなく終わりそうですね。
そんなことを思っていたところで、たった今フライアに帰還したジュリウス隊長が珍しく焦った様子で私がいるカウンターへ来た。
一体どうしたのでしょうか?


「ブラッドはまだ現場か!?」


「はい、神機兵γは先程終わったと仁慈さんから報告がありましたが神機兵βがまだ戦闘中です」


ジュリウス隊長に答えながら神機兵βのデータおよびシエルさんの通信機の回線を開く。
それを行ったと同時にシエルさんからの通信が届いた。


『神機兵β!背部に大きな損傷!フライア、判断願います!』


あまり状況はよろしくないようですね……。
とにかくシエルさんの言われた通り指示を出すため、クジョウ博士に視線で判断を仰ぐ。


「背部だと!?回避制御の調整が甘かったか!いや、空間把握処理の問題か?くそぉ!何でだ!?」


知りませんよ。
今聞いてんのはそういう事ではありません。
そんな思いを込めて睨みつける勢いでクジョウ博士を見るも本人は頭を抱えてこちらを見ていません。
判断を仰ぐのは不可能だと即座に考え、シエルさんに指示を伝える。


「神機兵βを停止します。アラガミを撃退し、神機兵を護衛してください」


しかし、私の出した指示にジュリウス隊長が慌てて待ったをかけた。


「待て!帰還の途中で赤い雲を見かけた!あれは、おそらく……」


「まさか……赤乱雲?」


赤乱雲。
高い致死率を誇る黒蛛病を引き起こす、赤い雨を降らす雲のことである。
ジュリウス隊長の言っていることが本当ならば、正直神機兵の護衛なんてしている場合ではない。


『こちらギル……ここからも、赤い雲を確認した』


今まで通信を聞いていたであろうギルバートさんから報告が入る。
これで赤乱雲があることは確定した。つまりは赤い雨が降るのも時間の問題という事になる。


「全員即時撤退だ、一刻を争うぞ」


ジュリウス隊長が慌てて指示を出す。
しかし、その声に反応したシエルさんの言葉は衝撃的なものだった。


「すでに赤い雨が降り始めました。ここからの移動は困難です」


まずい。このままではシエルさんが赤い雨に触れてしまう。


「くっ……フラン、輸送部隊の状況は?」


ジュリウス隊長に尋ねられ私は過去最高と言ってもいいくらいの速さで機械を操作し輸送部隊の状況を確認する。


「周囲にアラガミの反応が多数みられます。輸送部隊単体での救出はできません」


私の報告を聞くとジュリウス隊長は自分の通信機を押さえつけながらすぐに次の指示を出す。こういう時、本人も前線に立っているだけあり的確な指示を素早く行えるのはかなりの強みだと感じた。


「ブラッド各員、防護服を着用、及び携行しシエルの救援に向かえ!戦闘時に防護服が破損する可能性が高い。なるべく交戦を避けるように心がけろ。シエルはその場で雨をしのぎつつ、救援を待て!神機兵なんていくらでも量産がきく鉄屑のことは構うな、自分の安全を最優先にしろ」


「えっ」


ジュリウス隊長、心の声が出てますよ。この状況においてはおおむね同感ですが。
がっくりと手をついて俯いているクジョウ博士をスルーしつつ、何とか輸送部隊がアラガミに接触しないルートがないか調べようとして、野太い声が辺りに響いた。


「待て、勝手な命令を出すな」


「グレム局長……」


思わず声の主の名前が口からこぼれる。
この状況でグレム局長とは……正直歓迎できませんね。
普通の状況でもお断りですが。


「神機兵が最優先だろ。おい、アラガミに傷つけられないように守り続けろ」


グレム局長が言ったあまりにありえない指示にジュリウス隊長もいつもより強い口調で言葉を返す。


「ばかなっ……というかバカか、赤い雨の中では戦いようがない!」


ジュリウス隊長、また本音が出てます。
気持ちはよくわかりますけど。


「さりげなく罵倒された気がするが、俺がここの最高責任者だ。いいから、命令を守れ!神機兵を守れ!」


全く意見を変えないグレム局長にジュリウス隊長もイラついたのかカウンターをドンと叩き、ヒビを入れつつ荒く口を開いた。


「人命軽視も甚だしい!あの雨の恐ろしさは、お前も知っているはずだ!」


頭に血が上っているのか立場が上のグレム局長をお前呼ばわりしているジュリウス隊長。相当来てますね。
まぁ、私だって来てますけど。
……今度、フライア局員にあることないこと言いふらしてやろうかしら。


このままグレム局長とジュリウス隊長の口論が続くかと思われたが、シエルさんが彼らの会話に割って入ってきた。


『隊長……隊長の命令には従えません。救援は不要です。不十分な装備での救援は高確率で赤い雨の二次被害を招きます。よって、上官であるグレム局長の命令を優先し、各部隊その場で待機するべきだと考えます。……更新された任務を遂行します』


それだけ言うとシエルさんの声が聞こえなくなる。
ジュリウス隊長が必死に呼びかけるものの応答が全くなく、私が通信機の状況をすぐさま調べ上げる。


「電源から切られています。これでは繋がりようがありません」


「くそっ!」


私とジュリウス隊長が俯く中、グレム局長はフンと鼻で笑ってから口を開く。


「なかなか良く躾けてあるじゃないか。結構、結構」


殴りたい。
あの汚い顔面をさらに凹凸の大きい顔面に整形してやりたい。


『あのー、隊長……』


「どうした、ナナ!」


『仁慈がねー……神機兵に乗って行っちゃった……』


「なに?」


「な、何だと……!?」


汚らしい顔面をさらに歪に歪めて笑っていたグレム局長が一転して驚愕の表情を浮かべる。ナナさんが言う事が本当なのか神機兵の現在位置を確認する。


「神機兵γ、神機兵βに向かって接近中!」


ナナさんが言う事はどうやら本当だったらしく仁慈さんたちが担当していた神機兵γがシエルさんが担当している神機兵βに向けて急速接近していることが画面に映し出されていた。


「クジョウ君!神機兵γに通信を繋げ、今すぐだ!」


「は、はい!」


何時の間にか後悔の海から復活していたクジョウ博士にグレム局長が言う。それに戸惑いつつもクジョウ博士はすぐに神機兵γの通信回線を開いた。


「貴様どういうつもりだ!神機兵に何かあったらどうする!」


『おや、ハンプtじゃなかった、グレム局長じゃあないですか。ご機嫌麗しゅう』


「言っている場合か!今すぐ引き返せ!お前が今乗っている神機兵にどれだけの金がかかっていると思う!?」


グレム局長の言い分に眉間にしわが寄っていることを自覚する。
この状況において人命よりお金優先ですか……。
そろそろ本気で呆れてきましたよ。私も我慢の限界が近くいい加減文句の一つでも行ってやろうかと口を開きかけたところで、普段の仁慈さんからは想像できないくらいに低い声が通信越しに聞こえてきた。


『黙っていろゴミ屑。俺の行いが理解できない無能はその場でおとなしくしておけ』

一瞬、誰が話しているのかわからなくなるくらい、普段の彼からはかけ離れた言葉と声音に皆が皆、言葉を失う。
しかし、グレム局長は仁慈さんのただならぬ雰囲気に押されながらも何とか言葉を返した。


「な、何だと!?貴様上官に向かって……!この後どうなるのかわかっているんだろうなぁ!」


『ギャンギャン咆えるな、うっとおしい。いいか、よく聞け?脳内まで無駄な脂肪で埋め尽くされたゴミみたいな脳みそを持つお前にもわかりやすく説明してやる』


『いいか?今無人制御の神機兵というコンゴウ一匹に一時間近く時間をかける鉄屑を護衛しているのは、ブラッドの隊員であるシエル・アランソンだ。彼女の事を良く考えてみろ。彼女はこの鉄屑とは違いきわめて優秀な人材だ。状況把握能力はブラッドの中でも高いし、本人の戦闘能力も同じだ』


『そして何より、俺たちブラッドしか適合できない特別な偏食因子を持っているという事になる。これにより俺達だけが唯一感応種と戦うことができる。その戦力の一人であるシエルをここで使い潰すのはこの後感応種の討伐で入るであろう多額の金をどぶにし捨てることと同義だぞ?』


仁慈さんが言った言葉にグレム局長が考え出す。
本気でこの人を嫌いになりそうだ。


「貴様の態度は気にくわんが、確かにそうだ。しかし、ここで実績を上げなければ神機兵は……」


『貴重な神機使いを犠牲にしなければいけない兵器なんてどっちにしろ認められるわけないだろが。もう少し考えたらどうだ?それに、データだけならα、γのを使い、本部に出せばいい。今回スクラップになりかけたβは回収だけして後で調べて次に生かせばいい。フライアには神機兵のエキスパートたちがいるんだ、そのくらい余裕だろ』


「…………」


『ついでに言えば金はかかるが量産が可能な鉄屑と特別な何かを持った代えのきかない人間どちらを取るかなんて考えるまでもないだろう』



「……………」


『話が終わったなら通信、切っていいか?これ以上お前と話すのは俺のストレスがマッハなんだが』


「仁慈、シエル用の防護服は?」


『持ってる』


「なら、そのまま行け。ほかの隊員には退避するように言っておく」


『お願いします』


ブツンと切れる通信。
最後の方で聞いた声は私たちの知る何時もの仁慈さんだった。
そのことにホッとしつつ、先程までぼろくそに言われていたグレム局長の方を見る。
放心状態のようでずっと同じ態勢で立っていた。



「フフッ……シエルと仁慈以外のブラッド各員に告ぐ、今すぐ退避しろ。あの二人はどうせすぐに戻るだろうからな」


放心状態のグレム局長を一目見て笑ってからブラッドの隊員に通信を入れるジュリウス隊長。なかなかイイ性格してますね。
そう思いつつ、私は自分の仕事に戻った。

























……どうやら通信の内容はシエルをどうやって助けるかという事らしい。ジュリウス隊長の指示で自分の分の防護服とシエルの分の防護服を持って準備万端の状態とする。
何時でも助けに行けるぜ!と意気込んでいると、ジュリウス隊長の指示にケチをつける奴が現れた。
汚いハンプティーダンプティーことグレム局長である。
金の事しか頭にない彼はシエルの身よりも神機兵を優先するらしい。彼の言い分に俺を含めたブラッドメンバーの怒りは有頂天である。


結果、シエル自身が救援を拒否するというまさかの事態に陥ってしまった。グレム局長はその結果に満足そうな声音で結構、結構と言っていた。
それを聞いたとき、ギルさんは急に神機の様子を確かめ始め、ロミオ先輩はオラクルリザーブをしまくり、ナナはフルスイングで素振りをし出した。
やだ……物騒……。


なんて言っている場合ではない。
早くしないとマジで手遅れになる。
なんかないかなんかないかと某猫型ロボットのように呟きながら辺りを見回せばそこには先程残念な戦闘を見せてくれた神機兵が視界に入った。


「………!」


その時俺に電流が走る。
これを使えば赤い雨が降っても大丈夫だったはずだ。確かターミナル先生にそんなようなことが記載されていた気がする。
そうと決まれば早速乗り込もう。


あらかじめ用意しておいた防護服を片手に神機兵へと走る。
何処からかはいるのかいまいちよくわからなかったので、適当に胸をぶっ叩いたらプシューと煙を出しながら胸部が開く。
中に乗り込んでみると、胸部が閉まり一瞬だけ暗くなる。しかし次の瞬間には中の機械が作動し、周囲が見えるようになった。
これはいったいどうやって操作すればいいんだろうか……。
今更ながら操作方法がわからず、もうだめだ、おしまいだぁ状態になっていると目の前にある大きな画面にメッセージが表示された。


『イメージするのは常に最強の自分だ』


なんのこっちゃ。
操作の説明かと思って期待させよって。
とりあえず俺は動けーと念じながらその辺の機械をポチポチいじる。すると、何という事でしょう。うんともすんとも言わなかった神機兵が急に動き出したのだ。


……なるほど、イメージか。
イメージで動くんか、これ。わかりづらいな。若干説明について愚痴りながらも操作方法が分かればこっちのものだ、と俺は頭の中で走るイメージを思い浮かべる。
その直後神機兵は結構なスピードで走りだした。点々と光るマーカーの位置に向けて。


走り始めてからすぐに目の前の画面に通信が来ていますというメッセージが現れた。
やってることがやってることだしいい内容じゃないよなーと考えていると強制的に通信を繋げられたようで、グレム局長のうるさい声が響いた。


……正直、俺はシエルの件でグレム局長には激オコなので今はしっかりと話せる自信がなかったりする。
頑張って言葉を返すと、出てきた言葉は案外普通の内容であった。よかったぜ。
しかし、一言交し合っただけで会話が終わるわけもなく再びグレム局長が怒鳴り散らす。
ま、まぁ俺はもう16歳ですしぃ、自分の感情を抑えることなんて余裕だから先程と同様に俺は冷静に言葉を返した。


「黙っていろゴミ屑。俺の行いが理解できない無能はその場でおとなしくしておけ」


あ、だめだこれ。
俺は自分で思っている以上に大人ではなかったらしく、グレム局長への暴言がとどまるところを知らなかった。
何とか止めようと頑張ってみるが、怒りが有頂天で暴言が止められない!止めにくい!状態だったので結局最後まで言い切ってしまった。


帰ったら俺首になるんじゃないかな?
と不安になりつつも通信が切れたので神機兵の操作に専念する。
点滅しているマーカーまで後少しと言う距離に来たところで、ビー、ビーと何やら危険を知らせるような音が鳴る。


『神機兵βの周辺にアラガミの反応があります』


どうやらアラガミがいるという警告だったらしい。
意外と便利でびっくりである。
だが、驚いてばかりもいられない。先程の警告が本当ならばシエルが絶賛大ピンチという事になる。
俺は今までよりさらに加速するイメージを思い浮かべ、全力で神機兵βの元へと向かう。
よっし、見えたぁ!


神機兵の画面が映し出す光景には膝を付いて座り込む神機兵を屋根としているシエルの姿と今まさに襲いかかろうとするシユウの姿があった。


「チェストー!」


神機兵にジャンプしてからそのまま剣を振り下ろすイメージを送る。
そうすると神機兵は俺の想像通りの軌道を描き剣を振り下ろした。憐れシユウは神機兵のマシンパワーの前に爆発四散した。
当たれば強いな。


シユウの始末を終えた俺はシエルの方に近づき、シエルが屋根にしている神機兵に覆いかぶさる様な体制を取った。そして、胸部を開いて持ってきた防護服をシエルに投げつける。


「念のため着てな。それの方がこれより安心でしょう?」


覆い被さる状態で固定している神機兵を指さしながら笑いかけるとシエルは泣きそうで笑いそうで嬉しそうで悲しそうな、そんな複雑な表情を浮かべていた。


しばらくすれば、赤い雨を降らす赤乱雲もどこかに行き俺たちは無事に帰投を果たすことができた。
ちなみに帰ってきたシエルを迎えたのはフランさんやブラッドメンバーで俺を迎え入れたのは屈強なフライア職員と懲罰房であった。
なんでも今回の命令違反とグレム局長に対する暴言で1週間懲罰房で謹慎が罰なんだと。
まぁ、1週間の休みが取れたと考えれば悪くないかな。
それに首にならなかっただけましだろう。
そう考えて、自分の部屋よりはるかに硬いベットにもぐった。






















あの後、二人で帰投した後、私を助けてくれた君に待っていたのは1週間の懲罰房行と言う罰でした。
……私を助けようとしたばっかりにと落ち込んでいると、それを察してくれたフランさんがそれはあまり関係ないと言ってくださいました。
ですが、それでは何故懲罰房に入ることになってしまったのかと言うと、私を助けに向かっている時通信してきたグレム局長に多くの暴言を吐いたらしいです。
なんでも私の事を全く考えていなかったグレム局長に怒りが湧いてついつい口から出てしまったと本人が言っていたと聞かされました。


不謹慎ですが少し、あの場に残ってよかったと思ってしまいました。私のために怒ってくれて、私のために危険を冒してまで助けに来てくれたことが嬉しいんだと思います。
その話を聞いて私は余計に君にお礼をしたくなりました。
なのでさっそく向かう事にしました。




私が懲罰房に行くと君はベットに座ってぼーっとしていました。その様子がとてもおかしくてついつい笑ってしまいました。
その笑い声で私に気が付いたのか君は少し恥ずかしげにしながら扉の近くに寄ってきました。


「もしかして、見てた?」


「ぬぼーっとしてましたね」


「oh……」


からかう様に答えると副隊長は手を額に当てて天を仰ぎました。
私が悪いのですが、このままだと話が先に進まないので少々強引に話題を切り替えます。


「そういえば、君はこうなることが分かっていて、あんな無茶をしたんですか?」


「いや、論破してなんとかやり込めようと思ったんだけど、自分の暴言のせいでこうなった。ぶっちゃけ自業自得」


「フフ……でもそれは私の為に怒ってくれていたんですよね?」


「……し、知りませんな」


「声が裏返ってますよ」


「オウフ」


胸を押さえてよろめく姿を見て再び笑ってしまう。
ほんと、君といると楽しいです。


「別に俺だけじゃないよ。ギルさんは神機構えてたし、ナナは全力で素振りしてたし、ロミオ先輩はオラクルリザーブを狂ったようにしてたからね。あのままシエルが死んじゃったりしたらグレム局長も死んだんじゃないかな?」

「皆シエルのことが大事だからね。それこそ上官であるグレム局長をぶっ殺しそうな勢いでね」っと付け足す君。
急に飛び出てきた物騒な話題に苦笑しつつ、そんな反応をしてくれたブラッドの皆を思い胸が熱くなる。
それと同時に、あの時どうして自分がジュリウス隊長の命令に従わなかったのか、何となくつかめた気がする。
それはきっとブラッドの皆が私にとって、命令よりも自分よりも大切なものだったのでしょう。


「……私も、見つけたかもしれません。命令よりも自分よりも大切なものを」


「そっか……それはよかったよ」


「君、少しだけ手を出してくれませんか?」


「へ?別にいいけど……」


私の急なお願いに不審に思いつつも君は懲罰房の扉にある隙間に手を近づける。それを私はぎゅっと握った。


「ねぇ、君」


「んー?」


「とっても、温かいですね」


漠然と自分が思ったことだけを口にした。
これだけだったら、多分何のことかわからないでしょう。しかし、不思議と今だけはお互いがお互いの事を分かっている……。
懲罰房の扉の向こうで微笑んでいる君を見て、私はそんなことを思った。